みんなのシネマレビュー |
|
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
43.《ネタバレ》 原子爆弾の父こと、理論物理学者ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落を描いた伝記ドラマ。クリストファー・ノーラン監督らしく、複数の時間軸を錯綜させたノンリニアなストーリーテリングが特徴で、膨大な登場人物を使い倒し、猛烈なスピードで、天才物理学者の矛盾に満ちた生涯を描いている。脚本で参考にしたのは4作品。伝記映画としての大枠は『アラビアのロレンス』から。脚本での参考は『羅生門』、『JFK』から。人物造形、ことオッペンハイマーの宿敵ストローズの造形は、『アマデウス』におけるサリエリを参照したのだろう。 本作を理解する上で決定的に重要なのは、(1)時間軸を理解すること、(2)カラーとモノクロパートの違いを理解することである。特にカラーとモノクロパートの違いは、本作の基本設定、世界観の根幹に関わっており、ここを理解することは本作への理解度、解像度を上げるためには重要である。 映画で語られる時間軸は主に3つ。 1、1926年から1947年にかけてのオッペンハイマーの生涯 2、1954年の聴聞会(オッペンハイマーが厳しい追及を受ける) 3、1959年の公聴会(宿敵ストローズが追及を受ける) カラーとモノクロの違いは、カラーは、オッペンハイマーの主観で描かれる世界であり、モノクロは、オッペンハイマー以外の第三者(主に宿敵ストローズ)から見た世界である。 たとえばカラーパートにおいては、オッペンハイマーが実際に目にして、体験したこと以外は描かれない。広島、長崎への原爆投下の描写がないのは、オッペンハイマーが実際に見ていないからだ。ただし、彼の脳内イメージとして、原爆の被害を幻視し、煩悶する姿は描かれる。 かたや、モノクロパートでは、第三者の目から見たオッペンハイマーの姿が描かれ、ここではカラーパートとは異なる、オッペンハイマーの人となりが描写される。また、カラーパートで頻出するオッペンハイマーの脳内イメージは、このパートでは一切出てこない。 このように本作では、カラー、モノクロパートの使い分けが脚本上でも徹底されており、それはもはや2つの異なる世界観が存在しているといっても過言ではない。 つまり本作は、3つの時間軸と、2つの世界観がハイスピードで交錯し、それぞれが影響しあいながら、クライマックスへ突き進むという構成になっているのだ。このような構成を持つ伝記映画というのは、他に例を見ない。ノーラン監督の作劇術の円熟を示すものであり、それが監督の持ち味である豪快な映像技術と合わさって、第一級の伝記スリラーとなっている。 原爆投下の直接的描写がないことから、批判的な意見もある本作だが、そうした意見というのは、個人的には、先に述べた本作の基本設定、基本ルールをよく理解しないで述べられた感想に過ぎないという印象だ。 本作を観るにあたっては、被爆国として、日本国民として、といったバイアスを外し、なんの偏見もなく素直に鑑賞するのが良いと思う。むしろそうしたバイアスを抱いたまま本作を観ると、当時の米国の政治状況や、物理学者たちの人間模様が矢継ぎ早に描かれる展開に置いてきぼりにされるだろう。なお、先述の基本設定を理解した上で本作を観ると、本作への解像度と、本作の本質と問題提起をより掴みやすくなるだろう。 原爆投下の描写がなくとも、いやむしろ、それが直接描かれないがゆえの恐怖がよく描かれていたと私は思った。政治や軍事の指導者たちが平然と原爆投下や核兵器の増強を決定する場面それ自体が、政治状況次第で倫理観をかなぐり捨てる国家指導者たちの冷酷さ、無責任さをよく表現していたように思う。原爆の被害という現実が、国家指導者たちには数字上のできごととなり、原爆開発者たちには、自分たちの手を離れた、どこか遠い異国でのできごとに変貌する。それをどのように考えるべきなのか、映画は観客に突きつけてくる。感想は人それぞれだが、私には、原爆被害でさえ相対化と正当化をしかねない国家への恐怖と、オッペンハイマーが扉を開けてしまった核の脅威がいまだ現代でも引き続いていることへの憂いを強く感じた。 【nakashi】さん [映画館(字幕)] 9点(2024-04-10 11:44:00)(良:4票) 42.《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。音響はド迫力でした。 本映画関連で大昔にNHKのドキュメントがあり(マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪)、ニューメキシコのすさまじい実験の映像とか、赤狩りの対象になり地位から追われた話は何となく知ってました(最近再放送)。 本映画で個人的に一番興味があったのは ・オッペンハイマー氏が核兵器反対に転じたきっかけは何か? でした。期待しつつ観たのですが、それっぽい要素は丁寧に漏らさず取り込まれてましたが、巧妙に恣意的に時系列を混乱させごまかされてるため、結局よくわかりませんでした。 たとえば、有力候補で「終戦から数カ月後、広島・長崎の状況視察者の報告会が開かれたそれを見て改心?」という説があり、その場面もあるのですが(直接映像は悲惨すぎるため映画中では見せられないのですが)、一方、氏の主観的場面で講演時にフラッシュバックで人が焼き尽くされる映像が出て衝撃を受けるんですけど、順序が入れ替わっており、 ・論理的展開:報告映画を観る→それが印象に残って講演時にフラッシュバックをする ・映画の表現:講演時にフラッシュバックをする→報告映画を観る て感じに、実に巧妙に順序を入れ替えた問題の焦点をごまかす印象操作がされてるので、なんだかなあと。 あるいはですね、核実験のすさまじい結果であの甚大な大量殺りく兵器に対する罪悪感を醸造したというごく人間的な説も考えられます。しかしオッペンハイマー氏の女性関係の節制のなさ罪悪感のなさ子供に対する無関心から、全然まったく氏に一般的な倫理観があるように見えずどうなんだろうっていう。まあ、(既婚ですが)以前付き合ってた女性の自殺への強い罪悪感の表現があるので「死」に対しては罪の意識があったのかもしれませんが。 で、実験結果で罪悪感を覚えたとすると、本映画では、爆発映像が大きな花火を打ち上げたかのような実に美しい絵柄で描かれ、時間差のすさまじい爆音と衝撃波でその恐ろしさが表明されるのですが(爆音・衝撃波のフラッシュバックは何度も出てくる)、これも恣意的に「被害」を隠ぺいした表現になっていて、もちろん実験は人を避難させてたと思うんですが、ドキュメントの映像などであるように、近隣の建築物がすさまじい爆風で吹き飛んでたわけですけれども、映画中ではそういう「被害」も一切見せないわけです。だから、人ではないけど、人の作った構築物への甚大な被害を見て、これは良くないと、見識を変えたのでは? と想像したくなるのですが、そのような映像も全て隠蔽される。 あと、世界初の核実験なので認識は甘く(実際、投下時の被害者数見積も大幅に少なく)、日焼け止めクリームにサングラスしただけでは到底足りず被爆してしまった人もいたと想像するんですが何も説明はなく(水爆実験の被爆者は大問題になりました)、本作で一番無神経な演出と思ったのは「実験が無事終わったらシーツを家に取り込んでくれ」てのがあって、映画では家が実験場からそれほど遠くない場所に見えたんですが(勘違い?)、そうすると外に干したシーツが被爆して大変なことになるのでは、ってのがすごい観ててヒヤヒヤした。爆発・炎・爆音・衝撃波等「目に見える」被害は認識するけれど、放射線被ばくなどの「目に見えない(聞こえない)」被害への認識がまったく甘く、無神経な演出をついついしてしまう、という昔ながらの悪癖は全然直ってないな、て感じでした。 あと話の終盤オッペンハイマーがアインシュタインと実はこんな会話をしてた、というネタ晴らしがされるのですが、個人的意見としては、 「アインシュタインはそんなこと言わないんじゃないかな」 と思ってしまった。実際どうなんでしょう。 そんな感じに、まとめると、前世紀最大の発明であると同時に最大最悪の大量殺りく兵器を作り出してしまった「罪」に真正面から対面しようとして、結局対面できずごまかした作品かなあと、私は認識した次第です。 で、今年のアカデミー賞は本作と、大量殺りく兵器に真正面から立ち向かう「ゴジラ-1.0」が同時に各賞を受賞するという、非常に面白い巡り合わせになっており、現実では各地で戦争が巻き起こり、禁止されてたはずの非人道的兵器もバリバリ投入され、最悪、核使用の危機すらあり得る状況で、このような映画が高評価になったのは、世間への問題提議としては良かったのかも、と思ったりなんかしました。 そんなところです。 【sim】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-04-11 13:21:51)(良:3票) 41.《ネタバレ》 凝った映像設計で知られるクリストファー・ノーランにしては、オッペンハイマー=キリアン・マーフィを軸にしたまるで対話劇の様な作劇だったのは意外でした。ほんとに、この映画はすべてのカットにキリアン・マーフィが映っていたんじゃないかと思うぐらいです。原爆開発の理論や技術的な面はほとんどスルーしていたような印象もあり、ひたすら政治劇を見せられていた感があります。ノーランお得意の時系列をシャッフルするストーリーテリングも、本作ではいたずらに物語を判りにくしてしまったんじゃないかな。単純に言っちゃうと、この映画はオッペンハイマーに対するルイス・ストローズ=ロバート・ダウニー・Jrの確執と陰謀に収斂されるストーリーだったかとも思いました。実は自分はキリアン・マーフィの爬虫類顔が前から苦手だったのですが、今回は自分たちが成し遂げたことの罪深さに慄くようになってゆく何を考えているのか判りにくいキャラの人物を演じるには最適の面構えだったのかもしれません。対するロバート・ダウニー・Jrは、ちょっと見には彼とは気づかない完璧な老けメイク、彼の持ち味である演技力を存分に見せつけた好演です。 この作品が「原爆の被害がまったく描かれていない」という抗議が日本であったことは耳に新しいところです。でも実際に鑑賞してみると、ノーランはあえてそれを見せない作劇をチョイスしたんじゃないかと私には思えて、これはこれで正解なんだと思いました。疑問に思ったのはその抗議を叫んだ団体などは、作品自体を日本で観られない時期に声を上げていたふだん映画には縁が無さそうな面々で、観てない映画を批判するのはNGなんじゃないですかね。歴史的な出来事には色々な視点があることは許容されなければならないし、それを認めないとなれば単なる言論弾圧になりますよ。実際に自分が不快極まりなかったのは原爆投下を喜ぶロスアラモス研究所の科学者たちの姿で、オッペンハイマー自身も「私たちは原爆開発を研究しただけで、どう使うのかは政治の話だ」とその時点では言っています。でもそうなると、この科学者たちはナチの命ずるままに職務に励んだ絶滅収容所の所長や看守となんら変わりがないんじゃないかと思えてしまうんですけど… 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-01-13 22:44:03)(良:2票) 40.《ネタバレ》 作品賞受賞も納得の重厚なドラマでした。 いやあ、でも、だいぶストーリーには置いて行かれましたね。字幕では膨大な情報を処理しきれません。 マンハッタン計画と、赤狩りの聴聞会まではわかるのですが、R.ダウニーJr.の熱演は光るものの彼が主役の公聴会のパートのつながりがさっぱり理解できずでした。日本人でストローズって人を知っている人ってあまりいないでしょう。そもそも、このパートってそんなに必要だったかな? 原爆の被害の描写がない、ってことがこの映画が国内公開がここまで遅れた理由とのことですが、過剰反応でしょう。映画全体としてはしっかり反核、反軍拡の主張でした。オッペンハイマー自身が、最初はただのプライドや競争意識だけに駆られて始めた原爆開発が、それが実際に使われるに至って強い後悔にさいなまれていく様子がよく表現されていたと思います。背景が重低音とともにぼやけて震えだす、という演出はシンプルではあるけれど、本人の不安感をよく伝えてくれていたと思います。 アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルグ、ローレンス、ベーテなどの巨人たちがどんどん出てくるし、ほんのちょい役だけどフェルミやゲーデルまで顔を出すところは、昔このあたりを学んだことのある自分にはちょっとうれしい感じはありました。 【Northwood】さん [映画館(字幕)] 8点(2024-03-30 17:56:13)(良:2票) 39.《ネタバレ》 気になっていたオッペンハイマーをようやく配信で鑑賞した。 以下、思いつくままに箇条書きする。 ◆養老孟司先生がよく書いているように、数学者は数学の世界を実在として認識している。 それと同じようにオッペンハイマーも、(この映画の中では)量子論的な世界が実在するものとして見えている。 そのことが、オッペンハイマーの神経症的なパースペクティブに繋がっており、この映画に絶え間ない緊張感を与えている。 ◆原爆を生み出すことは、人類史において「火」の誕生と同程度のインパクトがあるという意味で、オッペンハイマーをプロメテウスになぞらえるのは適切であろう。 ちなみに、この映画の原作となった伝記の原題には「アメリカのプロメテウス」(American Prometheus)とある。 プロメテウスが出てきたからというわけではないが、鑑賞後、ノーラン監督はオッペンハイマーの生涯をギリシア悲劇のように描こうとしたのではないかと感じた(もっとも、オッペンハイマーの奥さんはシェイクスピア劇に出てきそうなキャラクタではある)。 そう考えると、ノーランの次回作がオデュッセウスを題材とするものであることは、ある意味で自然なことなのかもしれない。 なお、オッペンハイマーの人生に悲劇的なところが多々あるとしても、最後は復権した姿が描かれており、この映画が悲劇的に終わるというわけではない。 ◆この映画が被爆国たる日本を軽んじているという意見があるが、理解できない。 第二次世界大戦後におけるオッペンハイマーの苦悩と水爆反対論が何に由来するのかに思いを致せば、オッペンハイマーが原爆を人類に対して使った「成果」をどのように思っていたか(あるいは、これをどのようにノーランが描こうとしていたのか)は明白である。 ◆ケネス・ブラナーは、今回は出番が少ないながらも、強い存在感を示している。 最近のノーラン映画での活躍から、マイケル・ケインがノーラン映画で占めていたポジションを継ぐのは彼であろうと思っていたが(英国のベテラン実力派俳優という共通項がある)、次回作の出演者としてはアナウンスされておらず、出演しないのであれば少々残念である。 ◆ラミ・マレックが演じる人物が終盤で重要な証言をするが、そのように証言した動機がよく分からなかった。 再鑑賞すれば分かることもあるのかもしれないが、とりあえず関連する書籍を読んでみるつもりである。 【山の木屑】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-03-03 12:45:16)(良:1票) ★《更新》★ 38.《ネタバレ》 オッペンハイマー。それは原爆と言う悪魔の兵器を創り出し、全ての戦争の形を一変させた科学者の名前。彼は、このまま日本と本土決戦に突入したら双方に膨大な戦死者を出したであろう第二次大戦を早期に集結させた稀代の英雄なのか、それとも何十万にも及ぶ何も知らない無辜の民を一瞬にして焼き殺した残虐な殺人鬼なのか――。本作は、そんな天才物理学者の知られざる半生を淡々と見つめた伝記映画だ。監督は同じく天才の名をほしいままにするハリウッドの寵児、クリストファー・ノーラン。3時間にも及ぶ地味で難解な内容なのにもかかわらず、同時期に公開された『バービー』とともに大ヒットを記録し、同時に評論家からの評価も高く、同年のアカデミー作品賞をはじめ主要部門を独占、だがその極めてセンシティブな内容から長い間日本公開がなされなかったいわくつきの本作を今回鑑賞してみた。なるほど、原爆をテーマとした映画にも関わらず広島長崎の被爆直後の惨状を一切描かななかったことに批判が出るのも分かる。だが、監督はそれは本作のテーマではないと敢えて描かなかったのだろう。それは、ユダヤ人であるオッペンハイマーが原爆制作の初期動機となったナチスによるユダヤ人虐殺という重要な事実も同じように敢えて描かなかったことにも表れている。この物語で重要なのは、科学と政治との切っても切れない関係を極めて冷徹に見つめたところにある。オッペンハイマー、彼は本当にただ優秀な一科学者なのだ。自分が作り出したものが世界をどのように変えてしまうのかなどと言う倫理的責任は、彼の科学的探究心の前では無に等しかった。ただただ彼は、これまでこの世界になかったものを自分の優秀な知性と類い稀なる努力とによって作り出したかっただけなのだろう。その結果、何十万人にも及ぶ無実の民が殺され、人々はいつ世界の終わりが訪れるのかという不安を抱えながら生きざるを得なくなった。彼が戦後、どれだけそのことを後悔しようともその事実は変わらない。だが、そんな科学者の存在が人間を進化させてきたのも事実。問題は、その力を政治家――およびその政治家を生み出した社会がどのように使うかなのだ。だからといって彼にまったく罪がないと言えるか。これはそんな人間の歴史を大きく変えながらも、自らもまた歴史の大きな流れに翻弄された一科学者の苦悩を深く見つめた物語なのだ。自らの才能と類い稀なる努力、そして作品に命を吹き込む俳優陣や多くの優秀なスタッフ、利益を得るために自らに投資してくれた出資者、その他多くの利害関係者に支えられながらこれまで幾多の傑作を生みだしてきたクリストファー・ノーラン監督の思いが、このオッペンハイマーと言う孤独な科学者に託されているような気がしてならない。自分の人生を懸けた最初の核実験が成功するのかしないのかを固唾を呑んで見守る彼の姿など、まるで公開初日を迎えた映画監督のようではないか。何もないところから一から作品を生み出し、その結果、多くの観客から毀誉褒貶の声を受けようとも、それでも自らの才能で映画の世界を変えてきた監督の新たなる傑作の誕生を素直に喜びたいと思う。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点(2025-01-08 07:49:58)(良:1票) 37.個人的にアカデミー受賞作品はハズレという持論をもっていてなかなか気乗りせずアマプラ入りしてようやく鑑賞しましたが、やはり自分の勘は当てになるようです。ちなみに自宅アマプラではありましたが、100インチ2.1ch環境と十分大画面で鑑賞できたと思います。音楽がやたらと過剰でやかましく、できればもっと落ち着いて静かに鑑賞したかった印象です。 個人的には、、意欲的だったインセプションの成功に裏打ちされたインターステラーまでがノーランの最高傑作だったと思っています。まあ確かにインセプションの成功の陰にはメメントやバットマンシリーズがある訳ですが、思い起こせばメメントやバットマンシリーズもちょっと小難しくて見るのがしんどい映画でした。この”ややこしい”感覚が最近では益々行き過ぎてしまって、テネットではまさに観客を無視して独走状態といったところまで加熱してしまいました。 上記の通りダンケルク、テネットと益々判り辛くなっていたところでしたが、本作オッペンハイマーは割とシンプルな作品でした。ただしそもそも論として題材は極めて退屈なもので、、NHKで放送されるドキュメンタリー番組に原爆の悲劇的な写真が挟み込まれてようやく見る気になるような暗い題材であったのは事実です。これをエンターテイメントとして見せ切った勢いには感服しますが、日本人=原爆を投下された側の国民なので作品が意図していない方向に感情が動きそうになるのを抑えるのに必死になりがちです。ノーランお得意の時系列を細切れにした演出ですが、本作ではさほど複雑にはなっていません。むしろ別の意味で効果的に機能しており、悪意を持って鑑賞する一部の層や、日本人の感情を上手く退ける効果はあったと感じます。 (当時の政治的思想や物理学者などのことをある程度知っているという前提ですが、)本作はあくまでオッペンハイマーの心の内を表現した作品で、きちんとそういう見方が出来た人には評価は高いと思います。ノーランお得意の時系列バラバラ作戦をもって、なんとか原爆を投下された側の気持ちをうやむやにさせる仕組みは機能していたものの、実際問題「原爆を投下された側の人間が世の中には確実に存在している」以上、事実は事実としてきちんと言及していただきたかったような気もしました。 そういった意味では少々ずる賢さすら感じてしまいましたし、原爆を投下した側のアメリカが自国で主催するアカデミー賞を自国で受賞してしまうのは・・ 「やはりあの国ってそういう国なんだろうな」とも感じてしまいました。そもそも、冒頭にオッペンハイマーを「プロメテウス」として表現してしまったのは大きな間違い・奢りではないのか?色んな意味でちょっと難しい映画でした。 【アラジン2014】さん [インターネット(吹替)] 6点(2025-01-07 15:39:43)(良:1票) 36.長い長い映画なのだが、そんな時間をかけても、歴史的背景や、登場人物の内面が薄い膜の向こうにある感じで伝わってこないため、ものすごい未消化で疲労感だけが残った 何が悪いのか分からない、ひょっとしたら見ている側(私)の察する力や理解力が弱いからかもしれない だけど、歴史が趣味でそれなりに当時の史実の背景を勉強してきた私がしんどい映画なんだから、そうでない人がみると、もっともっと未消化なんじゃないかと思うけど、どうなんだろう。 【みんな嫌い】さん [インターネット(字幕)] 5点(2024-12-17 21:07:58)(良:1票) 35.《ネタバレ》 主人公の人物についてはNHKのドキュメンタリーなどで予習したうえで鑑賞したわけですが、それでも辛かった。3つの時制が次々切り返されるのに加え、3時間の長尺ですもん、置いてけぼりになりそうで本当に大変でした。オッペンハイマーの、人類史上初の核兵器開発の立役者になるという不安と恍惚は分かりました。マンハッタン計画を成功させたアメリカの底知れぬパワーも理解しました。ですが、もう1回観ろと言われたらお断りします。 【次郎丸三郎】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-04-29 00:08:55)(良:1票) 34.予備知識無しで鑑賞したせいか、時間軸が行ったり来たりで何が起きてるのかわかりづらく、 カラーと白黒映像の切り替えにもどのような意味があるのか直感的にはわからないし、 色々考えながら観るのに疲れてしまった。 その辺すっきりして観たい人は、多少なりとも予習してから観たほうが楽しめると思う。 何度も繰り返して観ることで理解を深めたいという気持ちにはなったよ。 【おとばん】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-04-23 22:51:58)(良:1票) 33.《ネタバレ》 まず、アメリカ公開から時間がたちすぎで事前情報も入りまくり、まっさらに映画を観られなかったのは本当に残念。そんな状況を作り出した配給会社に対して、私は結構怒っている。事前情報なんて蓋をしておけと思われるかもしれないが、そこそこ映画好きな人間がアカデミー賞作品に関する情報を完全遮断なんて無理に決まってる。正直、アカデミー賞のときに(事前試写で見たであろう)評論家やジャーナリストが、その内容をあーだこーだ語ってるのだって不愉快だった。これだけの大作・話題作を、まったく見られない状態でオスカーの日を迎えるなんて、なんと不幸なことだろうか。 そもそもノーランは過去に『ダークナイト・ライジング』で核兵器をものすごく雑に扱った前科がある。