みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
8.《ネタバレ》 のっけから衝撃だった。オレオレ詐欺の電話で笑いをとっているが、笑えるどころか愕然とした。認知症の人よりも、逆にもっとしっかりした人(通帳や印鑑など貴重品の扱いがスムーズにできる人)が被害に遭う確率が高いのか!と。これは盲点だった。 物語が進むにつれ、少しずつ痴呆が進んでいく母。初めは声をあげて笑っていたのに、目に宿る光が次第に弱くなっていき、ついには何も見ていない、焦点の定まらない穴のような目になってしまう。その推移が赤木さんの神がかった演技でとても生々しく表現されていて、鳥肌が立つような心細さ、老いの残酷さを痛感した。 私にも認知症の親がいるので、とても他人事とは思えない。若い人には、この作品は退屈、ありきたりと思えるかもしれないが、当事者にとっては、些細なことでもいちいち「ぐさっ!」と胸に突き刺さる。子供が親を施設に初めて置いて帰るとき、ことのなりゆきを理解できない親は、子供に捨てられた気分を味わうに違いない。その代償に、子供は親に忘れられる。認知症の悲劇は、双方の絆が1つずつ時間差をもって切れること。ペコロスの涙の切なさに、「自分はこんな涙とは無縁でありますように」と願わずにいられない。 それにしても、親が子供を忘れる話は、身の回りでもよく耳にする。現実に、私の亡き祖母は息子(父)を忘れたにも関わらず、嫁である母を最期までしっかり認識していた(恐るべし嫁姑関係)。しかし、こんなやりきれなく辛い話はない。映画の母もペコロスを忘れ、かわりに自身の幼いころや夫や親友の残像に囲まれて満たされる(はあー・・・なんとやりきれない)。それでも息子は、たとえ自分がそこに含まれていないとおぼろげに感じていても、微笑む老母を「よかったなあ」と祝福する。無償の愛の形を見た気がした。 【tony】さん [インターネット(邦画)] 8点(2018-08-04 00:28:44)(良:2票) 7.《ネタバレ》 原作のボワっとしたかわいらしい感じから、赤木春恵と岩松了で大丈夫かと心配しつつ観たモノです。結果、心穏やかにみることができました。それは、映画全体から岡野家のおそらく味噌くさいような匂いというか、加齢臭というか、人間くさいかおりが漂ってきたからだと思います。無味無臭の真逆な映画。なんか馴染む。赤木春恵さんの洞窟のように暗い瞳がスゴい。岩松了のなにか卑猥な眼つきが好き。なお、鑑賞後こんなに面白い原作だったかと再読しましたが、前読んだときよりも、しみじみ読むことができました。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-09-07 16:45:00)(良:2票) 6.《ネタバレ》 「認知症と介護」という重い主題を努めて明るく、諧謔的に表現した人間喜劇である。 前半はハゲを中心としたネタで笑いを誘い、後半は母みつえの若かりし頃の辛苦に満ちた人生に焦点を当て、感動へと導く。 軽過ぎず、重すぎず、喜劇と悲劇の要点を押えての匙かげんが絶妙で、均斉の取れた手堅い脚本だ。 「ペコロス」とは小玉葱のことで、ツルツル頭の陰語、原作者の自らつけた愛称だ。だからハゲネタも嫌味にならない。それどころか、息子をつなぐ重要な品目となっている。 みつえの人生に暗い影を落とすのが夫と幼馴染みのちえ子だ。夫は根は優しいが、神経症の持ち主であり、酒乱で暴力も振るう。給料を一日で浪費してしまうこともあるのだから、妻の苦労は並大抵ではなかったろう。息子雄一は、そんな父のことが大好きだったという。人情の機微が垣間見れて興味深い。みつえが認知症の兆候を見せ始めたのが夫を亡くしてからというのも有り得べきことである。 みつえは十人兄弟の長子なので、少女時代を通じて弟妹達の面倒を見なければならず、畑仕事も手伝わなければならず、学校にもろくに行けなかった。そんな彼女の心の支えが友達のちえ子だった。だが、ちえ子は口減らしの為、奉公に出ることになり、別れが訪れる。お互いに手紙を書こうねと約束するが、みつえが何度書いても返事は来なかった。 雄一には母と一緒に暗い海をずっと眺めていた記憶がある。どうやら母は入水自殺を考えていたようだ。だが不思議なことに、そこへ手紙が届いた。ちえ子からの始めての手紙で、「生きねば」と認められていた。みつえは感涙し、自殺を留まる。後日ちえ子の元を訪ねたみつえは、ちえ子が苦界に身を沈め他界したことを知る。ちえ子を救った手紙は、皮肉なことにちえ子の死後に出されたものだった。感情が堰を切ったように落涙するみつえ。二人の思い出の曲、早春譜の旋律が流れ、いやが上にも感動が高める。複数の悲劇を一つの手紙に集約する技法は脚本家の取り柄だ。 幻の死人と嬉しそうに会話するようになった母を見て、認知症も悪い事ばかりではないと思い直す雄一。 苛酷な現実に押しつぶされるのではなく、時にはそれを笑い飛ばす事が出来るのが強い人間だ。老監督による人間賛歌として受けとった。 【よしのぶ】さん [映画館(邦画)] 8点(2014-04-26 00:47:25)(良:1票) 5.笑いあり涙ありの良作。最後には赤木春江演じるお婆ちゃんが可愛らしく感じました。 私事ですが、最近自分が「他者に不寛容な人間」であると感じることが多い。そんな時分に見たので、いろいろと考えさせられました。 誰もが自分の歴史を持っている。良いことも嫌なこと辛いこともあっただろう。それを経て人は年老いて存する。そして人生の終盤になっても、表面的にはどう振る舞おうと、色々なことを感じている。それを少しだけでも気に掛けることで、少しだけでも寛容になれる優しくなれる気がした。 印象に残るのが分かりやすい感情移入しやすい回想シーン。使い方が巧みでした。 【さわき】さん [地上波(邦画)] 8点(2017-01-18 00:09:45) 4.《ネタバレ》 冒頭は、原作の"ほんわかさ"を巧く映像化し、後半は「これぞ昭和節」といった感じの森崎コメディの真骨頂。(と言っても、小生、昭和生まれながら物心ついたときは森崎監督はもうベテランであまり拝見してないのですが・・)この作品、赤木春恵と岩松了のコンビが実に見事。最初は角野卓三とダブり、「渡る世間は鬼ばかり」の「幸楽」を思い出したが、岩松了のやり手ぶりに、すぐにこのコンビが違和感なく入り込んできた。この二人のかけあいを見てるうちに、いつの間にか昭和戦後の苦労話に話が入り、最後はじわっと目に熱いものが・・。やはり昭和を生き抜いた人たちの描写力は、半端ないね。これは森崎監督の「これが昭和だ!」というベテランの味をみせつつ、去っていった見事な遺作です。昭和の人間として森崎監督作品は、やはり観とかないと、と思いました。長崎が舞台なので、原田知世の愛情出演が嬉しい! 【トント】さん [DVD(邦画)] 8点(2015-06-01 00:45:51) 3.原作者の実体験がベースになっているからなのか、それぞれのエピソードにも違和感なく共感できました。最近は認知症への対処法もかなり進んできて、MRI等による早期発見と服薬による早期治療が進行の抑止にかなりの効果が上げられるそうですが、それと同時に認知症の方への周囲の人の接し方でその症状に大きな差異が見られるそうです。重く暗くなりがちな身近な問題をユーモアと優しさをまじえて描写したとてもいい映画だと思います。 【ProPace】さん [映画館(邦画)] 8点(2014-08-20 22:17:37) 2.メインキャストの背後に印象的に配置された長崎の坂道。 その坂道を、夏服の女学生たちが、ベビーカーを押す主婦が、 下校途中の小学生たちが行き来している。そうした俳優の街への溶け込み方がいい。 そのベビーカーの親子はラストの坂道での交流に重なり、 女学生はコーラスの生徒たちのイメージと重なる。 空を舞う鳶や、水平線を見る背中や、バックミラーとの切り返しといった 類似・相似ショットのさりげない反復。 登場人物たちの対話における同一フレーズ・仕草の反復・変奏。 それらの繰り返しが、個々のシーンや端役まで含めたキャラクターのイメージを より印象深いものにしていく。 黄色いランタン祭りの中を彷徨う赤木春恵と、花街を彷徨う原田貴和子の重なり合い。 現在と過去、幾度も登場した個々の写真のイメージがクライマックスで 鮮やかに集約する。 【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-11-24 01:15:34) 1.先行上映にて鑑賞。長崎出身の原作者、長崎出身の監督、長崎出身のキャストによる長崎を舞台にした映画。認知症の年老いた母とペコロス(小タマネギ)のニックネームを持つ息子が主人公の物語。岩松了のハゲっぷりと赤木春恵のポケっぷりがたまらなく良い。笑いと涙のなかに喜劇を得意とする森崎東監督らしいユーモア溢れる映画となっている。ふんだんに長崎弁が使われているために若干抵抗のある人も出てくるかもしれないが、それが長崎から全国へ向けたメッセージとなっている。「ぼけるって悪いことばかりじゃない」と。 ところで婆ちゃん役の赤木春恵さんを見るのは久々だったが、かつては武田鉄矢主演の金八先生の学校の女校長先生として活躍していたっけ。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-11-12 15:27:00)
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