みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
14.長回しが多いと言う事で、手持ちカメラの酔っぱらい映像ばかりの 疲れる映画かと敬遠してましたが・・・、周りの評判につられ先日やっと鑑賞してきました。 さすがに近年の撮影技術の向上で、手ブレ補正されていて落ち着いた絵が続きます。 ワンショットはそれぞれ30分続くかどうかで、編集が一切ないとは言えませんが、演劇的な同時進行感はある。 無理に長くして、絵や演出がおろそかになっては本末転倒であり、これでも充分に臨場感はあると思う。 CGが使われたのかどうか自分には情報が無いので断言できませんが、リアルな映像だと驚きました。 ただ、演出的にどうかと思ったのが、地下の閉鎖空間で爆発に巻き込まれたのに、体はともかく鼓膜が無事って 無いような気がします。鼓膜破れなくても、かなりの長い時間聴力は戻らないはずですが、役者は会話してました。 大正時代の戦争なので、後の戦争に比べ爆弾の殺傷能力は低めかもしれませんが、全体にバラエティ感が散見。 最近の映画にように、CGで人体が粉々になるシーンが必要だとは言いませんが、割と表現は控えめでしたねえ。 それでも戦場を駆け抜けるスコフィールド君の気迫は迫るものがあり、探していた人物との対面後の最後の表情は ラストシーンとして最高の時間になりました。 人気の有名な俳優が脇役に徹していて、映像がスコフィールド君に集中したところは正解でしょう。 反戦映画なのかどうかは置いといて、一人の若者の戦場での奮闘を疑似体験したような気分がしたので良しとします。 比較対象がジョーカーとパラサイトの昨年度なら、この作品こそが作品賞だったのではと個人的には思いました。 【グルコサミンS】さん [映画館(字幕)] 8点(2020-02-18 18:31:20) 13.《ネタバレ》 (かなりネタバレするのでご注意を) 長回し・・・ねえ。 近年いくつかの作品で、この手法による凄まじい臨場感に打ちのめされた経験から、これで戦争映画全体を撮っちゃうという企画を聞いたときから、一体どんな恐ろしい映像体験になるのか、とすごく期待してました。 が、ふたを開けてみると、無理して長回しするとむしろ臨場感が失われる、という、なんだか肩透かしの手品を見たような感じになってました。 本作で明瞭にシーンが途切れるのは中盤の1か所だけ。正確に時間を測ってませんが、まあ2時間弱の映画のちょうど真ん中だったとして、前半1時間弱であったことは・・・ ●指令を受ける→塹壕を端まで移動→鉄条網突破→敵塹壕でトラップにかかる→草原を抜ける→廃屋でひと悶着→相棒が○○→トラック移動→トラック泥濘にはまる→壊れた橋を渡る→撃たれて気絶 一方、後半1時間弱であったこと・・・ ●目を覚ます→町の中を駆け抜ける→フランス娘との交流→敵兵と白兵戦→溺れかける→目的地到着→任務達成→戦友の兄に会う 盛りだくさん過ぎて、こんなことがそれぞれ数十分のうちにあったなんてとてもあり得ないことで、例えばトラック中の移動とか河で流されたりとかのシーンで、カメラは主人公を捉えていても、見ている観客が脳内で勝手にシーンを切り替える状態になってます。 そのうち誰かマニアな人が、主人公が映画の中で自分の足で動いた距離を算出してくれるでしょうが、私の感覚では、たかだか3~4kmだったイメージ。なんせ、気絶している間は主人公は動いておらず、正味の移動時間はせいぜい90分程度ですから。 普通に撮影して、長回しは部分にとどめたほうがよっぽど良い映画になったはず。 作品賞獲れなかったのは納得。私なら撮影賞もあげられないなあ。努力賞はあげられるけど。 【Northwood】さん [映画館(字幕)] 5点(2020-02-18 00:51:20)(良:1票) (笑:1票) 12.アカデミー賞大本命と謳われながら期待しなかった。案の定、ワンカット風撮影が売りで、それ以上の驚きは感じられなかった。確かに綿密に計算され尽くしたワンカット風の演出に、制作陣の執念深さ、圧倒的な力量と労力は伝わってきた。だが、その凄さが面白さや感動に繋がるかは別の話。技巧を優先させすぎて、登場人物に血が通っていないように感じられるのは何故だろう? どこかビデオゲームを見せられているようで中途半端にドラマを挿入するから違和感がある。オスカーに受けそうなベタベタな戦争ものなら尚更。一応、最後まで見ることができたので悪くない映画だと思うが、作品賞を取れない理由が分かる気がした。