みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
53.《ネタバレ》 「下妻物語」があまりにも予想外に面白い映画だっただけにどうかなあとあまり期待を持たずに見た。運命に翻弄される女性の波乱に満ちた53年間の生涯を描いた作品で「下妻物語」のようなバカバカしさや軽さといったものは若干抑えられてる感じがするものの、不幸のどん底にたたき込まれた主人公 川尻松子(中谷美紀)の物語をことさらに悲劇性を強調するでなく、逆に明るいエンタテイメントとして描ききるというのが斬新。普通に考えれば失敗してもおかしくないのだが、この映画はそれでいて一代記ものドラマとしての見ごたえもじゅうぶんあるという只者ではない映画になっていて、まだ見るのは2本目ながら中島哲也監督のうまさを改めて感じられる。ストーリーのほうはもう松子が父親(柄本明)から愛されたい一心で変な顔をするという序盤からもう切なくなり、松子にこの時点でかなり感情移入してしまった。その後もとにかく必死で愛を求める松子の姿が切なくてたまらないのだ。そんな彼女の最期はとてもあっけないものだった(でも、元教師らしい最期だ。)が、ラストの階段を昇り切った彼女が、出迎えた妹(市川実日子)の「おかえり」という言葉に対して「ただいま」と返す。この瞬間、不覚にも泣いてしまった。下の方も書かれているが、これが松子にとって本当の幸福を手に入れた瞬間だろう。これをハッピーエンドというのかは人によると思うが、個人的にはハッピーエンドだと思いたい。ミュージカルのようにたくさんの楽曲が使われているが、中でも「まげてのばして」が冒頭から効果的に使われており、特に印象的。このラストシーンで松子がこの歌を歌いながら階段を昇っていくシーンも泣けて仕方がなかった。松子を演じる中谷美紀も素晴らしく、撮影中は中島監督との対立が激しかったようだが、その要求によく応えて名演技をしていて、まさにこの女優だからこそこの松子といういかにも不幸で魅力にもちょっと乏しいようなキャラクターをここまで魅力的に表現できるのではないかと思う。本当に見てよかったと思える映画だった。本作は人によっては好き嫌いははっきりと分かれるかもしれないが、邦画新時代の新しい女性映画の傑作として高く評価したい映画である。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-08-17 15:58:52)(良:3票) 52.《ネタバレ》 色鮮やかな映像美、ミュージカルテイストの音楽、自分の好きなジャンルである。 しかし、凄まじいまでの暴力とセックス。それがディズニー調の明るさや爽やかさを冒涜している気がして、途中で観るのをやめようと思ったほど。でも、その不快感をすぐに払拭してしまうほどの魅力がこの映画にある。 松子の幼少時、百貨店の屋上の遊園地のシーン、これほど鮮やかで楽しさを表している映像を今まで見たことがない。絶賛されるべき映像。その賑やかさの中にあって、父親役の榎本明が独特の無表情さとスッポットライトで親子だけを浮き立たせるのも絶妙の手法。松子が土手を駆け抜ける場面は、紫や群青色で彼女の人生の道のりの暗闇や絶望を表現している。パリテキサスやバクダッドカフェを彷彿とさせる紺碧の美しさ。 また一転して劇団ひとりとの不倫愛をアップテンポの曲とレトロ調の映像で賑やかにhappy wednesdayを歌い上げ、観客を楽しい世界へ誘う。劇団ひとりの妻役にメチャイケの大久保佳代子が扮しており、中谷美紀に勝ったといわしめたところは笑ってしまった。 暴力のシーン。松子が殴り倒されると、カメラも殴り倒されたようになり、下からのアングルになる。このあたりの描写も臨場感があって秀逸。彼女の恋人は暴力をふるい、彼女はそれに怯えながらも、激しく愛されることに喜びを感じ、寂しげな表情に、同情をよせる。暴力の中にしか真実の愛がないのではないか?と錯覚を起こさせるほど、中谷美紀は激しい愛情を表現を映画の中で演じてみせる。逆に妹や父といった暴力の介在しない愛情にもどかしいほど応えられずにいるのだ。 AIなどのシンガーがミュージカル調でこの映画の幅を広げているが、激動の人生を短時間で効果的に表現している。その最たるものがBONNIE PINKのソープ時代の歌で、曲が終わる頃には、ひとつの時代も終わり、曲の終わりにあばよ!と去っていくマネージャーの後姿に鳥肌がたった。 物語の展開が速く、ぐいぐいと引き込まれていく。教え子の土手でのシーン、美しい青空と波しぶきが暖かく彼たちを見守り、観ている者の涙を誘う。 松子の最後のシーン、薄汚れた現実とかけ離れた美しさ。土手をふらふらと彷徨う、夕焼け、夜、そしてまた日が昇り中谷美紀の優しく温かみのある澄んだ声が素晴らしい光景を際立たせる。それぞれの登場人物が愛おしくて心が熱くなって、涙がとまらなかった。 【ピヤクト】さん [インターネット(字幕)] 8点(2006-10-27 02:44:20)(良:3票) 51.《ネタバレ》 <原作未読>悲劇×喜劇×ミュージカル×映像美で傑作誕生。圧倒的中島哲也ワールドに酔いしれた。映像美とは言っても、世に言う名画のそれと違い、不自然なまでの色鮮やかさと「オズの魔法使い」やディズニー作品のパロディに、暴力・セックス・微グロが入り乱れた映像に気品は感じられない。そこで社長の言葉が思い起こされる。「女の子なら誰だって白雪姫やシンデレラ… そんなかわいいおとぎ話に憧れるもんさ」「たった一度の、一回きりの人生なのに、おとぎ話なら残酷すぎるぜ」。そうか。どんなおとぎ話でも主人公はハッピーエンドを諦めてはいけないのではないか。この演出はそう言いたいが為だと思えた。もちろん、あんな死に方はバッドエンドに決まってる。でも、廃人と化していた松子がもう一度生きようとした事実。またその決意の中には妹がいたこと。そしてそれはラストシーンの感動に繋がっていく。悲惨な人生だったことは否定できない、しかし残ったのは後味の悪さではなかったことに、この映画の凄さを感じた。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2014-05-04 15:49:02)(良:2票) 50.《ネタバレ》 予想を良い意味で裏切られて、ファンキーでおもしろかった。 中島哲也監督のアニメーションを入れた演出もファンタジックでおもしろい。 テレビに流れる映像は世相をなぞっていて、松子の人生を立体的にイメージしやすい。 壮絶な松子の一生は、殺人、暴力などの悲惨なシーンも多く、従来の日本映画風に撮れば陰惨になる。 ところが、ミュージカル仕立ての明るい音楽とギャグタッチの描写で陰惨になっていない。 ただひたすらに切ない。 とことん星回りの悪い女。というより、女があらゆる不幸を呼び寄せているようにも見える。 そんな女の一生に光を添えれば、こうした見方もできるということか。 現実的に冷静にみれば松子は明らかに依存症で他人も不幸にしているので、神様とするには無理がある。 それでも、孤独を恐れ愛を求め続ける松子が愛しくなってくる。 【飛鳥】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-05-26 00:23:46)(良:2票) 49.《ネタバレ》 伊勢谷友介のちんぴらについて書く。 服役中に身につけた資格で美容師として働く松子の所へ、松子が教職を辞する原因を作った教え子・龍として登場する。雨の降る路地裏で「覚えてませんか?」と呼びかけ、「やくざになったの?」とあっさり言われて、つかつかと近寄られ、教師が生徒に問いただす時の声で「で、何の用?」と言われる。 両手をポケットに突っ込んで立ち(脚が長い!)、下から睨み上げるようにカメラを見る姿はいかにもちんぴらで、カッコイイ。それが、まったく生徒としか見ない松子の“上から目線”の声に出会ったとたんに“生徒”に戻りそうになる。背中を丸めてポケットから手を出そうとして、辛うじて踏み止まり、「いや、先生と話がしたかったから‥。先生はあのころとちっとも変わらないですね。」ここが楽しかった。どれほどかっこつけてうわてに出ても“生徒”だった過去は消えない。 ちんぴらのかっこよさと哀れさとこっけいさと、そんなものがどっと表現されてた。 伊勢谷の衣装は着こなしの難しいピンストライプスーツで、スーツの中は白地に大きな花が散るシャツだ。下品さを良く出すとともに、色彩の統一感があって、伊勢谷の立ち姿を美しくする。玉木宏が「リボルバー」で似たようなスーツを着用したときは、中は赤いトレーナー?だった。こちらはいかにも田舎の高校生で、そうすると龍は、なかなかおしゃれな都会のちんぴらだ。 【TAMAKIST】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-05-28 19:40:46)(良:2票) 48.「人生終わった」が口癖の人間が、その人生が終わる瞬間まで“希望”を捨てていなかったという点がなんとも印象深い。完全に終わったような人生を送っていたとしても、「まだ、まだ行ける」と立ち上がろうとする姿には感動を覚える(階段から転げ落ちても、バットで殴られようと、なお立ち上がろうとする姿も印象的だ)。そのような彼女の姿を見続けると、“自分もまだまだ終わらんよ”とチカラが沸いてくるようだ。 また、「留まるも地獄、行くも地獄ならば、一人じゃない方を選ぶ」という生き方はなかなか共感しにくいところはあるが、彼女としては“孤独”からどうしても逃れたかったのだろうと強く感じさせる。“家族”という帰る場所を失い、自分の居場所を求めて彷徨った遍歴は、正しいか間違っているかは分からないが、決して悪くはない。 何かをしてもらうのではなくて何かをしたい、愛されるよりも愛したい、現代の“受動的”な人間行動を否定して、“能動的”に行動し続ける姿が心を打つ。 その他にも故郷を想起させる“川”なども、セリフは喋られないが、松子の気持ちを深く代弁している。父親に愛されたかったという強い思いから思いついた“変顔”も印象的に使われている。原作には盛り込まれておらず、監督のオリジナルアイディアと聞いたことがあったが、非常に高い効果を生んでいると感じる。さらに、人生の最後を迎えて、天国のような階段を登り、家族や妹の元へ帰っていく姿も非常に美しく描かれている。“嫌われ松子”は監督には非常に愛されていたと感じさせるシーンだ。 監督と中谷美紀の仲が非常に悪かったという噂だが、監督は松子というキャラクターに対して深く深く気持ちを込めていたのではないか。 女優に対してそれだけ多くの注文を付けることは、それだけこの作品に対して深く入り込んで、作品の質をより深めようとする努力みたいなものなのだろう。この作品を観ると、監督の強い意気込みを感じられる。 松子という女性の一生を描くために、“ミュージカル”形式を採用したことも監督の狙い通りに完全にハマっている。だらだらと断片的に人生を描くよりも、ストーリーがぐっと引き締まる。その時々の松子の内面を印象的に描き出すとともに、歌詞を通してもダイレクトにメッセージを伝えることができるような仕組みになっている。残酷なストーリーだが、これによって笑って明るく見られるような効果もあるだろう。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(邦画)] 8点(2006-05-27 19:59:08)(良:2票) 47.この映画の主人公のような女性を知っている。 彼女たちが不幸になったのは、自業自得ではない。 彼女たちが「依存」しているかのように見えるのは、あなた方が既に与えられている側の人間だからに過ぎない。 ラストは商売上の理由でこうなっただけだと思う。個人的には、そこで迎合したのは気に喰わないが、逆に言えば、だからこそウケたのだと思う。 下妻とこれ、二本立て続けにスマッシュヒットを放ったこの監督は、告白以降失速した。(売れたかどうかではなく、単に売上だけを目指して成功した恥ずかしいやつに堕落した。要は無残にも中身がなくなっていた。そして、話しを戻すが、この映画のラストでしたのが迎合だったと監督には自覚できなかったことが、その原因だ。その意味で、この監督は既に消費された) TAMAKISTさんのレビューがよかったんで、書く気になった。 【おら、はじめちゃん】さん [DVD(邦画)] 8点(2023-01-08 03:26:43)(良:1票) 46.《ネタバレ》 "What is the Life?" 劇中に使われた歌詞である。ふと自分の人生は何なのかと考えることがある。多様な愛を求め、破れ続けた松子の人生は客観的に見れば悲惨な敗残者そのものだろう。別の視点からは太く短い命を完全燃焼した濃い人生とも言える。大きな夢を目指すわけでもなく、リスクの少ないつまらない日常を淡々と過ごしても、破滅という落とし穴はすぐそこに存在している。誰もがレールの上に沿った人生を歩めるとは限らない。だからこそ人生という存在を認識する。たとえ光とは程遠い、暗澹に満ちたものだとしても、承認されなくても、自分で自分を納得させないと気が狂ってしまう。世間の定規を拒み、そういう自己満足を受け入れた松子の終演はハッピーエンドのように見えた。 【Cinecdocke】さん [DVD(邦画)] 8点(2017-09-11 20:03:03)(良:1票) 45.《ネタバレ》 映像はカラフルだったが、内容は昭和もの。演出が弾けているにも関わらず、描いてる人生模様は深刻な内容。こういったギャップから、昭和がもう遠くなってしまったことを描くのに成功している。最後、昭和の「神様」を平成の子どもたちが撲殺するところが、監督の平成の子どもたちへの不信感が見受けられる。