みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
12.《ネタバレ》 テキサスの老牧場主とその息子の確執を描いていてこのモチーフは『エデンの東』を彷彿させるところもあるけど、冷徹極まりないストーリー展開と救いのない結末は一線を画しています。ポール・ニューマンが演じるハッドは倫理観が薄く享楽的な男で、問題児がそのまま大人になったような感じ。メルヴィン・ダグラス演じる父親ホーマーは律儀で頑固で真面目一徹、ハッドを激しく嫌っていてハッドの酒酔い運転のせいで死んだ長男の遺児ロンに目をかけて可愛がっている。そんな男所帯を住み込みの家政婦パトリシア・ニールが世話しているが、実質この四人だけで展開する物語です。牧場では口蹄疫が発生して全頭を殺処分しなければならなくなるが、その裏ではハッドは牧場の代替わりというか乗っ取りを画策していて、親子の対立は激しさを増してゆく。そんな小悪党じみたハッド、ポール・ニューマンは思わずハッドのキャラに感情移入してしまいそうになるところを突き放してくる様な見事な演技を披露しています。思えばニューマンは監督のマーティン・リットのアクターズ・スタジオでの教え子、彼の演技の上手さと凄みを引き出すには適任だったと言えるんじゃないかな。また撮影監督のジェームズ・ウォン・ハウの神がかった様なカメラが凄いんです。広角カメラで撮った広大なテキサスの地平線を捉えた冒頭のシーンなどで見せてくれる風景ショットには、ハッドと彼を取り巻く殺伐とした人間関係の心象が溶け込んでいたような気がします。また“ローキー・ハウ”の異名を授けられる彼の照明への拘りは、モノクロ映画ながらアップショットではニューマンのトレードマークである“ブルー・アイ”が見えたように感じるほどです。 死にゆく父親に「俺が長生きしたらお前は迷惑だろう」と言われるハッド、最後まで一ミリも理解し許しあわなかったこの悲劇的としか言いようがない父子関係は、リアルではあるけどなんか悲しくなりますね。そんなテイストの作品でしたが、当時勃興し始めていたアメリカン・ニューシネマとは明らかに一線を画す一編だと思いました。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-06-22 21:50:26) ★11.《ネタバレ》 この映画「ハッド」の監督マーティン・リットは、赤狩りで辛酸をなめた映画人の一人としてよく知られていますね。 その時、彼は才能ある人々の裏切りを目の当たりにして、人と社会への厳しい目を培ったのだろう。 そんな彼の体験が、以後も一貫して反骨精神を貫き、「寒い国から帰ったスパイ」「男の闘い」「サウンダー」「ノーマ・レイ」などの映画で、特定の時代における人間の孤立と闘争を描き続けてきた原動力になっているのだと思う。 このマーティン・リットが監督した「ハッド」は、アクターズ・スタジオの縁でポール・ニューマンと6本ものコンビ作を生み出したうちの1本なんですね。 近代化の波に押しやられた、テキサスの荒涼とした風景の西部で、牧場を営む三代の男家族の確執と離散を通じて、現代アメリカの荒廃を浮き彫りにする秀作だと思う。 ポール・ニューマンが演じるハッド・バノンは、酒と女以外、人生に興味を示さず、心の中に闇を抱えた虚無的な男だ。 そんなハッドが、15年ぶりに故郷のテキサスの牧場へ帰ってくる。 酔っ払い運転で兄を死なせたハッドは、兄の遺児ロンからは慕われるが、老いた父ホーマー(メルヴィン・ダグラス)との断絶は解消できず、反目し合ったままなのだ。 ここに、離婚をして中年にさしかかった流れ者のアルマ(パトリシア・ニール)が住み込みの家政婦として雇われ、束の間、男だけの家庭に安らぎが訪れるが---------。 この映画の原作は、西部小説の名手と言われているラリー・マートリーの短篇小説で、彼の描く人々は、いつも物憂げで、他者のみならず自らをも肯定出来ないのが常なんですね。 マーティン・リット監督は、この原作を映画的に膨らませることで、アメリカという国の未来を憂う、彼自身の心情を吐露しているのではないかと思う。 父の大事にしている牛の群れが、疫病を患い次々と倒れていく。 そこには、かつて西部劇が描いた開拓精神や男のロマンなど微塵も見られない。 ハッドは、アンモラルなエゴイストで、彼は病気が証明される前に、牛を売ることを提案するのだが、そんな彼の無情の背景には、父への憎しみがあるからなのだ。 父親はそれに耳を貸さず、結局、手塩にかけて育ててきた牛たちを屠殺処分せざるを得なくなり、生きる意欲を失ってしまう。 ハッドは、父ホーマーの開拓者としての誇りを踏みにじり、口論の末に荒れて、アルマを強姦しようとするが、アルマは身を許さない。 大人の女のぬくもりも男たちの崩壊を救うことはできなかったのだ。 こうして、アルマは去り、そしてホーマーは落馬して夜道に倒れ、「わしが長生きすると迷惑だろう」と言い残して息を引き取るのだった。 ハッドの哀れな本性に嫌気が差したロンは、「あんたが生きる力を奪った」と言い放ち、故郷を捨て、ハッドはひとり寂しく取り残されることに---------。 ポール・ニューマンの自己破壊性、メルヴィン・ダグラスの威厳と孤高、そして、パトリシア・ニールは、アルマの瞳に根を張ることの叶わぬ、女の諦念をにじませて官能的だ。 【dreamer】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-11-08 00:13:04)(良:1票) 10.《ネタバレ》 律儀で真面目な父親と、草の根的で自由奔放な息子。当然のことながら考え方が合わなく、常に言い争いばかりしている。 そんな親子の姿に強い共感を覚えます。人として、血縁関係として、経営者としての考え方として。 牛の処分シーンは実に切ないですが、青空をバックに映像的には美しいショットで印象深かったです。 働いてる女性に手を出そうとしたりするのは全くいかんですし、そんな彼の性格のせいで孤独さが際立つラストなんですが、 ただハッドの考えや言うことも個人的にはわかる部分もあり、こういう衝突というのは、現実の親子でもよくあるなと思いました。 