「新鮮味がなさすぎる」。 【Cinecdocke】さん [映画館(字幕)] 6点(2020-02-17 19:34:29)(良:1票) 11.《ネタバレ》 「クローバーフィールド」等のPOV方式が流行った時と同じだ、今は「ワンカット」が流行ってる。 普通に考えれば2時間の映画が「ワンカット」で作れるわけがない、だから「ワンカット風」は仕方がないよ それよりも作品賞にノミネートされた内容を堪能しに行こう、うん。 と割り切って観に行くが「あ、ここが編集点だ」と勘繰ってしまう。 振り返ればそれほど内容があるわけじゃなく、感動する話でもなかったが集中し続けて120分が経ってしまった。 「全編ワンカット」というキャッチがなかったらこの映画を観に行っただろうか? だとしたら今回はうまく乗せられた気がする でも、ぬかるみや足場の悪いとこをろブレることなくワンカットショットをし続けた撮影技術は素晴らしかった もし友人から「どうだった?」と聞かれたらもちろんオススメします。 【かのっさ】さん [映画館(字幕)] 8点(2020-02-17 12:08:42) 10.《ネタバレ》 佳作。面白いとは思うけど、これがアカデミー賞で本命視されていたのか、という印象。あと、全編ワンカットという宣伝文句はどうなんだろうね。【ネタバレ注意】もちろん実際に全編ワンカットと思っていたわけではなく、ワンカット“風”だろうと理解はしていたが、そんなに長くない時間単位で「ああ、ここはつないでるんだな」と分かる場面がしばしば出てくる。このあたり、同じワンカット風の「バードマン」の方が、まだそれっぽかったと思う。それくらいはしょうがないと思うが、ワンカットというからには上映時間が映画内での経過時間なんだろうと思っていた。序盤で「目的地まで14.5キロ」というセリフがあり、徒歩なら3時間くらいかかりそうだが(映画内で6~8時間くらいかかる、と言っていたと思う)、クルマに乗る場面で「なるほど」と納得し、だから「暗くなる前」には決着するのだろうと思っていた。なのに、なぜ気絶して時間が経過する場面があるのか。それはもう「編集でのワンカット」じゃないよね。(英語版 wikipedia にも "one-shot film" に分類されてはいるけれど) 意図的なミスリードなのかもしれないが、ちょっと納得できない。 ストーリーとしては、序盤で2人で出かけた時点で「ああ、一人は死にそうだな、上官の方かな」ということが予想されて、その通りではあった。あと、“牛乳”を赤ちゃんに飲ますなよ。(分かっててもやむを得ないという切羽詰まった状況の描写ではあるんだろうけれど) 【mohno】さん [映画館(字幕)] 7点(2020-02-17 02:06:12) 9.《ネタバレ》 本国ではどうか知りませんが、日本では「全編ワンカット/映画の歴史が変わる」というキャッチコピーで宣伝されていたので、どうしても全編ワンカットの凄さを体験することが第一目的になってしまいました。皆さんもうお気づきでしょうが、全編ワンカットではありません。全編ワンカットと聞けば素人考えで「監督がヨーイスタートと言ってからカットと言うまでカメラを止めずに映画の最初から最後まで撮影すること」だと思うじゃないですか。でも実際は「全編ワンカットに見えるように作った映像」です。だってパンフレットにそう書いてあるんですもん。素人目には、気絶して暗転したり水中に潜ったり壁の向こう側を走ったりして姿が見えなくなったシーンなどでつないだんだなと想像できます。ただし監督の名誉のために言っておくとカット数は普通の映画に比べてものすごく少ないと思います。 肝心の映画の内容は、WWIの様子がよくわかる上にワンカット効果でシームレスに没入できてとても良いと思いました。 あと、いくら配給会社が同じ(UNIVERSAL)とはいえパンフレットの最後に、別の映画である「007 NO TIME TO DIE」の広告を入れるのはいかがなものかと思います。 【MASS】さん [映画館(字幕)] 7点(2020-02-16 16:37:48)(良:1票) 8.《ネタバレ》 全編ワンカットで2時間だから、とある戦場の「2時間」を切り取った映画かと思いきや、一ヶ所暗転して時間飛んでるシーンがあるので、約半日強の尺の物語だし、厳密にはワンカットとは言えないと思う(些末な事だが)。 作戦の内容的に(ワンカットだし)マジで全編息もつかせない展開になるかもと少々身構えたが、その実、特に前半は割とヴォルテージ高くないシーンも多く、後半も適宜息継ぎは入るため、観終わって疲れ果てた、とかいうことは無かった(まあ商業映画なんだから当たり前か)。あとWWⅠの話なので、流石に戦闘描写は(いつも見ているWWⅡのよりは)少し地味で、特に大規模戦闘なんかを楽しみにしていくとやや肩透かしを喰らうかも、とも思う。 ただし、やはり超・長回しが続くので、単純に目を切れないのもあってどんどん画面に引き込まれ(否、引きずり込まれ)、映画に文字通り「没入」できる(その没入する深さと、没入している時間の長さが、あまり体験したことの無いレベルになっていた様に思う)。ここまで2時間があっという間な映画も久しぶりだし、非常に気持ちのいい映像体験だった。良作。 【Yuki2Invy】さん [映画館(字幕)] 7点(2020-02-16 03:30:47) 7.全編1カットという事が気になって見ました。1カットと言われればそうなのですが、実際は画面が真っ黒になったり、建物や手前を横切る物なので上手く繋いでいるように感じてしまい、1カットという意味があったのか少し疑問です。ただ、それとは別にストーリーはシンプルでありながら、終始惹きつけられる魅力は十分にありました。間延びするような会話のシーンも、見終わった後に思い返すと、上手く物語の進行に彩りを添えていたと感じられ、戦争という悲惨さも目をそらさずに見れる按配がありました。2時間の映画ですが、時間軸にも違和感がなく、企画の時点で完成度の高い映画だった事が伺い知れます。評価が7なのは、結局何を伝えたかったのか分かりかねたから。1カットという縛りにこだわり過ぎた為の奥深さが足りなかった点は残念です。 【sirou92】さん [インターネット(字幕)] 7点(2020-02-16 00:46:04) 6.《ネタバレ》 走れ、はしれ、ハシレ…将軍の攻撃停止命令を携えて、戦地を駆ける。キャメラ長回し、全編ワンシーンで撮られた戦争アドベンチャー。最前線にいるアニキを助けようとする相棒を失っても、その歩みは断じて止めねえ。車で進む湿って緩い山道、崩れた橋、敵が潜む廃墟、急流な滝壺、遺体が浮く川、砲弾飛び交う最前線。様々なステージを観衆と共に乗り越えていく感覚。そして任務達成。第一次大戦、戦況を変えたかもしれない取り留めもない漢のファインプレーやな。良作。 【獅子-平常心】さん [映画館(字幕)] 7点(2020-02-16 00:12:13) ★5.《ネタバレ》 まさしく、「臨場感」の境地。 戦場の瞬間を途切らすことなくつぶさに映し出した映画世界にあらわれたものは、虚無と望郷、そして幻想が入り交じった一人の兵士の“混濁”だった。 実寸規模の何kmにも及ぶ巨大セット(というか“戦場”そのもの)を作り出し、“ワンカット風”の演出で描き出した映像世界は流石に凄い。 “戦場の臨場感”という観点から言えば、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」も記憶に新しいところ。 あの作品も「本物」の撮影にこだわり抜いた意欲作であり、傑作だったと思うけれど、本作も、サム・メンデス監督が全く異なるベクトルの“主観”によって映し出した戦争映画の新たな傑作だと言えるだろう。 「臨場感」という表現を用いたが、この映画におけるその言葉の意味は、映像的な“没入感”のみを指すものではない。 「全編ワンカット映像」という触れ込みがイントロダクションとして大々的に伝えられていたので、映像的に「見せる」映画なのだろうというイメージが先行していた。 勿論、前述の通り超巨大セットによる映像的な迫力と説得力の高さは言わずもがなだが、この映画の醍醐味は、視覚的な体感を超えて、画面に映り続ける「兵士」の心理状態や精神状態をも体感できるということだろう。 この映画は、休憩中に微睡んでいる或る兵士がふいに上官に起こされるカットから始まる。 わけも分からず司令官に呼び出された兵士は、或る重大な指令を受け、すぐさま最前線に直行し、突如として明確な「死」に直面する。 その間、時間にしてわずか数十分。 “微睡み”から“死”まで、リアルタイムに映し出されたこの数十分に、一兵士の心理と戦場の無慈悲が表れている。 サム・メンデス監督がこの映画で示したかったことは、戦場のリアルを単に映像的に「見せる」ということではなく、そこに渦巻く兵士たちの無数の感情を含めて「魅せる」ことだったのだと思う。 それを表すように、“ワンカット風”、“リアルタイム風”に映し出される映像世界は、終盤に差し掛かるにつれ、幻想的に、非現実的に表現される。 敵兵の銃弾を受けブラックアウトした主人公の兵士が目覚めた時、彼が目にしたものは、戦火に照らされた幻想的な廃墟の街並みだった。 厳かで、神々しいまでに美しく照らされたあの光景は、果たして「現実」だったのか? もしかしたら、彼は敵と相討ち、その場で絶命してしまったのかもしれない。 あの光景の先で描かれる、母子(疑似)との慈愛に満ちた邂逅も、絶体絶命のアクロバティックな逃走も、砲弾をかいくぐる奇跡的な疾走も、すべては死後の幻想であり、我々は彼の深層心理を垣間見ていたのではないか。と、そんな思いに駆られる。 某映画評論でも触れられていたが、この映画で描き出されたような「伝令」が実際に実行され、無意味な突撃が阻止されたなんてことは無かったに等しいだろう。現実の戦場では、無意味な作戦と、無駄死にが延々と繰り返されていたに違いない。 本作では、ベネディクト・カンバーバッチ演じる最前線の指揮官が、「伝令」を素直に受け入れるけれど、劇中マーク・ストロング演じる将校が示唆していたように、実際は軍人の「意地」で愚かな突撃を強行した指揮官が殆どだったのだろうとも思う。 そういう「現実」や、垣間見える兵士の「幻想」を思うと、この映画には表面的な感動の裏に、極めて混濁した真理が潜んでいるように感じるのだ。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 8点(2020-02-15 19:29:43)(良:2票) 4.《ネタバレ》 うーん・・・全編1カットってウリにしない方が良かったんじゃないかしら。ついつい継ぎ目探しちゃったわよ。実際ワンカットじゃないし(1箇所暗転するところがあるのでそこで完全に途切れてるし)、上映時間=劇中の経過時間ではないので(冒頭からラストまでで1日くらい経過してるわ)シーンの連続性が維持されてる訳じゃないし。 めくるめく戦争の地獄絵巻、それは臨場感と没入感を伴ってとても生々しく伝わってきたわ。脇役的な彼が主人公にならざるを得ない状況で遭遇する様々な戦争の恐怖。突然訪れる死、無数の死体、狂騒的な混乱、人からもたらされた破壊の風景。 でも、どうしてもテクニックが先走ってる気がしちゃうのよね。これってTPSの世界なわけ。弾数が極端に少ないTPSをIMAXのでっかい画面でプレイしているような感覚。『コール・オブ・デューティー』(弾数的には『コール・オブ・ファレス』かしら)の世界で『ゼログラビティ』的な流れの繋がった映像を見てるカンジ。実写なのだから、そこにはもの凄い物量と大勢の人の手が加えられているのだけれども、CGで作ったゲームの映像と同感覚なのよね。実際CGも多用されているワケで、そこら辺はボーダレスになりつつあるというか、映画がゲームに近づいてる感じでもあって、ゲームが必死に映画に近づいてゆこうとしてきた歴史を見てきた身からすると、こういうのってちょっと複雑なキモチね。生身の人間の演技はともかく、映像表現的にはもはやゲームの方が先へ進んだのかしらねぇ、って思ってしまって。 カットを割っても臨場感や没入感が出せない訳ではないワケで、そこに固執しなくても良かったんじゃ?とは思うのだけど、それだとウリになる点がなくなっちゃうのかも、って考えるとちょっとジレンマに陥っちゃうわね。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 7点(2020-02-14 19:22:17)(良:2票) 3.ひたすら走って走って走りまくる映画だ。 兵士は伝令を届けるという重要な任務を与えられた。 その伝令が届かないと多くの仲間の命が失われる事になる。 とにかく死と隣り合わせで常に気の抜けない(戦場だから当たり前)状況で、主人公が戦場を駆け抜けて行く様が圧倒的臨場感と共に繰り広げられており、片時も目が離せなかった。 没入感が半端ない映像体験! 【ヴレア】さん [映画館(字幕)] 8点(2020-02-14 17:24:43) 2.《ネタバレ》 「全編ワンカット」がどう定義されているかはよく知らないが、本作は長回しを用いた複数のカットをつなぎ合わせたものである。 故に編集後の本編はワンカットのように見える。その撮影や編集方法については、近作で言えばイニャリトゥの「バードマン」を彷彿させる。 個人的には撮影方法や撮影アイデアが前面にフィーチャーされた作品はあまり好みではない。 