みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
78.《ネタバレ》 おやじ狩り的な暴漢に襲われて、記憶を失ったおじさんが、貧困コミュニティの中で生活し、おばさんに恋をするといったお話。時代設定は、金属製のオシャレな便器や、医療器具などを見るに現代なんでしょうけど、少し黄ばんで粒子の荒い、でも空だけはやたら綺麗な映像が、どこか郷愁を誘います。冒頭で理不尽な暴力がある以外は、底辺社会での男の生活を追う静かな作品。どこか小津作品を感じさせます。ご都合主義のジェットコースター的な展開からは最も遠い位置にあると言えます。それだけに、序盤の非現実的なコメディー描写が必要だったかどうか疑問です。この作品に描かれる貧困が、フィンランドの現実社会をどの程度反映しているのか、こちらに知識がないために判断できず、途上国の作品で描かれる貧困ほど、有無を言わせぬ強烈な切実感がなく、そういったところで、どうしても印象が薄くなってしまうんですよね。人間を疎外する硬直的な社会システムがテーマの一つと考えられますが、記憶がないというのは特殊ケース過ぎて・・・本来手厚い福祉社会システムの中で、どういう人間が網からこぼれて貧困に陥るのかの方に興味が行ってしまいます。ドキュメンタリーじゃないので、それを求めるのは違うかもしれませんが。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 5点(2023-09-05 19:54:21) 77.《ネタバレ》 極寒の地であるために、ロシア語は口をなるべく開けずに発語できるように進化した言語だという説を聞いたことがあります。まさかフィンランド人も、なるべく無表情で生きて寒気に適応してきたのかな?そんなわけあるはずがない(笑)。なんていう妄想が浮かんでくるぐらい、少なからぬ登場人物がいるのに全員がほとんど無表情で、驚くべきことに誰一人笑顔すら見せない。ストーリー自体は、決してオフビートではないけどかと言ってシリアスというわけでもない、なんとも絶妙なバランスなんです。フィンランドの蟹江敬三と岸田今日子の淡いラブストーリーといった趣きなんですけど、やはりテーマは“敗者の人生やり直し”ということでしょう。過去のない=記憶がないというのが重要なプロットですけど、このフィンランドの蟹江敬三氏がほんとに記憶喪失なのかという伏線が埋められていて、あえてそれに回答を与えないカウリスマキの不思議なストーリーテリングはホントに彼らしい。冒頭の病室で、心肺停止したのに突然蘇って脱走するところからして「これは寓話です」と監督が宣言している感もあります。ホームレス状態から立ち直ってゆく過程も、決して平坦ではなく一歩前進・二歩後退という感じのもどかしさ。どん底に落ちた人生はあとは上がってゆけるもんだよ、と言ってもそんなに簡単なもんじゃないということなんでしょうが、ここは能天気なハリウッド映画とは一線を画する視点じゃないでしょうか。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-19 22:05:46) 76.《ネタバレ》 30年くらい前かなあ、すごく話題になってた監督なんですが一度も観たことがなかったんです。最近映画専門チャンネルで特集が組まれて何作品か録画しました。この独特の雰囲気、まったり映画を観たい時にハマるかもね、ちょっとクセになりそうというか。 この季節、秋の夜長に観るのにいい映画という感じです。 記憶が無くなり、自分の名前すら思い出せない。自分を知っている人もいない。 かなり絶望的な状況なのに彼はそれを受け入れて淡々とその日を過ごし、恋までしちゃうんですね。 なんか普通に受け入れ過ぎでそこがちょっと不思議で違和感なんですが、てことは捨てたい自分や人間関係、それまでの人生だったということかしら? 人生のやり直しが可能になったというようなポジティヴな話でした。でも別人になる必要があるわけですね。 そういえば突然蘇生したんですよね、一旦は死んだってとこが重要なのかしらね。 嫌いな人はかみ殺すらしいけど、どう見ても愛らしく利口そうなハンニバルが良いです。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-10-31 15:32:38) 75.《ネタバレ》 どこが面白いか分からないけど、説明しづらい面白さがある。主人公の過去に何かあったに違いない。ただ、キャッチコピー通り、人生は前にしか進まず、いつまでも後ろ向きになるわけにはいかない(凶悪犯ならまだしも)。「何のために生きているのかを問う必要があるのかい?」と現代でも通じる監督のメッセージを感じた。一部を除いて、善意の人たちによるささやかな日常が愛おしく、列車で寿司と日本酒と歌謡にロマンがほとばしる。 【Cinecdocke】さん [DVD(字幕)] 6点(2022-05-01 00:25:24) 74.《ネタバレ》 港で溶接をやってのけた際は、何かピンときて、何故か体が覚えている。。。といった状況で、記憶が戻った訳ではないと思えたのですが、奥さんの所に帰った際、母親を心配するような言葉をかけた瞬間、違和感を覚えた。ひょっとして彼の名前は「コスイネン」だったりして。 【マー君】さん [DVD(吹替)] 4点(2016-10-23 11:33:00) 73.《ネタバレ》 まさに雰囲気映画。寓話といった方が近いかもしれません。見知らぬ土地で記憶喪失になった男が人生の再出発をするお話です。