みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
116.《ネタバレ》 夢に憧れて、夢を持ち、夢を見て、見て、見続けて、ついに夢を叶えた時、夢は終わる。 それは、二人が踊ったマジックアワーのように、限られたものだからこそ、美しく、何にも代え難い。 「LA LA LAND」とは、文字通りロサンゼルス、特にハリウッドを指す言葉である。 そこには夢に取り憑かれ、夢に浮かれるあの街と、そこに住む“夢追い人”の様を揶揄する意味合いも含まれるらしい。 しかし、そんな“周囲”のフツーの価値観などは百も承知。或いは愚かだろうが、浅はかだろうが、跳ね除け、歌い飛ばし、踊り飛ばす。 そんな“夢追い人”として生きようとしている人、または生き続けている人々の「気概」が、このミュージカル映画のタイトルには込められているように感じた。 もちろん僕はハリウッドには行ったことすらないけれど、少なからず何かしらの夢を持ったことがある人間の一人として、彼らのその気概と、必然的に伴う現実の切なさに対して熱くならずにはいられなかった。 そして、夢に生き、一つの夢の終わりを見届けた二人の或る終着点に、刹那的な美しさと、堪らないエモーションを感じずにはいられなかった。 ラスト、別れた二人が邂逅した時、まるで在るはずのない走馬灯のように、彼らが“辿らなかった”人生模様がめくるめく。 そこにはファンタジーのような多幸感が満ち溢れ、これでもかと我々の胸を締め付ける。 他者を遮断し、感慨にふける二人。しかし、彼らの表情に後悔はまったく感じない。 選ばなかった人生が多幸感に溢れていたとしても、それが「=幸福」ではないことを他の誰でもない彼ら自身が最もよく分かっているからだ。 夢を叶えて、夢の終着を見た二人は、そこに必ずしも幸福が付随しないことをとうに知っている。 そして、成就しなかったからこそ、美しさが永遠に保たれる事柄があることも。 この映画の主人公達の人生は、決して美しくはなく、褒められたものではないのかもしれない。 でも、夢を追い続けた彼らに後悔はない。いや、後悔などしていられないのだ。 “ファンタジー”を愛し、そして同時にそれを“非現実”だと認めること。 それこそが、あの場所で夢を追い求めるすべての“ロマンティストたち”に与えられた宿命であり、矜持なのだろう。 決してただ単に「夢」を描いてラララと楽しい映画ではなかった。 もちろんその楽しさと美しさも認めつつ、苦しさや醜さをもひっくるめて、現実と非現実の狭間で、“夢を追う”という生き方を力強く肯定しているからこそ、この映画は素晴らしいのだと思う。 故に、特にハリウッドで生きる「映画人」たちからの賞賛の場であるアカデミー賞においては、最高賞の栄誉に相応しい作品だったと思う……本来であれば。 こういう映画がすんなりと“No.1”に輝く時代になればいいのだけれど。 【鉄腕麗人】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-03-09 23:39:25)(良:5票) 115.《ネタバレ》 何度か見たけど、見るたびに泣ける。最初から泣けてしまう。 夢を追う自称ジャズ通の男と女優志望の稚拙な娘。けっして才能があるのでもなければ、血のにじむ努力をするわけでもない。どこにでもいるような、安易に夢を追うだけの若者。でも、夢追い人なんて、みんなそんなもんですよね。だから、みんな星屑のように消えていく。 エマ・ストーンは、ある意味で思慮の浅い尻軽女です。ライアン・ゴズリングは、ラテン音楽やロックまがいのジャズを軽蔑してるけど、じつはモダンジャズについてさえ半可通でしかない。でも、多かれ少なかれ、ほとんどの夢追い人なんてそんなものですよね。だからこそ、哀しくて愛おしい。 この映画の音楽やダンスが「全然たいしたことない」といって嘲笑する観客もいたようですが、そもそもこの映画は、非凡な音楽家やダンサーを描いているのではなく、哀しいほど平凡な夢追い人の姿を描いているにすぎません。 主人公の幼稚さや安易さが納得できないと感じる観客もいたようです。かりに「品行方正な努力家が成功する話」なら応援できるのでしょうし、「幼稚な勘違い野郎が挫折する話」なら自業自得だと笑えるのでしょう。しかし、この映画はそのどちらでもない。勧善懲悪的な見方をすれば、さぞかしモヤモヤさせる話なのだろうと思う。菊地成孔に倣って「ジョン・レジェンドが善玉なのか悪玉なのか分からない」といった議論を展開したくなる気持ちも分かります。 しかし、これは勧善懲悪的なストーリーではありません。むしろ、安易な夢追い人であるがゆえに、誰しもが辿らねばならない哀しい人生の標本です。この映画を愛する人々は、きっと自分と同じような夢追い人の安易さと、幼なさと、哀れさを愛し、その逃れようのない後悔にやるせなさを感じるのです。 女優志望の娘は、さしたる才能がないにもかかわらず、無能なジャズ男に愛されたおかげで、いっときの女性としての輝きを放ち、それによって幸運をつかみ取ります。…成功なんて、そんなものですよね。けっして努力が報われるのでもない。能力が正しく評価されるのでもない。たんに運の巡り合わせだけで成功するのです。いくばくかの才能はあったかもしれませんが、それを引き出してくれたのは、才能のない男の見境のない愛だったのです。 おまけに、彼女は幸運のなかで結婚するのですが、そのときに選ぶのは、自分を愛して輝かせてくれた夢追い男ではなく、おそらくは業界の大物です。これも必然だといっていい。最初から決まっていたかのような運命です。 運命は自分で切り開くものだと信じている観客にとって、これは納得のいかない結末かもしれません。しかし、これは自分で運命を切り開く物語ではなく、むしろ自分たちの力ではままならない運命に翻弄される、無力な夢追い人の物語です。 音楽がとても美しい。そして、ハモサビーチの桟橋で出会った老黒人夫婦のダンスと同じように、哀れな夢追い男女が二人だけの世界で踊り続けた下手っぴいなダンスが、たまらなくたまらなく愛おしい。 【まいか】さん [DVD(字幕)] 10点(2020-01-12 21:58:09)(良:4票) 114.《ネタバレ》 わたしは、特にミュージカル映画好き!って、訳ではないんですが、ありとあらゆる映画の中で、〝オープニングシーン!”で断トツぞっこんなのが、”ロシュフォールの恋人たち”の”オープニング!(というかタイトルが出るところ。そこだけ10数回繰り返し見ちゃう!もう、鳥肌モン!)、、、、んで、最新のハリウッドの若い奴が、ハリウッドを舞台にしたミュージカルを作ったってーんで、なんとなく期待して、喜び勇んでみにいったわけだが、、、、、ーーーー まずはミュージカルシーンね!いまの今まで、この世の中ではさ、MTVやユーチューブ等で、数多くのアーチスト達の、ホント素晴らしい!PVをたくさん見てきた訳よ!人類は!!それなのになんだよ、この作品の才能のカケラもない、あのダさいミュージカルシーンは!!? まずは車渋滞の、オープニングシーン!なんだよあれ!各人のダンス(踊り?)騒いでいるだけ!(高揚感もない、上手くもない)単に、ロスのハイウエイの高いところからロスのキレイな街並みを映してるだけ!それから主人公ふたりが、 グリフィス天文台とロスの夜景がキレイな高台で踊ってるだけ。(ロスの住人は、あんなので感動するのかね?)一番重要な、踊りの上手さや、振り付けのすばらしさは全くなし!(特にプラネタリウム内のシーンは、もう、ホント恥ずかしすぎて、スクリーンから目を伏せたよ、俺は!!)今時、世界中の、どんな田舎もんだって、ここまでセンスない、ダサい、つまんねえ、ミュージカルシーン作れるか、ってえの?! 加えて、中心となる物語の、ふたりの恋愛の、音楽の、演劇の、やり取りの、圧倒的なつまらなさ!(これには陳腐すぎてまいった!ガキか?) ”夢だけ”はいっちょ前な、自称ピアニスト彼の演奏は、大昔の、大映TVドラマの”水谷豊”も真っ青な、口パクピアノプレイ!?大体、ジャズのプロピアニストが”ジャズ” を女に語るか!ってえの!? 一方、ひとつもオーディションを受からない”自称女優” の彼女は、いきなり自分で脚本書いて、一人芝居始めちゃう始末! いや、いくらひどくてもさ、せめて、その一人芝居を写せばいジャンよ!きっと、素晴らしい一人芝居なんだろうから。 ところが、その一人舞台を写すこともなく、まさに紋切り型の、終演後の、全然観客が入っていない客席を写すだけ。 総合芸術ともされる、いわゆる”映画”のなかで、その重要な要素である、舞踊といい、歌唱といい、ピアノ演奏といい、選曲といい、カメラワークといい、その他モロモロ、なんというセンスのなさ!!下手さ!!才能のなさ!(まあ、好みの違いだよ!といわれそうだが、結論!!まあ、わかる人にはわかる!わからないヒトにはわからない!まあ、そういうことだ。だいたい”セッション”のドラムスのときも、この監督、ホントわかってんのかなあ?というハテナじるしを感 じたが、若干、”若さ”という馬脚をあらわした感じが強い。才能あるブレーンがいなかったのかねえ?) この監督は、自分の知らない”芸術分野”ことを”想像”で映しちゃあダメだよ。 もう唖然、憮然!憧れの夢の世界”ロサンゼルスハリウッド!”は遠い昔のハナシ。 唯一、ラスト近く、彼の店を去る彼女と彼が目をあわせ、おたがいほほ笑み確認しあうところは、まあ!泣ける!が、、、、、 ”ロシュフォール”や”ファビュラスベーカー”に遠く及ばない、、、、、、、、、、、、。というか、単なる駄作。 【男ザンパノ】さん [映画館(字幕)] 2点(2017-03-01 21:37:29)(良:4票) 113.《ネタバレ》 スクリーンから溢れ出す心躍る映像と音楽の洪水、この感動はもはや理屈じゃ語れないだろう。本当に、映画館で映画を観る悦びに満ち溢れている。ミュージカルシーンのダンス一つ取っても、飛んだり跳ねたり、頭のてっぺんから指先つま先まで、そのリズミカルな動きは、観客たちが一緒に心弾むように完璧に計算されている。これこそミュージカル映画だ。シェルブールの雨傘や往年の名画はもちろん、目をこらせば、(500)日のサマー、ファビュラスベイカーボーイズ、ミッドナイトインパリなど近年に監督が愛した映画たちへの想いも見逃せない。これは二つの類希な才能が、人生のほんの一時の間だけ並走し、支え合い、ぶつかり合い、愛し合い、高め合い、その結果、愛よりはお互いの "才能" にとって最良の選択をした話、と思っている。この結末は、男が女の幸せを第一に考えたように見えるが、真実は自分が幸せボケによって "感性" を失うことを何よりも恐れたから、と思う。間違いなく一つ言えるのは、何も結婚して幸せになることだけが愛ではない、ということだ。かつてジャック・ドゥミは言われた。映画はおとぎ話だと。終わらないおとぎ話はない。そして、覚めない夢は、ない。映画が終幕し、まさに夢から覚めたようにふらふらと暗い夜道を一人帰路に着く。現実に戻されると、映画の二人にとっても、そして自らにとっても夢のような時間であったと改めて思う。また明日から平凡な日々が待っている。でも映画を愛した人には、いつかきっと夢の続きが待っていることを信じよう。 【タケノコ】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-03-03 00:03:35)(良:3票) 112.《ネタバレ》 「セッション」も素晴らしい映画だったが、今回は圧倒的な愉快さに惹きこまれた。 初っ端から大渋滞のハイウェイ、様々な音楽とクラクションが道路中に響き渡る中をキャメラが通り過ぎる。誰かが歌い出せば扉を開けまくり、外に飛び出すダンス・ダンス・ダンスの大スペクタクル! 女たちは髪をなびかせスカートと脚を舞わせ、野郎どもはボンネットの上を軽快に駆け回り、トラックの荷台を開けばバンドマンたちの怒涛の演奏が熱狂の渦を最高潮に盛り上げる!! それが嵐でも過ぎ去り、夢でも見ていたように、我に返り静かに元いた場所に戻っていく。冬、春、夏、秋…四季がすべて熱気に包まれているかのような映画だ。 挨拶代わりのクラクション、中指を突き立て、“音”から“音”へ飛び、黒いシルエットが揺らめき、瞳と瞳が合う出会いと別れを繰り返す男女二人。 カフェで地道に働く女優志願は店に毎回来る「憧れ」になるため夢を目指し続け、夢を諦めきれないピアニストは己を偽り自分を抑え込みひたすら“音”を弾き続ける。ちょっとでもアピールしようとすればすぐにつまづいてしまう日々を送っている。 「セッション(ウィプラッシュ)」を知る人はもれなくフレッチャー先生の幻聴が聞こえてきます。 「違うクソッタレ!!!!!」 プールに飛び込む狂喜乱舞に混ざりきれない女(カメラまで猛烈に回転してぶっ飛びそう)、音楽性の違いで職場やかつての仲間を受け入れきれない男。 夜空に飛び散る花火、街を照らすネオン、車の灯も河のように連なり流れ続ける。その流れに取り残された孤独な者どうしが視線を交え、肩をぶつけ、リクエストで“お返し”し、願いを聞き入れ、街灯が照らす夜道を歩き、踊って踊って踊る内に惹かれ合っていく。 役者として、音楽家として、一度恋の炎が灯れば思わず踊り出してしまう。 ジャック・ドゥミ「シェルブールの雨傘」やスタンリー・ドーネン「雨に唄えば」といったミュージカルの傑作群を思い出さずにはいられないくらい楽しそうに踊りあかす。 いやそれだけじゃない。 部屋に貼られたイングリット・バーグマンやロバート・シオドマク「殺人者」のポスター、路地の壁面で微笑むルイーズ・ブルックスやマリリン・モンロー、映画館で燃えるニコラス・レイ「理由なき反抗」、ヒロインの心の中に焼き付くヒッチコック「汚名」、ハワード・ホークス「赤ちゃん教育」、マイケル・カーティス&ドン・シーゲル「カサブランカ」といったエネルギーの源。 映画中に散りばめられた「思い出」が今のセブを、ミアを、監督デミアン・チャゼルの“今”となって活き続ける。先人に学び、未来を切り開こうと努力し続ける人間の強さがギラギラ輝いているんだ。 フィルムが焼けてしまったら、“本物”を見に行こう。満点の星空の中に躍り出て、雲を抜け、星の海を二人っきりで舞い続ける夢の時間。音色も心も弾ませて。 前作「セッション」は打ち込みすぎるあまり大事なものを捨て続け、失う作品だったかも知れない。この映画は心から楽しみ、大事なものを優先した先にある答えを描こうとしているのではないだろうか。 好きになってしまったからこそ追い続け、謝り、食い下がり、勇気づけ、違う道を歩んでいく。一人は表舞台へ駆け上がり、もう一人はそれを送り出すように裏方に徹する。 素敵な音色で再会の挨拶を贈り、口づけを交わす“叶わぬ思い”を伝え、潔く身を引いていく。二人の間に言葉はいらないのかも知れない。ありったけの想いを込めた音色だけがそれを語り掛ける。 あれほど無我夢中に熱を帯びていた「冬」は、何処か寂しく切ない「冬」になって幕を閉じる。 【すかあふえいす】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-02-25 07:29:47)(良:3票) 111.《ネタバレ》 ~La La Land~ちょっと狂ったタイトルで、造語だとしたら歴史に残る名タイトルなんだけど、既存の言葉らしい。 『現実的でない陶酔状態』とか『夢の国=LA(ロサンゼルス)≠ハリウッド』 底抜けに楽しいオープニングのハイウェイのダンスから、カラッとしたミュージカル・コメディかと思ったら、意外にも切ない物語だった。 これはもしや、後半の走馬灯のような~if~のシーンが現実で、映画の本筋が妄想なのでは? 売れない女優のタマゴが、たった一回限りの、しかも大失敗した一人芝居で注目されて主演に抜擢、5年後は大女優に… 本格ジャズが売れない時代に、片手間で参加したバンドが大ヒットして、夢だったハリウッドのジャズ・バーを買い取って繁盛させる… う~ん…そんなに上手くいくか?って思ったけど、本筋が妄想だと辻褄が合わない事が多く発生するので、そのうち再検証したい。 なので、あの~if~のシーンは、セバスチャンからミアへ『有名女優になる君の夢は、きっと僕と付き合い続けても、別れても、どんな道を辿っても絶対実現できたよ。でもハリウッドのジャズ・バーのオーナーになる僕の夢は、君と別れないと実現できなかったんだ。これで良かったんだよ、君は後悔しないで良いんだよ』って意味に捉えよう。 店の名前が“チキン・オン・ザ・スティック”じゃなく“セブズ”なのは、セブのミアへの未練だろうか?感謝かな。 男優、女優、ミュージシャン、シンガー、ダンサー。自分の夢を実現すべくハリウッドに向かう希望に溢れたタマゴたちで、ハイウェイは大渋滞だ。 心の中で笑顔で踊る夢を抱きながら、現実は我先に目的地(地位と名声)に行こうとクラクション(競争)の応酬。成功者はほんの一握り… そう思うと底抜けに楽しく見えたオープニングも切ないな。 渋滞する夜のハイウェイから降りることで二人が再会するのも、競争から抜けるって意味だろう。 なんか無性に『マルホランド・ドライブ』を観たくなったぞ。 【K&K】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-04-17 13:12:25)(良:2票) 110.《ネタバレ》 作品公開時に劇場で鑑賞し、その素晴らしさに感動。 しかし帰宅し、レビューをと思っても自分の気持ちが上手くまとまりまらず。 「ラ・ラ・ランド」のレビューを書きたいと思いつつ、年を越しました。 そしたらなんと、劇場で再上映されるとの嬉しいニュース。 ワクワクしながら劇場へ足を運びました。 オープニングの高速道路のシーンは最高! 車のドアを開けるタイミングもばっちりで、カラフルな衣装や弾む音楽にうっとり。 「ロシュフォールの恋人たち」大好きな私には至福のひととき。 セブとミアの現実にありそうな関係。 その心情を歌いながら踊りながら、しかしセリフではなく演技で観客に伝えており秀逸。 特にミアのエマ・ストーンさんの迫力と本気に惚れ惚れしました。 ミュージカルのお決まりの、現実ばなれした歌いはじめから語られ、そこからリアルな世界にじわじわと感情移入していく。 ミュージカル作品であっても、複雑な心情を描き切ると言う快挙を成し遂げたと思います。 こんなにも深く描けるんだと感心しきり。 歌、音楽、セリフ、衣装、ロケ地、すべてのバランスの良さは監督はじめスタッフのセンスの良さだと感じました。 幾度も繰り返し観たい秀作。 【たんぽぽ】さん [映画館(字幕)] 10点(2018-01-15 11:13:20)(良:2票) 109.《ネタバレ》 映画が始まって直ぐの高速道路でのシーン、1人が車から降りて歌いだすとまた1人、また1人と次から次へと大勢の人達が車から降りて同じ様に歌い、踊り出す。おう!何処かで見た世界、ジャック・ドゥミ監督のロシュフォールの恋人たちを彷彿させるシーンにここで早くも完全に映画の世界に入るとそこから後は良きハリウッド映画やロシュフォールの恋人たちと同じジャック・ドゥミ監督のシェルブールの雨傘を彷彿させる色彩の鮮やかさ、音楽の素晴らしさに見ていてまだまだずっと見ていたい気持ちにさせられました。主人公の二人が街の夜景をバックに踊る丘の上でのシーンに昔のアステアの映画を感じる事が出来て、他にも色んな場面にこの監督の映画に対する愛情、情熱を感じる事も出来る。プールでのシーンの映画ならではの楽しさを感じ、プラネタリウムを見てる二人が舞い上がるシーンの素晴らしさ、どうやって撮影してるんだろう?色んな場面での映画ならではの素晴らしいシーン満載、数多くの映画へのオマージュを捧げるシーンばかりで一度見ただけではまだまだ物足りない。少なくともあと二回は映画館で観たいと思わせる力、魅力がこの映画にはある。私自身、アカデミー賞は全く信用していませんが、今回に限ってはこの映画こそアカデミー賞作品に相応しい。こういう娯楽作品こそアカデミー賞作品賞を獲得するベきだと声に出して言いたい。やたら小難しくて、説教臭かったり、お涙頂戴みたいな作品やミュージカル映画に犯罪を絡める様な作品なんかよりもずっと作品賞に相応しい映画です。ミュージカル映画とはこうあるベきだと思わせるお手本のようなミュージカル映画の大傑作がここに誕生! 【青観】さん [映画館(字幕)] 10点(2017-02-26 22:36:37)(良:2票) 108.《ネタバレ》 ミュージカルがちの人と苦手の人、両方が厳しい見方をする作品。確かにミュージカル映画とは言ってますが、ジーンケリーと比べちゃかわいそう。あちらは筋金入りですから。こちらのミュージカルパートはあくまでも、二人にとって「夢を追う」姿の象徴的存在で、脳内妄想の範ちゅうを超えてないレベルです。現実はもっと厳しいもので、ぶつかり合い、すれ違い、傷つけ合い、ハッピーなミュージカルのようにはいかない。カラフルな色使いのロマンチックなラブストーリーは非現実。夢を見ることは非現実的だけど、夢のためにやりたくない仕事をして、妥協して、挫折するのは現実。この矛盾の狭間に生きるのが夢追い人。ミュージカルという不条理にはぴったりな題材だと思う。 二人はそれぞれ夢を叶えることが出来たけど、何て切ないラストでしょう。あの走馬灯はどちらの脳内を走ったものなんだろう。あるいは二人の脳裏に同時に現れたものだとしても、二人は別々の道に戻っていくのです。あー、切ない。 良くも悪くもこちらのレビューのようにみんなが自分の人生観や恋愛観、映画愛、ミュージカル愛を自由に語り合ってもまだまだ語ることがありそうな作品であることは確か。 【ちゃか】さん [インターネット(字幕)] 8点(2024-05-13 15:01:27)(良:1票) 107.《ネタバレ》 懐古的なオープニングタイトルで始まり、ワンカットでカラフルに描かれる歌とダンスの競演。カメラワークが素晴らしい。ツカミはOK!という感じですね。 が、そこからは定番・鉄板・お約束感満載のラブストーリー。意外性はほぼなしといった感じでした。それでも惹きつけられ一気に観てしまったのは何故だろう?ひとつには主演ふたりの魅力ですが、それを上回る優れた演出によるところだと思います。 オープニングでも度肝を抜かれたカメラワーク、繊細かつ巧妙な色使い、そして素晴らしい音楽。敢えてカテゴライズするならば本作は本格的ミュージカルとは言えないように思えます。けれども、間違いなく音楽が支えている作品。これもミュージカルの一形態なのですね。 ラストのif走馬灯は感動的でした。ふたりの歩んだ、或いは歩んだかも知れない各パートが見事に編集されていて、このカットが定番・鉄板のラブストーリーを珠玉のラブストーリーへと昇華させているように思います。 ミュージカルと言うには何か物足りない。ラブストーリーと言うには目新しさは感じない。でも惹き付けられて止まない。不思議な魅力の作品でした。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [インターネット(字幕)] 8点(2024-02-26 19:27:32)(良:1票) 106.《ネタバレ》 前半は「えらくオールドスタイルなミュージカルだな」と思っていたら、中盤以降は完全にほろ苦い大人のラブストーリーでした。売れないジャズピアニストと女優志願の娘が主人公という典型的な“ボーイミーツガール”なんですが、デイミアン・チャゼルはあえて奇をてらわないというか一周回って新しさを感じさせるようなノスタルジー、スタジオ・クレジットと“CinemaScope”のロゴの見せ方なんかはモロでしたね。この映画はミュージカルではなく、いわば“ミュージカルをフューチャーした恋愛映画”と捉えるべきでしょう。多彩なミュージカル・シークエンスを期待していたこちとらにはちょっと拍子抜けでした。それでもベタではありますが、ラストの“二人が歩んだかもしれなかったもう一つの人生”を見せるミュージカル・シークエンスは感無量です。この映画は音楽以上に色彩設計が素晴らしい。冒頭のダンス・シークエンスはもちろんですが、セブとミアの心情を表すのに青系や赤系そしてそ補色として黄色と緑が、セットや情景そして衣装に効果的に使われています。演技としては、やはりエマ・ストーンが良かった。これほど演技しているような表情(ちょっと変な表現ですが)で歌唱できる女優だったとは、観直してしまいました。あと前半にワン・シーンだけ出演してライアン・ゴズリングをクビにするJ・K・シモンズ、これは『セッション』のパロディなんですね(笑)。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-06 21:41:08)(良:1票) 105.《ネタバレ》 ド定番なストーリーで、主な登場人物は2人だけ。しかもその2人も、どこにでもいそうな平々凡々な人物。ところが、最後まですっかり惹き込まれてしまいました。ミュージカル的なシーンにありがちな違和感もまったく感じないほど。 おそらくそれは、スタバ風に言えば「手の届く贅沢」を描いているからかなと。もともと才能のある人物ががむしゃらに頑張って成功を掴み取るというのではなく、凡人が「こうなったらいいなぁ」と夢想しつつちょっとだけ頑張ったら、幸運に恵まれましたという感じ。そこに悲壮感はないし、貧困とか格差とかややこしい問題も描かれません。凡人代表の私としては、登場人物を応援するというより、「こういうこともあるよね」と共感するばかり。 そして話は突然5年後に飛び、2人とも「手の届く贅沢」を手に入れますが、「手に届いていたはずの贅沢」は手放してしまいます。その描き方がまたせつなくて、心を揺さぶられます。やはり、「こういうこともあるよね」と共感するばかりです。 【眉山】さん [インターネット(字幕)] 8点(2020-10-22 02:30:55)(良:1票) 104.《ネタバレ》 ミュージカルは好きです。舞台も結構見ます。 でも、この作品はもう一度見ようとは思えません。 OPのフラッシュモブみたいなのは、まとまり無くてチグハグで長く感じたので、 もしかして好きになれない映画かもと思ったら、そのとおりでした。 ありきたりなストーリーだし、歌やダンスもそれほど見所無く乗れないまま終わりました。 ライアン・ゴズリングの繊細な演技は好きですが、エマ・ストーンに魅力を感じません。 ただ、最後のシーンは良かったです。 別の未来もあったかもしれないけど、これで良かったんだよね、と無言で見つめ合って少し笑顔になるところ。 二人は別々の道を行ったからこそ、自分の夢を叶えられたと思うので。 【nanapino】さん [地上波(吹替)] 4点(2020-07-07 17:20:44)(良:1票) 103.《ネタバレ》 冬から始まって、春、夏、秋、そしてまた冬。ここでちょっと驚いた。この冬は5年後なのだ。そしてもっと驚いた。なんと二人は結ばれていなかった…。これにはミアを応援してきただけに、裏切られた気分にさえなったが、最後の最後、見つめ合う二人の表情を見ちゃうと、もうね…。もがき続けた夢追い人同士だからこそ、失恋にさえ納得がいく。あのときの選択、「今」の尊さ、二人は分かりあってる。もはや、こちらとしては口を挟む余地が無い、といったところ。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-03-06 00:21:54)(良:1票) 102.《ネタバレ》 滑り込みで鑑賞。すごい。 上映2時間のあいだ、特に後半は鳥肌立ち続けの迫力。 こんな美しくて切ないロマンスがあるなんて。ラスト15分間の想像だにしない息のつけない展開、お見事。 決して説明的ではないし、音響と演出がピタリとハマってて圧倒された。 ミアではなくセバスチャンの目線で映画を見終わっていることに気づく。 この作品を見ていたら、人生における選択1つ1つの大切さに気付かされる。 【カジノ愛】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-04-10 20:59:34)(良:1票) 101.《ネタバレ》 何と云っても「Dancing in the Dark」のアステアとチャリシーを想起せずにはいられない「A Lovely Night」のシーンが秀逸だ。 二人がベンチに腰掛けてからの脚の演出。ベンチの上に立ちあがった二人の頭を超えて、LAの夜景へ寄っていくカメラ。そしてカメラが引くと、二人のフルショットでのダンスを絶妙の構図で捕捉し続ける。これらを全くカットを割らずにシーケンスショットとして見せ切るのだ。何という見る快感。 あとは「City of Stars」という楽曲が2回(エンドクレジットのハミングを加えると3回)使われるが、桟橋のゴスリングと黒人の老夫婦のシーンもいいし、ゴズリングとエマ・ストーンが部屋でデュエットする場面の幸福感が素晴らしい。「A Lovely Night」といい、これといい、ツーショットの演出が秀逸だ。 それに比べてツアーからサプライズで帰ってきたゴズリングとストーンが口喧嘩になるシーンでアップカットのリバースショットを延々と見せられるのはちょっとシンドイ演出だ。 あと、映画館で『理由なき反抗』を見るシーンがあり、『エデンの東』等でない、ということで、おゝ分かってるやん、と思う。クレジットタイトルのジェームズ・ディーンのカットをバックにストーンがスクリーンの前に立つ。少々奇異な演出なのだが、これも現実離れしたとても映画らしい演出、と思っていると、グリフィス天文台のシーンでフィルムが焼けて上映中止になってしまう。この扱いには少し腹が立つが、この後、二人はグリフィス天文台へ行き、何ともファンタジックで美しいミュージカルシーンとなり、こゝも大いに感激する。 実は、冒頭のハイウェイでの「Another Day of Sun」のシーンは逆光が多く、人物の顔がアンダーで見づらいと思っていると、さらにルームメイト(ソノヤ・ミズノが出ている!)との「Someone in the Crowd」もローキーぎみだ。こゝで既に、私は本作が「影」のあるミュージカルなのだという予感がした。 エピローグは、矢張りともて切ない演出で、21世紀のミュージカルらしい帰結と云えるだろう。上で、中盤のリバースショットが難点であるかのように書いたが、ラストの二人の視線の交錯は、切なさが倍増しされる、たまらない切り返しだ。 【ゑぎ】さん [映画館(字幕)] 8点(2017-03-28 05:43:28)(良:1票) 100.恋する気持ちを、最初にダンスで表現しようとしたのは誰だったのでしょう?突然ベンチにぴょん!と飛び乗ってタップを踏む30男のセブが可愛らしすぎて、思わずニヤついてしまいました(その後のダンスで2人のステップが若干ずれているのもご愛敬)。出会ってすぐミアがちょろっと語った生い立ちをセブがひとつ漏らさず憶えていて、図書館前でクラクションを鳴らすところもいやはや・・・(最初から最後までクラクションの使い方には参りました)。メイキングを見ると、監督のこだわりを実現するために最高の叡智が集結したんだろうなぁ、とただただ感心。自分の夢に他人を惹き込める人はやはり素晴らしい。もう1回見に行こうっと。 【showrio】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-03-18 19:10:41)(良:1票) 99.《ネタバレ》 これは評価に悩む作品。私がハッピーエンドを求める方なので、やっぱり点数は厳しめにつけてしまう。 「ラブストーリー」としては、ごくごく普通な展開。音楽の力でカバーしている感じかな。 歌でつくられるHAPPYな雰囲気や盛り上がりは見事で、映像美も見てて楽しい。演出はパーフェクト。これぞ映画という感じ。 でも、ラブストーリーとして、個人の心理描写が甘いかな。。登場人物が惹かれていく様子とか、すれ違う辛さとか、、が繊細には描かれていない。だから、恋愛にイマイチ感情移入が出来ない・・切なくって泣ける!!という感じはありません。 このあたりの好みほんと分かれると思う。ほろ苦い結末はあっさりで、ちょっと私には物足りないというか、大人な見せ方過ぎた。 IFのストーリーを歌で上手く見せてるとは思うんだけど、すでにラブストーリーとしての結末は、わかってるから、ラストの盛り上がりにのれないのが辛い。もどかしい。楽しげなミュージカルシーンが空回りしている感じ。HAPPYな歌とダンスと色鮮やかな演出にこだわるなら、とことんハッピーな気持ちにさせて欲しいと思ってしまう。気持ちが置いてかれてしまったラストが残念。 でも作品の完成度としては悪くないので、見ておいても損はない。大人のヒトにお勧めです。 【うらわっこ】さん [映画館(字幕)] 6点(2017-03-12 19:46:48)(良:1票) 98.《ネタバレ》 最初のミュージカルシーン。停止する事で移動する乗り物でなく、お立ち台として機能する車。人の移動を伴いながら全てがワンカットで捉えられる。 グリフィス天文台のシーンでは、建物、オブジェ、踊りながら二人が描く軌道、プラネタリウム室、星などのあらゆる物が円のイメージをかたどる。キスで締めくくられる事で二人の関係性も円満に収束し、円で縁どられる二人が映され暗転する。 そして反復とズレ、空間距離と精神距離を一瞬で破棄する事で虚を突く、ありえたかもしれない過去を映すキスシーン。 他にも、原色を基調とした色彩や基本としてワンカットで貫かれるミュージカルシーン。 古き良き物として皮肉混じりに何度も映される、成功の象徴である壮麗なプールサイド。水の中に入りカメラが旋回する場面は露悪的な絢爛豪華さが一つの絶頂すら迎えている。 等等見所は多い。 ただ天文台での二人の初めてのキスを境に話が山場を迎えるにつれ、映画自体は凡庸化していく。 ハリウッド、夢、現実、挫折、成功、離反が事務的にも思える手際の良さで処理されていく。そもそもミュージカル映画にストーリーの深みを求める事自体間違っているのかもしれないが、ミュージカルシーンをとっても後半になればなるほど曲も見せ方も単純につまらなくなっていく。 そして作られた背景で作られた過去が繰り広げられるラストは、抒情に訴えるだけの安易な蛇足であり、二人にとって重要であったキスの不在と視線のやり取りを映すだけで十分であると個人的には思う。 【ちゃじじ】さん [映画館(字幕)] 6点(2017-03-05 00:17:19)(良:1票) 97.《ネタバレ》 最高のシネマスコープと最高の音、それだけで十分、他に何を望みましょう? ってわけにもいかないので。だけどミュージカルとしてはそこそこかなぁ、と。確かにデジタル処理に頼らない冒頭の長回しとかエマとゴズリングのデュエットダンスの長回しとか、気合いというか意気込みを感じます。でも、この映画、そんなにはミュージカルそのものに興味ある訳でもないよね?って。オマージュこそたっぷりだけど(ゴズリング見ていてジーン・ケリーか? やっぱりジーン・ケリーだな? みたいな、あと『巴里のアメリカ人』はもちろんだけど『世界中がアイ・ラヴ・ユー』も入ってない?とか)、これぞミュージカル、みたいなのは主にさっさと前半にブチ込んで(ミュージカルの醍醐味の1つである俯瞰でバーンと見せる群舞はオープニングにチラっとしか無いしねぇ)、あとは夢と現実の狭間で揺れる二人のドラマに絞られていって。 ここに見えるのは表現者の心。エマとゴズリングが代表しつつ、映画の中に実際のお仕事として、作品として表現されてゆくという。ベタベタ懐古主義の平和ボケ映画に見えつつ(ワープディメンションなシネマスコープロゴからのアスペクト比は初期シネスコの1:2.55だし)、クリエイター達のお仕事っぷりが虚実交錯しながら二人のドラマの中に集約されていっているような気がします。 表現者のリアルと理想とハートと作品と、そういうものがそのまま1本の映画の中にぎゅっと詰まって、なので一筋縄ではいかない、アレもコレもな映画になっている感じがして。受け手としてはそこに身を任せて、その混沌の中から自分が反応したもの、ひらめいたもの、感じたものを大切にするのが吉、って思いました。 私はこの映画を見ていて無性に写真が撮りたくなりました。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 9点(2017-02-28 22:14:53)(良:1票)
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