みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
6.《ネタバレ》 ●北ドイツの小さな村におこったあれこれの事件、それらの事件に通底したものは何だったのかということを、単純な犯人探しのミステリーを越えた、もっと大きな歴史の流れのなかに置いて描く演出にはみていても背中がゾクゾクしてくる。●映画は、その村に外の町から来ている教師の語りで進行することになり、この教師が村のなかの人間関係を深くは知らないということからはじまり、それでもだんだんに「いったいこの村に何が起こっているのか」という真相に近づいていくわけになる。しかし映画はその教師の知り得ないことがらをも目撃し、観客に知らせることになる。映画で語られるあれこれの事件にかんして、語り手の教師と、その恋人(婚約者になる)のエヴァという女性だけが、ある意味であれこれの事件にまったく無関係な立場にあるように描かれるわけだけれども、では、この語り手の教師はいったい何者なのか、この教師の回想にはどんな意味があるのか、というあたりまで含めてのこの作品であって、この教師がこの村でのそれらの事件の裏にあるものを垣間見て、その事件ぜんたいの構造を想像でき得ていたとして、ではこの教師はどういう存在になるのか、というあたりをこそ、この作品はいいたいのではないのか、などと思うわけである。この教師にも、「白いリボン」は結び付けられているのではないのか。●ハネケの作品には、なにからなにまで、「これにはこういう意味がある」などと解読してしまうことで、そのいちばんのテーマが手もとからすり抜けてしまうようなところがある。スクリーン上で展開するものからはみ出てしまうものこそを感知すること、そんなことが観客には要求される。だからわたしにもこの作品の背後にあるものなどほんとうにはわかっていないだろうと思うし、わかったような顔をしてストーリーを解読してもしかたがないじゃないか、などと思うわけである。ただ、彼の作品にはヴィジュアル的にひとをゆさぶる、ショッキングなショットがかならずあるわけで、それは監督が観客に贈るインヴィテーション・カードのようなものでもあると思うのだけれども、この「白いリボン」では、牧師の娘がその父の鳥かごの鳥のあたまをハサミで切断し、その羽根を拡げてあたまの部分にハサミを刺し、十字架のようなかたちにして父の机の上に置いたショットあたりではなかったか。 【keiji】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-06-12 18:51:17) 5.《ネタバレ》 ミヒャエル・ハネケという監督の名前は、私の中でラース・フォン・トリアーレベルの禍々しい響きを持っていて観に行くかどうかかなり迷ったが、パルムドール受賞ということでミーハー気分で観に行ってみた。鑑賞後の感想を一言で表現すると「思っていたほど怖くない。面白い」。ジェットコースターに乗った子供のような感想になってしまうが、それが正直なところだ。「ファニーゲーム」は正視できないだろうと容易に想像されるため、鑑賞を回避しているが、今は食わず嫌いせずに、観てみようかなという気持ちになっている。 主要な登場人物は男爵一家、その家令一家、牧師一家、医師一家、小作人一家の5家族と村の学校の教師(=狂言回し)。第一次世界大戦勃発直前のドイツのとある村で奇妙かつ陰惨な一連の暴力事件が続発する。結局、事件の多くは犯人が謎のまま終結してしまう点には、ハリウッドファンとして煮え切らなさを感じるが、それぞれの家族の抱える問題を同時並行で丁寧に浮き彫りにしていくという作り方は確かに上手で、長尺にも関わらず、最後まで全く飽きなかった。 この映画はたくさんのテーマを扱っており、正直に言って全てを感じ取れたか自信がないが、歴史的に見れば、第一次世界大戦(およびその敗北)というカタストロフの予兆、暴力を賛美するナチズム台頭の予兆を感じ取ることが出来る。映画そのものを観れば、行き過ぎた父権主義とそれに対する子供たちのリアクションが主なテーマということになるだろう。父に反抗する子供、父からの暴力を受け入れる子供、父から受けた暴力を他者に向ける子供、父を愛し続ける子供、さらには父権主義の傘を利用する子供など様々な子供が描かれる。