みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(7点検索)】
3.《ネタバレ》 「まあ大丈夫だろう」 「騒ぎすぎ」 「格好付けるなよ」 「知ったかぶっちゃって」 「これくらい」 「気持ち悪い」 「面倒くさい」 こう言った雑音が、その日所々から聞こえた。 「落ち着こうよ」 「気をつけないと」 「大変なことになったらどうするんだ」 「何かおかしいほどじゃない?」 「どうなっちゃうんだよ」 それでも一様に、誰もが心の中で何度も、何度も繰り返して、口の中で唱えるようにつぶやいた。 「大きいぞ」 我々が住む東京は、今から考えれば絶望的な地震が襲って何もかもが崩れてしまった、と言うことは無かった。それは東北でも同じようなことだったかもしれない。だけど、その「思ったより揺れていない」と言う事実は人を急速に蝕んだ。油断が、である。 あの日、仕事を途中で切り上げて国道一号前のレストランでだらだらと、帰るか帰らないか、止まってしまおうか明日休んでしまおうか等とまだ明るい窓の外を眺めながらひたすらおしゃべりに興じた。 しかし、異様な光景がずっと止まらずに繰り返しそこにある事に段々と気付く。 人の列がいつまで経っても途切れない。一人が気付くと、そこに居る何人もが「あ」と声を上げる。一斉に帰宅した我々も、窓の外の人の列もどうという予定も無く出てきてしまったのだった。 このまま歩いては帰れないと言う人を残して、比較的近所に自宅のある私は群れの中に紛れて見慣れた交差点まで一緒に歩くことにした。 水田に流れ込む津波や燃える街などのリアルタイム映像が止むこと無くテレビで流れ続ける。次の日には原発が爆発してしまった。もう生きていけないんじゃ無いだろうか。とすら誰もが思った。だけど、生きてる。もう二三台原発が爆発しても私たちはきっと生きてる。だから、今はまだ諦める時じゃ無い。 地震や原発がある人がその人であると形作る決定的な物を壊してしまって、その人はその人じゃ居られなくなってしまった。死んだら何もならない、そんな気持ちを伝えてしまうと自分が残酷な人間になってしまう。でも、もう完全な手詰まりをそこに見とがめてしまったら、やはり人は自分の命を絶つ。 母親は生き残って、狂ったような生き恥を晒して、護っていたのは何だろう。少々のセシウムから子は護れても、狂ってしまったお母さんからその子を護れない。 色々な物が、そう言えばボロボロになってしまった。 【黒猫クック】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-05-28 02:30:31) 2.《ネタバレ》 観た感想を率直に言うと、今観れて良かったです。劇中では何度かこんな言葉が繰り返されます。ニュース番組のキャスターは「大変な時こそ大きく騒がないで大きく構えていきましょう」、お笑い芸人は「こんな大変なことは置いといて僕らはお客さんを笑わせますよ」とか。人間は嫌なことや辛いことを忘れる能力が備わっている生き物です。大抵の人がご自身で被災されたり肉親を震災で亡くさせたりしなければ夜に悪夢で飛び起きたりすることは無いでしょう(テレビじゃ一応今でも日本中の人に傷跡がとか言うけど)。誰だって震災から1年半以上も経つと目の前の仕事とか生活とかの方が身近な問題になってしまう。今じゃニュースも新聞も被災地の状況より原発の再稼働の是非の方をよっぽど大きく報道するようになっている。 その1年前の出来事が段々過去になりつつある今、福島以外の原発が爆発してしまったら、というifを描いたのが本作です。この前、園監督の自伝を拝読したのですが、監督は前々作の「ヒミズ」で福島の被災風景をスクリーンに写したことでかなり非難の声を浴びたそうです。無神経であると。しかし福島の方には、よくぞ撮ってくれた、忘れ去られずに済んで良かったと感謝されたそうです。本作はその「ヒミズ」の被災風景のみで構成された映画と言えると私は思いました。つまりあの震災当時あったことそのものを今描こうと。皆は過去の出来事にしようとしているが、今一度思い出してみようと。私は本作を観て自分が震災を忘れようとしていることを自覚できましたし、そんな自分を仕方ないと許すと同時に恥じました。本当に今この映画を劇場で観れて良かった。 ただ映画としてどうかというと手放しで喜べないシーンも多いと思います。一番ガックシ来たのは、痴呆症で勝手に避難指定区域に入ってしまった大谷直子を何の理由も無しに夏八木勲が見つけてしまうこと。折角結婚指輪の話も入れているのだから、かつて思い出の場所だったから分かったとか何か一つ理由が欲しかった。ピアノがポーーンと一音だけなる音楽が繰り返されるのもそれを聞くだけで映画のテンポが死んでしまっている様に感じてしまい残念。マーラーの荘厳な音楽も繰り返されるとちょっとキツい。 ただし役者さんの演技は抜群に良い。特に夏八木勲と大谷直子の老夫婦はどう見ても長年本当に連れ添った夫婦にしか見えず、最後のキスシーンには非常に感動させられました。 【民朗】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-10-31 22:29:02)(良:2票) 1.舞台となる長島町とは福島に置き換えていたものだと思って見ていましたが、実はそうではなかったですね 福島県の原発被害は過去形という事になっていまして次の被災地という設定になっています。しかしどうでしょう‥ 現に福島の県名はバンバン出て来ますし、一部、風評被害を蒸し返してしまうような行動だって2、3撮られています。はたして福島県の皆さまはどう思われるのでしょう その事ばっかりが気になってしまう そうなってくると、やはり、まだ時期尚早 まだしばらくはそっとしておいてあげるのがよかったのじゃないかとさえ思える。言ってしまえば、望まれない映画となって生まれてきた気がする。福島県及び東北地方の方々の怒りや悲しみ、そして心の叫びや苦心の打ち明けを知る手段としては今のところまだNHKや各民放局のドキュメンタリー番組で情報を得れる程度のものでよいのではないかとさえ思えてきてしまいました。架空のドラマ性を求めることなく事実関係に重点をおいておきたいという意味で。 しかし、これ、先日、公開前のタイミングに合わせてNHKの教育チャンネルで園監督を追い、その撮影に至った経緯と伝えたいメッセージという事を主題にして その撮影風景を追ったドキュメンタリー番組として30分~60分位の時間枠で放映されていました。ということは、このことから察するに、NHKとしてはこの作品の発表を認めているんだな‥ と。 だからなにという話にはなりますが、自分としては、まだ 時期尚早な作品であったと思えたという事を述べておきたい。そしてケチをつけるわけではないですが、ラストの落胆と不安を撒き散らして終わるまとめからして〝希望の国〟という この題名、その内容とは全く合っていないものになっていたとさえ思えた。正直、お後はあまりよろしくない。現地被災者の方々はこの作品の存在意義をどう捉えるのでしょう その事が今すごく気になってやまない次第です。 ただ、最後に泰彦と智恵子が花壇で交わしたキスシーン 悲しくも素敵でしたね ホント切なく素敵なキスシーンでした。 あの場所で あのタイミングで あの老夫婦によるキスシーン 園子温にしか撮れない芸術的なものであったと思います。 【3737】さん [映画館(邦画)] 7点(2012-10-29 19:08:31)
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