みんなのシネマレビュー |
|
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
184.「狂おしい」 ストーリーそのものは、とても古風でオーソドックスに見えるけれど、過去の宮崎駿作品のどれよりも、もっとも“狂おしい”までの感情に埋め尽くされた映画だと思った。 映画世界に対峙し、己の理屈においては明確な拒否感を感じている筈なのに、涙が溢れて止まらない。こんな映画は初めてかもしれない。 その“拒否感”の大部分は、「主人公」に向けられたものだったと思う。 この映画の主人公は、善人で、優秀な好青年である。 ただし、同時に「変人」であることも揺るがない事実だ。 堀越二郎と堀辰雄、実在した二人の人間に「敬意を込めて」と謳っているが、この映画で描かれる主人公の姿は、明らかに宮崎駿自身の投影であり、その「変人」ぶりにそのすべてが表れていると思う。 そういう意味では、この映画が過去作のどれよりも宮崎駿にとってパーソナルな作品であることも確かであり、それ故の“狂おしさ”なのだとも思える。 主人公の言動を理解し難い面は多く、主人公は世の中のすべての人から非難されてもおかしくはない。 しかし、主人公自身が自分を呪ったとしても、彼が愛したヒロインだけはどこまでも彼を守り愛し抜くだろう。 ならばそれがすべてだ。 余命幾ばくも無い病床の妻を囲い仕事に没頭する主人公も、養生を放棄し命を縮めても夫のもとで過ごしたヒロインも、その姿には、少し狂気じみたものを感じる。 彼らは二人の間に確実にあるはずの“障壁”なんて何もないように、繰り返しキスをして、そして愛を営む。 この「幸福」は二人だけのもの、そしてこの「悲哀」も二人だけのもの。 そこには、“観客”も含めて、周囲の他人が入り込む余地は全くなかった。 その二人の姿は、あまりに独善的で、歯がゆいけれど、何よりも美しく、涙が溢れた。 そう、この映画の主人公、そして宮崎駿自身が追い求めたのは、“美しさ”以外の何ものでもない。 誰に理解されなくとも、自分自身にとっての「美」を最後の最後まで追い求める。 この映画は、そういう“彼ら”の生き方における「覚悟」を描いた作品だと思った。 「ほかの人にはわからない あまりにも若すぎたと ただ思うだけ けれどしあわせ」 あまりにもはまり過ぎている荒井由美の「ひこうき雲」が延々と頭の中をめぐる。 映画館を出た。真夏の太陽が眩しかった。 空の青は、少し、“狂気的”に見えた。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 10点(2013-07-20 19:33:13)(良:7票) 183.《ネタバレ》 嫌がる子供にたいして、母親が無理やり宮崎作品を見せようとする光景がいずれ社会現象を起こすと予言したことがあります。いつしか、宮崎アニメは、芸術や子供の学習教材へと変貌し、無垢なる子供たちが、宮崎作品が出るたびに、泣きながら、親の接待をさせられる。まさにこの作品は、親にとっては「立派な作品」であり、子どもにとって「最低のアニメ」と言えるでしょう。むしろ、これを面白いと言うガキは末恐ろしいと思う。精密な殺人マシーンは大好きなのに、人殺しは大嫌いって、子どもに対するジョークとしては悪質すぎる。真に受ける子供さんもいるだろう。そもそも戦闘機や大和など殺人の道具でしかないものをカッコいいとほざく輩は頭が悪すぎる。今の時代、そのカッコいい戦闘機に殺されるのはいつだって小さな子供なのだ。1つ確かなことは、72歳の老人には、子供が愛するアニメを創作する気はさらさらないということです。しかもファンタジーとは正反対に、厳しい現実「死」が描かれている。結核で口から血を飛ばしながら、のたうちまわって苦しむ妻の前で、平気でタバコをガンガン吸う主人公。お前こそ肺がんでくたばれよ。彼の興味は殺人マシーンを作り上げることのみ。それを「夢」と称し、正当化している姿に怒り心頭だ。あげくのはてに、死期を悟った象のように、ひっそり姿を消す妻と対比して、殺人マシーンが完成して飛び上がって狂喜する主人公。どうか貴様に罰が当たりますようにと祈ってしまった。主人公の棒読み口調がさらに私のイライラをヒートアップさせてくれる。これを純愛とのたまうならば、完全に男尊女卑である。本来、宮崎作品とはすなわち、女性たちの、女性による、女性のための物語である。シータ、ナウシカ、キキ、クラリス、宮崎監督を一躍有名にさせた輝かしいヒロインたち。主人公が女性であることが宮崎作品の生命線だったのだ。その恩をあだで返すように、引退作品でまさかのヒロイン殺し。私が許せない点はこの一点に尽きる。 【花守湖】さん [ブルーレイ(字幕)] 1点(2014-07-31 21:21:21)(良:5票) (笑:1票) 182.《ネタバレ》 ゼロ戦の設計者・堀越二郎が実名で出ていますが、 「風立ちぬ」の著者・堀辰雄の人生と著作をフュージョンさせたフィクションでした。 宮崎氏が描きたかったのは、飛行機の設計だけに執着した男の話。 道徳的な教訓や反戦的な思索を込めた作品では無い。 だから、時代背景として描出される大正後期から終戦までの出来事 ~関東大震災、失業者が溢れる不況、銀行破綻、特高警察のマークなど~ はあくまで背景として流すだけで、主人公はそこに関わらない。 戦争描写も同様で、物資不足や空襲は描かれない。 思い切った省略が為されている。 「お国のために」という意識が堀越二郎に皆無だったとは思わないが、 そこも外されている 後半、病身の奥さんとの遣り取りが美談風に描かれる。 この辺りが堀辰雄からの引用。 でも、あえて較べるなら、主人公の頭の中は飛行機7、奥さん3くらいに思えた。 これらは意図した演出だろう。 空への憧れ、という一点だけを見つめた男を浮き彫りにするための演出です。 艦上戦闘機の設計に「機関銃さえ無ければ可能な案」が浮かぶ。 兵器を設計しながら、思考は「美しく飛ぶ飛行機」を模索する。 本人の目的と、製造されるモノの目的が合一しない。 最終的にゼロ戦は「機能美」を獲得した機体になった。 彼が夢で見たゼロの編隊飛行はとても美しい。 でも、その夢の中でも「最後はズタズタでした」と語る主人公。 「ズタズタ」とは撃墜や敗戦だけでは無く、「棺桶」として使用されたことも含まれるのだろう。 これらのギャップや矛盾が本作がテーマだったと思う。 時代のうねりの中で、 嗜好だけを貫いた者がどのような感慨を覚えたのかを描きたかったのだと思います。 そして、本作の主人公は宮崎氏にオーバーラップします。 この人ほど「空を飛ぶ機械」への憧れを描き続けた作家はいない。 ファルコ、ギガント、メーヴェ、ガンシップ、オーニソプター、アルバトロス、等々。 デッキブラシなんてのもあったけど(笑)。 長い付き合いの中で多くの飛翔を堪能して来ました。 彼は飛行機の操縦も設計も出来なかったが、描き、動かすことを自己実現の手段とした。 手法こそ違え、本作の主人公そのものではないか。 「空を飛ぶ機械」は美しく描きたいが、アニメになったら大半は戦闘シーン。 流麗に飛ばしたくとも、人殺しのシーンが最もイキイキする。 これも矛盾です。 個人の嗜好と有用性は、矛盾を孕んで進むものなのだと思います。 本作は分かりにくい映画でしょう。 それは、強引な取捨による個人の一側面描写に起因しています。 敢えて禁止用語を使いますが、ヒコーキキチガイを描いた映画でした。 同時に、監督の想いを綴った私小説ならぬ私映画でした。 そこに込められた想いに呼応できないと、ぼやけた見え方になると思います。 彼は「ズタズタ」になったとしても、彼の嗜好でアニメを作り続けたのでしょう。 広告に使われていたフレーズ「生きねば」とは、それしか出来ない者の覚悟だったと解釈します。 私は感動しました。 (2018/12/15更新 初投稿時、文字数制限で割愛していた部分を補足しました) 【アンドレ・タカシ】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-07-24 05:08:58)(良:6票) 181.《ネタバレ》 アニメならではのファンタジックな描写と、主人公の仕事と、人生の物語があまりにもアンバランスで、作品として破綻していた。残念なことにアニメーションである必要性が微塵も感じられなかった。 不可解な点はいろいろある。なぜその時代設定で、わざわざきわめて裕福な一握りの人間の、しかも天才の、そのうえ時代錯誤な悲恋の物語にしなければならなかったのか。とか、「省略の文化」にかこつけて、小説のセリフを薄っぺらくなぞっただけで終わらせたのか、とか。色々な事情が省略されすぎて、「生きねば」の説得力が皆無だったとか。 実はいやな予感は冒頭からあった。 冒頭、震災のシーン。蠢く大地の迫力と、肉声の効果音の気味悪さに、これを3.11の後に撮ったのだ、と監督のクリエイターとしての誠実さみたいなものも感じた。が、すぐに失望した。 大火事が起こって大勢の人間が死んでいくその日に、親友は本を運び出して「ひどい日に戻ったな」。主人公はタバコ吹かして、白昼夢。家が倒壊して大火事になればどれだけの人死にが出るか、成人した人間は想像がつく。 創作にそんな感情を持ち込むなと言われても、あれだけ力を入れて地震を描写しておきながら、こんなシーンが出てくるわけだから、この登場人物たちには下界のことよりよほど大事なことがある、つまりは「殿上人」だと宣言しているわけだ。胸糞悪いったらない。 ヒロインのはた迷惑ぶりもすごい。結核の女が見ず知らずの家に居候。うつったらどうすんの? 身内からも忌避される、あの時代、そういう病気でしたよね? 挙句の果てに忙しく立ち働いてる家人のそばに来て、「散歩に出る」神経がいっちゃってる。何不自由なく搾取してきた金持ちの発想そのものだよね。 いちいち引用される詩も、あまりにひとりよがりで失笑。主人公は極めて自分に都合の良い人間関係の中でだけ、生きているんですね。それがあの天才だったに違いない、監督の人生観かな。若くしてあれだけ成功したら、そうなっちまうのも当然かもしれないね。 とうとうこんなものを作ってしまったか。これが全世界で公開されると思うと、正直ぞっとする。莫大になりすぎたジブリブランド、駿作品の影響力の大きさをマイナスの意味で危惧した。好き放題やりやがって! 【nadiend】さん [映画館(邦画)] 3点(2013-07-24 00:55:06)(良:5票) 180.《ネタバレ》 もし10代20代の頃にこの映画を見ていたら、きっとあれこれと物足らなくて消化不良に終わっていたかもしれない。思った以上に深かった。次郎が心血を注いで作り上げた飛行機は、機関銃を載せざるを得ず、強くて勇ましいが、防御力は弱く砲を浴びればひとたまりもない。愛妻は他者に感染する病気を患い一見弱々しいが、気持ちは最期まで凛とし、決して折れない。どちらもただ美しいでは済まない存在であり、のちに夢のようにはかなく消えていく。次郎の愛するこの二者が美しい協和音のように響いているように見える。そういう意味で、堀越二郎と堀辰雄を融合させたキャラは成功していると思う。 個人が自由に生きることが難しい戦時中に病身の妻を支える暮らしは、どれほど大変なことかと思う。しかし二郎は不平をこぼさず、その時々の条件下で自分にできることのみ集中し、黙々と努力を続けていく。心の声に驚くほどスピーディに反応して、リスクを恐れず迷わず行動に移す。生きることの集中力とでもいうか、侍スピリッツにあふれる二郎を見ていると、今自分が抱えている問題ごとなどやる気次第で案外何とかなりそうな気力が湧いてくる。夢破れても、亡き愛する人へ「ありがとう」という言葉でしめくくるラストも爽やかだ。 【tony】さん [DVD(邦画)] 9点(2015-03-04 00:44:12)(良:3票) 179.