みんなのシネマレビュー |
|
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
80.《ネタバレ》 橋本忍脚本にアクションを加えたらどうなるか? もうそれだけで、一見の価値がある。 見事なリーダー論になってる。 二つの隊が、雪の中の行進をする。 それぞれの隊のリーダーの在り方で命運が変わる、と言ってもいいくらいの違いがある。 吹雪の中、あと2キロの目的地に行くか行かないか、土地に詳しい案内を頼むか頼まないか・・等々 中盤、北大路欣也の部隊が全滅したあと、高倉健の部隊が進むかどうか、 軍本部は中止させたいが、連絡方法がない、というとこは、もっと見せ場にできたと思う。 ラスト、生き残った部隊が、日露戦争で全滅したという説明書きが出て、鑑賞後、凹んだ。 (実話ですよね。簡単にコメント言えない) 木村大作の撮影が見事!さすが日本を代表するカメラスタッフ! 【トント】さん [DVD(邦画)] 7点(2024-04-07 21:10:13)(良:1票) ★79.《ネタバレ》 この映画は小さい頃から何度も観ています。実際にあった悲惨な事件なのでなかなか簡単に「良い・悪い」の評価は難しいです。準備不足・無能な指揮官など色々考えさせられる教育的な意味でも貴重な映画ですね。神田大尉と徳島大尉との交流、八甲田で出会う予定などのエピソードは映画独自の脚色だったのは驚きでした。しかしその部分がこの映画の一番の見どころだったと思います。神田大尉と徳島大尉が八甲田で出会うシーン、棺で対面するシーンは何度観ても涙が止まらないです。個人的な意見ですが、高倉さんには是非「二百三高地」に出演して頂きたかったです。こういう軍人の役ははまり役だと思います。 【金田一耕助】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2024-02-28 13:31:42) 78.《ネタバレ》 この映画ね、封切り当時は親父と見に行きましたね。山歩きは私も親父も好きなんですけど、映画鑑賞前にパンフレットを買い、俺は原作本についている地図を見ながら(もっとも映画館が暗くて読めなかったが)鑑賞したのを覚えている。 実家にはビデオテープもあったが、1回程度しか見た記憶が無い。親父は夏場に見返していたな。 今回2024年の東京が大雪になる前に、BSのを録画してあったのを鑑賞。 この季節にこの映画かよ。そう思いつつ。じっくり見るけど、、、 え?字幕出ないの? セリフが聞き取りにくいし、冬山では誰が誰やらわからん。若大将(加山雄三)だけが鼻声で判りやすい。 冬山装備の説明についてはあまり時間をかけていない。もっぱら軍隊の組織体系の事ばかり。 (これ、『剣岳 点の記』でも同じ感想。こっちは装備については一切の映像無し) おしっこ漏らすだけで「死」までの過程がわかりにくいし、説明も少ない。 大竹さんの迫真の演技が、いきなり始まるような感じがするのは私だけ? で、こいつら今どこにいるんよ? リビング鑑賞ではネットで過去の記録と地図を見ながらできるけど、これ、わからんわ。 確かに撮影には大変だったろう。しかし、理解できない行動を何十分も見せられるのは、今の時代(2024年)無理だわ。 日時、場所、予測でもいいから天候、気温 が画面に出ればいいけどな 無理かなぁ どこかの新人監督が「シン・八甲田山」作らんかね? 字幕だらけかも知らんが、後世には残る。 ともあれ、撮影には苦労されたのは伝え聞くけれど、わかりにくい作品は追いやられて忘れ去られる。 この悲劇を伝えるなら、映画はリビルドするか、または現状の映像に位置データなどを付加するようにしてほしい。 それか、自ら調べながら鑑賞するのをお勧めします。 封切り時の感動を思い起こせば、8点。だけど今では見るのがキツイので5点。 追伸:山田甲八 と反対に読んだのはうちのばあちゃん 以来、我が家ではこの映画のビデオテープは「やまだこうはち」だった。 【亜輪蔵】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-02-19 09:26:16) 77.《ネタバレ》 「無能な大将 敵より怖い」とか「服従と責任放棄」とか、人間側のドラマを見て考えたりはするけれど、まあ、なんと言っても本作の主役は「八甲田山」なわけで。とにかく、冬の八甲田山が人間を容赦なく飲み込んでいく姿を見せつけられる。徳島隊は最善を尽くしたのだと思うが、それでも冬山に見逃してもらえたのはとても運がよかっただけ。ぎりぎり。40年前に小学生のワタシがまちの公民館で見て以来の、トラウマ映画。大竹まこと氏のベストアクト。北大路欣也が舌を噛んで死んだとか、三國連太郎が銃で自殺したとかはさっぱり忘れてたけど。大竹氏が雪洞を出てすぐ発狂して(最初に)死ぬシーンは恐怖と共に覚えてました。なお、3日かけてようやく再見しました。怖すぎて。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 7点(2023-10-12 20:51:02) 76.《ネタバレ》 指揮権の所在と責任の明確化、指揮官の資質と判断力の重要性、周到な調査と準備の必要性などと共に、大自然に対する畏敬の念の重要性をも考えさせられる映画が、この「八甲田山」だと思います。 この映画「八甲田山」は、「砂の器」に次ぐ第二作として、橋本プロダクションが東宝映画と製作提携した作品で、脚本は橋本忍、監督は「動乱」「海峡」の森谷司郎、原作は新田次郎の「八甲田山 死の彷徨」。 昭和49年2月にクランクインしてから、3年余の歳月と7億円の製作費と30万フィートを超すフィルムを費やして完成された、当時の日本映画界にあっては未曾有の超大作です。 この映画のテーマについて、森谷司郎監督は、「厳しい自然と人間の葛藤を通して、人と人との出会い、その生と死の運命を描かなければならない。自然の思いがけない不意打ちと、それに対応しようとする人間の闘い、その強さと、胸にしみるような悲しさを八甲田山中の、人間を圧倒するような量感で迫ってくる雪の中で、アクティブに描きたい。それには映画のもつ表現力が、もっとも強く迫ることができるにちがいない」と語っています。 原作と映画を比較する事は、もともと芸術の分野が違っているので適当ではないかも知れませんが、雪におけるこの原作と映画の表現に差がある事を、原作者の新田次郎は認めています。 彼は、雪に対する"筆の甘さ"に対して、「この映画は、雪を完全にとらえることができたから、雪を背景として起こった人間ドラマを完全に映像化することに成功したのであろう」と率直に語っています。 地吹雪、雪崩、その雪の中の絶望的な彷徨を、厳しく、しかも美しく描き出した映像には、この映画に参加した人達の肉体の限界に迫る苦労が、そのままにじみ出ており、芥川也寸志の音楽をバックに映画のもつ圧倒的な表現力が生かされているように思います。 日露戦争直前の明治35年1月21日、弘前を出発した第31連隊の徳島大尉(高倉健、実名は福島泰蔵大尉)の率いる部隊は37名、その大半が士官であり、十和田湖を迂回して八甲田山に入る10泊11日間、240kmの行程は無謀に見えましたが、綿密で周到な準備と道案内によって万全が期せられていました。 一方、1月23日に青森を出発した第5連隊の神田大尉(北大路欣也、実名は神成文吉大尉)の率いる部隊は211名、2泊3日、50kmの行程は一見容易に見えましたが、混成の部隊であり、第二隊長山田少佐(三國連太郎、実名は山口勲少佐)らの大隊本部が同行しており、指揮命令系統に混乱があると共に、大部隊のため食糧、燃料の運搬のためのソリ隊が足手まといとなっていたし、案内人も雇っていませんでした。 この部隊は初日に目的地の田代まで、後2kmのところで道を見失っていて、零下22度、風速30m、体感温度零下50度という猛吹雪の中で、死の彷徨が続くのです。 1月27日に徳島隊が八甲田山に入った時には、神田隊は壊滅状態になっていましたが、徳島隊は全員無事に踏破に成功したのです。 神田隊の生存者は山田少佐以下12名、凍死199名。 映画はこの両隊の劇的な成否を交互に対比させながら描いていますが、もっと我々観る者にわかりやすくするために、随時、現在地を示す地図を入れるとか、隊名やそのルートを入れるというような工夫が必要だったのではないかと思います。 この映画を観終えて、指揮権の所在と責任の明確化、指揮官の資質と判断力の重要性、周到な調査と準備の必要性、そして、環境の急変に対する臨機応変な適切な対応、特に大自然に対する畏敬の念と慎重な行動の重要性と言う事をつくづく考えさせられました。 尚、八甲田山の踏破に成功した徳島(福島)大尉は、却って、その後、冷遇されたうえ、日露戦争では雪中行軍の生き残りと共に、酷寒の黒溝台の激戦で戦死しています。 この事から、八甲田山で起こった事実を隠蔽しようとする陸軍の陰謀の匂いを感じてしまいます。 また、事実として、その後、自決した山田(山口)少佐の実像は、映画のような悪役的な人ではなかったと言われています。 問題は、危機に耐える事が出来なかった神田(神成)大尉の弱さにあったように思われます。 最も困難な時点で、徳島(福島)大尉は、「吾人もし天に抗する気力なくんば、天は必ず吾人を亡ぼさん。諸子、それ天に勝てよ」と兵に告げているのに、神田(神成)大尉は、「天はわれ等を見放した。俺も死ぬから、全員枕を並べて死のう」と絶叫しているという事からも推察できるのです。 【dreamer】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2023-08-28 08:53:39) 75.《ネタバレ》 近年では新資料の発掘により高倉健が演じた徳島大尉=福島大尉の傲慢ぶりやその雪中行軍での実像が明らかにされていますが、原作の『八甲田山 死の彷徨』はあくまで(当時判明していた)史実をもとにしたフィクションであり、割り切って観るのが正解です。それでもこの原作を映像化したプロジェクトは、日本映画界の偉業というか狂いっぷりとして永く語り継がれてゆくことでしょう。だいたい、真冬の八甲田山であの豪雪の中ロケを敢行するというムチャっぷりがぶっ飛んでます。これはヴェルナー・ヘルツォ―クの『アギーレ/神の怒り』や『フィツカラルド』に匹敵する映画的暴挙とも言えるんじゃないでしょうか。CGなんかもちろん存在していなかった時代、あの腰まで埋まる積雪や暴風雪、雪がこびりついた軍服や軍帽のひさしから垂れる氷柱まですべて本物なんですからねえ。特に息を飲むのは雪崩に巻き込まれるシーン、実際にダイナマイトを使って起こした雪崩は想定を超えた規模になり、撮影現場で見ていた橋本忍は「こりゃ死人がでたぞ、これでこの映画は終わりだ…」と戦いたそうです。俳優やエキストラたちも過酷な扱いになり、褌一丁で雪の中で転げまわさせられたりしてこれだけでも重病人が出そうな撮影です。神田隊の隊列を鳥瞰で見せるカットからはその人数は史実通り200人超の様であり、普通の映画よりはるかに少人数だとは言ってもエキストラの確保は苦労したでしょう。某角川映画にエキストラ参加した経験がある自分としては、エキストラの半分が逃げたというのは実感できます。でも屋外ロケはほとんどが雪原であり、照明が使えないうえに雪が光を乱反射してしまうからフードを被った俳優たちの顔は昼間でもほとんど識別不可能、声で判断するしかないってのは苦しいところです。もっとも加山雄三だけは、あの独特の太い声と大根なセリフ回しのおかげですぐ判りますけどね(笑)。有名な「天は我々を見放した~」というセリフは史実に基づいているそうですが、たしかに部下の前で隊長が言ってはいけませんね。それよりも、徳島大尉=高倉健が道案内してくれた秋吉久美子に「案内人どのに向かって、かしら右!」と号令をかけるところの方が心打たれました、もちろんフィクションですけど。あと忘れてはいけないのはこの映画のテーマソングにすら思える軍歌『雪の進軍』、名曲です。 印象に残ったのは、地元青森出身の兵士が言う「あいつらは宮城や岩手の人間だから雪の本当の怖さを知んねえ」という言葉、雪国育ちではない自分にとっては宮城も岩手も冬は雪が多いところというイメージですが、青森から見たら全然違うってことなんでしょうね。でも確かに地図を見てみれば青森周辺は本州の中でももっとも太平洋と日本海が近接している地域で、この地理的要因がもたらす自然の猛威は軽く見てはいけないんですね。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2022-02-13 22:48:57)(良:2票) 74.名前だけは知っていた日本映画の金字塔とも言うべき作品を今更ながら鑑賞した。 端的に感想を述べるならば、「無知」は罪である----------この一言に尽きる。 視聴後に、深い溜め息が漏れる作品なのは否めない。 百歩譲って雪山の恐ろしさを知らないのは仕方がないにしても、「山」の恐ろしささえも知らなかったのだろうか。 映画鑑賞後に史実を少々調べてみると、上層部の愚かさが寧ろ滑稽に思えるほどだった。 亡くなった方々の冥福を祈るためにも、この映画を後世まで語り継きたい。 【めたもん】さん [DVD(字幕)] 7点(2021-10-08 15:20:09) 73.《ネタバレ》 上に立つ者が無能だとどうなるか。 三国連太郎の大隊長は絵に描いたような悪者ですが、 北大路欣也の中隊長だって何で抵抗しないのですか。 「ただの付き添いだから」と了解して付いてきたのに何度も口を出されて、「現場の指揮権は私にあります」と何で言えないのですか。悔しい思いで見ていました。 逆らえない「空気」。 現実のその後の大敗北にまっすぐつながるような気がします。 対比的に描かれているのが弘前から出発した高倉健の中隊長。 秋吉久美子演じる案内人の村娘が役目を終えて隊を離脱するとき、無表情な中隊長はそのまま見送るのかと思いきや「案内人どのにたいし、捧げ、筒!」一同で最大限の敬礼をします。 ここなんですよね。 wikiをよむと史実とはだいぶん違うようですが、集団となった日本人のいけないところがくっきりと描かれている良作です。 2時間以上の大作でこれでもかと兵士たちが狂い倒れていくのを見続けるのはつらかったのですが、よくもまあこんな雪中ロケを敢行した製作陣の熱意に頭が下がります。大滝秀治、緒形拳、前田吟、東野英心ら脇役も好演。 9点啓上。 【pige】さん [DVD(邦画)] 9点(2020-01-14 07:35:32)(良:2票) 72.《ネタバレ》 初見は昔、テレビ放送されたときで、頭の上に積もっていく雪を見て滑稽に思ったりして、雪山の恐ろしさというのもいま一つ感じとることが出来なかったように思う。そんなに面白くもなかったが、つまらなというほどでもなかった。 その後、八甲田山で起きたこの遭難の実際のところを本で読んで、映画があまりに事実とかけ離れているので驚愕した。 高倉健演じる隊長は、実際には、ガイドとして雇った村人たちが必死に止めたにもかかわらず行軍を強行し、兵隊たちを優先して村人たちを酷使し、かろうじて村に戻れた村人もこの時の凍傷の後遺症に苦しみ、亡くなっていく人も少なくなかったという。しかし、映画では高倉健は英雄のように持ち上げられていた。 犠牲となった英雄的な人々(村人)のことは描かれず、むしろ非難を受けるべき人(隊長)が英雄になる。こんな映画を見てしまって、今は後味の悪さでいっぱいだ。 【駆けてゆく雲】さん [地上波(邦画)] 0点(2019-09-10 16:40:43) 71.豪華キャスト。過酷な撮影環境(だと思う。)・・・・ただ、画面がいつも白く、長い映画。退屈。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 3点(2018-12-20 11:16:52) 70.《ネタバレ》 高倉健、北大路欣也など往年の名優たちが出演する超豪華な映画。自然の美しさと恐ろしさを肌で感じさせるような作品。その中において、人は時々対比的に愚かな判断をしてしまうことがある。夏に八甲田に行った後、興味を持って見たんだけど、もう一度八甲田に行ってみたくなった。あと、高倉健はカッコ良いんだなと、恥ずかしながら今更気がついた。 【lalala】さん [ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-12-09 19:35:23)(良:1票) 69.開始1時間たっても、盛り上がりがなく、退屈。 【へまち】さん [DVD(邦画)] 4点(2018-03-28 22:06:05) 68. この映画を観た後の教訓は「雪山を甘く見ない」、これに尽きる。題材からして雪中行軍を描くことは自明だから、厳寒の中で撮影を行ったことは評価するがこれほど長尺にする必要はない。 過酷な雪山の表情に時折見せるレンゲツツジやリンゴの花などが心を癒す。佞武多や桜、菜の花も含め雪山だけでなく四季の移ろいや山野の表情が描かれたのは好ましい。 何事も一度始めると止めることが難しいこの国において、上層部の責任の重さ、指揮命令系統に問題はなかったか等、現代にも通じる問題意識がある。それだけに、リーダー・部下それぞれの心情の描写不足は惜しい。 ラストの老村山伍長(緒形拳)の表情が余韻を残す。 【風小僧】さん [映画館(邦画)] 4点(2017-02-12 14:14:50)(良:1票) 67.リアルな映像と迫真の演技であっという間の3時間でした。豪華キャストでしたが、この時代の人達は上手いですね。作戦で何故こんな事するの?ってのがいくつかありましたけど、まーそれはそれでご愛嬌ですね。健さんも変わらずシブかったです。 【SUPISUTA】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-09-17 21:15:34)(良:1票) 66.《ネタバレ》 これまでに何度か見ているが、国土地理院サイトの地形図やGoogle Earthで場所を逐一確認しながら見ると退屈しない。特にGoogle Earthを見ると山の形から撮影場所がどのあたりだったかわかる場合もある(注:現在はGoogle Mapでも3Dが使えるらしい)。原作本にも当時の詳細な地図がついている。 撮影秘話のようなものはあまり読んでいないが、映像からすればいかにも厳しい現場だったようには見える。特に、休止中の人々の頭の上に相当量の雪がそれらしく積もっていた場面があったが、落ちた様子を見ると本物の雪だったように見え、これはこのように雪が積もる間この人々がずっとここに立っていたことを意味するのだろうかと素朴な疑問を感じる。 また物語に関して印象に残るのは、まずは当然ながら兵隊さんのご労苦ということになるが、暗澹とさせられたのが最後の説明文で、生還した人々がわずか2年後に戦死したと書かれていたことである。この時の経験が満州の平原で生かされたのかどうか不明だが、明治日本が列強に追いつく過程ですり潰されていったかのような人々の存在が痛々しく、登場人物の子どもの頃の情景も、むしろそのこととの関係で哀しく思われた。 ところで弘前の部隊が村へ入る際、案内人を先頭にしてラッパ付きで行進した場面は普通に感動的だった。これは原作とも違っており、当時としては常識外れのことかも知れないが、しかし現代の映画としてはかえってこれでよかったのではと思われる。昔の軍隊は百姓町人に教わることなどないと思っていたかも知れないが、わからないことはわかる人間に尋ねるべきであり、またその人間には敬意を払わなければならない。そのような態度が成功をもたらすというのはまあ当然だろうが、この点でちゃんと筋を通してくれたことで、この映画が昔の軍隊の理不尽さを糾弾するだけのものでなく、現代人の心にも通じるものになっていた気がする。 なお部隊が敬礼をしたときに、案内人殿が照れたように笑っていたのは可愛らしい。いくら何でもこんな人が現地にいたかとは思うが、重厚な高倉健と軽やかな秋吉久美子の極端な対比は非常にいい感じを出していた。「まんまくうべや」という台詞が耳に残る。 【かっぱ堰】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-05-28 14:11:03)(良:1票) 65.「女性案内人に敬礼」のところが良かった。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 6点(2015-08-11 09:44:21) 64.《ネタバレ》 この映画は、封切り当時、雪山の恐ろしさを私に伝えたい父に連れられて映画館で見ました。当時の私は小学校の高学年でした。以下、当時の感想を、他のレビュアーの皆さんの感想も絡めながら書きます。まず、大画面で見たからでしょうか、雪山での登場人物の顔は、概ね区別できました。青森5連隊と弘前31連隊の場面上の区別にあたっては、「31連隊は、少人数で耳当てをし、歩くときに小声で数を数える」を手掛かりにしました。そしてどんなに努力しても立ちはだかる山・木々・崖・吹雪の夜…という出口の見えない5連隊の場面展開には「絶望」を感じました。また「我々には磁石がある」と道案内を断ったことに端を発する大隊長の態度が事態を悪化させたことは、「組織論」を知らない子供の私でもわかりました。そして「5連隊の人達には一人でも多く助かってほしい。神田大尉は、徳島大尉と再会してほしい」と祈るように見ていたため、全く眠くなりませんでした。徳島大尉の子供時代の回想シーンも印象的でした。私の父も自分の故郷の山や川を自分の原点としていつも語っていたため「つらく苦しいとき、子供時代の故郷の思い出が、生きる力になるんだ」と子供心に思ったものです。このように大画面に没入していたため、遺体安置所で神田大尉の奥さんが「徳島様とお会いできるのだけを楽しみにしていました」と語った瞬間、私は生まれて初めて、映画・TVドラマで涙を流したのでした…。このように、小学生をも感動させる力が、この映画にはあったのです。 その後、年齢を重ねながらTV放映を見るたび、スタッフの皆さんや、実はオールスターキャストだった俳優さん達の、並々ならぬ情熱・苦労・忍耐にも思いを巡らせるようになりました。ただし、最近、DVD(特別愛蔵版)で見たときには、雪山での登場人物の顔が黒くつぶれてしまって違和感がありました。同時収録の予告編での顔はそれほどでもなかったので、おそらくディスク収録上の問題と思われます。私はテレビ画面を一時的に明るく調整して対処しました。もし今後、DVDでご覧になる方で、暗くて顔の区別がつかない場合には、同じようにしていただくと、少しはましになるかもしれません。 さて、採点ですが、最初に見たときの感銘そのままに「鑑賞環境」は「映画館」とし、10点を献上します。芥川也寸志さんの音楽と共にいつまでも鮮明に蘇る、私にとっては永遠の名作です。 【せんべい】さん [映画館(邦画)] 10点(2015-02-11 19:51:54)(良:2票) 63.《ネタバレ》 無謀な雪中行軍の計画が、多くの人命を奪ってしまった。 指揮する上がバカで考え足らずだと、付いていく下の者たちがもろに被害を食らう。 信じて付いていくしかなかった部下たちが哀れで仕方ない。 山田少佐は決して悪い人ではないのだが、致命的に無能。 神田大尉も指揮官としての役割を果たしていない。 上層部の認識不足や、硬直した組織での率直な意見が憚られる雰囲気が招いた悲劇。 冬山の恐ろしさは、今まで何度も遭難のニュースもあって広く知られるところだが、当時はそういう認識も薄かったのか。 整備されたスキー場でも天候によって恐怖を感じることがあるというのに、この八甲田の吹雪の中で道に迷うことを考えると、文字通り身も凍るほど恐ろしい。 こういう訓練は最悪の状況を想定した上でするべきで、途中の天候悪化で中止にせずに強行してしまったことも不用意な選択だった。 いろんなミスが重なっての大惨事は、近年では2009年の大雪山系トムラウシ山遭難事故を想起させる。 関連の本を読んだことがあるが、これにも壮絶なサバイバルドラマがあった。 杜撰な計画と判断ミスが重なり、リスクマネジメントができなかったための惨事だったが、この八甲田山とダブってみえた。 自然の前では人間なんてひとたまりもないことを思い知らされる。 撮影は苛酷を極めたことが伝わってきて、その生半可ではない苦労が偲ばれる。 ただ、映像が暗いのでかなり見づらいし、170分はさすがに長くてダレてくる。 この映画は今までずっと見る気にならず、健さんが亡くなる数日前にたまたま初鑑賞。 役者としても人間としても好きだったのに。 作品の中だけでなく、人柄を偲ばせる数々のエピソードにも他の人にない魅力を感じていた。 個人的にとてもお世話になった人が健さんと同い年で今年亡くなっていたのもあって、あれこれ感じることも。 なんか淋しい。合掌。 【飛鳥】さん [DVD(邦画)] 5点(2014-11-23 22:47:18) 62.《ネタバレ》 八甲田山という映画がある事は以前から知っていましたが、シベリア遠征のための訓練の話だとは知りませんでした。 確かに苛酷であるのは容易に見てとれるのですが、訓練の話となるとどうしても面白さを割り引かざるを得ないという気がしてきます。 映画の序盤で、これから過酷な地に向かうという事もあり、その前フリがあらゆる場面にちりばめて出てくるのが映画を盛り上げるのに生きていたように思えました(若干演出過剰気味ですが)。 まず、トップの人間から困難な任務であることを聞かされたり、麓の村民からも無理だと諭されたり、また、神田大尉の奥さんに食事を日程分よりも多く入れておいてくれという台詞からは彼が内に秘めている悪い予感が的中することを暗示させていたりして、入山前から並々ならぬ緊張感を漂わせていて実に面白いです。 更に、山田少佐が村民に対し案内は要らんと拒否する一連のシークエンスの間、神田大尉の背中を映し続けるカメラが彼の受ける絶望感や悲壮感を静かに炙り出していて、ここが自分にとってこの映画の中で一番好きなシーンです。 映画のほとんどが雪の中での過酷な状況である中でも、ひときわ群を抜くのが雪崩のシーン。人工的に作り出したのだとしても、ここは本当に命懸けであっただろうし、更には、物語の中で夜を越す場面ではテントも張らずにただ雪洞を掘ってそこで立って寝るだけというのが、昔の人は凄いなぁとこの映画で一番驚かされたところです。 【もっつぁれら】さん [映画館(邦画)] 7点(2014-11-15 22:02:23)(良:2票) 61.《ネタバレ》 まず始めによく撮ったな!て思うほどの凄さを感じずにはいられない。この時代だからこそ撮れた映画だ。何と言っても俳優の力量が今とはまるで違う程の凄い本物の映画俳優と言える顔ぶれが沢山です。高倉健と北大路欣也との対比の描き方、北大路欣也の神田大尉のリーダーとしての資質の弱さがよく現れる「天は我々を見放した」に応える様に次々と雪の中倒れて行く人達、一方で高倉健の徳島大尉のリーダーとしての資質の強さがもたらす人間としての強さが自分と自分に着いてくる人達を助けることになる。そしてもう一人忘れてはならない三国連太郎の山田少佐の自らの過ちを認める場面は今の日本人、特に政治家に大きく欠けているように思えてならない。これはそんな偉そうな大人達に自分さえ良ければ他人はどうなっても構わないという考え方しか持てない人間に見せるべき映画だ。全体的に長く感じる上に画面全体暗過ぎる難点があるが人間とは何か?命とは何か?を大いに考えさせられ映画として、面白いつまらないは別として一度は見て損のない映画だ。 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-12-23 14:04:38)(良:2票)
【点数情報】
【その他点数情報】
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS