みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
19.《ネタバレ》 何だ?この異常な世界、怪しい雰囲気、危なすぎる世界、全てにおいて、とにかく異常である。空気人形と横になる中年の男、そして、男が居なくなった後に立ち上がり、人形が人間の形、姿へと変化して行く所の不気味さ、空気人形であるペ・ドゥナが人間の姿に変えて外に出て行くシーンも怖い。全くもって無表情なのである。ところがそんな彼女がレンタルビデオ屋さんに勤めることになってからはそれまでは見せなかった笑顔を見せる。この笑顔こそが彼女が空気人形でありながらも人間の心を持ったことの印であり、それはレンタル屋さんでの若い男や店長との会話でも解る。心を持つことでそれまで知らなかった別の世界を生きる彼女、男の為の性の道具としか扱われない彼女が心を持ってしまったことによる辛さ、別の意味での辛さを見せる何ともこの不思議で不気味な世界にどんどん引き込まれていく上手さというものがこの映画にはある。代用品扱いされてたペ・ドゥナを自分のおもちゃのように扱う男もこれまたレストランでの仕事では代用品としてしか扱われないという何とも皮肉めいたものを感じさせ、それはレンタル屋さんで知り合い、愛し合うようになった相手の若い男のお願いを聞くシーンにも現れている。ラスト、ゴミ袋の横で寝そべっているペ・ドゥナがあまりにも切なくて悲しい。燃えるゴミと燃えないゴミ、人間は死ねば燃え、人形は燃えないゴミ扱い。そこにある人間と空気人形としての違い、差別など色んなものを考えさせらる映画でもある。けして、楽しい映画ではないし、むしろ、嫌になるほど絶望的な話だが物凄く引き込まれ、余韻の残る映画になっている。本当は8点にしても良いぐらいだが、血なまぐさいシーンは苦手なのであれさえなければというこで7点です。 【青観】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-11-22 12:03:29) 18.《ネタバレ》 ◆なぜ「こころ」を持ったのだろう?と思いながら見ていました。それはやはり「愛されたから」ゆえ。しかし、「こころ」を持つことは望まれていない。◆登場人物は皆、渇いていて、満たされることを望みながら、実際に潤されることを恐れ逃げている。◆「代用品」で埋めることは、自らに渇きを残す。それは、不満足ではなく、それが実は「安心」なのではないだろうか。◆満たされること、次にくる「失う」ことへの、恐怖。◆彼女の名前「のぞみ」。「代用品」が「代用品」でなくなったとき、登場人物の「望み」が具現化されることにより生じる、悲劇の象徴なのだ。◆ペ・ドゥナの肢体と、ラストシーン・星野真理の横顔。本当に美しかった。 【ハクリキコ】さん [映画館(邦画)] 6点(2009-11-21 00:25:56)(良:1票) 17.《ネタバレ》 心を持ってしまった人形(ダッチワイフ)。ビデオ屋の男性に恋をして、心を持つことは苦しいことと知る、からっぽの空気人形。周りのひとたちも、悲しみを抱えながら、生きていた。ラストは悲しい悲しい。お腹を切ってしまったところは気持ち悪かった。超怖かった。全体的に、いままでの是枝監督のようなキレがなかったなぁ。ヒドいってほどじゃないけど、正直がっかりした。でも風船やきらきらしたものたちはとても印象的で美しかった。メルヘンな映画ですな。 【kaneko】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-11-18 21:02:09) 16.是枝裕和は教えてくれる。映画にはまだ仕事があるということを。非常に日本であって、グローバル。映画は国境を越えるのか?それはわからないが、とてもすごい。 メタファー等についてはさんざん書かれているので私が悪い頭で余計なことを書くこともなかろう。 スタッフ、キャストの力によるこの作品。有機的に絡み合って見事な作品として結実した。 結構映像のディテールまでこだわっているのにそれを見せつけるようないやらしさはない。主題ではない「映画・レンタル屋」もなかなか楽しい。話題に上る実在の映画からこの映画の年代をある程度推定できるが、決定的に時期を特定するシーンはなかったのでは。実在のソフトを写すときには焦点をぼかしてある。一方で実在しないと思われるパロディな映画ポスターなども出てくる。いやぁ、これは、映画、愛だなぁ。 