みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
9.普通の劇映画やドキュメンタリーならば美術館を通してそこに集まる人間や社会を描くのでしょうが、この映画は実際に美術館を巡っている時の感覚を再現することが一つの目標であるように見えます。この映画自体が一つの美術館のようです。歴史上の人物が登場するのもロシアの歴史を描くことが主目的というよりは、ロシアの歴史と共に歩んできた建物を巡っていると自然と歴史の風景が頭の中に浮かんでくるような感覚を映像化したのだと思います。歴史の負の側面にはあまり触れられず美的な側面ばかりが描かれるのも19世紀以前の文化の傾向を反映しているのではないでしょうか。単なる劇映画とは違う仕掛けの作品として成立させるために1カットで撮ったことにはある程度意味があるのでしょうが、それでも全シーンワンカットというのはあまり面白い技法やスタイルの選択ではないと思います。やはり複数カットによる多角的な視点があるからこそ映画は面白いのではないでしょうか。この映画も客観的な視点を提供してくれる案内役のフランス人がいなければずいぶん退屈なものになったはずです。最近は編集で疑似的にそう見せかけたものも含めて全編ワンカット映画の大安売り状態というありさまで、歴史的意義はあってもその価値は年々減少していると言わざるを得ないでしょう。 【Сакурай Тосио】さん [インターネット(字幕)] 6点(2023-05-18 23:27:04) ★8.《ネタバレ》 題名の美術館が宮殿だった時代を中心として、この場所にまつわる過去の記憶を映像化してみせた映画ということらしい。 最初が18世紀初頭なので帝政時代だけなら200年程度だが、街がゲルマニヤの大軍に包囲された時のことや現代らしき場面も見えており、そこまで入れれば300年近くということになる。撮影者が歩きながら部屋を回る形なので、歴史的な前後関係よりも場所の性質が優先のところもあったかも知れない。ちなみに終盤の楽団の指揮者はオセット人であるから、帝国の版図に属する諸民族の一員も活躍していたということだ。 歴史の流れに関して、細かいことはわからないが大まかに書くと、まずこの国がまだヨーロッパなどと思われていなかった頃、最初に人の耳を引っ張っていたオヤジが街を建設して強力に西欧化を進め(反発され嘲笑もされ)、次に出た西欧生まれのオバサンが宮殿に美術展示室を作り、これが後に一般公開もされて「艦隊の者」や多感な少年も見に来ていた。そのように時代が下るにつれて西欧(南欧含む)文明化が進んでいき、最後の場面に至って「ヨーロッパで一番豪華」な舞踏会だと認められたということらしい。 その後の革命で19世紀の宮廷文化も失われ、本当にこれが人生最後の舞踏会になった人々も多かったと思えば、物悲しさを感じさせる終幕ではあった。ただしこの映画自体に関していえば、20世紀にいったん途切れたヨーロッパとの結びつきを、21世紀の始まりに当たって改めて回復したいとの思いが表現されているとも取れる(いわば仲直りの申し出のような)。製作にはゲルマニヤやその他諸国(NHK、YLEなど)も協力しており、こういう融和的な雰囲気の時代もあったのだと若干遠い目にさせられた。 個別の場面では、ラストで舞踏会の人々が一斉に退出していくところは圧巻だった。これは18世紀からこの宮殿を訪れて去った人々の姿を全部重ねた映像のようでもある。また老婦人が雪の中を去る場面には見覚えがあったので、前に一度NHKでも見たことがあったらしい。以前から、この人物の名前を聞くとこの姿を思い出してしまっていたのはこの映画のせいだったことになる。お茶の時間に集まっていた家族もイメージ通りで、宮殿であるからには公務の場だけでなく、人々の住まいでもあったことが表現されていた。 なお絵の説明の中で鶏とネコが出て来たので「エルミタージュの猫」を思い出したが関係なかった。18世紀からいたはずだが。 【かっぱ堰】さん [ブルーレイ(字幕)] 7点(2022-05-28 09:24:32)(良:1票) 7.