何もかもトントン拍子。家を借り、仕事を得て、恋人を作る。支えてくれる友達も自然に出来ています。過去を取り戻そうとする素振りすら見せず、今を楽しむ。そんなシンプルな男の生き方がとても清々しい。大きな事件はありません。従業員に給料を支払おうとする社長の話くらいでしょうか。悲劇なのですが、さらっと流しているのでそれほど深刻にも感じられないのは見せ方の妙でしょう。偶然過去への繋がりが目の前に現れますが、そういうもの、と割り切って今の生活に戻る。独特の空気感も相まって眺めるという言葉が良く似合う映画でした。 【kirie】さん [ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-10-07 11:56:55) 72.《ネタバレ》 アキカウリスマキ、不況映画の真骨頂。どんな時でもこの世には男と女がいる。そこしか居場所がないのなら、悪い人じゃないなら、何とかなるし、帰るとこがあれば、帰ればいい。それだけのことだ。辛いときには、ここでも音楽がポイントとなる。日本でも、このような映画ができる下地はあるんだろうけど、創られないのは何故?社会派なんか創んなくていいから、魂の作品を創ってよ!日本の作家さん! 【トント】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2014-10-04 23:03:30) 71.登場人物の押し殺した表情から滲み出る喜怒哀楽の感情に味わい深さがありました。特に人生を後ろ向きに進んでおとし前をつけた強盗犯のエピソードが印象深く、作品全体から監督の押し殺した思いも滲み出ていました。 【The Grey Heron】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-03-17 01:23:22) 70.《ネタバレ》 記憶喪失になった男が人生の再出発を切る、ただそれだけの映画。アキ・カウリスマキ監督の作品らしくそれ程大きな出来事は起きず、淡々と過去を無くした男の人生を描いていく。いつだって人生はやり直せるし別に過去に拘らなくって良いじゃないか!というのが監督の言いたいメッセージだと解釈しました。今までの作品を観るにそういう話をとる監督だしね。 【民朗】さん [DVD(字幕)] 6点(2012-05-06 00:09:37) 69.なんてゆるい映画なんだろう。主演も中年のおじさんおばさん、それに加えてあまり感情を表わさず無表情で棒読み。それなのに見た後のこの後味の良さはなんなんだろうか。やはり映画は奥が深い。 【akila】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-02-21 21:14:13) 68.《ネタバレ》 全編を通して登場人物が皆、喜怒哀楽を表に出さない独特の雰囲気が自分はちょっと苦手でしたが、序盤に主人公の男にビールを奢るおじさんの「記憶がなくても心配ない。人生は後ろには進まん。後ろに進んだら大変だ。」という台詞に象徴されるように、いつまでも引きずってみたところで時が後ろに進むことはない。だから過ぎ去った過去はもういいじゃないか。今からを頑張って生きればいいんだというこの作品の人生に対する前向きなメッセージが分かりやすくて良かったです。だから普通なら記憶喪失に陥ればもっと精神的に苦しむだろうし、あんなに冷静にいられないかもしれないけど、自分は一体何者なのか?とそれ程苦しんでいる様子を見せない本作の主人公の男はこれでいいんだと納得させられました。主人公の男が新たな人生のスタートをきり、これからの彼の人生の幸せを予感させてくれるラストシーンも鑑賞後にとてもいい余韻を残してくれました。 【とらや】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-09-05 23:32:25) 67.《ネタバレ》 うう。 「お母さんはどうした」って、あのセリフが引っかかってしようがないのですが、そうすると花守湖さんのおっしゃるとおりなのでしょうか。なぜあそこで妻の母の話が出る。 そうすると根本的に違う話になってきます。私はうっすらと「過去がない人間がいったいどうだというのか」と考えながら見ていたのですが、素直に見ると「過去がなければ悪意ももたない」というふうに見ることができます。 この話でもっとも重要なのは「悪意と善意」です。ぜったい悪意がありそうな人が、実はそうでもなくて助けてくれるという、私たちが通常認識している「この世界」とは違う世界がここにある。 「過去がなければ悪意をもたない」のなら、「悪意は過去に原因がある」であり「過去の出来事が人に悪意をもたせる」でしょう。 けれどけれど、花守湖さんの説のとおり、そして「お母さんはどうした」を素直に受け止めるなら、カレは「過去があるけど意図的に悪意を捨てようとしていた」になります。そして作り手はカレに何も説明させないので、うっかりと見過ごしてしまいそうになります。 すると、溶接工なのに「オレは農民だから」とじゃがいもの処分方法についてしつこく説明するとかいう部分はなんだったのでしょうね。身元を隠したいなら港で突然溶接作業を手伝ったのはなぜなのか。 カレの行動は謎だらけで、カウリスマキの意図は解明できません私には。 とりあえずカレは「悪意を捨てる」ことに成功しました。意図的にか、図らずもかは不明ですが。 そして1人も魅力的な容姿の人物が出てこないこの作品を見て、うすぼんやり思いました。私たちは若くなくても、美しくなくても、お金がなくても、役に立たなくても、〝生きていてもいいのだ〟と。それどころか〝恋をしてもいい〟だし〝他人の善意に甘えてもいい〟でさえあるのです。 こういう感想を抱かせる映画はあんまりない。死にたい気分の人はぜひ見てほしい。 それから「なぜ電車の中で寿司を食う!ジャパニーズ・サケを飲む!クレイジーケンバンドのムード歌謡を流す!」!! この監督は馬づらの女性が好みみたいです。なかなかひねった趣味です。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-05-02 12:59:26)(良:2票) 66.こういう優しい映画好きです。 【白い男】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-04-15 22:43:32) 65.職安のおっさんが一番ヤな奴でしたね。 【ケンジ】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-01-25 23:09:14) 64.《ネタバレ》 第二次大戦中、フィンランドは日本と同じ枢軸国側に立って戦った国です。映画の最後の方の列車の場面で、主人公は箸を使って寿司を食い、日本酒を飲み、バックには演歌が流れています。登場人物にステレオタイプの善人は皆無で、みんな笑うと損だと思っているかのような無表情。唯一善良なのは危険きわまりないとお墨付きの猛犬ハンニバルくらいでしょうか。風景は暗く、うそ寒く、救いようのないという点であまりにもリアルで、デズニー映画の対極にある傑作映画です。後半、救世軍のバンドが炸裂するシーンは今も目に焼き付いて離れません。 【きのう来た人】さん [DVD(字幕)] 10点(2009-01-17 06:59:22) 63.暴漢に襲われる冒頭からは想像できないような、どこか微笑ましく、どこか懐かしいようなストーリー。2002年の作品とは思えないような哀愁だったり、ハリウッド映画にはない深い味わいが映像と音楽から感じ取れる。フィンランドについて詳しいわけではないが、とても人情味溢れる作品。脚本もうまく作られたという感じはしないかもしれない。スタイリッシュなロマンスでもないかもしれない。でもそれが逆にプラス。 【Andrej】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-11-20 05:41:20) 62.面白かったです。アイデンティティとは果たしてなんなのか、そして社会において本当に過去が必要なものなのか、今を生きることの素晴らしさを感じました。 独特の色彩感覚やだらけた感じ好きです。 【Balrog】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-07-20 00:05:32) ★61.《ネタバレ》 本作にはいわゆるラブ・ストーリーがあるのですが、映画において主役にロマンスがおとずれる場合、美男美女もしくは片方がそれに値しないとはじまらないと思っていたのですが…、なっ、な~んと!そんな必要は全くないということを見事に証明してくれました。失礼ながら〝過去のない男〟もイルマも全く美男美女ではないうえに、もう枯れかけているオッサンとオバチャンときているのです。それなのに、身元が判明して女房のもとへ帰ることになった時、コンテナにイルマがやってきて男と抱き合うシーンが驚くほど感動的に見えてしまうのです。これは凄いことですぞ。さらに普通なら失礼ながら気持ちが悪くなってしまうキスシーンがなんと艶かしいのでしょうか。色使いにしてもそうですけど、普通は毒々しくなってしまうものを決してそうは感じさせないのがカウリスマキ監督の凄いところですね。それから忘れてはならぬのが、と言いますか、忘れられないのは救世軍の女ボスが歌うシーン。これが強烈です。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-07-15 18:19:00) 60.《ネタバレ》 考えてみれば、映画の人物ってのは、すべて過去を持たずに唐突に我々の前に登場してくるわけで、観客はその行動や言動から過去を類推していくしかなく、言ってみれば記憶喪失者に付き合っているようなものなんだなあ。この映画、名前がないと何も進まない法の世界と、隣人たちの親切の共同体とが対比されていて、けっこう社会派監督としてのカウリスマキを印象づけた作品。やむを得ず解雇することになった従業員へ、未払い給料をなんとか渡さんとする社長が光る。名前がなくても信頼や親切が優先する社会をはっきりと提示した。妻が見つかると、そっちもちょうど男が出来てて、っていう解決は、アステアの戦前のミュージカルにもあった手だが、いいよね。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-05-19 12:16:41) 59.相変わらず、素晴らしく静かな映画。誰も感情をあらわにしないでしゃべりますが、無感情ではないんです。無表情だけど、無感情ではないんです。淡々としていても退屈ではないという不思議な映画。良いセンスしてます。 【すべから】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-01 15:02:03)
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