子供のもつ純真さとその裏返しである独特の不気味さが不穏な雰囲気を醸し出し、映画のテンションを高めている。 また、全編モノクロである上に一切BGMを用いないことから、不思議な透明感が全編を包んでいる。撮り方にも特色がある。カメラを固定し、その枠から登場人物が出たり入ったりする場面が多くて、これもこの映画の「静けさ」を表現するのに適していると感じた。 ただ、思ったことをだらだらと書いていくだけで、ふと気づくとこのようにレビューの量が膨大になってしまうほど興味深い映画だったが、残念ながら、陰惨な映画が苦手な僕は再鑑賞する勇気がなかなか出ない。でも確かに優れた映画だと思う。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-03-26 23:56:17) 4.ドイツのとある村のお話し。村の唯一のドクターが何者かの悪戯で乗馬中に大事故に遭う。この事件をきっかけに今まで平穏無事な村で様々な事件が起き出す。犯人が分からないまま村で起きる事件に村人同士にも不信感が生まれ出す。一見平穏な村に隠された真実が徐々に浮かび上がる。1つの事件をきっかけに村の歯車が狂い出す様はかなり恐ろしいです。「平和」に水面下で忍び寄る「危険」、ギリギリの水面に「恐怖」が見え隠れし、人々に襲い掛かってきます(モンスター映画ではありません)。村の閉鎖性に潜む恐怖に興味ある方にオススメ(そんな人いないと思いますが笑)。 【カイル・枕クラン】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-03-13 23:29:14) 3.《ネタバレ》 ミヒャエル・ハネケ作品は鑑賞した事があるが、自分には向かない監督だと思った。したがって、今までは避けていたが、カンヌのパルムドール受賞作ということもあり、再チャレンジしてみた。合わないところはあるが、確かにこれは凡人が作れるレベルの映画ではないと思う。モノクロ画面の構図など芸術的な作品でもあり、テーマも深遠だ。面白い作品ではないが、つまらなさは感じられない。意味が不明瞭な作品ではあるが、飽きさせることもない。 結末もオチも明らかにはしていないことも凡人とは異なるところだ。もちろん意図があって明らかにしていないのであり、もし明らかにしていれば、逆に失敗だったのではないか。明らかにしないことによって、観客に多くのことを考えさせることとなっている。そもそも犯人が誰かといったことなど、本作にはあまり意味はないことだろう。 個人的な解釈では、第一次世界大戦がキーワードなのかなという気がした。抑圧されていたセルビア人の一人がオーストリアの皇太子を暗殺したことによって、世界全体が狂った戦争へと驀進していく。そのような狂気の伝播、抑圧されたはけ口をあの村の出来事を通して描いたように個人的に感じられた。 ①村人の妻の転落死→キャベツ畑の荒らし→村での孤立→村人の主人が自殺する。 ②牧師が自分の娘が教室で騒いでいると決め付けて娘を叱り付ける→その報復として自分が飼っている鳥を殺される。 ③自分の子どもを疑う→抑制する→ジギや赤ん坊への暴力へと繋がる。 ④男爵が村民を押さえつける→村民が子どもを押さえつける→子どもがジギに報復する→男爵夫妻の関係が破たんする。 カーリへの暴力、夢の話、医師の家族の行方など、解釈が難しいものもあるが、医師の罵倒を聞く限りでは、だいたいの結末についての察しもつく。基本的には、ボタンの掛け違いのよる苛立ちが、次第に強大に膨れ上がり、悲劇的な末路へと導かれている。 過去のドイツの話ではあるが、現在にも通じるような負の連鎖が常人では描けない手法で描かれており、興味深いものに仕上がっている。 パルムドールに値するかどうかは専門家の判断に委ねるしかないが、受け手側の自分のレベルが低いためか、正直言って面白いと思えるほどのものではなかった。 鑑賞中は全体像が把握できなかったので、ひょっとすると再見すれば、評価はかなり高いものとなるかもしれないが、初見ではやや難しい。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-01-24 21:33:10) 2.2時間半という長尺の割にはあっという間に終わった感じ。ハネケにしては随分親切な作りで、なんだか意外。もちろん、明解な答えは提示されないんだけれども、これまでの不条理感漂う「分かりにくさ」とは、その「分かりにくさ」の質が全く異なるように思う。結局、こうして絶対服従を強いられてきた子どもたちは長じてどのような歴史の選択をしたか、我々は知っている。だから、そこを意識して見ると、この映画はかなりコワイ。思考停止の訓練を受けた人間の辿る道とは、、、みたいなものを、モノクロのスクリーンから突き付けられるようでかなり不気味ではある。邦題の「白いリボン」は、大人の価値観の押し付けの象徴かな、と受け留めた。それにしても、これがパルムドールねぇ、、、。私は、もっと直截的な毒がある作品の方が好きだけど、まあ、これは通が好みそうではあるかな、確かに。牧師とか医師とか大人の男たち、大勢の子どもたち、いずれも途中まで顔の判別がつきにくく、見ていていささか混乱気味だった。・・・うーん、これは、まあ、よくよく考えるとものすごーい毒性の高い作品だとは思うけれど、私的にはちょっと好みではないかも。いや、面白かったんですよ、ええ。でも、ハネケ作品ってことで期待してしまったのとは、ベクトルの向きも大きさもかなり違っておりましたんで、若干点数は抑え目で。 【すねこすり】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-01-12 22:02:22) 1.撮影は全編カラーフィルムで行われたと聞くが、最終的にミヒャエル・ハネケがここに残すべきと判断した色は、子どもたちの腕に巻かれるリボンや村を覆う雪の白、それだけだったのかもしれない。色彩を失くしたモノクロームの村は、血の気がひいたように冷たく寒々しい。さらにハネケは音楽の一切を退け、この村に漂う長閑な静寂をくっきりとふちどることで、逆説的に、その裏に潜む不吉や不穏を強調する。息づまる異様なこの静けさが雄弁に物語るのは、それが何だか分からぬままそれでもひたひたと確実に迫り来る、得体の知れぬ虞だ。愛人であったと思しき中年女の老醜を忌々しげに罵る医師。そんな彼がふと思いついたように年頃となった自分の娘に年齢を訊ねる場面でこの父娘を包む静寂には、身の毛もよだつ禍々しさが息をひそめている。色彩を排し音楽を排しさらにハネケが試みる次なる仕掛けは、物語の核=真実をも排除することだ。ハネケ映画には珍しく語り手のモノローグをそこここにちりばめながらも、そこにつまびらかな説明が付与されることはなく、描かれる出来事もまた決してその核心を顕にしない。そうして恐怖の正体は最後まで明かされずじまいとなる。たとえば、牧師である父が語る「奇病で死んだという罪深い少年の説話」に頬を上気させ恥辱に苛まれる息子と、彼の腕に何らかの罰として巻かれる純潔の白いリボン。また等しくこの息子が、罰を受けるため自ら折檻用の鞭を用意し、重い足取りで再び戻るその部屋。あるいは件の医師が娘の耳にピアスホールを開ける真夜中の診察室。それらが何を意味するのか、想像するのは容易い。だが映画は終始、そこで確実に行使されているはずの暴力を密室に隠蔽する。かよわき子どもたちの悲鳴や呻きが洩れ聞こえては来ても、その姿は秘密の小部屋に閉じ込められたまま第三者の目にふれることはない。それは、まさしく虐待の構図だ。そうした村の日常の中で、小鳥や幼児そして知恵遅れの少年らより弱き者へと向けられる陰惨な暴力や、反逆として張り巡らせられた針金だけが、畏るべき事件と看做される、その痛烈な皮肉。原題における副題は「ドイツの子ども史」といった意味だろうか。だが非力な子どもも、いつしか歴史を動かす大人になる。ドイツの子ども史は大人史となり、それがやがてドイツ史となる。1913年の子どもたちが創り出した歴史を、おそらく私たちは厭というほど知っているのだ。 【BOWWOW】さん [映画館(字幕)] 7点(2010-12-22 23:49:13)(良:2票)
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