みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
4.《ネタバレ》 この映画は「アウトサイダーの、アウトサイダー」に着目してみたい。主人公を愛しながら、彼を知りえなかった者ども。アウトサイダーであるロチェスターを、遠くから眺めているしかなかった。 例えば、ロチェスターにフェラしてる娼婦。とある女優に惚れた、とのろける彼に、こんなことを言っていた。 「余計な心配させないで。 やることやってさっさと帰って」 娼婦は、ロチェスターの本妻はもとより、恋愛対象にすらなれない。けれどたぶんロチェスターに好意を抱いていた。できることなら彼を助けたかった。取り合えず、頑張って気持ちよくさせるとか、彼が帰りたくない晩は宿を貸すとか、立場上そんな範囲だけど。 ある意味では彼女は、彼になかなか最も近い。同じ汚いものを知ってる。一般的な道徳観念を感情を、あまり持ってない。その辺の自負はある彼女である。 けれどやはり立場上、彼の生活には踏み込めない。更に根本的な問題として、人は他人の内部を、本当には知りえない。誰しも他人の傍観者に徹して生きている。娼婦の台詞はこれらさまざまのゴタゴタを踏まえて発言されたのである。 「傍観者の哀しみ」を描いた作品で、他にすぐ思いつくのが「パッション」と「ベルベット・ゴールドマイン」だ。両方とも主人公はアンチヒーロー(パッションではキリスト、ベルベットではロック歌手)だし、両方とも悪く言えば単に再現映画(パッションは新約聖書の、ベルベットはデヴィット・ボウイの)。しかし「主人公を見ていながら触れ得なかった者達」を描いた映画だと考えると、かなり見ごたえが出てくる。 そんな映画はもっとありそうだ。それはその主人公を見ている・知ろうとあがいている監督の、そして観客の視線(この二つは厳密には別かもしれないけれど)だから、誰かヒーロー(又はアンチヒーロー)を描こうとすると必然的にそうなっちゃうのではないか?身の回りにアウトサイダーは結構いて、そのまたアウトサイダーもうじゃうじゃいて、多分我々はそのうちの一人なのです。 【月世界婦人】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-07-28 14:59:18) 3.ジョニー・デップの本来の姿を生かした咲きこぼれるデカダンな美しさが目を引くが、それも後半の剥き出しになった魂に比べれば仮面でしかないかも知れない。枷なきリバティーン、自由人=放蕩者とはなんと誘惑的な響きで耳を打つことか。才の天賦は平等でなく、誰もが心の儘に生きられるわけでもないのだ。無頼ポエット、Ⅱ・アール・ロチェスターに祝福までも与えたくなり、主役をお譲りになられたマルコビッチ国王もご満足と思し召したに違いない。伯爵と愛を結ぶ女人たちの中にあってとりわけ印象的な、深い慈愛をそそぐロザムンド・パイクのカウンテスは観客の救いともなる。‘Rochester’s farewell’が彼のイメージを昇華しているのは確かだが、こんな甘美な音色を耳にしたことはあまりない。退廃のパティオに耽美の風が舞う。 【レイン】さん [映画館(字幕)] 8点(2009-07-05 23:44:45) 2.《ネタバレ》 ◆男性の心理の中にはロチェスター卿のよーなイキザマに惹かれる傾向が、すくなからずあるのではなかろうか。◆反骨心に裏打ちされた奔放な表現、真実の愛、エゴを剥き出しにしたチカラ強いイキザマ、破滅をいとわず自由に生きたい…。◆だがしかし、現実の世界は常に「ぬかるみ」だ。馬車を降りれば「ぬかるみ」に足をとられ、背筋を伸ばして歩くことすらままならない。どんなに颯爽と、飄々と生きたところで、「ぬかるみ」の不快感から逃れることはできない。地位も名誉も女の愛情も「ぬかるみ」を消し去ることはできない。◆ロチェスター卿は、美貌と才能を味方につけて「ぬかるみ」と戦い続けた、あるいは逃げ続けた。だがしかし、現実という名の「ぬかるみ」は、やがてロチェスター卿自身を蝕み、彼が予期していたであろう破滅へと導いてゆく。◆梅毒治療のタメに水銀風呂に入るシーンはココロとアレに染みた。◆そして、壮絶な破滅っぷりにココロが沈んだ。自分の中のロチェスター卿的な要素が、明日は我が身か…と不安を覚えたらしい。◆んだけど、よく考えてみれば、女の胸の中で、自分を貫いたまま死んだのだから、これはそんなにワルイ結末ではない。王様も褒めてくれたし。◆そんなオレの隣で、いっしょに見てた彼女が「こーいう型の男は、必ず女のところに戻ってくるのよ…」とせせら笑っていた。◆そんなものなのだろーか。そんな気もする。泥だらけのオレをどーか愛しておくれよBaby♪◆ジョニーディップはハマリ役。映像もいいし、テンポもいい、プラス…ココロに響いたので8点なのです。◆同じジョニーディップの「ネバーランド」はこの映画と対になってるよーな作品だと思う。ネバーランドの生き方のほーが賢い気がしてきたなー。 【ワルモノ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-03-08 10:18:01) 1.《ネタバレ》 ジョニー演じるロチェスター伯爵は、可憐なほどに正直で、純粋で、幼い人物だ。 ひとには好かれるよりは嫌われていたいというタイプ。 神とも人とも和合したくないが、それが人間として必要ならば、何故神は信仰をもっとイージーなものとして人々に与え得なかったのかと問う。 神父は、君はわざわざ理性で信仰に反抗していると答える。 この作品の、特に後半、友人関係も家庭もむちゃくちゃにして悲惨極まりない主人公を見ていて、個人的にどうしても思い出したのが ウオルフガング・アマデウス・モーツァルトと中島らもだった。 どちらも、作品と名声のレベルはぜんぜん違うとはいえ 享楽的で破滅型で型にはまらないボヘミアン体質は似ている。 しかし、女好きアマデウスは「楽天的放蕩タイプ」で アル中らもさんは「自己破滅願望型享楽タイプ」だった。 自らの人生、命そのものを呪いうらみ、ずたずたにされる事を祈りつつ遊び狂うという点では らもさんとロチェスターの方が共通項は多いかも。と感じつつ見ていたわけで。 しかしロチェスターは、王と親交を持ち、外交問題に発展しかねない大舞台でクソポルノを繰り広げるスケールのでかさと迷惑度があるのだが。 しかも自らの大パトロンであり、「I LOVE YOU」と発言する王のご前でだ。 そして、(変な比較にこだわってすいません)らもさんの奥さんは アレだけアル中のクソまみれで躁鬱でめちゃくちゃになったらもさんに対し 「いやな思いでも辛かった事もひとつもない。本当に楽しい毎日だった」と証言していた。多分本当にそうだったんだろう。 ロチェスターは、生真面目に自分を愛し、生活を変えて欲しいと願う美しい妻にいらだちながら、その愛に唾を吐き、梅毒で崩れていった。 人にとって何が幸いか? それが混沌としてわからない状態で、信仰だの神だの家族愛だのに、思うさま毒づきながら、ようは女たちの情のはざまで踊り続けたから、ロチェスターはロチェスターだったのだ。彼は彼なりに、神も人もうらみながら、あまりに正直に女たちを愛し続けたのだと思う。 映画には、映画でしか感じられない感慨と情念が欲しい。 この作品の最初と最後に、それが凝縮されている。 成功作でないまでも、自由と放埓が人に天国と地獄を見せるおかしみと悲しみの狂言回しとしてのジョニー・デップの、愛すべき演技力と資質に、とりあえず、脱帽しておきたい。 【あにさきすR】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-04-14 02:53:20)
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