古い映画ですが、ドラマの真髄は普遍的なもので古くなることはないと思います。 【あろえりーな】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-01-21 20:33:37) 9.《ネタバレ》 倫理観の希薄な酒と女浸りの主人公を挟んで一代で牧場を築き上げた道徳意識の高い父親と主人公に憧れながらも素直で健気な祖父思いの甥っこ。そんな男三代のカウボーイ一家に男の苦労を知りつくしたデキる家政婦が加わって織りなすウエスタン。ひなびた哀愁の中に四人それぞれに共感できてしまう所があって結構心に残ります。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-19 23:45:21) 8.《ネタバレ》 全体に立ちこめる荒涼とした雰囲気にはいろいろ期待が高まるのですが、中盤まではそれっぽいシーンの積み重ねばかりで、少しもドラマが動かない。殺処分のシークエンスのインパクトはなかなかですし、そこから徐々に人がいなくなっていく展開も痺れますが、それだけでは回復できませんでした。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-02-27 00:31:12) 7.《ネタバレ》 ポール・ニューマン演じるハッドが本当にどうしようもない奴なんです。 15年前に酒酔い運転で兄貴を殺しちゃうし、身近な人妻誘惑するし、メイドには手を出すし、オヤジの経営する牧場、売っちゃおうって言うし。 そんなどうしようもないオジキに憧れる甥っ子がいるんです。 父親と息子ハッドの関係が本当にリアルで、リアルだからこそ、このギクシャクした関係に苛立ちを覚えるんです。 最後、メイドには逃げられ、父親は死んじゃって、牛も全て察処分され、甥っ子までいなくなって、全てを失うんです。 「世の中全てクソだ!」と言い放つハッド。 ポール・ニューマンはどこがカッコいいのでしょうか。 その上、アカデミー賞は、メイドと父親の役を演じた人が獲得して、ポール・ニューマンは「ハスラー2」までおあづけという…。 なんともまぁ、後味の悪い映画でした。 【クロエ】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2018-08-28 04:23:35) 6.映画館で観客全員大熱唱しているのにはビックらこいた。 【ケンジ】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-02-04 22:55:20) 5.ふーむ、ラストシーンが気になるなぁー。 【maemae】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2005-10-30 22:05:57) 4.他人に嫌われる(と感じる)のって凄くツライ。自分の存在自体を否定したくなります。それでも生きて行くために、もがいてもがいて身につけた自己防衛策ってこれじゃイカンと分かっていてもなかなか捨てられないもの。この映画のように、やることなすことすれ違ってお互いを傷つけ合ってしまう姿には凄く説得力あります。トラブルが起こった時こそ人間性って顕著に現れるんだよなぁ。悲しいけど「ああ、こうなるしかないよね。」と納得させられる、染みる映画。アカデミー撮影賞を受賞したモノクロ映像も洗練されていて美しいです。 【黒猫クロマティ】さん 8点(2005-03-01 16:57:59)(良:1票) 3.『シェーン』のブランドン・デ・ワイルドの成長した姿が見られるということで、どの人が彼か判るかな~とドキドキして見始めたら、ははは、一発で判るこの顔、時に少年っぽく、時におっさんクサい。変わらんのう。この映画、現代のBSEや鳥インフルエンザ問題にもつながるものがありますね(ポール・ニューマン演じるハッド、シャレにならんほど的確な問題発言!)。牛を「処分」するシーンは凄まじくも切ない、印象的なシーン。いつまでも止まない銃声が、リアルな描写で、心に迫ります。そしてその背景に描かれる、噛みあわぬ人間関係。映画自体がとても丁寧に作られており、好感が持てます。 【鱗歌】さん 7点(2004-06-06 00:55:55)(良:1票) 2.↓の方のコメントにつきるのですが、ポールニューマンがかなりのはまり役で魅力的。彼らしさが思う存分に出ていて、重苦しい展開の中でもウィットに富んだ会話があるのが救い。 【東京50km圏道路地図】さん 7点(2004-03-01 23:31:48) 1.40年前のこの作品で今に重なって見える事件がある。父親が長年丹精こめた牧場で口蹄疫が発生する。どんなに辛くても全ての牛を賭殺処分しなくてはならない。ブルドーザーで大きな穴を掘って牛を追い込み、牛たちは一気に銃殺されて埋められていく。 仕方ないこととはいえこの牛のアウシュビッツには胸が詰まる。今も牛や鳥などがこうして処分されているのだろうと思うとかわいそうになる。15年ぶりに帰ってきたハッドは、この感染牛を知られる前に売ってしまおうと言うような酒飲みのやくざな男。家を出る前にも飲酒運転で兄を死なせていて、牧場は老いた父と兄の息子が経営している。謹厳実直な父はこの息子を快く思っていないが、甥は快活で豪放なハッドに好意を持つ。父と息子の対立、牧場を襲った悲劇、崩壊など暗い話が描かれる。父のメルヴィン・ダグラス、ハッドのポール・ニューマン、甥のブランドン・デ・ワイルドの3人がいいのでこうした人間模様に見ごたえがある。メルヴィンは30年代の若くて軽妙なのしか知らなかったが、渋くてシリアスな演技が見事だった。ブランドンはシェーンから10年、面影を残して成長し立派な若者になった姿が見られる。 【キリコ】さん 8点(2004-02-25 22:40:04)(良:3票)
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