みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
81.《ネタバレ》 ストーリーは「雨に唄えば」+「ライムライト」といった風で、トーキーの時代へと移り変わる中でサイレントに拘り続ける主人公の苦悩を中心に進みます。なのでどこかで聞いたようなストーリーであり悪く言えばベタな展開とも取れるでしょう。しかしこの映画の中でやっていることは非常にチャレンジングな精神に富んでいるとも思えました。スターダムを登るヒロインのペピーはレストランでインタビュアーにこう言います、「観客もサイレントの大仰な演技に飽きたんだでしょ」と。実際にサイレント映画では俳優の声は入りませんので、俳優の演技の優劣は如何に感情を身振り手振りや表情で表せるかという所にあります(勿論例外は多々ありますが)。しかし時代がトーキーへと移り変わると、最初は観客が求めた筈の俳優の声が逆にワザとらしいものに感じられ、表情の機微・佇まい・どれだけキャラクターへ自身を投影しているかが演技の優劣になっていきます。所謂スタニスラフスキー理論の登場ですね。しかしそれも近年になり食傷気味になりつつある。メソッド演技が一般化してしまったからです。そんな現代にこの映画はサイレントを持ってきました。サイレントだから役者は声が出せません。しかし主演の二人の表情は大仰ながら非常にウィットに富んでいて観客を楽しませてくれます。ジョージのウインクやペピーの投げキッスなどはその最たるもの。しかしこのサイレントは何も30年代以前に作られた訳では無く、21世紀に作られているのです。だから現代的な演技も多々ある。例えばプロデュースした映画に客が不入りでジョージが映画館入口で佇んでいるシーン、じっとスクリーンを見つめますがそこからは彼の芸術家としての苦悩と挫折が感じられる。昔のサイレント映画でしたら大きな溜息の一つでもつかせて演出するでしょう。落ちぶれ街を彷徨うジョージを車の中から見つめるペピーも同様です。昔なら目線を逸らし口を塞ぐ位しそうなものです。でもペピーは薄らと目に涙を浮かべるだけです。このようにサイレント映画絶頂期ではあり得なかった、役者が身振り手振りでも無く声を出すでも無くキャラクターの感情をサイレント映画内で表現する。そこがこの映画の凄い点だと思いました。現代に作られたサイレント映画だから成し得た演出だからです。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-04-29 18:33:44)(良:4票) 80.《ネタバレ》 全体の批評は朝日新聞紙上で大林宣彦、中野翠両氏が対談されてる内容でほぼすべてだと思います。(レビュー時点では http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY201204120267.html で講読可)特に、アステアじゃなくジーン・ケリーだってとこに気づかれた大林監督はすごい。華麗さよりも、どちらかというとデフォルメに近いダイナミックさを優先させたステップですからね、ジーン・ケリーは。「ブロードウェイのバークレイ夫妻」と思わせて「雨に唄えば」へのデディケイトで締めくくってると考えれば、ハッピーエンドもこじつけじゃないと思えます。フィルム燃やすシーンは「イングロ」でリアルさ知ってしまった以上、いい加減に見えてしまって残念。ジャン・デュジャルダンは「毒気を抜いた」植木等というイメージ。ってことは、東宝の「無責任/日本一」シリーズはダグラス・フェアバンクスがジーン・ケリーばりのステップでスクリーン全体を駈け、踊るっていうコンセプトだったのね。あ、犬のUGGYは100点。 【shintax】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-04-17 09:00:53)(良:3票) 79.CG全盛のこの時代に無声映画へ逆行。なぜかそれをありがたがって高評価している人が多いが、ぶっちゃけ何も面白くない。 無声モノクロだが裏で妙な音楽が終始鳴っておりキャストは皆ニヤニヤしている(笑) なにより無声映画がこれほどわかりづらいものとは思わなかった。 これアカデミー賞獲ってなかったら日本公開されてないな。賞とか話題とか興味ない人が見たら開始5分で寝れる。 【テツコ】さん [映画館(字幕)] 0点(2012-04-10 12:16:03)(良:3票) 78.《ネタバレ》 3D全盛のこの時代に無声映画がオスカーを取ったという物珍しさもあって、興味半分で観に行ってきました。 本作は自分が大好きなフランス映画の筈でしたが、むしろハリウッド調の誇張されたストーリーや演出が数多く見受けられ、中でも、主人公の活躍したサイレント映画が廃れていき時代の流れに乗れずに絶望感に打ちひしがれる一連のプロットに、何もそこまでしなくても…というやや大袈裟な展開の連続がちょっと鼻につく感じがしました。 ハリウッドへのオマージュというのを考慮してもちょっと行き過ぎた感があり、またサイレントは表情やアクションのみで物語るところはあるにせよ、やや過剰な演出が出すぎていたように思えます。 ついでに、10~20年代の実際のサイレント映画を見ている時はちょうど良いタイミングで、つまり、どんな台詞を喋ってるのだろうと思ったところではしっかりとスポークンタイトルが出て会話の内容を提示してくれるので、それがとても心地よく感じられ、音声なんか必要ないんじゃないかとまで感じさせてくれることが多いのですが、本作の場合はそれが非常に少なく、また、ちょっと細かいところですが、スポークンタイトルの出るタイミングが一瞬遅い事が何度もあり(0.2秒くらい)、ちょっとイラッとすることがありました。 映画の中盤で、階段を昇る女優と降りる男優というメタファーを狙ったようなシーンが出てきましたが、あの突然の傍目ショットはメタファーを撮りたいがためだけに挿入されたとしか思えず、客観視する理由も見出せないため、妙に異質な雰囲気ばかり感じてしまいます。 また、犬を脇役に起用したことやBGMの音楽も、チャップリンの影響を受けているのは明白ですが、犬の演技に関してはしっかりと訓練を積んで演技をした本作よりも御本家の「犬の生活」の方が動物的で自然な振る舞いをしているように思えます。 ストーリーの最後は、新たな境地を開拓してハッピーエンドを装う感じで締められていますが、映画で勝負することから逃げているようなエンディングであるため、ここはまさにご都合主義としか言えないでしょう。 キャスティングについては、主演女優があまり美人ではないのが減点材料で、クラーク・ゲイブルに似た主人公がアステアばりのダンスを踊っていたのは、時代錯誤のような気が…。 ただ、今のこの時代にサイレントで勝負した心意気は買いたいと思うので、オマケしてこの点数。 【もっつぁれら】さん [映画館(字幕)] 6点(2012-04-14 18:02:03)(良:2票) 77.《ネタバレ》 クライマックスで延々ずっと流れ続けてた曲、あれ~、これって何かの映画で聴いた事があるぞって暫く考えてたんですよ。何だっけか・・・えーと・・・あ、そうだー!!ヒッチコックの「めまい」で使われてた曲だっ!と、映画館の暗闇の中、思わず膝を打ちほくそ笑む。数あるヒッチコック作品の中でもコアなファンが多いと聞く「めまい」ですが、確かサスペンスよりもラブストーリーとしての評価が高かったはず。ここに至ってようやくこの作品が映画への「愛」、男と女の「愛」を、サイレントというやや変則的な形を取りながらもオーソドックスに謳い上げる、王道な「ボーイ・ミーツ・ガール映画」である事に、ハタと自分は気が付きました。今年の賞レースを賑わせた作品は、近年になくどれもハイレベルだと思うんですが、アカデミー会員が、内容的には至ってシンプルでわかりやすいこの作品に、こぞって投票した理由はなんなんでしょう?奇しくも日本では、同日にあれほど稼いでまだ稼ぎ足りないのかと、つい鼻白んでしまう「タイタニック3D版」が公開されましたが、昨今の安易なリメイクばやり、ネタ切れ、特殊効果への依存しすぎを猛省し、もう一度「原点回帰」に立ち返ってみないかっていう強い想いが、このフランス映画を最優秀作品賞に選んだハリウッド映画界にはあるじゃないかなーとも思うんですが、どうなんでしょうねえ・・・。私はそうであって欲しいと願っております。「雨に唄えば」や、ジュディ・ガーランドの「スタア誕生」なんかを予習で観ておけば、これはさらに楽しめる映画だと思います。主役のモノクロ画面映えする申し分のない粋な伊達男っぷり、ヒロインの一見バランスが悪いヘンテコファニーフェイス、でもチャーミングな表情が素敵でしたね。このお二人の見事なコンビネーション、後味が極めて良い事、忘れてはいけないもう一人(一匹ですか?)の主役、ワンコの驚くべき好演に一点加算。淀川長治さんや双葉十三郎さんがもしまだ生きてらしたら、この作品をどんな風に面白く語って下さったのかなあ・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-04-09 00:05:42)(良:2票) 76.《ネタバレ》 HDの中に録画されていたので取り敢えず予備知識などは全くなしで見ました。 モノクロサイレントは映画の導入部で、いつ色が付いて音が出るのかと思っていたのですが、そうではないと気がついた時には作品にかなり入り込んでいました。 とても可愛らしい作品でした。フランス映画とのことですがハリウッド映画の様に脚本、映像に高い整合性が感じられ、時間も約100分という事も有り、手の中にすっぽりと収まる良く出来た工芸品のようでした。 サイレントという事で、主人公の少し大袈裟な演技も作品に合っていましたし、脇を固める犬とヒロインも良かったです。出演者全員の演技やストーリーに、ほぼ重たい所がないので軽妙に進みます。 また、音がないという事で映像は丁寧に作っている印象でした。当時の町並み(ヒロインが車を運転して主人公の所まで行くシーンの派手ではないカーアクションや、カット割りも含めて俊逸でした)や、〇〇町のみなさんと言ったエキストラではなく、演技の出来ているエキストラは見ていてストレスがなかったです。 音も色も無く、加えてシンプルですが、良質のラブストーリーでした。 【しってるねこのち】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-04-13 15:27:39)(良:1票) 75.《ネタバレ》 ストーリーは単純ですが素直に共感できる映画です。現代のサイレント・モノクロ映画という目新しさやオスカーに関心があるわけではありませんが、チャップリンの作品に負けず劣らず面白い作品だと思います。思わず泣けてしまうシーンもあり、ラストの起死回生ミュージカルでトーキーに変る場面も印象的です。 【ProPace】さん [映画館(字幕)] 9点(2014-09-18 20:04:28)(良:1票) 74.テンポよく、何のストレスも感じることなく観賞しきれる良品。しかしながら主人公がトーキーを頑なに拒む理由が明示されずに進行するため、ややのりきれない。アカデミー賞受賞は幸運だった? 【j-hitch】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-10-17 14:28:11)(良:1票) 73.この作品に関して言えば、アカデミー賞を獲っただけにかなり事前に情報が入ってしまったというか、名場面といわれる所は大体テレビで流れちゃっていたので、正直感動するまではいきませんでした。最後のあれはぐっと来るけど・・・それも何となくアカデミー賞獲った時点で、ラストはこうするだろうなと気づいてしまう。賞与える側からしたら、俺達ってセンスあるよねって感じで与えたと思うんですが、観る側からしたら、賞獲ったんだから、感動する何かがあるに違いない。結果ハードルを高くして観てしまう。この作品は大衆向けというより賞レース向きだと思いました。 【Yoshi】さん [DVD(字幕)] 5点(2012-10-09 20:16:15)(良:1票) 72.サイレント映画を観るのは久しぶりだったので、開始後数分間はかなりの違和感を覚えました。セリフがないというのはこんなにも不思議な感覚なんだなぁとあらためて感じ、逆説的にではありますが、トーキーとは革命的な発明だったということを思い知らされました。オスカー受賞により本作はサイレント映画を見たことのない観客の目にも触れることとなったはずですが、そうした観客が本作をどう感じたのかが気になるところです。。。 監督はサイレント映画を徹底的に研究したというだけあって、本作はサイレント映画の醍醐味をきっちりと味わわせる内容となっています。陳腐な物語にオーバーアクト、そして良い人だけが出てくる良い話、これぞ古典の味わいです。こうしたサイレントでしか成立しえない物語を作り上げ、その魅力を現代の観客に思い出させたという点において、本作はその企画意図をまっとうする完成度に達していると評価できます。ただし、問題もあります。ペピーが大スター・ジョージに対して抱いていた憧れが、どの時点で恋心に転化したのかが明確に描写されていないために、ラブストーリーとしては筋の通らない話となっています。また、落ち目になってからのジョージが後ろ向き過ぎてイラっとする点も引っかかりました。優しい運転手に賢い愛犬、そして苦しい中で最大の援助を与えてくれるペピー、これだけの人々に支えられながら、依然として過去にしがみつく主人公には感情移入しがたいものがありました。要するに、ドラマとしての完成度は高くないのです。本作が成功したのはあくまで”器”の完成度の高さであって、”中身”に魂は宿っていませんでした。。。 作品賞受賞の本作を筆頭に『ヒューゴの不思議な発明』『マリリン/7日間の恋』『マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙』と、今回のアカデミー賞には懐古的な傾向が目立ちました。古き良き時代を懐かしむ空気というのは、現代の世相が良くないことの裏返し。内容の賛否はともかくとして若い感覚に溢れた作品(『ノーカントリー』『スラムドッグ・ミリオネア』『ハート・ロッカー』)が賞レースを賑わせていた数年前と比較すると、やや寂しい傾向であると感じます。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-10-07 01:48:10)(良:1票) 71.《ネタバレ》 静かな映画だと寝ちゃう自分としては不安もあったけど、面白かった。セリフはサイレントだけれど、音楽が雄弁に語る。映像もすごく計算しつくされている感じで、名画を見ている気にさせてくれる。かといって高尚な映画というわけでなく、中身が薄いというか、良い意味で軽~いストーリーで楽しい気分になれる、魅せられる映画。 腹の立たない程度にさらっと反則技をしかけてきたり、脳天気すぎるラストだったり、力の抜け具合にも余裕が感じられる。計算されつくしすぎて、逆にかわいげがない作品である。 個人的には女優さんにもっと魅力を感じられたらもっとハマれたかなーと思った。 何の影も苦労もない幸運なパー女にしか見えなかった…。 【すべから】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-07-09 23:33:01)(良:1票) 70.《ネタバレ》 <すさまじいネタバレ注意>今までサイレント映画だったのに、トーキー映画に変わるというアイディアは「オズの魔法使」のあのシーンを思い出しました。 台詞のない映画を観ていて「これはこれでいいけど、やっぱり声が欲しいなあ」というジレンマは多くの人が感じることだと思いますが、これにアイディアで応え、ジレンマそのものをトーキー映画へと移り変わる時代を利用して描いていることが素晴らしいです。 この映画がオスカーを受賞したのは、単なる懐古主義に留まらず、温故知新の考えのもとで新しい映画を作ったことにあるのだと思います。 ◆こちらのブログhttp://kinoer.exblog.jp/15769867で知ったのですが、主人公のジョージは、最後にフランスなまりの英語を話していたそうです。これに気づくと「ジョージは映画でしゃべること自体に抵抗があった」と気づけるという・・・細かい設定に感服しました。 【ヒナタカ】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-05-01 22:33:42)(良:1票) 69.評価がとっても分かれると思いますが、私は心からこの映画に感謝したいです。 すでに皆様がお書きになっている好意的なコメントに、賛成です。 加えて私が泣きのポイントっだったのは、時代と才能が一致しないやりきれなさ、でした。 ヴァレンティンがどうしてもマイケルと重なって仕方がありませんでした。 【こね】さん [映画館(吹替)] 9点(2012-04-29 22:57:36)(良:1票) 68.《ネタバレ》 ニヤニヤと楽しく鑑賞できました。この主演女優のダンス。オリジナルは知らないのですが“ザッツ・エンターティンメント”での若きジョーン・クロフォードの失笑気味ダンスを真っ先に思い起こします。脇役も絶妙で、がたいのいい社長はアステア主演作やキャプラ映画なんかに出てきそうな雰囲気と表情のリアクションが楽しめますし、やたらに老け込んだカミさんは'40年代ヒッチコック映画に出ていそう・・・。そして満員に膨れ上がった映画館で楽しみまくっている観客。懐古趣味でも映画が庶民にとって、どのような娯楽であったか想像するのも悪くない。 【よし坊】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-04-26 04:36:57)(良:1票) 67.ストーリーもテーマも平凡なのに,楽しめました。犬が達者な映画は大抵犬に食われてしまうのだけれど,決して食われてなかったしね。それにしてもプライドっていうやつが邪魔して,なかなか生き方を変えるのは難しいね。共感。 【昭和26年生まれのtaka】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-04-14 16:06:21)(良:1票) 66.《ネタバレ》 フィクションであることの自覚がこの映画を支配している。無声映画も所詮演出に過ぎず、実は無声映画ということへの言及をメタなレベルで行っている。ラストシーンが象徴的であるが、映画を撮影しているところを撮るというある種ありきたりになってしまったメタ的演出によって、この映画のフィクション性を強調し、「結局はトーキーなのだ」という印象を余計に観客に与えてしまう。サイレントを装ったトーキーは、意図しているかどうかはともかくとして、最終的にはサイレントへの決別を提示している。 【Balrog】さん [映画館(字幕)] 6点(2012-04-12 23:25:56)(良:1票) 65.ジョージはとても人の良い、優しい人。 ペッピーも良い人。 犬も良いね。 でも、それだけの映画でした。 最後のシーンも、なにがいいアイデアなのかもひとつピンとこなかった。 ジョージがペッピーの映画を観客席で観ているシーンが切なく、いい映画だなーと思いましたが、そう思ってる時間と、眠い時間の割合から判断すると6点。 【Skycrawler】さん [映画館(字幕)] 6点(2012-04-12 21:23:25)(良:1票) 64.《ネタバレ》 モノクロ・サイレント映画と聞いていましたが、劇中に2回、音楽以外の音が聞こえるシーンがあります。それがとても効果的に使われている。つまり本作における「サイレント」は演出のひとつということです。そんな演出込みで「サイレント」を現代に再現する意味は何なのか? 本作のテーマは、まさにそこにあったという感想です。現代のCGや3Dを含めたデジタル映像は、表現できないものは無いと思えるほど進歩しました。でも、本作を観た後に想うのは、その「万能感」に寄りかかり、メディア本来の意義である「伝える」ことを疎かにした映画が増えているのではないかということ。本作は、無声映画で人気を博した一人の俳優の栄華と挫折と再生をラブストーリーの中に織り込みます。社会問題を扱った作品のような複雑さはありませんが、感情の起伏は力強く伝わってきました。伝えたいことを絞り込み、それを最も効果的に表現するために選んだ手段が「モノクロ」&「サイレント」だったと考えると、とても納得できます。本作を観た後だと、ふだん観ている映画には無駄なものがたくさん入っているのではないかと思ったりもします。単に台詞を削るとか、爆発を減らすとか、そんな小手先ではないところで、本作は映画の原点を再確認させてくれました。アカデミー賞を競った『ヒューゴ~』も映画愛を謳った作品と言われていますが、私は「愛」を感じなかったんですね。あれは創成期の映画製作者に対する「敬意」だと思っています。比較の話になりますが、本作からは映画に対する「愛」を感じました。鑑賞後に「この作品が…」と云うよりも「映画ってイイなぁ」と云う感慨が先に来たからです。でも細かい話ですが、ミシェル・アザナヴィシウス監督は映画を「愛している」というより「信頼している」と言った方が近いのかも知れません。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(字幕)] 7点(2012-04-08 20:25:00)(良:1票) 63.《ネタバレ》 このフォーマットにしたからには、きっと、このフォーマットの時代の映画と比較されたってしょうがないわけだが、つまり別に大したことはないわけだ。器用だが、その器用さは、過去の映画史が築き上げてきたものの既視感をモンタージュしたからだ。つまり、当たり前だが、懐古主義だ。懐古主義にならないはずがない。別にそこはどうでも良いが、今これをやるという快楽主義の問題だろう。このラストからわかることは、トーキーしか知らない世代が作る今だから出来るサイレントという表現、これは新しいのではなく、当然の表現だ。サイレントを撮れない世代が、サイレントを撮ったなら、みんながやりたいであろうことを片っ端からやっているので、そういう意味では凄く熱くなるのだ。 いちばんの見せ場は階段。サイレントからトーキーへと移り変わっていく様をひとのすれ違いで描くこと。女は上へ、男は下へ。ただこれをモノクロスタンダードサイレントのフォーマットに落とし込まなくては出来ない悲しさ、またサイレントでなければ出来ないことでもないということ。また、柱を隔て座ることの意味。これもまたサイレントだからということではない。現代でも同じことだ。今、そういうことを忘れた、知らない人々がただ映画と呼ばれるだけのものを作っている。この映画の意義はそういうことに無頓着になってしまったことを正すための良い教材になるであろうし、これをきっかけにサイレント映画を観返すひとが増えるならば、それはとても良いことなんだろうと思う。 さて、映画愛という言葉が流行っているいるようだが、『アーティスト』はアナログなことをしているが、結局は歴史と技術へのものだが、『ヒューゴ』は映画の進化を最大限に利用しているものの、映画を作るということの精神へのものだ。そして予告編にもあるフィルムを焼くシーン。ここには『イングロリアス・バスターズ』の様な映画愛はないし、ましてや、フィルムの終わりを意味するようなものなど微塵もない。 【すぺるま】さん [映画館(字幕)] 5点(2012-04-08 20:03:42)(良:1票) 62.《ネタバレ》 サイレント映画自体ほとんど観たことがなく、しいてあげるならチャップリンぐらいです、そんな不安は無意味で問題なく楽しめる良い作品でした。「ヒューゴの不思議な発明」と対比すると面白いと私も思ったのですが、その事については下の「2番目レビューのあにやんさん」が述べられていますのでそちらをどうぞ^^ シンプルで映画愛を感じる作品で、良い時間を過ごした気分になれました。 【ないとれいん】さん [映画館(字幕)] 8点(2012-04-08 16:09:44)(良:1票)
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