私はこの映画を愛しているし、映画も愛している。うん。 【SUM】さん [映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2009-11-11 23:33:41) 15.《ネタバレ》 やっていることは紛れもなく変態ですが是枝監督独特の感性で人肌の温もりを精一杯伝えようとしていたのはよく分かりました。ただ雰囲気が重すぎましたね。直視しかねるようなグロテスクなシーンもありました。 【獅子-平常心】さん [映画館(邦画)] 6点(2009-11-10 00:32:49) 14.《ネタバレ》 後半における空気人形のいくつかのモノローグと、ラストのタンポポ(CG)が舞う描写だけは不要だと思うが、他はケチのつけようがない。 悲劇的物語に安易に救いを求めようとする観客の浅はかで空虚な幻想を、いとも容易く破壊する映画。 ペ・ドゥナ、リー・ピンビン、World's End Girlfriendの組み合わせってだけですでに奇跡でしょ、これ。 【xxx】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-11-03 22:20:50) 13.《ネタバレ》 人形に感情を持たせる題材から、人間の本質を垣間見せるという「ピノキオ」的手法は、決して珍しくはないのだが、現代東京を舞台にダッチワイフを起用するとは・・・変態是枝監督の面目躍如! 是枝ワールドの素晴しさは、人と人との関わりの中で見え隠れする人間の弱さ・愚かさ・残虐性~それこそヒトの本質か~を究極の優しさに満ちたカメラアイで、さりげなく切り取る所業にある。人間のダークサイドをこれほど美しく描写できる者は希有だ。「誰も知らない」同様、東京の光景のワンカットのみで私は目頭が熱くなる。 今回は、ぺ・ドゥナ(何と云う肉体美!)という愛玩具を手中に収めた監督は、日活ロマンポルノ的アプローチで若干、自己の悪趣味を披露しつつ、他人の暖かい息で満たされたい孤独な者達を、慈愛と自虐を持って描いています。 オルゴールの旋律が、無機質な豊洲のマンション群の一室・一室に命という灯りを点すように響き亘ります。 【つむじ風】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-10-18 03:09:44) 12.《ネタバレ》 ぺ・ドゥナは素晴らしい 空気人形からひとへと徐々に姿を変化させていくとき 彼女が触れる物干し竿に滴る雨水のように透明で潤いに満ちている 李屏賓は侯孝賢の映画で切り取るような美しさをワンショット毎に魅せるのだし その中で動く彼女は躍動的である 彼女は輝きを放ち続けるのだが その反面 呟き続けるこころの虚無は実につまらない 空気が入っただけの人形があるときこころを持ってしまう 肉体を保持することなく精神だけを得るのだ しかしそのこころは真のこころではなく ひとの真似ごとであり 本当のこころとは何かと探し求める話であるようで そうではない 彼女は肉体を得ることのできない虚無であり 周囲は肉体を満足に使いこなせない虚無である それらを同列に挙げて社会の虚無を描くということが無理なのだ まずこころが空っぽなひとなどいない 空っぽということは何も無いということだ ひとは虚無というこころを持って生きている だからこそ辛いのだし乗り越えるのが困難なのだ 無いものを越えるなんて誰にでも出来る 虚無という過酷さはてっぺんが見えないほどに聳え立っているのだ であるから彼女が本当のこころを持ちたいと追い求めれば追い求めるほど ひとの本当のこころというのは実際は大概が虚無である という過酷さに堕ちていかなければならない しかし 恋をしました 恋をすることは辛いことです などという社会性の稀薄な問題などさっぱり過酷ではない 社会の虚無とは恋心などという甘ったるい幻想とは比較にならないほど過酷だ その過酷さに直面しなければ虚無の向う側は現れない どのひともそれぞれあーだこーだと事情を抱えていてるのは当たり前であるし 吉野弘の「生命は」という詩による人類愛を讃えるような青臭さ つまり虚無を他者に満たしてもらおうという甘ったれた結末 それでいいのかという疑問しか沸かない そんなことまったく興味がないし 2時間近く椅子に座って わざわざ映画なんかから教えてもらうことではない この映画では是枝監督が今まで描いたような人間の悪さという部分が欠落している その人間の悪さというのは当たり前のものなのにも関わらず それをわざわざ計算高く緻密に用意周到に描くから嫌いだったのだが いざ毒を抜いたら随分優しくなってしまったなという印象だった 【すぺるま】さん [映画館(邦画)] 5点(2009-10-16 23:36:51) ★11.《ネタバレ》 音楽がWorld's End Girlfriendだからってのもあり気になってましたが素晴らしかった。怖かった。 まずペ・ドゥナの可愛さが存分に発揮されている。人形を演じる点で重要な純粋さも韓国人女優ということもありマッチしている。 (関係ないけど韓国の女優さんはやたらと脱いでるのね。日本とは違って・・・) 次にストーリーの重さ。空気人形という性の対象かと思いきや実は代用品というフレーズを多用することにより各人の存在意義を必要に問うている。 そこで怖いのが性悪説にもとずく人間の在り方。人形は心を持ちまず嘘をついた。 人の部屋に入ったらまず写真を覗く。 逆説的に純粋なまでに人の言葉を信じたがためにあんな残酷なことが起こってしまったり自分をゴミ捨て場に処分したり・・・怖かった。 リンゴと空き瓶の冬の大三角形はきれいだったとは思わなかったけど あのハッピバースデイのシーンは背筋がぞくっとなった。 登場人物の少なさは◎ももうちょっと各々掘り下げてもよかったのでは? でも全体的に素晴らしい出来。もっかいみたい。いや見ます。 【ゆらめきクルージング】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-10-14 21:21:52) 10.《ネタバレ》 とても胸をうつ映画だった。空気人形っていうのは、現代に生きる人々のある種の象徴であり、その実体であり、何のつながりもない登場人物たちの心無き心の純粋な在り様であり、、、まぁいろんな意味にとれそうだけど、そのメタ的な要素以上に僕はペ・ドゥナ演じる生き生きとした「空気人形」の姿に胸を打たれたのである。 僕が一番感動したのは、やっぱり、彼女の空気を抜き、吹き込むところかな。彼は言うのである。「空気を抜きたい」と。それは多分、空気を入れたいということ。空気を抜き、そして吹き込む。また抜き、吹き込む。その時、彼と彼女を捉えた充実感。これは何というコミュニケーションだろうか。彼女の心を捉えたもの。しかし、彼女がそれを手に入れてしまったこと自体がそもそもの悲劇なのであった。。 得られないことよりも、失うことの方が、つらい。 (川上弘美『これでよろしくて?』より) 『空気人形』は、心を持ってしまった空気人形のお話。空っぽなのに、心を持ってしまう、空気人形。心を持つって、一体どういうことなんだろう? 心って何だろう? 空っぽの心って? 空っぽって?? 空っぽな人間と空っぽな空気人形。でも、本当に空っぽなのは、空気で出来ている空気人形だけ。僕らは実体として空っぽなわけではない。もっと得体の知れない機能のかたまりとしてあるもの。でも、人間として、関係としてあるとき、人は空っぽになる、ような気がする。そして、空っぽに耐えられず、それを埋めたいと願う。 人は自分自身が空っぽなのではなく、ただ空っぽに捕まえられるのである。その空っぽを相手にして(格闘したり、哀願したりして)、どうしようもなく空振りしてしまう。この作品の登場人物達は、実は空っぽというよりも、ただ空振りしているだけなのではないか。だから、彼ら(彼女ら)に希望は、、、ある。それに対し、空気人形は失うことによって心が萎み、最後にまた空っぽになってしまった。。 過食症の女性はバットを振り続けていたからこそ、偶然にもボールに当てることができた。窓を開けることができた。そういう類の希望がこの作品にはある。僕らの中に潜在化した「心をめぐる物語」。それが登場人物達の心を通り抜け、空気人形によって語られる。つなげられる。この映画は、そういうファンタジーなのだと思う。 【onomichi】さん [映画館(邦画)] 10点(2009-10-09 23:10:30)(良:1票) 9.《ネタバレ》 心を持った空気人形は、その空洞を満たしたかった。愛で満たされることが最もシンプルで最も満足を得られる方法だろう。でも、本来男性の自慰のために製作される空気人形はあくまで道具であり、行為を通して愛情が注がれることはない。また、自慰行為が纏う後ろめたさは、人形の自我を否定する。持ち主の板尾が「元の人形に戻って欲しい」と言ったのは、残酷だけどよく分かる。もっと残酷だったのは、レンタル店のお兄さん。彼は空気を抜いては吹き込む、を繰り返した。男性観賞者は同意すると思うが、しおれて蘇るぺ・ドゥナの肉体に性的興奮を覚えるのである。恋心を抱いた相手からも道具として扱われる…。そんな扱いを受けても、彼女はその本能からか、献身的な姿勢を失わなかった。自慰行為の後ろめたさを全身に引き受け、アイデンティティを無視され、それでも健気に献身する彼女は性の女神だ。人の業を引き受けて十字架に磔にされた有名人にイメージが被るが、こちらは数名の下半身欲求に救いを与えただけ。人は心を満たすことを希求する。でも、満たされている人は滅多にいない。空気人形の視線を通して、心の飢餓感と、満たされることの難しさを見せられる映画でした。ペ・ドゥナの物怖じしない演技が、重たいテーマを優しく湿り気なく見せてくれます。 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 5点(2009-10-09 02:31:23)(良:1票) 8.《ネタバレ》 印象が「TOKYO!」の一編、ミシェル・ゴンドリー監督の「インテリア・デザイン」と酷似している。モノ化する人間とヒト化する物体。どちらも途方もなく寂しいファンタジーだ。私にとって東京という街は特別である。渇いていて、クールで、美しい街。積年憧れてはいるが、住んだところでおそらく永久に融合できないだろうと思っている。この映画は私の憧れる東京のイメージそのものだ。身体に満ちているものが空気だろうが血液だろうが関係なく、人は誰かに使われて、いらなくなれば捨てられる。その結論はあまりに寂しいが、そういうものだから生きていられるのだと思う。観たときの気分かもしれないが、顛末があまりにも現実に正直で、非常に感銘を受けた。そしてなにより、ぺ・ドゥナがこんなに綺麗だなんて知らなかった。 【よーちー】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-10-08 19:29:13)(良:1票) 7.ペ・ドゥナの魅力は十分に伝わります。登場人物が多く、それぞれの背景が語られないまま、関連性を雰囲気で見せていくところがはっきりせず好きではないです。題材の良さに6点。 【noji】さん [映画館(邦画)] 6点(2009-10-04 01:05:38) 6.こりゃポルノだな。昭和時代、場末のポルノ小屋に入場するとよくこんな映画をやっていた。どっ暗い、人が普段眼にしたくない現実の一面を撮って何か意味のあることをやっている気になるというあのエッセンス。人によるだろうが、私は共感しない。生理的にダメ。途中から「もうわかったから早く終わってくれ」と願うばかりであった。 エンドロールを見て原作があの自虐の人だと知り納得。やだよ。 こんな話にはもったいないほどの映像の質の高さには唸りっぱなしだったけどね。 【アンギラス】さん [映画館(邦画)] 5点(2009-10-01 19:55:19)(良:2票) 5.《ネタバレ》 最初は少しかったるいかと思っていたのですが、主人公が幸せモードになったアタリから巻き込まれてしまいました。私でも少々どぎつい印象を持ったのでまずは好き嫌いが別れる映画だと思います。ピノキオに始まってブレードランナー、T2やAIなどこの手のテーマは多いですがここまで生々しく描いた映画もそう無いように思います。ゴミためのような街でゴミような人々がそれでも生きているという事を「空気人形」を通して切々描きながら、ドキュメンタリー出身の監督さんだからかリアルながらも綺麗な映像で撮っています。群像映画的な要素もあるのですが細かい要素をうまく拾ってまとめているように思えました。最後に女性が「きれい」と言う光景は「きれい」というにはあまりに切なく悲しい光景でエンドロールが始まっても劇場内の空気がしーんと止まっていたのを憶えています。「何で空気人形が韓国人なんだ?」(設定も韓国人ぽい)とも思うのですが観ているうちに絶妙の設定に思えてきます。ペ・ドゥナが見事、絶妙な映画です。 【ことひき】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-10-01 19:07:11) 4.《ネタバレ》 前半の意外なほどベタな展開から、後半の展開は驚き。きっと前半が予告編の全て。後半からがこの映画の真骨頂。 空気を抜いて、また入れて、というシーンにものすごく官能を感じました。 特に関わり合いの無い人物たちが出てくるのだけれど、きっと彼らは何か満たされないものを持っていて、それを代用している象徴が空気人形なのです。 空気人形が息絶えた時、その人たちは本当の自分を直視できたのかもしれません。 それにしても空気人形が腹を裂いて空気を口から入れるシーンや、ポリ袋に死体を入れるシーンなんかはぞっとするほど良かった。哀しいほどの愛情。 ちょっと雑な観は否めないけど、ペ・ドゥナがそれを補ったかな。 詩がかなり重要なファクターのようです。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-09-30 23:41:55)(良:1票) 3.予告を見てとても心が揺さぶられたので観に行きました。期待したほどではなかったんですが、でも邦画としてはかなりいい出来だと思います。特筆すべきはやはりぺ・ドゥナでしょうね。彼女が完璧なおかげでこの荒唐無稽になりがちなストーリーが、非常にリアリティあふれる大人のおとぎ話になっています。 心を持つことは辛い。時には相手をも辛くさせる。けれども、辛い思いをするからこそ心躍る幸せを噛みしめることも出来るんですよね。この忙しい東京で生きていると、ついそんなことも忘れてしまいそうになります。っていうか、東京の描写がまたよかった。 映画館にいる一時、切なくなったり、癒されたり、考えさせられたりと、とてもいい時間が過ごせました。 【HAMEO】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-09-28 16:12:04) 2.《ネタバレ》 非常にシュールで哲学的でいろいろと考えさせられる作品でした。 この作品における「空気人形」とは、社会の中での自分の立ち位置、ポジションに埋もれながら惰性で生きている空っぽな現代人の象徴ではないでしょうか。そして心を持った「空気人形」は、われわれにそういった空虚な人生からの脱却を呼びかけているように感じました。心を持つことによって辛く哀しい状況に出くわすこともあるかもしれない、しかしながらそれこそが人生なのである・・・・・ しかしながら、この作品はキャスティングが完璧でしたね。ペ・ドゥナの不思議な魅力が「空気人形」役にズバリとはまっていました。しかしまあ、韓国のトップ女優がよくぞこの難しい役を引き受けてくれたなと思いますね。この役は演技力のある人でないと下品な感じになってしまうでしょうから。 岩松了のいつもながらの本当にしょうもないおっさん役も見事でした。そして、板尾創路のあのキャラはまさに日本映画の宝であるといっても過言ではないですね。 はっきり言って、万人受けする映画ではありません。嫌悪感を抱く方も少なくないと思いますが、観ておいて損はない作品です(ただ、デートとかにはちょっと・・・・・)。 【TM】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-09-27 00:32:05)(良:1票) 1.《ネタバレ》 映画の価値って、見た時の状況やタイミングにも大きく左右されますね。私は東京に生まれ暮らして。この夏、自分的なキーとなったスポットはお台場と東京タワー、ついでに水上バス。これを見たのが豊洲で。そして今の半分ボケた父親との孤独な介護生活。どれだけこの映画にシンパシーを抱く事になったやら。不完全な器としての体に心が宿ることで、お互いに足りないものを補い、新たな創造に繋がってゆく、それが生命。そして、都市の、人の中に暮らしながら自分の存在をハッキリと確認できない、足りないものを抱えたままに過ぎてゆく人々の孤独が空気人形ペ・ドゥナに集約されてゆきます。心を持つ事の切なさ、つらさ、そして素晴らしさが、彼女の「透明な存在感」によって心に染み入るほどに繊細に織り成されてゆきます。象徴的に描かれてゆくフェイクたち。だけど、フェイクと本物は何を以ってそこに価値の差が存在しているのかを問いかけてきます。美も醜も生も死も自分のものとして演じられる唯一無二なペ・ドゥナという存在があればこそ成立した映画。また、彼女自身が作品として成立している映画でもありました。これまでのどの出演作よりもペ・ドゥナの映画で、そしてペ・ドゥナが映画で。 【あにやん🌈】さん [映画館(邦画)] 9点(2009-09-26 22:31:06)(良:1票)
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