監督が完全に開き直っている印象を受けました。最後はやはり自分の作りたい、見たい映画で終わりたかったのだと思います。「紅の豚」以来、久しぶりに心に響く良い映画でした。 【Junker】さん [DVD(邦画)] 7点(2014-11-01 15:50:10)(良:3票) 178.《ネタバレ》 これは完全にジブリ作品ではなく駿作品。 ジブリお馴染みの愛くるしいキャラクターは全くでないので 親子連れはこれを観ても退屈でしかないと思われる。 大人向きと言われるのもよくわかる。 ジブリお家芸的な食事シーンの代わりに喫煙シーンのなんと美味しそうなことか。 普段煙草を吸わない私がそう感じるのだから某団体が頓珍漢な抗議をしたのも理解できる。 さて私の思う宮崎駿氏はがっちがちの男性脳人物なので思ったとおり 今回も気持ちいいまでの破壊衝動をカタチにしてくれている。 関東大震災、うねる衝動とエネルギーは私達には単純に恐怖の対象であるが 創造者にはおそらくそれに加えて畏怖と興奮もどこか感じるのではなかろうか。 美しい機体が空を滑空すると同時に粉々に砕け散る様も 相反して脳裏に浮かぶという再生と破壊のループ。 ヒロイン像に関しても毎度想定内の男が理想とする『儚げな女性はコレ』像そのまんまの安牌。 そして物語の随所随所でぽろぽろと誰もかれも簡単に泣く、泣く、泣くので 涙が安いなあ…と最初は思っていたのですが物語の演出として 観客を泣かせるために感動的なエピソードを挟みこんでいるというより 涙も日常のひとつでしかないといいたいのかなと感じた。 大切な人が死地へ向かう最中も移動中にも設計図をひく、 涙を落とし紙を滲ませてでも線をひく、ただひたすらひたむきに無心に先へと進む。 この衝動を情熱とか焦燥とか狂気とか何が一番あてはまるか考えたのだけど 「無心」が一番しっくりくるのかな…と思ったり。 駿氏のやんちゃな部分を切り取ったようなカプローニのデカダンさが 要所要所で重くなりそうな雰囲気を蹴散らしてくれるのが心地いい。 私にはこの作品は駿氏の自己投影と理想像の極限の映像化に思えたから 作った本人が泣いたというのも納得できる映画だと思った。 【どぶん子】さん [映画館(邦画)] 6点(2013-08-25 00:41:06)(良:3票) 177.《ネタバレ》 映画自体は主人公の半生を描いたNHKの朝ドラ的な作り。 各所にジブリ的雰囲気の良さはあるものの、病弱な女性と結婚し、彼女がいずれ死ぬであろうこと以外に盛り上がる要素もない。 主人公の飛行機づくりに対する情熱も自分にはもうひとつ伝わらなかった。 その最大の要因になっているのは起用した声優陣。 庵野秀明氏を起用しなければならなかった理由はどこにもない。 他にも俳優を多く起用しているが、これもほぼマイナスに作用している(唯一、ヒロインの瀧本だけは合格点)。 スポンサーからのお金集めなど大人の事情があり、日本のアニメ映画は話題となる俳優の起用が当たり前になっている。 宮崎監督自身もととろの糸井重里で味をしめ、ハウルでキムタクを起用して以降、率先しているように思える。 声優が存在せず俳優が声をあてるのがあたりまえの海外と日本は違う。 声優という職業は日本が誇る独特の文化であり、当然のことながらその実力はほとんどの場合で俳優を上回る。 また、あまりに外見を見すぎたため「キムタクはどう聞いてもキムタクにしか聞こえない」というビジュアル的弊害も声優の場合は少ない。 声優は見る人に安心感を与え作品に没入でき、実際裏切られる可能性も低いのだ。 日本のアニメの巨匠がそれをわからなくてどうする!?と思う。 他の監督が俳優を起用しても、宮崎氏だけには声優を使ってほしい。花形である大作アニメに「声優」を使ってほしい。 そのほうが作品がしまる可能性ははるかに高く、それが後世評価として引き継がれていく。 全部が全部とは言わないが、公開時の一時的な話題作りのために、時の人気俳優や奇をてらった起用をすることがどれだけ作品に悪影響を及ぼしているか……。 この映画の庵野秀明氏が脇役であればこういうレビューは書かなかったが、あれが主人公というのはあまりにひどいと感じたのであえて書きたくない苦言を書きました。 【レイブンのかなづち】さん [DVD(邦画)] 3点(2018-01-15 07:59:00)(良:2票) 176.《ネタバレ》 人生50年~と信長は舞ったわけですが、私もとうに製造から50年を過ぎてしまいました。 で、そんな私が小学生の頃、リアルタイムで初めて聞き覚えた荒井由実の歌が「ひこうき雲」だったのです。荒井由実の初アルバムのタイトル曲で、この歌が話題になったのは1974年ころだったと思います。いやぁ懐かしいですね。 ちなみに一見きれいなイメージのこの歌ですが、実は投身自殺をした少年の事を歌ったものである事はあまり知られていません。 「空にあこがれて空をかけていく あの子の命はひこうきぐも」ですからね。命といっちゃってますし。空かけられませんよね人間だもの。 …と、その歌の出自を知っている自分としては、そもそもこの映画の主題歌として「ひこうき雲」が流れていた事にはかなりの違和感がありました。 「ちょおま」状態です。イメージ先行もいかがなものか、ってとこでしょうか。 さて、そもそもヤマトガンダムのリアルタイム世代でアニメ少年だった私は、昔、宮崎駿が大好きでした。 「未来少年コナン」や「ルパン三世カリオストロの城」で魅せる「職業漫画映画監督」としての力量は当時から素晴らしいものがあって本当にワクワクしたのです。 彼の作品に出てくるヒロインはどれもこれもそっくりの「うんちもおしっこもしないような可憐な美少女」で、これは当時のテレコムアニメーションフィルムの若手アニメーター座談会でも女性アニメーターが話題にあげてました。 ある日の事、「監督ってうんちもおしっこもしないような女の子しか出しませんよね」とその若手女性アニメーターが宮崎監督に言ったら「じゃぁ君は、うんちやおしっこをするような女の子が出るアニメが観たいのか」と言われた、というエピソードです。 (女性にはこのヒロイン像に抵抗がある人がそこそこ多いわけです(製作サイドの中でも)。まぁその気持ちはわかりますが) この宮崎監督の理想とするヒロイン像は終始一貫していて、何十年もの創作活動の中、ついに最後の作品となったこの「風立ちぬ」まで貫かれています。 典型的な「男にとって理想的な都合のいい処女で女神な」この映画のヒロインが嫌いだという人も(特に女性には)いると思いますが、これは監督のまさに主義主張(そもそも昔からただのオタクなのです、この人は)なのですから、むしろぶれてない事を評価すべきでしょう。 と、まぁ宮崎駿についてはいろいろ語りたい事もあるのですが、しかし、ジブリの作家となってからの宮崎駿は個人的には結構嫌いなのです。 周囲からのなんらかの制限がある職業監督の頃と違い、映画を自由に撮れるようになった事により彼の内なる作家性が全面に出てくる事になったわけですが、その結果作られる映画は残念ながら「僕が観たいのはこういうのと違う」という方向になってしまっているからです。まぁ僕のために映画を作ってるわけじゃないから、それはしょうがない事なのですが。 で、そんな宮崎監督の最後の作品となったこの映画ですが、結論から言えば、この映画、ぶっちゃけさして面白い話ではありません。 展開も地味ですし「え、そこで終わりなの?」ってとこで終わるし、肝心の二郎(庵野)のセリフは棒読みすぎて笑ってしまうレベルです。 ズブの素人を映画の主演に使うような映画なんて企画ものでもない限り普通はありえないわけですが、なぜかジブリのアニメ映画ではそれが許されてしまうのは、よくわからない風潮ですよね。 また、世代的なものもあって、私自身子供の頃から「レシプロ戦闘機が大好き」ですし、当然、零戦の開発者である堀越二郎についてもよく知ってる人間なわけです。 で、なまじいろいろ知っている航空機マニアだからこそ、映画を観ていて「何を描きたかった」かがわかるシーンもあるし「なぜこうしたか」がわかるような気がするシーンもあるし、また一方で「なぜこうしなかったのか」と必要以上に疑問に思ったりもしてしまう、なかなか罪作りなテーマだったのも確かです。 しかも主題歌は小学生のときにリアルタイムで聞き覚えた「ひこうき雲」なんですから、個人的には自分の小学生の頃の、そして宮崎駿が好きになったころの原体験を思い出させてくれる、きわめて個人的な意味で感傷的な映画だったと言えます。 しかしそういう個人的な原体験をはずして考えれば、この映画、役者の演技はまるでダメだしストーリーも地味でさして面白くありません。とても高評価できる映画ではない、としか僕には思えないのです。 【あばれて万歳】さん [地上波(邦画)] 4点(2016-12-08 02:05:51)(良:2票) 175.《ネタバレ》 正直なところ何故堀越二郎の零戦開発物語に堀辰雄の「風立ちぬ」をプラスしたのか意味がわからない。映画全体が堀越二郎サイドに引っ張られすぎていて、堀辰雄サイドは堀と矢野綾子(里見菜穂子)が軽井沢で出会ったことや女子美出身の綾子が絵画を描いていたこと、綾子の父親が銀行の頭取で実家が裕福であったこと、そして(婚約の後)綾子が結核で夭折してしまうというモチーフ以外はどこが「風立ちぬ」なのだろうと思わざるを得ない。「風立ちぬ」のテーマはひとが終わりだと思っているところから、懸命に生きようとする堀と綾子の過酷な愛の姿を描いている点であって、この映画の描き方とは真逆の世界だ。実際、堀は綾子がサナトリウムで亡くなるまで病室に泊りがけで献身的に看病し綾子の下の世話までした。堀(彼も同じ病を罹病していた)の不治の病である結核患者への求愛はそこまでの覚悟があってのものだった。綾子の死後、堀に妻帯をすすめたのは綾子の父親であり(綾子の遺言でもあった)、終生様々な形で堀を支援し続けたというから余程感謝していたのだろう。「風立ちぬ」を描くのであれば、少なくともその世界観を描いてほしかった。単にお涙頂戴的に夭折した薄幸の佳人のロマンスを描きたいのであれば他にいくらでも方法はあったのでは。まさか「風立ちぬ」というタイトルにこだわったわけじゃないだろうし。以上野暮と思いつつ。思い余って後略のまま。 【kainy】さん [地上波(邦画)] 4点(2015-03-15 01:24:03)(良:2票) 174.下手糞な声優(?)のせいで全部台無し。 【S.H.A.D.O.】さん [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 0点(2014-10-14 22:21:45)(良:2票) 173.主人公の声優の下手くそさに途中で観る気を無くした。が、我慢して観た。 声優に素人を起用するという宮崎駿のポリシーも理由も理解できない。 我々凡人の感覚からすれば作品のクォリティを下げてる要因にしかなってないように思える。 実際過去の作品も声優のせいで二度と観る気にならないものがある。それでも、主人公じゃないだけまだマシだ。 内容も、ジブリが手がけなければならない題材とは思えない。 個人的には戦争も戦闘機にも興味が無く、抑揚のないストーリーを抑揚のないセリフで進んでいくのを見守るだけ。感動も興奮も爽快感もない。 そういうものを味わうだけが映画ではないと思うけど、私にはこの物語が映画である必要性が感じられなかった。 【banz】さん [DVD(邦画)] 3点(2014-06-29 01:44:39)(良:2票) 172.《ネタバレ》 なんだろう、この感動は。 ストーリーも飲み込みづらく、良さをうまく説明できない不思議な映画。 まず絵力がすごい。宮崎駿だからあたりまえかもしれないが、やっぱり凄い。 ディテールの細かさが面白い。最先端技術と牛による輸送とか、計算尺に感じとか。ジェラルミンの素材の話とか、沈頭鋲とか。それらを見てるだけで幸せな気分になる。 純粋な技術への探究がわかりやすい。政治色ぬきにして、ドイツの技術と日本の技術の比較、探究心が共感しやすい。 妄想シーンが気持ちいい。憧れの人物と妄想でふれあい永遠の親友になるとか、最高の草原のなか空をとぶとか、うらやましすぎる。 恋愛エピソードが素晴らしい。ヒロインが綺麗すぎる。完璧な結婚シーン。うらやましすぎる。 主人公のキャラがいい。よく解らない奴で変人だけど、我が道を進むエネルギーというか迷いのなさが宮崎駿らしい。 黒川のキャラがいい。愛想は悪いが良き理解者すぎる。時々髪の毛が浮くのが可笑しい。 映画を好きになったり感動したりするのは、プロットだけではない、多くの要素が絡み合ってがっちり自分にはまったときに感動したり好きになるんだな、と改めて感慨深いものがあった。 【kosuke】さん [映画館(邦画)] 10点(2014-01-05 18:57:42)(良:2票) 171.庵野の声のように、どこまでも平板なアニメだった。どこにも盛り上がりというものがなく、心に残るシーンの1つもなかった。登場人物は表情に乏しく、退屈でたまらなかった。やっと登場したゼロ戦も、どこかデフォルメされ、翼を妙に引き伸ばされ、全然、美しくなかった。人が声で真似たエンジン音や風切り音も、わざとらしく、また本当の音とは違っていた。世間では宮崎駿は飛行機好きということになっているが、彼は実際の飛行機には関心がないのだと思う。それにしても、こんなので金をとるなんて、酷すぎる。 【駆けてゆく雲】さん [映画館(邦画)] 0点(2013-09-27 15:32:40)(良:2票) 170.《ネタバレ》 ゼロ戦・飛行機の創造に魅入られた”天才肌の欠陥人間(分野は違えどまさに宮崎駿!まさに庵野秀明!)”と、そんな男を愛してしまったけなげな女の物語。 飛行機は美しい。堀越ニ郎は美しいものを見ていたい。美しいものだけを。 飛行機と同じように彼は「美しい」から菜穂子を愛した。だが、(あるいはだからこそ?) サナトリウムで美しさを失っていく菜穂子を見舞うより、彼は美しい飛行機の創造を優先してしまった。 それでも彼を愛し、ついに山を下りて、自分がまだ美しくいられる最後の日々を 二郎とともに過ごし、そして死期を悟って一人去っていく菜穂子の姿はひたすら悲しい。 最後に菜穂子は死ぬが、同時に失敗続きだった二郎の実験機は劇中初めて成功する。 ゼロ戦はついに子を持つことがなかった二郎・菜穂子夫婦の愛の結晶のメタファーだったのかな? 【大鉄人28号】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-09-19 11:39:42)(良:2票) 169.まず主人公の魅力が乏しいという、その時点で作品に入り込めませんでした。 設計者であり、いわゆる「飛行機おたく」ゆえにあれが個性といえば個性なのだと思いますが、少なくとも魅力は感じませんでした。 また、ストーリーが淡々と進んでいき、印象的なシーンに欠けたと思います。 冒険はせず幅広い層が楽しめる安心感ある作品といったところではないでしょうか。実際、館内は年配の方がかなり多かったです。 とてもいい雰囲気の作品ではありましたが、宮崎監督の引退作としては物足りなかったです。 興業成績は上々のようですが、引退宣言含め多分にPR効果によるところが大きいと思いました。 見終えたあとは、「最後の作品がこんな感じでいいのか?」という思いと、「ここまでしかできないから引退なのか?」という思いの両方が頭によぎりました。 【午の若丸】さん [映画館(邦画)] 6点(2013-09-12 05:37:44)(良:2票) 168.結局宮崎駿という人は“人間を描けない作家”だという印象をまざまざと残した作品。見た目が派手なだけの上っ面で薄っぺらい物語の描写。いや実際には、この映画のモデルになった真実には極限の人間ドラマがあったのだろう。その真実には素直に敬意を払いたい。だが宮崎駿はある意味被害者で、時代が生んだ裸の王様だったとも言える。これを見て“自分が作った作品を見て初めて泣いた”と言った宮崎監督。その監督が放った引退宣言は、日本のアニーメーション映画業界にとってこの映画の持つ最大の功績だと思う。プロデューサーの鈴木敏夫氏も、ぜひとも一緒に引退してほしいものだ。0点を最高のはなむけとしたい。 【ムッシュ★いち~ろ!!】さん [映画館(邦画)] 0点(2013-09-12 00:28:17)(良:2票) 167.《ネタバレ》 一つの目的にまっすぐ進んでゆく男と、彼を愛した女の物語。 ふたりのあまりなピュアな心の結び付きは、時としてハードボイルド。 その昔、妻の出産のためにTV番組の収録を休みにしたタレントがいて、 それが妻と子供を大事にしている美談のように伝えられたが、 親が死んでも笑って舞台に立つのがプロフェッショナルのはず。 そんなぬるい美談の対極にあるようなラブストーリーだ。素晴らしい。 【こんさん99】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-09-04 00:42:18)(良:2票) 166.完全肯定! カリオストロから34年、ナウシカから29年、当初の大人も子供もという重圧から開放されてきた近年、創りたいもの自分の好きなものに特化してきた「紅の豚」以降の作品は、宮崎駿の作家性が客を選ぶようになった、特に死にまつわる描写が。 それでもジブリ、客は入るのでいろんな批判的意見も目に付くが、同じく年齢を重ねた自分には常にビタビタはまる。もしかして俺に見せるために創っているのか?などと勘違いしてしまうほど。 煙草をバカスカ吸い、震災の重厚な演出、軍人をアホのように描写、詳細な飛行機設計製作過程の表現、避暑地のドイツ人に忍び寄るもの、特高なんていうバカの扱いと物作り企業のプライド、帰ってこなかった戦闘機と戦争は町の炎上シーンで一瞬、レンズ越の目は歪み、信じられないサナトリウムでの治療から菜穂子が戻った訳、などなど・・・どれも素晴らしい、監督の言いたいことがリアルに伝わり涙が溢れる。 まだまだ良い作品を見せてくれる事を願ってやみません。 ※映画館入場時に渡された、鑑賞後に見てくれと言うかさばる紙切れ、高ぶって開いてみるとau宣伝の上に文章の不可解さ、あれは興ざめ鈴木P、監督の才能を再認識した上で己の仕事に専念してください。 【カーヴ】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-07-30 11:04:12)(良:2票) 165.同様の仕事をしている者として感慨深く観させていただきました。映画でも登場した青写真はコピー機が無かった時代の産物で、1970年頃入社したての頃でも資料として見ることが出来ました。計算尺は電卓の無い時代は三角関数を計算するための必需品で、HPの高価な関数電卓を入手するまでは重宝しました。ドラフターの前はT定規、その前は定規で図面を書いていたのですね。話はそれますが、ポルシェ博士の初スポーツカーは手書きの曲線で、こんな美しい図面がよく書けたものだと驚いたことを記憶しています。資料の山をかかえ、手計算で構造設計をしていた頃がよみがえって、楽しく観させていただきました。 「ひこうき雲」は荒井由実のファースト・アルバムを買ったときから好きな曲です。 【くだごんべ】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-07-24 10:01:49)(良:2票)
【点数情報】
【その他点数情報】
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS