みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
8.ルキノ・ヴィスコンティを語る上で外すことができない大変重要な作品である。ネオリアリズムを描いてきたヴィスコンティがデカダンスを全面に押し出して貴族の崩壊を描いた力作である。バート・ランカスター演じるファブリッチオがタンクレディに未来を託し、自らは貴族社会の崩壊、終焉が来たことを実感するわけだが、これは貴族出身だったヴィスコンティの貴族に対する愛や別れを意味するものだと感じた。デカダンスを描いた最初の作品であるが、この後の作品になるにつれ、後姿や、視線のズーム、深層と表層の対比といった主題は強まっていくのである。 【たましろ】さん 8点(2004-02-08 21:15:40)(良:3票) 7.静かな祈りの時間に、次第に高まってくる外の騒がしい声。この人の映画は、下り坂にかかる者の前に、不吉の影がよぎるところから始まる。闖入者たちはしかし次の時代の主流であり、それを公爵自身が一番よく知っている。だからといって潔く滅びようとするわけでもなく、けっこううまく立ち回ろうともする。そこらへんの複雑さが、また魅力にもなる。カルディナーレに対する恋情(と言うより欲情か)を自覚し、翻弄されていることも自覚している苦さ。ここらへんの演技が見事。階級的衰退と、個人としての体力の衰退とが重なっている。しかもこの娘、自分のとこの小作の孫なのだ。衰退にある程度抵抗はしながら、全体そういう流れなのは仕方がないと、最後は受け入れてしまうだろう自分を納得する広さも持っている。タンクレディが赤シャツ隊に入るのを微笑んで見送るように。すべてを受け入れ、時の流れを肯定し、しかしやはり前時代の人間としての孤独に入っていくというところでラストの感動があるわけ。革命のさなかに悠々と決められたとおりに避暑に出かける人物が、冒頭で神父に盛んに毒づいていた人物が、敬虔な祈りを捧げるの。いつもながら人物の配置が美的。必ず控えている人物がいたり、奥で優雅に刺繍している娘がいたりする。そしてカーテンのそよぎ。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-07-07 10:01:32)(良:1票) 6.《ネタバレ》 この映画は人間の美しいものに対する嫉妬と、自分が年老いてしまった事への哀しさ、空しさ、それこそがこのヴィスコンティ監督が描こうとしてた世界、それはこの監督の他の映画でも見られるように人間はいつかは必ず年老いて死んで行く。その前に一度だけで良い。歳の離れた美しい女性と踊りたい。美しい者への嫉妬と憧れ、その両方をきちんと描くことによって生まれる感情、全てを包み隠さずに見せる監督の演出、人生の儚さ、厳しさ、若くて二枚目の甥が若くて美しき娘との結婚、二人が優雅に踊っている場面を見て、いったい何を思うか?自分が甥と同じようにもしも、若かったらという思いがバート・ランカスターの演技からひしひしと伝わってくる。アラン・ドロンとクラウディア・カルディナーレの二人の姿には誰もが自分が彼ら、彼女らのように若くてかっこ良くて、美しかったらと思うに違いないほどそれを見るバート・ランカスターの公爵の気持ちは男なら理解出来るであろう!年老いた者にしか解らない哀しさ、同じ監督の「ベニスの死す」のあの老人と重なって見えてくる公爵の姿、アラン・ドロンが見つめる眼の前でクラウディア・カルディナーレにワルツを一緒に踊りませんかと言われた後の嬉しそうな表情が忘れられなくなりそうなほど本当に嬉しそうである。人生という名の元に老いていく者の辛さを痛烈に描くこのヴィスコンティ監督の視線の中には厳しさが物凄く伝わってきて、そういうものを何一つとして包み隠さずに描き切るという所がこの映画の凄さであるような気がしてならない。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2010-02-26 19:17:48)(良:1票) 5.3時間6分の完全復元版を見ました。前半はシチリアの美しい情景を、後半は社交界の豪華絢爛な美をバックに、貴族出身のヴィスコンティ自身が投影されているだろうサリーナ公爵を通して、貴族の衰退と自らの老いをリンクさせながら描いてゆく。繁栄すればその後には衰退がある、生きていれば老いてゆく、というヴィスコンティの哲学とも言えるテーマの中で、平民の血をいれるという変革を決断し自由奔放な若きタンクレディに跡を任せるという潔さがまさに滅びの美学。しかしそこには葛藤がある。葛藤を隠して踊る堂々としたワルツの美しいこと。葛藤とは無縁のような性格のタンクレディが新しい時代に相応しいというのもどこか皮肉であるが、情勢によって立場をころっと変えてしまうタンクレディは誰からも好かれる好青年であり、その印象の良さはことさら強調される。若さと老いの対比である。 後半の舞踏会では、本物の貴族の家を使い、食器から装飾品までもがシチリア貴族のものを提供されたものらしい。そこまで拘ってはたして映像で伝わるのかどうかはわかりませんが、風前の灯火のごとく光輝く美がたしかにありました。この「美」の部分だけでも見る価値あり。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-04-08 19:39:42)(良:1票) 4.観てて、「斜陽」という言葉が脳裏に浮かびます。時代の流れの中で徐々に滅びゆくものたちの、最後の輝き。。バート・ランカスターはガッシリしてるし、アラン・ドロンは若々しいし、クラウディア・カルディナーレはキャピキャピしてるんだけど、ここに描かれている「旧時代の貴族社会」そのものが年老いてて、もう、先は無いんだなあ、という想いが湧いてきます。 そもそも舞台がシチリア島で、屋内には確かに豪奢な貴族社会があるけれど、一歩外に出て見りゃ、ハッキリ言って、 ド田舎 なワケです。しかしそのド田舎にも、時代の移り変わりの不穏な動きが、徐々に伝わってくる。こんなところに兵士の死体が。 映画後半に展開される舞踏会。貴族らしい豪華さはあるけれど、何やら老朽感めいたものも散見されます。冒頭の昼のシーンでは窓が開けられカーテンが優雅に揺れていたけれど、夜の舞踏会では窓が閉められ、その中でバート・ランカスターやアラン・ドロンが汗だくになっている。その姿が、何やら病人めいたものすらも感じさせて、あーこりゃもう先は長くないなあ、と。 ラストで去り行くバート・ランカスターの姿が何とも寂しくって、本作と言い、『カサンドラ・クロス』と言い、こういうのが似合う人ですなあ。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-07 09:15:48) 3.《ネタバレ》 あのヴィスコンティの佳作。ワルツのシーンだけでも、大満足。退廃的な美学を扱ったら、この人以外にいません。政治家の小沢一郎氏の好きな作品だそうです。それは、年老いたる主人公と自分(小沢氏)を重ね合わせてのでしょう。でも、周りに悪魔的な魅力を放つドロンがいるでしょうか?アラン・ドロンの悪魔的な魅力・カルディナーレの野性的な魅力も満喫できます。 【にけ】さん [映画館(字幕)] 8点(2018-12-21 15:18:44) 2.《ネタバレ》 【史実】イタリア統一運動(1815年~1871年)。1848年の革命で「ローマ共和国」成るがすぐ崩壊。サルデーニャ王国が北イタリアを統一。ガリバルディが義勇軍として、千人隊を率いてシチリア、ナポリを解放。統一の英雄となる。中部イタリアでは住民投票によってサルデーニャ王国への併合を決めた。この時の旗に、現在のイタリア国旗である赤白緑の三色旗を基本としたものが用いられた。1861年にはイタリアはほぼ統一され、「イタリア王国」成立。 【感想】王制の終焉を迎え、没落してゆくイタリア貴族(封建領主)を描いた作品。崩壊貴族にさほど興味はないが、歴史や文化の勉強には役立つ。当時の貴族を豪勢に演出してくれた監督に感謝。愛惜の籠った作品で、これこそ映画だ。◆日本とは違う風習が目についた。先ずその信心深さに驚く。家族揃って聖書を朗読する祈祷の時間。土曜日ごとの告解。旅に出るにも神父を連れ。神父が秘書を兼ねているのか。神父の教会はおんぼろ。別荘のある領地に着くと、村人総出で歓迎してくれ、そのまま教会で歓迎セレモニーが始まる。週に三日の舞踏会。飛び跳ねる踊り。公爵は愛人に逢いに行くが、それは神父公認で、訪ねるアパートが貧民層にある。妻はとび抜けて信心深く、夫にへそも見せない。◆公爵は古い人間だが、愚かでは無い。時代の変遷も革命の息吹も感じ取っている。貴族が崩壊する階級であることを理解している。周囲には物分りの良い人物として認知されており、新時代に対応するための布石も打ってある。しかし生粋の貴族である彼には、時代に合わせて利口に立ち回ることはできない。自尊心が許さないし、老いも感じている、何より自分の気持ちに正直でありたい。貴族を盲目的に賛美しているわけではないが、彼にとって貴族でなくなることは、幼少よりの価値観を失うことであり、例えば故郷を失うようなもので、受け入れ難いのだ。◆公爵のそのような感情を表現するのが全編のおよそ3分の1を占める舞踏会の場面だ。舞踏会はまさに貴族の象徴。豪華な屋敷、可憐な衣装、妍を競う女性達、いつ果てるとも音楽と歓楽の世界。同時に堕落した姿であり、退屈でもある。公爵は舞踏会の終焉が近いことを知っている。同時に自分の命が尽きる日が近いことも。たまらず流してしまう涙。若き娘からダンスを申し込まれて、最後の花を咲かせる。火照った感情を冷やすには夜露に濡れて帰るしかない。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-12-26 17:24:59) 1.《ネタバレ》 完全版を見た。 皆さんが仰るように美術は大変素晴らしく、古典画を実物で再現しているようだ。 柔軟だがポリシーのない若者と信念を持つが頑固な老人、 下品だが素直な新興勢力と上品だが嫌らしい貴族。 それらの対比が全編に貫かれていて、完成度の高い作品に仕上がっている。 個人的には、タンクレディを深く愛しながらも、彼のミーハーぶりに失望する コンチェッタが興味深かった。ある意味、親父以上に頑固で高潔である。 【Ruby】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-05-07 02:25:22)
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