みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
4.《ネタバレ》 怖かった!アメリカでは評価されなかったようですが、これはとんでもない傑作だと思います。現実の報道等を見るに、この世界には殺人という行為を生来の欲求として楽しむ人間がある一定数存在するようです。そんな人間の心理・行動を鋭く描いた、恐らく唯一の映画が本作であると思います。それはキューブリックやスコセッシらが描いてきた狂気とは一味も二味も違ったもので、当然のこととして淡々と殺人を行う異様な空気が映画全体を席巻。婚約者を愛し、彼女と一緒にいるとこの上ない開放感が得られると語りながら、もう一方では「この女は絶対に殺さねばならない。もう笑ってしまうくらいにそう思う」とサラっと言いのけ、実際に無惨な殺し方で婚約者を惨殺する主人公ルー。自分を愛してくれた娼婦、すべてを受け入れてくれた婚約者、息子のようにかわいがってくれた上司、兄貴のように慕ってくれた街の若者、それらすべての人々を死に追いやり、その死を鼻で笑うという空前絶後の鬼畜ぶりには戦慄しました。街では好青年として振舞っているものの、明らかに周囲の人間を見下し、調子を合わせているだけという冷淡さが滲み出たキャラクターに、ケイシー・アフレックが完全にハマっています。「ジェシー・ジェームズの暗殺」でも感じたのですが、この人の腐りきった瞳は本当に素晴らしい。レクター博士やアントン・シガーに並ぶ怪演を堪能できます。ルーの中には一応、マトモな人格も存在しているのですが、殺人者としての人格との間に対立や葛藤がまったくないことが、この映画をより陰惨なものとしています。呵責も後悔もなく、平然と殺人を犯してしまうのですから。唯一の救いはラスト。ビル・プルマンが登場して以降はルーの脳内の物語なのですが(keijiさんのレビューでそれに気付きました)、「場違いな畑に生えた草は雑草なんだ」というビル・プルマンの説得によって殺人者としての人格はこの社会において不要であることを自覚し、ルーはその人格を葬り去ります。大事な人をすべて失った後では、もう遅いのですが。。。なお、ラストに流れる”Shame on you”を歌っているスペード・クーリーは、娘が見ている前で妻を殴り殺した人物のようです。まぁ何から何まで陰惨な映画ですね。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-12-30 15:27:20)(良:2票) 3.《ネタバレ》 ●原作のように主人公のモノローグを入れての進行なのだけれども、じつは核心のところでその主人公がなにを考えているのか、ということはモノローグからはみごとにオミットされている。これがこの作品ではうまくいっていて、モノローグのぶぶんは主人公のノーマルさを浮き立たせ、ところが映像では主人公ではそのノーマルさを裏切る非道さを際立たせることになる。だから主人公のなかにごくふつうの常識人と、そこからは想像できない人非人ぶりとが同居しているということが、原作以上にはっきりと示されることになると思う。「愛してる。すぐ終わる」と語りながら唐突に女性を殴り殺そうとする主人公が観るものに与えるショックは、そのケイシー・アフレックのなにげない顔とあわさって、尋常のものではない。ウィンターボトムの演出も、原作のストーリーを追うように見えながら、おそらくはストーリーなんて重視していないというか、この異常な主人公の造型をきっちりと組み立てることにのみ専念しているようではある。 ●わたしはもうほとんど原作をおぼえてなどいないのだけれども、おそらくたしかにこのようなストーリーだったとは思う。しかし、あきらかにある一点から先はこれは主人公の妄想というか、まちがいなく非現実として演出されている。お膳立てはとにかく現実と見まがうようにストーリーは続くのだけれども、もうここからあとはほとんどデイヴィッド・リンチの世界というか、現実とも非現実ともつかない、主人公にとっては甘美なことであろう破滅の世界がくりひろげられる。 ●医師の息子として教養ある環境に育った主人公は、書斎にすわってマーラーを聴く。書棚には膨大な量の書物が並んでいる。いっぽうで舞台となったアメリカ西部の荒んだ環境はBGMのカントリー・ミュージックなどでもあらわされ、とくにラストのSpade Cooley & His Western Band による「Shame On You」の、その一見陽気な曲調と辛らつな歌詞との対比は強烈である。ぜんたいにそういうカントリー・ソングの連なりでストーリーを引っぱって行く演出はみごとなもので、ここはさすがに音楽の取り入れ方のうまいマイケル・ウィンターボトムであると、うならされてしまうのである。 【keiji】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-06-01 14:28:43)(良:1票) 2.《ネタバレ》 アメリカ南部の田舎町で保安官助手を務めるルー(ケイシー・アフレック)は温厚で愛想のいい性格で、その不幸な経歴にもかかわらず、職場でもその町の住民からも愛されていた。ガールフレンドである教師のエイミー(ケイト・ハドソン)との仲も悪くない。ある日、彼は上司から町外れの娼婦ジョイス(ジェシカ・アルバ)を町から追い出すよう命じられ、彼女の家へ向かう。そして、そこで彼女から平手打ちを食らったことで、彼の中の「キラー」が目覚め、彼は次第に暴力に魅入られていく。 主人公のルーは完全な二重人格ではない。自分のやっていることを冷静に評価し、それを隠そうとする知恵もある。それゆえ、余計に彼の行為は不愉快でそして魅力的なのだ。もちろん人を傷つけることは許されない。しかし、それに対して食欲や性欲と同等のレベルで欲求を感じる人間がいたら、どうだろうか。彼は苦しむだろう。苦しみながら人を殺すだろう。人を殺しながら泣くだろう。僕は「彼」ではないが、「彼」という人間には強く同情したし、魅力すら感じてしまった。あくまでも「彼」の一人称でこの物語を語らせた脚本の勝利だ。全てが完結するラストのクライマックスは美しくさえある。僕は映画の世界に完全に引き込まれてしまった。 少し眠そうな南部訛りで淡々と暴力への憧憬を語るサイコキラーを演じたケイシー・アフレックの演技は背筋が凍りつくほど恐ろしい。ベン・アフレックの監督・俳優としての才能も凄いし、この兄弟からは目が離せない。 【枕流】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-04-28 23:01:35) 1.《ネタバレ》 大分、予告編のイメージと違った。シリアスな二重人格もののサイコサスペンスかと思ってたんだが、どこか違う。1人称の形で話が進むから、主人公の行動は、ほぼ分かるようになっているのだが、何を考えているのかがまるでわからない。(独白つきなのに!) 振り返ってみれば、実は普通のサイコサスペンスを犯人サイドから描いているだけかもしれないんだが、視点を変えるだけで、こんな妙な作品になるとは・・・。 狂気を爆発させるわけでもなく、あくまでも淡々と冷静に暴力を奮うフォードさんが、怖い。おそろしいシーンのはずなのに、陽気なカントリーミュージックがかかっちゃうのも、フォードさんの陽気な心境を表しているようで逆に怖かったりする。 最後の終わり方なんか妙に楽しげで、おちょくられた感は強し。笑えないブラックコメディを見させられていたのだろうか・・・。何だか、結局どう評していいか困る作品だが、微妙なタチの悪さや、奇妙さがなかなかに楽しかった。 【すべから】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-04-17 21:37:38)
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