みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
14.宋山という傲慢な素人の鼻っ柱を圧し折り満足げな喜多八だったが、宋山が自殺しちゃったからさあ大変。恩地家を勘当され、能の世界から追放されてしまう。一方、宋山の妾かと思いきや実は娘だったお袖も人生が大きく変わってしまい…。成瀬巳喜男×名カメラマン中井朝一ということで映像美は随所に散りばめられているが、次郎蔵との出会い以降、都合よく進みすぎる物語にはあまり惹かれなかった。あと、間違ってたら大変申し訳ないんだけど、花柳章太郎の能パートって吹き替えだよね? 声が違いすぎてどうにも違和感が…。山田五十鈴は当時20代半ばだけど、可憐さを上手く表現していたと思う。日本の伝統芸能に興味がある方にはおススメできる映画。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2019-07-18 22:39:27) 13.戦時中はなぜか芸道ものはよく作られていて、これが当局にとってどう国威発揚とつながっていたのか分からないが、後世の映画ファンにとってはありがたいことだ。脚色が久保田万太郎である。芸道ものの典型である「慢心によるしくじり」のドラマ、より完璧な境地を目指す者のトラブル。新内流しに落ちて門付けして回るあたりのわびしさ、それほど芸道ものが得意という監督ではないかも知れないが、こういう“わびしさ”を描くとなると一級である。彼と対になるように仕舞いをする芸者を置いて、彼女も芸に関していわば「しくじって」おり、そのしくじり同士が、松林の木洩れ陽の中で稽古をするわけだ。このシーンの美しさ。おっとその前に、そのお袖の消息を初めて喜多八が耳にする舟着き場のシーンがある。なんでもない舟待ちの人々のカットなんだけど、いいんだ。風。ドラマの中では、人と人が芸を媒介にして行動する。あるいは自殺に追いやられ、あるいは再会し、そしてすべてがラストで一部屋に集められるのも“芸”ゆえのこと。父が呼んだ芸者が仕舞いをし、その中に息子の署名を見、この鼓の音を喜多八が聞きつけアンマの幻から逃れてくる。その中心で舞うお袖の仕舞いが無表情ってのが、シマるんだなあ。観つつ、舞台となった明治と製作された昭和18年の双方に思いがいって、胸が詰まった。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2009-12-31 12:14:56) ★12.何だろう?この不思議な感じのする作風は?何だか成瀬映画を見ているというよりは溝口健二監督の映画を見ているような錯覚を起こす。それは全てにおいて力強い感じが漂う。芸に生きる男と女、話としての面白さを楽しむ映画というよりは俳優の演技を見る映画である。出演者の演技が皆、素晴らしい中で特に山田五十鈴の演技は凄い。舞の場面のなんたる迫力!ただただ圧倒されました。成瀬作品らしからぬ雰囲気の中にも常に女の美しさと力強さとを難なく描き切るところは凄い監督であることを認めつつも成瀬作品としては普通の出来栄え!(好みという意味でも8点以上は付けられない)普通と言っても7点レベルには達している所は並みの監督とは大違いである。これ、はっきり言って下手な監督、下手な脚本家に下手な俳優なんだかもよく解らないような人が演じていたら駄作間違いなしに終わっていたであろう!やはり映画は良い監督と良い脚本、そして、良い役者が揃ってこそ良いものが出来上がると言っていい。成瀬巳喜男監督の映画を見ているとそう思わずにはいられないのである。成瀬巳喜男監督だからこそ傑作に成り得た映画がいったい、この世に幾つ存在することか?いずれにしてもこの映画も成瀬巳喜男監督だからこその映画であることだけは間違いない。 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-12-10 21:55:47) 11.歌に三味線その上、舞いまでと三拍子そろつた芸の達人、喜多八を演じたどこか長谷川一夫を思わせるような二枚目花柳章太郎に山田五十鈴と柳永二郎の絡み合い加減の程よさは心地よく、この落ち着いた映画が戦時中の作品とは驚きです。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2009-11-06 13:33:55) 10.能における「幽玄」や「妙」(柔和、優艶、優雅)の映画的表現ともいえるのが「松風」を伝授する松林の場面における自然光の傑出した美しさだろう。木立を縫って緩やかに下降するクレーンショットの情調。かすかに揺れる木漏れ日の光。山田五十鈴の無心の舞。明け方の路地を歩むショットとの的確なオーヴァーラップとその反復。それらが渾然一体となった絶品のシークエンスである。撮影担当の中井朝一氏、照明の岸田九一郎氏は、同じく能の様式を取り入れた黒澤作品『蜘蛛巣城』などでも優れたスタッフワークを見せる。岸田氏は『ゴジラ』を始め、数々の東宝怪獣映画も手がけることになるが、超自然的存在を照明術によって映画の中に浮かび上がらせるという意味で、能の世界を主題とした本作と相通ずるものがある。 【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 9点(2008-12-08 23:05:40) 9.《ネタバレ》 神保町シアター、山田五十鈴特集にて鑑賞。 念願かなって、やっと観ることができた作品。 しかし退屈だった。 上映中、天井を見上げてしまうくらい退屈だった。 芸道モノ、山田五十鈴のねぇちゃん、下膨れ章太郎、、と個人的に苦手な要素がてんこ盛り! 都合よすぎる展開と、お約束のようなハッピーエンド。 成瀬作品の中では、最もつまらなかった作品となってしまった。 【にじばぶ】さん [映画館(邦画)] 3点(2008-12-06 22:24:20) 8.泉鏡花の作品は昔読んだことがあって印象に残っていますが、このストーリーはあまり面白くありませんでした。演技等を楽しむ作品なんでしょうね。私はストーリーが面白くないとダメなのでこの点数。 【くろゆり】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-02-08 19:08:27) 7.芸と芸とのぶつかり合いの迫力。新派を支えた花柳章太郎と、同じく新派出身の山田五十鈴の素晴らしさ。花柳章太郎の端正な面持ちは、戦後同じ役を演じた市川雷蔵にも負けてない。彼は、同じ芸道もので溝口健二の『残菊物語』でもいい演技をしていた。戦後の衣笠貞之助版の方が20分くらい長くて、その分ドラマの展開もしっかり描き込まれているが、でもこの戦前の成瀬版も、負けず劣らず素晴らしい。 【いのうえ】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-03-18 23:26:21) 6.昨日は歌舞伎を観にいったんだけど、今月の演目はまだ2日目だったからか全体的にどうにもバラバラでアラばかりが目についてしまった。複数の人間によって作り出されるアートと言うのはあらゆる要素がシンクロする瞬間に醍醐味があるワケで、それは人間という孤独で不完全な生き物が、束の間誰かと何かを共有する(と錯覚する)瞬間にこそ至福の喜びを見いだすからではないだろうか。この作品ではそんな瞬間が実に見事に表現されていると思う。音楽映画では「指の動きを完コピしていた」とかって事が評価される事があるけど、そんな事やろうと思えば誰だってできる。音楽とは呼吸なのだと私は思う。【STING大好き】様ご指摘の宋山との対決シーンにおける緊張感!あの瞬間から身を乗り出して画面に見入る私。「人を死に追いやるような芸を許すわけにはいかない」。芸事とはそれ程までに覚悟を要するのだ。流しに身を落としても隠しきれない恩地喜多八の三味線と歌声のセクシーなこと!落ちぶれても決して哀れっぽくない太い音には説得力がある。そしてクライマックスでは全てが鮮やかにシンクロし、我々は至福の時を味わうのだ。このラストシーンには涙が止まらなかった。何て美しくて強い映画だろう!超名作! 【黒猫クロマティ】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-11-03 21:22:20)(良:1票) 5.芸の道に生きる男の波瀾に満ちた物語の中で、未熟さゆえに人を自殺に追い込んだことによる心の葛藤と父との絆、そして女との純愛が見事にラストの大団円で収束してゆく様は圧巻。個人的にはこの大作感が成瀬らしからぬ作風だと感じましたが、「能」という伝統芸能を娯楽色豊かに、それこそ誰にでも楽しめ得る作品に仕上げた脚本演出が素晴らしいと感じた。しかしなんといっても一番の見せ所は山田五十鈴の「舞い」ではなかろうか。能の舞いを知らないので実際のところどうなのかはよくわかりませんが、事実あの「舞い」は、もう美しいとしか言い様がないし、ごまかし無しの長回しでじっくりと見せてるんだからきっと能の舞いとしても素晴らしいんですよ、きっと。私のような素人をウットリさせたのは成瀬の演出によるところが大なのかもしれませんが、その演出も山田五十鈴の「舞い」そのものの美しさがあってこそだと思いました。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-10-04 14:23:01)(良:1票) 4.立派な作品。感じ入りました。鏡花お得意の大団円の趣向も、うまくはまりましたね。それにカメラ、なかでもあの稽古の森の中のシーンの映像美に息をのんだのは私だけではないでしょう。新派の重鎮の役者たちの安定感ある演技もよかった。若い柳永二郎がいい味出してましたね。それにしても、これが戦時中の映画だということを忘れてしまいそうです。 【goro】さん [地上波(字幕)] 10点(2005-09-24 05:04:18) 3.成瀬作品は文芸作品が光っています。これも名作ですね。因果が巡る必然と偶然のバランスが心地よい印象を残します。芸の道の厳しさと、素直に受け入れて耐える主人公が健気で、日本の伝統的美学によって輝いています。山田五十鈴は日本人形そのままですね。気品のある作品だ。 【パセリセージ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-09-18 14:06:35) 2.今は殆ど失われてしまった日本の伝統的な文化を伝えてくれる、あまりに貴重な映像に、思わず姿勢を正して見ました。(といっても、心の中だけですが、、、えへへ)・・・・・まず宿場の街角で喜多八のひく、三味線、小唄の風情があること、、、。それに能の所作などの折り目正しいこと、、、。そして、人を間接的にしても殺めてしまったという理由で、父が子を勘当し、一切うたいを口にしてはいけないという厳しい処断を下し、子がそれを守るという姿。、、、、西洋風の家族、特にアメリカやイタリアの家族では全く考えられないと思われます。、、、、、伝統的な芸の世界に生まれながら、未熟さ故に親から勘当され世間を放浪するという構図は、溝口『残菊物語』と成瀬『歌行燈』は同じです。映画としての美しさや、人間模様という点では『残菊』、芸や日本の文化の記録としては『歌行燈』なのでしょうか。、、、、ただ『残菊』は、現代の世界にもどこか通じるところがあるようにも思いますが、『歌行燈』の世界は、今とは異質な世界を再現してくれているようで、その点で、強く想像力を刺激されました。 【王の七つの森】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-09-13 15:17:11) 1.映画を見てこれほど日本の伝統芸能の美を強く感じたのは初めて。能の舞台とか生で見たくなりましたから。能を映像で観た経験はないわけではないのだけど、正直今までたいしていいとは思えなかった。しかしこの映画では現代のJポップ(つまり僕が普段聴くような音楽)からはかけ離れた歌声が、素直に美しいと感じられる。その文化に馴染みのない人間まで感動させるというのは、生半可なことではありません。 とくに終盤、お袖の舞がきっかけとなって離れ離れになっていた人々が運命的に結び付けられるシーン。震えましたね、寒気がして。いつもとぼけている次郎蔵が突然真剣な目になって鼓を構えるのもかっこよかった。喜多八の「真に努力して身につけた芸は人の心を打つもの」(←うろ覚え。絶対間違ってる…)という言葉、その通りです。芸に身を捧げる人の想い、映画という芸(?)に込められた成瀬監督の想いを感じました。美の追求の果てに生まれた作品は、時代を超えて胸を打ちます。 【no one】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-04-25 23:31:55)(良:2票)
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