みんなのシネマレビュー |
|
|
|
ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
2.《ネタバレ》 脚本に伊藤大輔!まずファーストシーンが良いね。 壁に書かれた「お嬢さんを下さい」という落書きを黙々と消すお父さん。 消しまくっている内に諦めニッコリ笑うお父さんの表情が良い。 最初サイレント映画かと思いきや、バックに流れるBGMは実はこの父親の娘が奏でる琴の音色であった。 公開は1935年。この作品を撮る直前までサイレントだったんだよな(トーキーとサイレント混じりの「藤原義江のふるさとの歌」)。その名残を感じさせるシーンだった。 話も序盤はやや退屈だが、その後のゆっくりと盛り上げていく展開が面白い。 5年も付き合い結婚したも同然だったと小夜子と平蔵。そこに縁談の話が舞い込み、藤尾という女が小野の前に現れる。声がエロい。 それと短いシーンだが、藤尾の母親を演じる梅村蓉子の母親ぶりも中々。 藤尾と偶然居合わせる小野。 小野と藤尾の表情を交互にカットバックさせる演出。呆気にとられた小野の表情がより彼の心境を表す。 小野は縁談の話を思い出し動揺する。 しかし5年も暮らしを共にした小夜子は結婚を夢見て写真館に飾られた夫婦の写真を眺めていた。オマケに小夜子の恩師である井上には世話になった恩義があった。 しかし縁談も断るに断れない。二人の女の間で揺れる小野の表情が何とも言えない。脳裏によぎる二人の女性の声。 藤尾も徹底的に揺さぶること揺さぶること。金時計を“エンゲージ(指輪)”替わりに小野にプレゼントする藤尾。絵で魅せる場面が豊富だ。 会話する夫婦と障子越しに話を聞くひとりの女、「狂恋の女師匠」を思い出す花火、打ち上がる花火を見つめる二人の異性。 玄関先から家の中を覗くようなショットなど。 「父は死んだが生きている母よりも確かだ(信用ならないのか?それとも単にボケてる?)」 井上先生、そしてもう一人の熱血漢、宗近! ハッキリせず情けない小野に喝を入れる男らしさ。終盤数分の見せ場でこれほど印象を残すとは。 出て行く列車。 間一髪列車に乗り込む場面は中々緊張感がある。 ラストがまた良いのよ。 まるで今のサスペンスドラマさながらの展開。海をバックにした演出。 “代理”を買って出た宗親の男気。 殴らず、言葉でなだめ喝を入れるその精神が良い。 とにかく海がキレイです。 例の金時計が波にさらわれていく場面、ラストの船。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-12-13 18:54:27) 1.《ネタバレ》 現存する溝口健二作品の中でも、特にマイナーな本作のレビューを、簡単ながら書いてみたいと思います。 本作は夏目漱石の小説『虞美人草』が原作となっています。 夏目漱石の原作の方は未読ですが、元々、夏目漱石は好きなので比較的興味を持って本作を鑑賞することができました。 本作は1935年の作品ですが、他の1930年代の作品と比べても特に保存状態が悪いです。 常に“暴風雨の状態”で映画を観ることになります。 セリフも当然聞き取りにくく、部分的に字幕で補われたりしています。 ただ、戦前や戦時中の溝口作品のほとんどが戦火で消失してしまっていることを考えれば、現存しているだけでも有難いわけです。 本作の数少ない巷のレビューを読む限り、かなり評価の低い作品であることが分かります。 しかし、個人的には普通に楽しめました。 理由としては、この時代の溝口作品にありがちな、「女が男のために一生懸命に尽くし、男だけは成功して、その女はむごいことになってしまう」というパターンとは異なるものだったからです。 もちろん、本作『虞美人草」の骨格的なストーリーは、原作の夏目漱石の小説によるところなのでありますが、私は当の夏目漱石自体を元々好きなわけで、その点も本作を楽しむことができた所以かと思われます。 ただ、巷の解説によれば、三宅邦子演ずる藤尾という女性が、最後に自殺をするらしいのですが、本作ではその最後の大事な部分が欠けてしまっているのです。 そういう点から見れば不満を多少感じなくもないですが、古めかしい日本文学が好きな私にとっては、意外にも普通に楽しむことができた溝口健二作品でした。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2007-09-10 10:08:33)
【点数情報】
【その他点数情報】
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS