みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
8.結論から言うと、とても面白い映画だった。 太平洋戦争開戦前の旧日本海軍における兵器開発をめぐる政治的攻防が、事実と虚構を織り交ぜながら娯楽性豊かに描き出される。 若き天才数学者が、軍人同士の喧々諤々の中に半ば無理矢理に引き込まれ、運命を狂わされていく。 いや、狂わされていくというのはいささか語弊があるかもしれない。主人公の数学者は、戦艦の建造費算出という任務にのめり込む連れ、次第に自らの数字に対する偏執的な思考性と美学をより一層に開眼させていく。そこには、天才数学者の或る種の「狂気」が確実に存在していた。 一方、旧日本海軍側の軍人たちにおいても、多様な「狂気」が無論蔓延っている。 旧時代的な威信と誇りを大義名分とし、戦争という破滅へと突き進んでいくかの時代の軍部は、その在り方そのものが狂気の極みであったことは、もはや言うまでもない。 強大で美しい戦艦の新造というまやかしの国威によって、兵や国民を無謀な戦争へと突き動かそうとする戦艦推進派の面々も狂気的だし、それに対立して、航空母艦の拡充によって航空戦に備えようとする劇中の山本五十六も軍人の狂気を孕んでいた。 数学者の狂気と、軍人の狂気が、ぶつかりそして入り交じる。 史実として太平洋戦争史が存在する以上、本作の主題である戦艦大和の建造とその末路は、揺るがない“結果”の筈だが、それでも先を読ませず、ミスリードや新解釈も含めながら展開するストーリーテリングが極めて興味深く娯楽性に富んでいた。 避けられない運命に対して、天才数学者のキャラクター創造による完全なフィクションに逃げることなく、彼自身の狂気性と軍人たちの狂気性の葛藤で物語を紡いでみせたことが、本作最大の成功要因だろう。 主人公を演じた菅田将暉は、時代にそぐわない“違和感”が天才数学者のキャラクター性に合致しておりベストキャスティングだったと思う。 新たなキャラクター造形で山本五十六を体現した舘ひろしや、海軍の上層部の面々を演じる橋爪功、國村隼、田中泯らの存在感は流石だった。特に主人公側と対立する平山造船中将を演じた田中泯は、圧倒的な説得力で各シーンを制圧し、本作の根幹たるテーマ性を見事に語りきっていた。 若手では、主人公のバディ役を演じた柄本佑がコメディリリーフとして良い存在感を放っていたし、ヒロインの浜辺美波は問答無用に美しかった(そりゃ体のありとあらゆる部位を計りたくなる)。 そして、山崎貴監督のVFXによる冒頭の巨大戦艦大和の撃沈シーンが、このストーリーテリングの推進力をより強固なものにしている。 プロローグシーンとしてはあまりにも大迫力で映し出されるあの「戦艦大和撃沈」があるからこそ、本作が織りなす人物たちの狂気とこの国の顛末、そして、「なぜそれでも大和は建造されたのか」というこの映画の真意がくっきりと際立ってくる。 数多の狂気によって、かつてこの国は戦争に突き進み、そして崩壊した。そこには、おびただしい数の犠牲と死屍累々が積み重なっている。 ただ、だからと言って、誰か一人の狂気を一方的に断罪することはできないだろう。なぜなら、その狂気は必ずしも軍部の人間たちや政治家、そして一部の天才たちだけが持っていたものではないからだ。 日本という国全体が、あらゆる現実から目をそらし、増長し、そして狂っていったのだ。 今一度そのことを思い返さなければ、必ず歴史は繰り返されてしまう。 平和ボケしてしまった日本人が、失われかけたその「記憶」を鮮明に思い返すために、山崎貴監督によるVFXが今求められているのかもしれない。 誰得のCG映画やファンタジー映画で茶を濁さずに、意義ある「映像化」に精を出してほしい。 。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(邦画)] 8点(2024-03-10 18:35:55) 7.《ネタバレ》 なかなか面白かったです。史実をうまい具合に変えた作品ですが、かなりうまくできています。 金剛代艦計画は存在していましたが、現在知られている二案とも戦艦の計画です。ですから、これを空母と戦艦にしたのはフィクションです。戦艦なら対米戦争、空母なら戦争回避という前提で話は進みますが、無論そこには何の根拠もありません。しかし、これを話の基本に据えたことでうまく物語は進行してゆきます。戦艦建造を防止するため留学を辞め、山本五十六に請われて到底無理と思われる短期間での建造費用の見積もりに挑む天才青年。そこに立ちはだかる軍事機密の壁。わずかに見える突破口も無理だとあきらめた瞬間に起きる奇跡。それを察知したかのように届く期間短縮の知らせ。天才のひらめき。見積もりの成功。しかし、それさえも論破され強行される戦艦建造。だが、その戦艦建造には全く思いもよらない意義があったのだ。 この最後の戦艦の意義が泣ける。冒頭のシーンが思い返され感謝の思いに心が震える。傑作とまでは言えないが、胸が熱くなる。8点。 史実に追加。金剛代艦計画は海軍軍縮状況下で検討されたもので直接大和とは関係ありません。あと、自分の知る限りでは戦時中、戦艦大和の存在は秘密とされており、国民の戦意に影響を与えるものではなかったと思います。 【たこのす】さん [インターネット(邦画)] 8点(2022-02-23 21:12:44) 6.原作漫画は連載中なので、どのように決着するのか興味がありましたが、見事に2時間程にまとまっていて関心しました。派手さの欠けるアカデミックな内容を、人間ドラマを中心とした分かりやすいエンターテイメントになっていたと思いますし、原作にもまだ描かれていないラストにも納得しました。期待以上に面白かったです。 【ぽじっこ】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2020-05-18 06:52:16) 5.日本の軍事モノに関してはあまり興味もないし、 某艦隊で齧った(舐めた?)程度の知識しかありませんが、 人間ドラマとして面白く、最後まで熱中して観てました。 話の組み立ても良かったと思います。 とにかく菅田将暉の役ぶりがスゴかった。 色んな表情を見せながらも一貫した個性を演じてたのスゴイ。 少尉役のひとも好きでした。 ただ、日本海軍の知識が皆無の人が観たらどうだろう?疑問ではある。 数学とか大の苦手の自分ですが、少し良いなって思えました。 【愛野弾丸】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2020-05-10 19:30:26) 4.《ネタバレ》 冒頭のヤマト撃沈シーンは、『プライベートライアン』をほうふつとさせるくらい、まるで自分もヤマトに乗っているような、まるで自分もヤマトに爆弾落としているような臨場感。これをオープニングに叩きつけたうえで始まる、海軍のおっさんたちの闘い。 会議室での口汚いののしり合いと櫂の数学トークが混ざり合い、スリリングでさながら『12人の怒れる男』のようでもあった。 映画ラスト、山本によるヤマト論には大いに頷かせられた。確かに山本の使命感のおかげで、今僕はこうしてのほほんとフェースブックやれている。それもこれもヤマトの撃沈のおかげなのだろうか。うーん、ちょっと後出しじゃんけんにも思えるが、美しい後出しじゃんけんだ。 そう思うと、山本の「それがどうした」のあとの弁解も、やっぱり後出しじゃんけんに聞こえてくる。フィクションだから構わないけど。 重要なことは、彼らの思惑は80年前の古いものではなく、まったくもって現代の私たちにも当てはまるということだ。言うまでもなく、ヤマトは東京2020大会のメタファである。 人は過ちを繰り返す。しかし繰り返さないようにいろいろ頑張ることはできる。私たちはこの映画をはじめ、いろいろなコンテンツで歴史を学ぶことができる。さて私たちはヤマトから何を学ぶのか。 【no_the_war】さん [映画館(邦画)] 8点(2020-03-30 15:03:16) 3.クライマックスまでは 私的にど真ん中でした~ とても面白かったです..ただ オチには疑問が残ります..ちょっと無理がある..いかにも後付け って感じで..そこに説得力、リアリティーがない..演出もなかなかレベルが高く良かっただけに 残念.. 【コナンが一番】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-03-01 11:12:38) 2.テンポが良く、限られた時間の中で物事を解決させなきゃいけないドキドキ感と、それを阻むハラハラ感を楽しめました。 菅田くんの演技も良かったが、圧倒的だったのは田中泯さん。無言の芝居と終盤の存在感が素晴らしかった。今後要チェックの俳優さんになりました。 【tonao】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-08-15 16:09:24) 1.《ネタバレ》 いや~ これはなにエンドって言えばいいんだろう? ハッピーエンドじゃないし、バッドエンドでもない。ただただ鳥肌が立つような…。原作未読だが、事実として戦艦大和は造られ、沈んでるわけだから、数学の力で平山案を潰してバンザ~イじゃないのは初めから分かっていたことだけど、予想をはるかに超えるゾクゾク感を味わえて今、とても満足している。数学者と技術者、軍を嫌う者と軍人、若者と老人、天才と秀才… 櫂少佐の平山中将と対峙、実に面白かった。戦争ものとはいっても、相手陣営の嘘を暴くのがメインだから決して重くはなく、むしろフィクションならではの娯楽性のある映画だから構えずに観てほしいなと思う。おまけ程度ではあるけど、大和の戦闘シーンはなかなかの迫力だった。 【リーム555】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-08-07 22:44:29)(良:1票)
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