主観視点だとか、長回し多様だとかの「独自ルール」的なものが逆に仇となり、物語の面白さをむしろスポイルしている作品は多いと思う。 そういったワンアイデアはYoutubeの5分程度の動画なら楽しめるだろうが、90分以上くらいは時間をとる映画では「慣れ」と「飽き」の時間の方が多くなってしまう。 対して前述した「バードマン」は賞レースでも大健闘した。この作品には、ハリウッド対ブロードウェイ(娯楽VS芸術)というテーマ、そしてドラマをじっくり描いており、撮影方法は虚実入り混じる不思議な世界観をサポートする役目に徹していたのだ。 そしてこれは「1917」にも通じている。 「1917」は名匠サム・メンデスが監督したことがしっかりと感じ取れるドラマに秀でた一作に仕上がっていた。 邦題にもあるが、戦争映画において「伝令」に着目した点が良い。 伝令とは、面と向かって相手に言葉を届けることとは少し違う。自分が受け取った情報、思い、人生を遠くの誰かに伝えることだ。 例えばカエサルの「来た、見た、勝った」という今も残る簡潔な文体。またはマラトンの戦場からアテナイまでを走破し、勝利を伝え絶命したエウクレスの逸話(諸説あります)。或いは文豪ユゴーの世界一短い手紙のやり取りか。 「伝令」が生むドラマはいつの時代も人を惹きつけてきた。 まして電話一本、いや指一本で地球の裏側まで瞬時に思いを伝えらる時代である。今一度、「伝令」の尊さを噛みしめらる「刺さる」テーマである。 また疑似ワンカットの映像も「戦場の臨場感云々」という宣伝文句以上の効果を発揮する。 戦闘が終わった後の中間地帯、その惨たらしい傷跡。空に消え、再び画角に現れる照明弾の降下。町を焼く炎に揺らめく人影。印象的な映像は多角的に戦場を考察していく。 メンデス監督は「スペクター」冒頭でも超ド級の長回しを披露していたが、本作の長回しはより情報整理やドラマ性に長けており、野心的な方向に進化しているといえる。 ドラマもメンデス監督らしい。 「俺に話かけ続けてくれよ」から「この子に話しかけて続けて」という記憶の再構築。 今まさに逝こうとする友達の言葉が、これからの未来を生きる希望へ向ける言葉としてウィリアムの脳裏によぎる。 時を告げる鐘の音が疲労困憊の彼を奮起させる。 控えめな演出ながら、しっかりと登場人物の気持ちを変化させる事柄がしっかりと描かれていて良い。 思えば「スペクター」や「スカイフォール」「レボリューショナリー・ロード」でも、いやいや「アメリカン・ビューティー」まで遡っても、メンデスの作品では確実な人間描写が生きていた。 繰り返し強調される「全編ワンカット」という側面も確かに度肝を抜く完成度であるが、やはりメンデス監督の人間描写やテーマ性も骨太な見どころとして鑑賞したい。 【サムサッカー・サム】さん [映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2020-02-09 23:09:01) 1.《ネタバレ》 ほとんど予備知識なしで映画館へ。まさかの疑似ワンショット演出に最初はかなり戸惑いましたが、2人の若い兵士の視点から少しずつ第一次世界大戦の西部戦線の有様が見えてくる構成は見事です。とくに、廃墟の町での夜〜早朝にかけてのシーンは、撮影監督ロジャー・ディーキンスらしい赤い炎と光と影が交錯する美しいシーンながら、ワンショット演出のサスペンスが冴えまくり、戦場の恐ろしさも体験させてくれる唯一無二の経験ができます。この一連のシーンを見るためだけに、映画館で見る価値はあると思います。ただ、「戦争映画」ではありますが、『プライベート・ライアン』のような「大作戦」ではなく、作戦の中止を伝える伝令を描いた映画なので、戦闘シーンそのものはとても控えめです。阿鼻叫喚の戦場描写というよりは、どこから狙われるかわからないサスペンス演出が中心で、「迫力の戦闘シーン」を期待してしまうと思ってたのと違う映画と感じてしまうかも。また、戦争映画ではおなじみの極限的な人間ドラマも、中盤で予想外のことは起きますが、基本的にはベタで新しさには欠ける。展開もちょっとご都合主義的。ドラマや脚本よりも、徹底した兵士目線で生まれる緊迫感とディーキンスの凝りまくった映像を堪能するタイプの映画なのかなと思います。 【ころりさん】さん [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2020-01-20 20:39:09)
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