みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
★4.《ネタバレ》 フィルムセンターで鑑賞。 「腰辨頑張れ(腰弁頑張れ)」。 風が吹きすさぶオープニング、子供をオブリながら靴を磨く男、食事の用意をする女性、靴には穴があいている。そこに泣きながら走って帰ってくる子供、父は穴をふさごうと紙をつめたりしている。 子供と一緒に怒鳴りつけに行こうとするが、本当に泣かされたのは相手の子供の方だった。さっきまで泣いていたのは嘘だった事を知り慌てて隠れる父親。状況理解早ええwwこの親にしてこの子あり。 壊された飛行機、割れる食器、ハタキに叩き落される結婚した時の写真、今度は箒でさっさっさ、おもちゃも手当たり次第、慌てて赤ん坊を抱える夫、夫婦揃って「あっつ」。 夫は逃げてばかり、逃亡先には真っ先に逃げた子供が、親子揃って逃げ足が速いこと。 おもちゃを買ってくれとせがんでいたら押入れを突き破って出てしまう。向こうの家は子供が五人でもっと大変、保険会社のライバルを見つけて口論、どっちもお断り、乳母車を押すのを手伝って口実つくり。 こっちも跳び箱になって子供から落そうとする、見られてしまったボロ靴の穴、子供に金を見せつけられる大人、心もorz状態、ライバルの保険会社のオッサンまで飛ぶww 空を飛ぶ飛行機の模型、それを追いかける子供たち、屋根に落ちた飛行機を取りに行く、不安定な足場、下駄を持って応戦、君が飛ばしてやるって言ったんだぞ! 土管を巧みに使ってボッコボコに、歪んで見えるさっきの大人たち、現金な父親だこと、子供の事よりも取引相手を優先、飛行機よりも父親の愛情が欲しかった子供。 自分の子供よりも他人の子供に愛想を振りまく父親に幻滅、我に返って子供が欲しがっていた飛行機を買って帰る、斬新なカットバック、電車の線路、後悔にさいなまれる。 病院、蛇口から漏れる水滴、飛行機、花火、青空のイメージ、フラッシュバック、泣き叫ぶ母親、室内を飛び交う飛行機のイメージ・・・。 【すかあふえいす】さん [映画館(邦画)] 8点(2015-07-28 17:00:16) 3.《ネタバレ》 成瀬巳喜男作品群の中でも、初期に属するもので、それ以後の成瀬の作風とは異なる面を見せてくれる。 喜劇をベースにしながらも、喜怒哀楽を無声劇で見せるところなんぞ、小津安二郎の初期の頃にそっくりである。 特に秀逸なのは、後半の父親と息子のやりとりのシーンだ。 父親は家族の幸せを願い、収入を得る為、息子に対し、金持ちの子供たちに謝れと言う。 しかし、息子は悪くない。 当然、息子は謝りたくないと主張する。 「悪くもないのに、お金のために謝る」。 これはすなわち“大人社会”の縮図であって、それが子供には理解できようがない。 それが原因となって、父親と息子の間で衝突が起きてしまう。 その後、息子が瀕死の重傷に遭い、父親は居ても立ってもいられない気持ちになる。 父親の、親として息子を大切に思う気持ちが、短い尺の中で実に深く、そして緻密に描かれている。 貧乏であるが故のやるせなさ、悔しさみたいなものが、ぎゅっと凝縮された掌編だ。 【にじばぶ】さん [映画館(邦画)] 6点(2012-09-29 03:08:59) 2.3巻足らずの短編に意欲的に詰め込まれた技法、そして喜怒哀楽の感情の諸相。 表札や鍋やポートレート、蛇口の水滴はことごとく落下することで無声映画の中に音を創出し、対比的な夫婦像・つましい暮らしを示す靴底の穴・模型飛行機・交通事故・金銭といった成瀬流意匠の諸々も巧みにユーモアとペーソスを形づくる。 前半の背景でのどかな風情をみせていた電車が後半には不吉を呼び込み、また前半の子供の喧嘩や居留守中の押し入れ内でコミカルに使われた飛行機が、後半では抒情のアイテムへと変容する。 ショックシーンで用いられるクロースアップ、画面分割、ネガ反転にディストーション。 不意の短いフラッシュバックとして挿入される線香花火、入道雲のショット。 同じく、暗い病床と模型飛行機の滑空の叙情的なオーヴァーラップ。 または洗面器の中で溺れる蠅のショットの悲壮と抽象性。 病室での大胆な表現主義的ライティングによるノワールスタイル。その柔軟で果敢な試行が若々しい。 一方で、病室の息子と夫婦それぞれの顔に注がれる光明は成瀬50年代の絶頂期にも負けぬくらい繊細で美しい。 【ユーカラ】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-02-13 20:15:12) 1.成瀬が第二の小津と言われたのは、あくまで小市民の哀歓という題材によるのであって、フィルムはもう完全に異質。窓から室内を見たり、保険の話を妻としている時にその話題の家族のインサートカットがナウく入ってきたり、表現主義風のところなんかネガまで使っている。病室のシーン、ぽたんぽたん手術皿に水がしたたってそこで蝿が溺れかけているなんてナーヴァスに迫ったかと思うと、逆光で母がうろうろしているとこの光と闇の美しいこと。こういったものは全部小津にはない。そして成瀬の特徴とも言えるトボトボ歩きがある。画面の右上に向ってやや俯瞰気味で少年がトボトボと歩いていく。この情感は成瀬独自のもので、この現存最古のフィルムにも「成瀬ウォーク」が確認できたのは嬉しい(同年に作られた『ねえ興奮しちゃいやよ』ってののフィルム、どっかから出てこないかなあ)。外界が目に入らぬ人物と、その人物をそっくり包み込んでいる外界、どこへ行こうという歩行ではなく、自分自身を稀薄に溶かしてしまおうとしているような歩行。これが本当にいいんだなあ。PCLに移る前から、松竹の習作時代から、もう成瀬はナルセだったのだ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 7点(2010-11-06 16:01:09)(良:1票)
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