これは中島監督の「告白」でもそうだった。平成もどんどん進んでいくうちに、子どもたちも変遷していく。3.11以降の中島監督の平成論を観てみたい。 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2017-08-27 15:29:04)(良:1票) 44.既に何度か観てしまっています。私にとっては魅力的な作品なのでしょう。愛を求め続けた松子…全部裏目に出てしまいます…せつない…。監督作品の中では一番好きですね。 【movie海馬】さん [地上波(邦画)] 8点(2012-05-15 01:05:09)(良:1票) 43.《ネタバレ》 独特の雰囲気がたまらんです。邦画はいい。そう思える作品。中谷美紀は素晴らしい。どん底って何なんだろう。全てを受け入れる松子ってすさまじい人だったんだろうな。 【トメ吉】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-09-22 11:22:53)(良:1票) 42.嫌われたって生きてていい 笑って泣いて 一生を生きてクソみたいな死に方でもいーさー 【おでんの卵】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-08-08 23:37:02)(良:1票) 41.中島監督の「下妻物語」本作「嫌われ松子の一生」は 映画にCM的な手法を取り入れるというそういった次元ではなく、 CM的な表現法の積み重ねで映画をつくろうとします。 そういった中島流演出法の極地が本作だと私は思います。 何故なら誰かの不幸を、これほどまでに楽しく描ききってみせたのだから。 それが出来る人は中島監督をおいて他にはいないでしょう。 それは不幸のどん底で半ば廃人になっている松子。 本作はこのどうしようもない主人公を2時間かけて売り込むという 正にCM、コマーシャルだと思うからです。 ここからは例え話 不謹慎ではありますが 本作の登場人物 中谷美紀演じる川尻松子を売り込みたい「商品」 瑛太演じる川尻笙を「客」 と仮定します。 まずこの松子という欠陥商品。 売り込む為にはどうしたら良いでしょうか? ①商品(松子)の魅力に客観性を持たせる 世間では物を売りたいとき、時に体験者談が大きな意味を持つことがあります。 それは社内の人物ではない利害関係のない他人の発言だからこそ信頼できるものであります。 本作序盤から終盤まで決して松子は人生の殆どを客観的に観ると「不幸」な生活を送ります。 嘘、人殺し、廃人・・・ただそんな松子が魅力的に写るのは上の考えと同じ事がいえます。 物語上に登場する龍洋一、沢村めぐみが正に本作での客観視点での体験者で、 とにかくこの2人が松子の魅力を語りまくる事で、客(笙と観客)は最終的には松子の魅力に気付かさるのです。 ②セリフにキャッチコピーを持たせる+α 物を売るCMには必ずといっていい程気の利いたキャッチコピーが設けられます。 本作の会話劇、物語の展開を観てみた時に不思議なことに気付かされます。 本作の物語進行は大筋 ①松子の人生談の解説→②客観視点での体験者の気の利いた一言→③笙のドライな発言orギャグ という流れでループしているようにも感じるのです。 つまりここでは松子のキャッチコピーを体験者が言い、 それに対して直ぐには信用しない観客の心情を 瑛太演じる笙が代弁しているのです。 なので本作を拝見していると変な登場人物ばかりの中、 笙だけが話が分かりそうな奴に思えてしまう事こそ本作の狙いなのでしょう。 笙が松子の魅力を感じる頃、 同時に観客も松子を好きにならずにはいられないのです。 【吉祥寺駅54号】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-07-28 21:44:01)(良:1票) 40.悲劇をエンターテイメントとして扱い、でもしっかり悲しませる。初めて今作を観たときはその語り口に驚き、とても新鮮味を覚えました。邦画の歴史の1ページに刻まれるくらいに意義のある作品だと思います。子供の頃に心を動かされたおとぎ話に触れたような、現実感はないけれど重く響く見応え。それはリアリティに乏しいストーリーと、画面の隅々まで神経の行き届いた絵作りのアンバランスから生み出される。まさに、大人のおとぎ話という形容が嵌ります。お涙頂戴ではなく、反対に笑いで綴られた悲劇からは、経験したことのない類いの悲しみが沸き起こる。笑われることを宿命付けられたピエロの存在自体が持っているような深い悲哀という印象でした。凄い映画だと思います。この監督からは明確で強力な作家性を感じます。お世辞じゃなく、世界を相手に個性を発揮して欲しいと思います。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2010-03-17 23:46:35)(良:1票) 39.《ネタバレ》 松子の家庭環境は決して最悪ではない。経済的には中流で、妹弟もいて、両親の愛情もそこそこ受けている。松子は父を愛しているが、父の愛情が病気の妹に注がれるのを妬んでいる。父の愛情を自分に向けるためにコミカルな表情をする。愛の飢えの始まりである。松子の不幸を描いているが、本当に不幸なのは他にいる。筆頭は妹で、寝たきりの人生で終る。次は作家志望の男で、自分の才能に絶望して自殺した。もう一人は龍で、家族の愛情は一切知らなかったと言っている。松子は美しく成長し、中学の先生となるが、修学旅行の盗難事件をきっかけにで転落人生に転じる。彼女が家出した心痛で父が死亡、弟から家族の絆と断たれる。家族と故郷を失った松子は、男性に頼るしかなかった。というか、自分を必要とする男性と共依存関係になる。必要とされることでしか、自己の存在意義を感じられない。だから暴力を振るわれても、相手に尽してあげたいと願う。トルコ嬢も厭わない。これが龍をして松子を神と呼ばしめた。不幸な形の自己犠牲。暴力は時にこじれ。殺人に発展する。松子は理容院の男と同棲を始めたばかりのときに逮捕される。タイミングが悪い。刑務所でめぐみという親友を得たのは最大の幸福。出所後は理容院の男と暮らそうと美容師の資格を取るが、出所すると男には妻子がいた。そして愛を知らない男、龍と再会。龍がお金を盗んだのが転落のきっかけだったので、皮肉なめぐり合わせだ。またまた不幸に。松子は足を悪くし、龍は刑務所へ。龍を待つことを唯一の希望にしていたが、逃げらる。以後心を閉ざし、世間と関わりをもたなくなった。ただ一つ、アイドルのファンになることを除いて。典型的な現実逃避。ファンレターとして綴った履歴のバカ正直で長いこと。涙がでます。誰かに理解して欲しかったのですね。返事が来ずに絶望。めぐみと再会し、夢で妹のヘアカットをしたことで、社会復帰をめざす。そんな矢先、中学生に暴殺される。甥の笙が松子の人生を知り、理解を示すのがこの映画の救いの部分。子供に殺人をさせたのは欠点だ。ミュージカル仕立てでテンポがよい。不幸をエンターテイメントとした初の映画だろう。不幸な人生だが、そこに何とか意義を見出してあげたいという心理が働くように作ってある。あのとき、ああしたら、こうしたらと、つい考えてしまう。か弱い松子の”徳”がそうさせるのだ。愚かだが、菩薩のようでもあった。合掌。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-11-08 16:09:56)(良:1票) 38.《ネタバレ》 フェリーニ監督の映画「道」に登場していたジェルソミーナと松子が似ていると思ったのは私だけでしょうか。松子の持つトラウマは、体の弱い妹のみが父から溺愛され、彼女自身は愛情を受けず育てられたために極端に自己評価の低い人間になってしまったことです。松子は完全にアダルトチルドレン。彼女がどうしようもない男ばかりを好きになってしまうのも、「どうしようもない人間だからこそ、私がいなかったらこの人は生きていけない」という思い込みがあったからだと思う。つまり松子は他者に必要とされることでしか自分の存在意義を見出すことができなかったのだと思います。ザンパノに対するジェルソミーナの想いもそれととても似ている。どちらも重度の「共依存」だと考えます。 ・・・・・。松子は1人ぼっちが寂しくていつも他人を求め続けましたが、そんなのは基本的に2人になっても解消されるわけないんですけどね。 2人になったら今度は2人ぼっちじゃないですか・・・。誰にとっても人生は寂しいものです。しかし最後にとうとう人を求めなくなった松子をみて、松子らしくないと感じて悲しかった。ラストシーンはやはり「道」を思い出します。松子に暴力を振るい続けたヤクザ男は松子が死んだことを知ってショックを受ける。その姿はザンパノの姿と重なる・・・。 【花守湖】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-02-12 21:13:16)(良:1票) 37.《ネタバレ》 始めはあのノリについていけないかも;と思いましたが…面白いじゃないですか~。基調は異なるもののイマジネーション溢れる世界観は『ビッグ・フィッシュ』不幸版みたいな感じです。一途な松子が転落の一途をたどるというのに、まるで次々とアトラクションに乗っているような描写が楽しい。〝人に何をされたかではなく人に何をしたか〟思えば松子は子供の頃から愛する最初の異性の対象である父親のご機嫌とり。いつも病弱な妹ばかりの父親と病院帰りに楽しい一時を過ごすというのはノーマルな話ですが、私はああいうのにめっちゃくちゃ弱いんです。結局、松子の根底にあった囚われは父親の愛情不足ですし。それでも松子を肯定的に描く事によってボロボロの人生でも何だかとっても愛しく思えてくる。それから挿入歌も素晴らしい。「feeling good」(トンボがどうのって英語の歌。大好きなんです。)も効果的。屈伸運動や睡眠薬〝ぶぁ~〟、光GENJIへのファンレターに懸賞小説でも応募するかのような原稿の束を送るとこなんか笑えます。中谷美紀さんの声も素敵。・・・ただ、敢えて苦言を呈すれば、人生の終焉を迎えた転換期だからか、さすがに中谷さんの汚い太ったおばさんに無理があるからか、まだまだ終わって欲しくないと思っていたからか、私には最後の方は着地点が分らず迷走したように感じてしまいました。少々論点がズレますが、わざわざ中学生に撲殺されることにするなんて後味が悪いですし…(原作では大学生中心だった。別に大学生なら良いと言う訳ではありませんが;)。元教師を皮肉ったのか、犯罪の低年齢化という時事問題を盛り込んだのか分りませんが、あまりに悲惨な一生をとことん面白おかしく描いたのだから最期まで一貫して楽しくして欲しかったです。う~ん、でもやっぱり面白いっ! 【ミスター・グレイ】さん [映画館(邦画)] 8点(2006-06-19 18:23:04)(良:1票) 36.《ネタバレ》 原作を読んでその映画化を聞いたとき、「どうせ某テレビ局の悪趣味なドロドロ系の昼メロみたいになるんだろう。私には縁がないわ。」と思っていました。実際、原作はとってもしつこくてドロドロしていて安っぽい・・・。ところがキャストを見て「!?」劇場予告を見て「!!!」、これは見ないわけには行かないと劇場に足を運んで正解。このドロドロ不幸話を徹底的にちゃかしたハッピー?コメディに仕立てた中島監督に拍手!どぎつい色の洪水、胡散臭い花たち、そして取り巻く男達の豪華さ、中でもクドカンと武田真治は秀逸。中谷美紀、美人は鼻血を出しても美しい・・・。よく最後まで降板せずやってくれました。今まであまり注目したことがなかったけれど、大好きになりました。片平なぎさネタの繰り返しがちょっと多くてしつこかったのと、ゴリもちょっとしつこかったため食傷気味で-2。 【longsleeper21】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-06-01 07:25:19)(良:1票) 35.《ネタバレ》 なかなか良かった。何と言っても強烈に残る、映画でした。この松子さんの波乱万丈の一生を見て、自分の一生(半生)が、なんてちっぽけで(スケールが小さくて)真っ当なんだろうと思えるようになりました。 この松子さん、嫌いじゃないです。 こいいう人も世の中に、いるのだろうと思います。なんか運がない ついていない、どうしても上手くいかない、なんだかダメな人。でも決して悪い人じゃない、もともと ピュアな人なのです。憎めない それでも”嫌われ松子の一生”なのです。 この映画、脳のどこかがゆり動かされて、その奥に小さく刻まれる、そんな映画です。 松子さんの生涯、私は忘れることはないでしょう。 【杜子春】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-21 12:49:58) 34.最初の方では「なんじゃこの映画、見ちゃおれん」と思ったけど、あまりの展開にぐいぐい引き込まれた何とも味の濃い映画だった。一見コメディ風、ファンタジー風、エロティック風、そしてサスペンスにも見え、ヤクザ映画にも見えた。不運というか不幸というか、それでも暗いところがない不思議な映画でもあった。そしてまた中谷美紀の演技力、監督からは怒られっぱなしだったそうだがここまでの映画を作る側も相当な者。好き嫌いは別に凄い映画だったと手放しに賞賛。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2015-02-21 22:46:21)
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