みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
206.本当に素晴らしい作品でした。作品の題名のとおり「生きる」とは一体何なのだろうと考えさせられる作品です。 胃癌により余命幾許もない主人公。家族からも邪険にされ、市役所での立場もぱっとせずただお飾りのような「課長」らしく判子を押す退屈でどこか孤独な日々。 しかし、僅かな命で見出すことができた「生きる」という意味、そして本人がようやく手に入れることの出来た自身の輝かしい「価値観」は本当に素晴らしいものであったと思います。 むしろ、主人公のような人間こそが日本の現代社会に必要な気がしてなりません。 舞台はあくまでも市役所ですが、登場人物たちや職場環境は現代の市役所以外の一般企業でも十分にあるであろう雰囲気。特に日本の社会では主人公のような行動をとると、どうも邪険にされ「出る杭は全て打ってしまえ。」の下で個性やモチベーション、方向性を潰される社会。この時代の映画作品で現代でもあるような描写がなされているわけですから、これは黒澤監督の将来に亘る警鐘なのかも知れません。この作品こそ、現代に生きる人たちに観て欲しい作品であり、同時に自分自身の「生きる」意味を再確認して欲しいと考えております。 【功聖良】さん [DVD(邦画)] 10点(2014-05-03 22:00:48) 205.《ネタバレ》 お役所仕事のいい加減さには思わずイライラ。 主人公自身もそうした人間の一人だったが、死に直面して生まれてきた意味を見つめ直す。 男手一つで育てた息子の無理解な言動に、何のために自分を犠牲にしてミイラのような干からびた人生を送ってきたのかという空しさに駆られる。 人は誰しも生きた証しを感じたい。 家族の愛情が確かであればそこに生きがいを見出したかもしれないが、それが期待できないならば仕事しかない。 溌剌と生きている元部下の若い女との会話をヒントに生き方を変えた場面では、ハッピーバースディの歌の演出。 生まれ変わったように役所で働く姿は感動的で、こういう公務員が増えてくれればと願うばかり。 通夜の席での幹部役人の腐れっぷりが実状に近いだろうけど。 渡辺に感化されて熱く語っていた人たちも役所に戻ればすっかり元通り。 役所のセクショナリズムや形式主義、手柄の横取り、無責任さへの痛烈な批判がにじみ出ているが、役所だけに限らず社会全体への警鐘に取れる。 黒澤映画はエンターテイメント性を前面に押し出したものよりも、こうして人間をじっくり描いたもののほうがいい。 誰もが自らを振り返って考えさせられるテーマがあった。 その普遍性が時代を超えて多くの人の共感を得るのだろう。 生きることを始めて今まで気づかなかった夕焼けの美しさに感動して足を止める主人公。 他部署の酷い扱いに「こんなに踏みつけにされて腹が立たないんですか?」と部下に問われ、「人を憎んでなんかいられない。わしにはそんな時間はない」と答えていたのが印象的。 気になったのは、セリフが聞き取りにくい、ナレーションで語りすぎ、主人公に生き直すきっかけを与えた若い女がその後出てこないなど。 なので、完璧な映画だとは言い切れないが、欠けた部分を補うだけのものがあった。 この時代に日本でもこれだけの作品ができたことを加味しての満点。 【飛鳥】さん [ビデオ(邦画)] 10点(2013-07-21 22:25:11)(良:1票) 204.《ネタバレ》 確かに力強い映画であることは分かる。黒澤明の才気が縦横にみなぎっているのも伝わってくるけれど、どうにも個人的にそれが説教臭く感じてしまった。良い映画だとは思うけど、個人的には他の黒澤作品のほうが好き。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-08-16 17:07:21) 203.《ネタバレ》 「生きた」んだなぁ、と。 本人が「生きる」ことに真摯に向かい合う時、知行や恩賞や他人の評価や邪推やその他あらゆるものどもは実に取るに足らない些末なことであると。 ああ、「生きた」んだなぁ、と。 【とっすぃ】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-03-26 01:05:00) 202.前半は主人公の苦悩が丁寧に描かれていて、思わずグッとくるも、 後半はテーマの難しさがそのまま出てしまったようだ。 個人的には志村喬という素晴らしい役者を通して、格好悪くてもいいから「生」に執着する 徹底的なリアリズムを追求して欲しかったのだが、まったく違う観点からお話をまとめた展開は、 これはこれで実にうまいなと感心してしまった。ちょっと不自然なシーンもあるけど、 結果的には重厚かつ完成度の高い人間ドラマに仕上がっている。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-08-15 09:45:10) 201.《ネタバレ》 脚本にブレがある。本筋はこうだ。己を殺して役所勤めに埋没し、本来の生き生きとした人生を送ってこなかった男が、癌宣告を受けて苦悩、煩悶し、その艱難辛苦の果てにようやく自分のやりたいこと、生き甲斐を発見する。人生を新しく生き始めた男は、市民のための公園づくりに奔走し、幾多の困難、障害を乗り越え、遂にこれを成し遂げ、 最後は幸福感に包まれながら、竣工した公園で寿命を全うする。脚本はこれに加えて、男のささやかな功績を横取りする上司の醜さ、上役の前では意見を言えない小役人ぶり、酒を飲まなければ本心が言えない小市民ぶり、非効率的な役所仕事に対する批判を展開する。全て蛇足であり、不要。それは男にとって無意味だから。男が役所批判をしたり、名誉を欲しているわけではないのは明白。男が余命をかけて完成させたものがささやかな公園であったといういうのは泣かせる。◆構成上の欠点がまだある。最大のものは再生役の女性が途中から出てこなくなる事。若さと無邪気さで、男を”再生”させた女性が男の死に水をとるという構成が自然だろう。ラストに親族にとって謎であった女性の正体が知れ、女が男が自らの癌を知っていたこと、最後は幸福に死んだことを語る展開にすれば、感動が数倍増すこと請合いだ。重要な役割をする女性が途中で消えるのは理解に苦しむ。ポスターでは公園で男と女性がブランコに乗っている。監督はわかっていた筈なのだ。男に遊びを教えるメフィストフェレス役で良い味を出していた無頼派作家も消えるには惜しいキャラだ。男が物語半ばで死んだり、男に同情する若い同僚が葬式シーンからしか登場しなかったり、物語がブツ切れてしまっている。又女性の正体が不明のまま終わるのは、男にとっても家族にとっても不幸、観客にとっては未消化。◆高踏的なナレーションは不要。「この男は生きていない」などと、説明されても困る。その内容を見せるのが映画の筈。演出意図や理屈を説明するような科白が混ざっているのも減点対象。ごく自然な言葉、態度、出来事で観客に分らせるのが良い映画。 この映画は少し頭でっかち。◆役所に対する偏見が強い。「何もしないことが仕事」「1時間で出来る仕事を1日かけてやる」などは言い過ぎ。◆演出は冴えわたり、映像マジックも垣間見れるだけに惜しい。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-07-24 05:55:11)(良:3票) 200.黒澤映画の中で、この作品だけがどうにも性に合いません。メッセージ性があまりに強すぎるからかもしれません。 【ashigara】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-07-10 18:40:56) 199.昔見た時は大変感動した映画だったのだが、今改めて見るとどこにどう感動したのか、自分でもよくわからない。 画面も雰囲気も全体的に暗いし、第一志村喬のぼそぼそ声が何を言っているのか聞き取れない。これでは若い人の共感を得るには難しいと思う。 【ESPERANZA】さん [ビデオ(邦画)] 5点(2011-03-06 11:13:27) 198.《ネタバレ》 妻投稿■人生において他人を満足させる事、もっと言えば他人とってに意味のある人生を送る事は実は簡単。財産を全部ささげるか無報酬で奴隷のように他人の為に働けば良いのである。が、反対に人生において自分自身を満足させる事は非常に難しい。自分の人生を自分に据え置く行為は、他者や社会に何の利益ももたらさない「無意味な行動」なのである。■主人公はこの無意味な行動に終始した。その姿はその場では狂気に見え、その狂気を持った人間が単なる物体化した後に「客観性」の立場とともに人々に再評価、回想される。が、結局その「無意味な行為」は何かを変えたりする事はない。そもそも「無意味な行為」は「人間に尊敬、評価、肯定」され、「啓蒙」する事が目的ではないのだから、それは当然なのである。■はっきり言おう。主人公には生きる価値などなかった。そもそも「生きる」という事はそういう事なのだ。故に、社会で生きるよりもハードな責任感が実は必要なのだ。 【はち-ご=】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2011-02-08 01:14:43) 197.《ネタバレ》 通夜の回想シーンに違和感を覚え、ちょっと恥ずかしい台詞回しに違和感を覚え、自分の中での評価はこの点数です。名作・名シーンなどでさんざんハイライトシーンやストーリーを見聞きしていたのが観賞の妨げになったかもしれません。志村喬の芸達者振りには脱帽です。 【ジャッカルの目】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2011-01-02 02:20:58) 196.《ネタバレ》 「人は何のために生きるか」という思い問題を投げかけてくるが、自分はむしろ「人は何で変わるか」という方に興味を持った。 ■本作が「死期を前にして公園づくりのために全力を注ぐ公務員の話」かと思っていたので、踏ん切りのつかない前半にはかなり拍子抜け。なんだかんだ、やってることは元同僚の女をおいかけ回してるだけじゃん。あれはもうちょいコンパクトにまとめてよかったと思う。あと全般的に志村さんの声が全く聞こえないのがつらい。 ■後半、やっと死ぬ気で頑張りだす志村さんが見れるかと思いきやいきなり通夜でびっくり。けどこのやり方はなかなか巧妙だったと思う。回想のなかでしか存在しない志村さん。通夜の最初の方のありえない叩かれよう(いくらなんでも故人の通夜の席ではあんなこと言わないでしょう)からの一転はうまい。決してヒーロー的な活躍を見せるのではなく、終始だんまりでさえない感じでいるあたりが、自分たちと同じ等身大でありながら、本気を見せるとあそこまで成果を上げれるのだということを見せつける。 ■しかし、その思い出を回想し「よし、自分たちも変わろう」と言って何も変われなかった同僚たちが非常に印象的。とあるツイートで「人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える。2番目は住む場所を変える。3番目はつきあう人を変える。この3つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは『決意を新たにする』こと」ということを見たが、まさにそれを思い出さされた。志村さんは「死期」ということによって環境が激変した。他方、「決意を新たにした」だけの同僚は結局何も変われなかった。 【θ】さん [DVD(邦画)] 9点(2011-01-02 01:21:50) 195.《ネタバレ》 冒頭では生きている死人の様な男、渡辺。生き甲斐の無い人生。正に役所の書類にハンコを押す様な生活で、余命幾ばくも無い事が分かり、己の人生を振り返った時の虚無感。自分が誰にも必要とされない存在と分かった時の恐怖。観ていて本当に恐ろしくなってしまいました。ここがしっかりと描かれているからこそ、「ハッピー・バースデイ・トウ・ユー」の歌も心の底まで真に響いてくる。数ある黒澤映画の中で、人間ドラマを軸とした作品では最高傑作といわれていますが、それも納得できる素晴らしさだと思います。ブランコの名シーンに関しては言うまでも無いですね。観ているだけで涙が出そうになります。あとこの作品はお役所への批判がテーマであると、たまに言われたりしますが、個人的には違うと思います。責任をなすりつけ合うことや、人の手柄を横取りすることの浅ましさは、社会のどこの場面にも存在する様な普遍性のある事柄ですし、黒澤明は羅生門で同じことをそっくりそのままお役所とは関係無く描いているので。それにしても放蕩小説家の言葉ですが、私も来年から社会に出て働く身として、人生の下男では無く主人でありたいものです。 【民朗】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-12-11 00:04:00) 194.《ネタバレ》 黒沢映画や日本映画という枠を越え、すべての映画の中で最高傑作を争える作品。「生と死」という重い厄介な主題と取り組んでここまで感動的な物語を作り出したことが何よりすばらしい。一つ一つの場面の何と痛烈なことか! 公園計画の邪魔をしたくせにいざ公園が完成すると手柄を横取りする助役が厭味たっぷりな演説をぶって一同お追随を打った直後のお焼香の場面、こんな強烈な皮肉が他にあるだろうか。役所の連中にひとかけらの良心でもあるのなら、強烈に自分を恥じるしかないではないか。また主人公がヒロインと最後の会食をする場面、「自分にも、何かできる。ただやる気になれば」と興奮しながら立ち去るところで「ハッピーバースデー」の歌が重なるところは何度見ても本気で泣けてきてしまう。主人公の「生きる」姿を祝福しているのである。誕生日の歌はこのすぐ後に役所の場面でも繰り返されて主人公の「生きる」姿を強調している。その直後に急転直下で通夜の場面になってしまう意外性、さらにその通夜の席で主人公の行動と「癌だったことを知っていたのかどうか」の真相が次第に明らかになり、主人公が残り少ない命を真に燃焼し尽くし、その死は無念な悲惨なものではなく満足した上での死であったことも明らかになる。何度も何度も取り直したという「馬鹿野郎!」「助役とはっきり言えよ!」という左卜全の痛烈なセリフがこちらの肺腑にまで届く。またその場面で終わらずに、所詮は皆の感動も酒の席の上での決意でしかなかったことを見せる場面があってから公園の場面で終わるのも深い見せ方だ。他にも胃袋のレントゲン写真からはじまる冒頭、無音の状態からいきなりクラクションの爆音が響く場面などなど、恐ろしいほど考え抜かれて書かれたシナリオであり、天才が全力投球するとこうなるのだと言わんばかりである。この素晴らしすぎる映画にあえて欠点を言うなら、やはり主人公が超人的すぎ、話が理想的に進みすぎることだろう。それととんでもない誤解を受けたからと言って息子に何も知らせず死んでいくのはやはりちょっと息子に気の毒な気がする。そういう部分はあるが、息子についてはともかく、主人公が超人的すぎ話が理想的すぎることについては「生きものの記録」「どですかでん」できちんと回答を出しているように思う。一つの金字塔であり、この作品がある限り自分が日本人であることに誇りが持てる。心から感謝したい。 【空耳】さん [地上波(邦画)] 10点(2010-08-01 05:02:20) 193.役所の実態をうまく反映していて内容としてはいいのですが、個人的にはいまひとつ好きになれない作品。どこが悪いのかはよくわからないが、強いて言えば葬式のシーンの印象が良くない。 【きーとん】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2010-07-17 11:41:44) ★192.いい話だとは思うけど、公園作りの過程を通夜の席で参列者の回想にて見せていく演出は、酔っ払いたちの話に付き合わされているような感じも含め不満。主人公ももっとしっかり喋るべき。いい大人がウジウジしすぎ、仮にも市役所の課長さんなんだからね。 【リーム555】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-05-13 23:45:07) 191.《ネタバレ》 黒澤映画はどうも自分にとってはムラがあるようだ。この映画のストーリーは嫌いではないのだが、全体的に退屈だった。なるほど、愚鈍になりきった志村喬の演技は素晴らしいのかもしれないが、愚鈍な人を見ているといらいらしてしまう僕にとっては、逆にこのうまさが苦痛だった。ボソボソしゃべるし、目はいつも下を向いている。彼がその鈍重さを生かしたまま、公園事業を貫徹する様はすごいことなのだろうが、どうも気持ちが乗り切れなかった。死ぬと決まる前から、もっと早くから仕事やれよ。としか感じられない。数十年間給料泥棒をしてきた人が最期だけ働いてもあまり感動を覚えないのである。 役所に入った友達の話を聞くと、今でも仕事をしない老人は職場に数多くいると言うことで、きっとこんな感じなんだろうなと同情してしまった。僕なら小田切さんみたいにさっさと辞めてしまうだろう。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 5点(2010-03-11 21:37:11) 190.《ネタバレ》 黒澤の作品は三船敏郎演ずる超人的な個性とテーマを融合させるのが作品の特徴です。その主役の個性を引き立たせる脇役たちの存在がもうひとつの特徴です。この映画が輝いている理由のひとつは、名脇役たちの名演技が際立っていることだと気づきました。陳情の主婦役の菅井きん(最高!)、ヤクザの宮口精二(眼光キラ!)、作家の伊藤雄之助、同僚役の左卜全(存在感だけで笑えます)、患者の渡辺篤、係長役の藤原釜足、などなど。みんな画面に登場した瞬間に「あ、こういう人なんだ」と自然と納得させられてしまいます。課長役の志村喬も中盤からは回想シーンのみの登場になるわけで、完全に脇役になってしまいます。 肝心の作品のテーマについてですが、黒澤は若いころはロシア文学に傾倒しており、この作品もその影響が強いと思いますが、トルストイとかドストエフキーとかを読み込んでからコメントを試みたいと思っています。 【爆裂ダンゴ虫】さん [映画館(邦画)] 10点(2010-01-10 15:54:47) 189.前半一人称、後半三人称、という仕組みは、たとえば死の直前を目撃した警察官が「とても楽しそうでした」というところで生きてくる。動き回る前半、室内ドラマの後半という対比は、後に引っ繰り返されて『天国と地獄』になるわけだ。黒澤作品で初めて主人公が死ぬ、ということでも重要な映画だし、立派な出来のフィルムだが、社会批評性の濃さが今となるとちょっともたれる。たしかに今でも社会はこのように、いや、もっと悪化してシステムに組み込まれているだろうし、助役が自分の名誉にしそれを下っ端がおだてるあたりの痛烈さは見事なんだけど、この映画で一番普遍性を持ち続けているところは、案外「初老の男の若い娘への傾斜」の部分かも知れない。その切実さと気味悪さがじっくりと迫るのだ。後に『どですかでん』でも養女にいたずらする父さんが出てくるが、ストイックな黒澤さんのなかにあるドロッとしたものを垣間見てしまったような感じがある。小田切は聖女的なものではない、主人公に再生の一言をハッピーバースディの歌をバックに投げるが、あとはもう登場しない。あの二人がもうしばらく付き合い続けたらどうなったか、という興味が少し残る。帽子がパリッとし、ラストで公園の土にまみれる、という小道具の使い方。ドンチャン騒ぎのあと老人の歌声が聞こえてくる不気味な感じ、ああいうとこはうまいなあ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-11-18 12:04:54) 188.最初に観たのはテレビ放送で中学の頃だったと思います。部屋で一人で観てボロボロ泣きました。それから二十数年の間に何度も観ていますが、今でも胸が詰まります。物書きと会って遊び回るくだりが、現代から見るとのっぺりしてだるく感じますが、そこを除けばテンポの悪さも感じません。「七人の侍」でボスを演じた志村さんが、この作品で全く違う男を演じて、この映画で初めて役者ってすごいなと思いました。公園で倒れて水を飲むときの子供のような瞳が忘れられません。生きることの幸せをどこに求めるか、それを「家族」とか「仲間」とかいったものに求める物語もあるけれど、この物語の主人公は息子に心の拠り所を求めるのもやめ、職場の仲間たちと目的に向かって心一つにして盛り上がったというわけでもなく、惹かれて止まない女性とも「ハッピー・バースデー」の歌のなか卒業し、自分の生きる充足感を決して他人に求めませんでした。二階から声をかけた息子のもとへ駆け上がりかけたものの、あっけなく「おやすみなさい」と明かりを消され置き去りになった主人公が、息子に何も語り残すことなく自分一人の「生きる」道を黙々と進み切った姿はカッコいいなと思います。ケータイをカチカチ常に誰かと繋がっている気分でいたい人たちにも、もし心に穴があるなら、この主人公の心のベクトルは穴を埋めるヒントになるかも。といっても「七人の侍」でも、この映画でも、ラストには「人は簡単に変われない」って姿が示されますが、そこを「そうそう、みんなそうなのさ」と甘えるか「自分はそうなりたくない」と願うか、それも生き方。大感動のままで終わらせないシビアな終わらせ方もニクイです。 【2014/7/23追記】ずっと引っかかっていることがあります。とっても小さなことなんだけど…主人公が夕日を見て美しいと感激する場面です。あの場面ですぐ「私にはそんな暇はない」みたいに歩み去りますけど、なんかそこに引っかかっちゃうんです。ラストで別の人が同じ場所で夕焼けを背景に立ちますから、それとなく意図することはあると思いますが「そんな暇はない」は足引っ張りに対してだけにして欲しかったかなー。僕も癌だけど、生きる残り時間のことについて思うのは、ストイックすぎるこの映画より、『ブレードランナー』だったりするのが不思議。 【だみお】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-11-02 23:54:29)(良:1票) 187.《ネタバレ》 一番泣けた映画は?と訊ねられたらコレと答えることにしている。鑑賞当時、公務員の末席を汚していた自分の仕事に対する姿勢をも変えた1本。今でもふとした時にかすれた声で♪命短し恋せよ乙女♪が頭の中でリフレインする瞬間がたまにある。そんなときは無条件で目から汁が出てくる。 【りんす】さん [DVD(邦画)] 10点(2009-09-19 23:52:41)
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