《ネタバレ》 『幻想』と銘打たれてはいるものの、同時に90分ワンカット!の映像をそのまま観客の視聴に供しているという意欲作・実験作でもあり、そのファンタジックみもお手軽に視覚効果で出しちまえ!てコトじゃなくって結構凝ったストーリー語り・場面展開・カメラワーク・その他諸々の手の込んだ工夫でソレを醸し出している…という(思ったより)硬派な映画なのですよね。 だから、ストーリーは在って無い様な…と言いつつ、ゆーて結構(実は)しっかりストーリーは在るのですよ(会話もそこそこ長いし多いし、意味も無いよーで実はまあまあチャンと整えられても居るのですよ)。ただしまず、その「意味」とゆーのはそれなりにロシアの歴史なんかの前提知識が無いと伝わらない程度のモノではあるし、そもそもこの建付けでストーリーも具体的です、となるとどーしたってファンタジックの方は目減りする様にも思われるのですね(=ただ浸ってれば気持ち好い…というサイケデリックなヤツってコトではないのですね)。私も多少「思ってたんと違う」感じではありましたし、同時にもうチョイ勉強してから観た方が(多分)好かったなと思いました。 でもやはり、その館内ツアーが(90分ワンカットとか工夫して撮ればたぶん)そのまま映画になってしまう…てエルミタージュの芸術性っての自体はモ~凄まじいな…とも思いますね(日本で同じコトやろうと思っても、おそらく美術館系では無理⇒神社仏閣とかならナンとかなるかも…)。あと前述どおりそのファンタジックさの少なくない部分をつくり込んでいるカメラワークてのも、確かにコレは相当に高度でした。結構ゆらゆらと漂う様に動き続ける…てのがまずポイントだと思うのですが、でありながら手ブレは全く無く、そして即興的な風を残しつつも同時にまた確信的で力強く、かつ繊細でありながらも「間違える」コトなど微塵も無いというコレは(また確実に)並大抵の仕事ではねーでしょーな。そこら辺、ハマる人には超・ハマる系統の映画だとも思います(人生ベストにもなり得るレベル)。 【Yuki2Invy】さん [インターネット(字幕)] 6点(2022-05-03 08:34:33)(良:1票) 6.《ネタバレ》 かつてミニシアター映画として公開された、アレクサンドル・ソクーロフ監督の「エルミタージュ幻想」をDVDで鑑賞。 私は非常に興味深く、この映画を観ましたが、映画初心者には向かない映画のような気がします。 映画がかなり好きで、かなりの本数を年間で観ている人でも、ストーリー性のない映画が苦手な人は、はっきり言ってダメだと思います。 私はストーリー性のない曖昧模糊とした映画というものも、ストーリー性のある映画と同じくらいに好きなので、思い切りツボにハマってしまいました。 そして、もうひとつツボにハマっていたのは、この映画がカメラワークに非常に凝っている点です。 96分をワンカットで撮っているのが、この映画の最大の売り物なのですが、流れるようなカメラワークは本当に芸術品と言えるくらい素晴らしく、もう見事としか言いようがありません。 撮影を担当したのは、「ラン・ローラ・ラン」で、主人公のローラをずっとハンディカメラで追いかけて撮影して、全くブレなかったというティルマン・ビュットナーです。 なんでも、ティルマン・ビュットナーは、この映画の撮影に備えて、身体を鍛えたといいますから、やはりプロは凄いと思います。 アレクサンドル・ソクーロフ監督は、ドキュメンタリー映画を数多く撮っているそうですが、はっきり言ってこの監督の映画は難解です。 この映画も予備知識なしで観たら、わけがわからないと思います。 原題は「ロシアの方舟(RUSSIAN ARK)」で、エルミタージュ美術館の中を探索しながら、ロシアの歴史を追うという内容になっています。 カメラを構え、ナレーションを語るソクーロフ監督自身と、この映画の主人公であり案内人でもあるフランスの大使キュイスティーヌ(セルゲイ・ドレイデン)とが宮殿の中を不思議な時間旅行をするという、邦題のとおり実に幻想的な映画なのです。 ストーリーがあるような、ないような不思議な雰囲気、90分ワンショットという驚異のカメラ、豪華絢爛な帝政ロシア時代の衣裳。 この3つの要素は、私の好みにズバリと合っていて、背筋がゾクゾクするほどでした。 そして、ラスト近くの、ワレリー・ギルギエフ指揮のオーケストラを伴奏に繰り広げられる舞踏会のシーンは、まさにため息が出るほど素晴らしいものでした。 【dreamer】さん [DVD(字幕)] 9点(2019-03-23 14:38:40) 5.次から次へと絵画の中を移動していくような美しい映像は、見ていると不思議な感覚。 ワンシーン・ワンカットという手法にはもう見事としか言いようがありません。 が、途中で眠くなってしまったのも事実。 もっと絵画を勉強してから出直して来ます。 【せかいのこども】さん [DVD(字幕)] 4点(2010-12-11 21:39:12) 4.《ネタバレ》 舞踏会はやがて終わりを迎え、紳士貴婦人が無数の人だかりとなって帰り路につく。画面は彼らの無数の顔から表情を拾うが、明るい顔付きの者は一人としていない。豪華な衣装や巨大な宮殿とは裏腹の憂鬱が、彼らのこれまた無数のささやきと共振して映画を観る人々に「もうすぐ映画も終わりだよ」と告げているみたい。事実、カメラはそのまま出口へと進み、ぼやけた海の前で立ち止まり、監督自身の呟きと共に幕を閉じる。しかしその声は、「終わりはない」「私たちは永遠に生き続ける」と小さいながらはっきりと呟く。ソクーロフの映画はいつも締め方がいい。エルミタージュ美術館が保存してきた空間と時間のアーカイブを一呼吸で切り取ってしまおうという大胆な方法にア然としながらも、この縦軸横軸をシェイクした迷宮に映画という斜めの軸をぶちまける思い切りのよさにしびれる。芸術としての高みよりも映画としての高みを感じるこの映画は、「チャーリーとチョコレート工場」の夢の工場を探索するように見られるべきだと思う。もちろん豪華さ、案内人(このオッサンがとにかく最高)の魅力ともに「エルミタージュ幻想」が勝るのは言うまでもない。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 9点(2006-05-16 12:29:32) 3.ワンカットで撮ったのはわかる。ただ鑑賞中この演出に対して「おーこりゃワンカットならではだなー」と思う瞬間は実は無い。「ニックオブタイム」然り、「24」然り、演出手法を大題的に謳ったものは、その手法自体、作品の中では大して目立ってないことが多い。 【ドレミダーン】さん 4点(2004-07-24 16:54:32) 2.90分ワンカットは驚きました。間延び感は否めない感じでした。。 【ぷー太。】さん 6点(2004-03-21 20:36:23) 1.1時間30分ワンカットで撮影したことへの驚きは今でも消えません。 その理由だけでも観る価値はあります。映画好きの私としては一生物の 驚きでした。フランス語とロシア語で語られるストーリーとロマノフ王朝という歴史が背景にあるため、直接映画の中に入り込むことは一度の鑑賞だけでは難しかったです。でも、途切れる事のない映像のお陰でエルミタージュ美術館を十分に堪能し、完璧に再現された王朝時代の華やかなドレスは溜め息ものです。900人近い俳優とエキストラがプロフェッショナルに演じ皆が主役でした。中には目線が気になる人もいましたが・・・。どんなに高度な技術で再現されたスタジオセットやCGも、本物には敵いません。華やかな表舞台の裏方を薄暗い色で表現したり、舞踏会の余韻と共に映画の終演を告げる演出も好きです。ワンカットの映像技術を楽しむ、歴史を知る、ロマノフ王朝の豪華さを楽しむ、エルミタージュ美術館を堪能する。沢山引き出しのある映画を観れて良かったです。 【tomomi】さん 10点(2003-11-12 00:56:14)(良:2票)
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