みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想(8点検索)】
3.《ネタバレ》 さすがのリドリー・スコット。得意の歴史劇ではありますが、決闘という行為の恐ろしさと愚かさ、中世モノの独特の価値観と世界観、それを性暴力をめぐる「羅生門」方式の証言劇が、見事にミックスし、ありそうでなかった新しい映画を作り上げたと思います。 まず、ラストの決闘シーンの迫力は、さすが幾多の決闘を描いてきた監督ならでは。しかもその勝敗が何のカタルシスを生むわけでもなく、マルグリットにとってはただ「もうひとつの地獄」が続くことを意味しているというラストのなんともいえない虚しさ。でも、ちゃんとラストに力強いアップをもってきて、少しだけでも希望を与えるところも含めて、一筋縄ではいかない熟練監督の技に唸らざるをえません。そして、「羅生門」方式の証言劇は、真実の複数性や曖昧さを主張するのではなく、そこに厳然と存在する女性支配の歴史と二人の男の救いようのなさを描くための手法となっているところが素晴らしい。実際、劇中のカルージュとル・グリは、ある出来事について「嘘」をついているのではなく、それぞれのヒロイズムと男らしさに則って、都合良く解釈しているに過ぎない。それぞれの一面的な解釈の醜さが、三幕目のマルグリット視線の物語で一気に可視化される。カルージュ視線では描かれなかったことや、ル・グリの視線を「見られる側」から見たときの醜悪さには、今思い出しても腹が立ってくる。そして、誰の視線から見ても「クズ男」であるベン・アフレック演じるピエールのキャラ立ちには、怒りを通り越して笑いも・・・。 近年ますます多作ぶりが目立つ巨匠の一作品で、見終わった気分は決していいものではありませんが、見事な語り口に翻弄されつつ、有毒な男性性の胸くそ悪さを体験する映画として、ある種のエンターテインメント性も兼ね備えた異色作だと思います。 【ころりさん】さん [インターネット(字幕)] 8点(2024-07-29 22:45:19) 2.《ネタバレ》 ああ、苦手な中世だ。科学も芽生えてなくて因習ギチギチで人間は争ってばかりの。さすがリドリー・スコット、画の力にかけては当代随一の手腕とセンスの監督です。眼前に広がる石造りの城も荒野も硬くて寒々しい中世ヨーロッパそのもの。画力だけで映画作品としての格の高さを感じます。 主演の三名の演技も良かった。各々の視点に沿って出来事を描く羅生門スタイルであるゆえ、それぞれが三パターンの演技を要求されるのですが、なかでもジョディ・カマーが見事。微妙な表情はちゃんと三通りに違い、三番目の‶本物のマルグリット”がやはりというか一番説得力のある造形でしたよね。 それにしても現代の人権感覚では何もかも理解しがたい話です。実事件とはいえ数百年も前のこと、この映画の解釈とは別の事情があったのかもしれない、とか色々考えさせられました。だって敗けたらマルグリットも火あぶりだなんて。なんでこんな滅茶苦茶な決闘裁判に臨むの二人とも。ああやだやだ中世こわい。 三パターンのドラマを観終えて思うはクソな男どもに搾取されるばかりのマルグリットの心の痛み。封建時代の根底に流れるあまりの男尊女卑の思想にはめまいがしそうになりました。こんな時代でも仲睦まじい夫婦もいたんだよねきっと?そんなお話を聞きたいな。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-06-25 18:16:42) 1.《ネタバレ》 同一の一連のエピソードを3人の異なる視点から語ってゆく…とゆーのは、確かに『羅生門』或いは(そのエピソードが本質的には男女の三角関係だという点では)『去年マリエンバートで』なんかにも構成としては酷似してると言えるでしょう。ただ、今作は上映時間の大半に渡って繰り広げられるその3つの「主張」に関して、映像的にはソコに決定的な矛盾があるワケでもなく(例えばル・グリがマルグリットに乱暴を働いたのが事実か否か、という部分とかが争点になるワケではなく)、あくまで各章で実際に観せるエピソードの取捨選択によるニュアンスの差異(と、映される映像自体の若干の物理的差異)に依って鑑賞者に与える3人の印象とゆーのが移り変わっていく、という意味での心理的サスペンスという感じではあったですかね(=ミステリー的なトリックが重厚・複雑、というよりはずっとシンプルなヤツ)。 だから同じ話を3回観せられるワケなのですが、映画自体の諸々のクオリティが非常に高度なのもあって、その部分は間延びしてるというコトもなくずっとハラハラと観入ってゆけましたね。そして、肝心なラストの決闘で誰が勝つのか(=誰が勝つ「べき」なお話なのか)という点にまたハラハラ感を残す為にか、結局3人ともに何らか「瑕」がある、とも言えなくもない様なお話で、最後まで中々にムズムズもしたのですよ。男2人はワリと単純なクズなのですケド、まあ微妙ですがマルグリットにも完全に「後ろめたさ」が無かったかとゆーと…(彼女も根本的には全く悪くないのですが、ゆーてル・グリの「主張」のある部分1割程度は真実に見えなくもない…というレベルかとは思いますが) とは言えその意味では、やはり時代的なコトもあって非常に「抑圧された女性」という存在であるマルグリットに関して一番「丸く収まる」この結末は、納得感やホッとする感の観点からは非常に無難なハッピー・エンドだったとも思います。そして重ねて、映画自体の質は歴史ものとしてもサスペンスとしても、かつ部分的に挿入される壮絶なアクション面にしても極めて高レベルだったと言って好いでしょう。普通に傑作の部類だと思いますね(流石リドリー・スコット、また次回作が観たくなってしまいますね)。 【Yuki2Invy】さん [映画館(字幕)] 8点(2021-10-21 01:35:32)
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