あれ以来、私はノーランが核を描く、という本作のコンセプトに懸念しか感じなかった。あるいは、あれがきっかけでもう一度勉強して、今度はそのリベンジなのか。そこを確かめたいという思いもあって、公開翌日に映画館へ。 さて、実際に見てみた感想としては、IMAXで見る「おっさんばかりの会話劇」は、過剰気味な音響効果も相まって見所は十分。たしかにこれは、後々まで語られる重要作品であるのは間違いないだろう。面白いのは、本作を見終わった身近なみなさんの感想が、「本当に同じ映画を観た?」と思うくらいバラバラだったこと。ある人は、核の悲惨さを描いたものだ。原爆被害のシーンを描かなくても(描かないからこそ)十分にその「恐ろしさ」を描いていたと言うし、ある人は、これはナチ対ユダヤ人の闘いとその遺産を描いた映画だと言い、別の人は赤狩り時代のアメリカを描いたものであって、核はむしろおまけだったと語っていた。オッペンハイマーの周りにいた戦前の共産主義者の闘士たちの奮闘へのリスペクトを描いた、という明らかに的外れな見解を熱弁してる人までいる。 なんでこうなったのかといえば、緻密なのにちょっと緩い(ゆえに鑑賞者の解釈の枠組が入り込みやすい)時間軸バラバラ構成のおかげなんじゃないかと思ってる。別々のシーンがバラバラに配置されているなかで、その個別の場面をつなぐ「物語」を観客一人一人が見出しやすい構造になってる。そう考えると、原爆被害を描かなかったことも理に適ってる。私は描いたほうがよかったと思ったけど、もともと核問題・原爆被害に関心がある人は、描かれなくても自分が知っている「悲惨な絵」を思い浮かべながら見れるわけだし、そうだからこそ後半のオッペンハイマーの苦悩にも感情移入しやすい。ところが、アメリカに多そうな核問題に関心ない人たちは、描かれないがゆえにそこではなく、男たちの嫉妬のドラマだったり、戦争・冷戦・赤狩りという時代を描いた大河ドラマとして、十分に楽しめてしまう。実に、賢い。作り手の物語に引き込むのではなく、観客がそれぞれを再構成しやすい構造こそが、この映画の勝利だったし、だからこその興行成績と賞レース圧勝だったのだと思う。 結論としては、映画としての出来はすばらしい。ノーラン映画のなかでも出色だし、これでオスカー取れてよかったね、という気分。だけど、この映画で『ダークナイト・ライジング』での前科を克服したとはいえない。むしろ、悪い方にパワーアップして「非社会派な映画」の最高峰に達したと考えるべきだと思う。 【ころりさん】さん [映画館(字幕)] 8点(2024-04-13 18:19:02)(良:1票) 32.《ネタバレ》 映画のレビューは必ずしも客観的でも冷静でもある必要は無いワケで更に政治的に語られても良いワケで、と言い訳をしておいて。 これって結局西側白人社会の自己完結映画なんじゃない?って。徹底的に白人目線なのよね。もう東洋人なんかわざと排除してる。原爆を唯一戦争に使ったアメリカの、その相手である日本の事なんて言葉と数字でしか出してこない、それはオッペンハイマーからの視点ゆえ、なんて理由付けで納得できるかしら? 原爆を語る上で広島・長崎を抜きにして語れる訳はないのだけれど、開発に至るまでの過程と実際の使用と、そのバランス感覚は相当に悪い映画だと思うのね。 『ライトスタッフ』みたいにソ連が(そしてドイツが)核兵器を開発してる、その競争に負けないためにアメリカも頑張ります、って努力と感動のドラマは実験の成功シーンを頂点に娯楽映画としてノーラン監督お得意のケレン味たっぷりに盛り上がってみせるわ(日本人なアタシ的にはそこに一切ワクワクしたりはできないのだけど)。 で、その盛り上がりから一転、実戦投入による犠牲(の数字と白人に置き換えたヌルいイメージショット)、更に赤狩りを背景にしたオッペンハイマーの凋落、そして核拡散の恐怖を示唆する事で落としてみせるのだけど。今から40年前の『ウォーゲーム』や『ザ・デイ・アフター』で既に語られたモノから進化しているとも思えないし(進化があるとすればそれはノーランのエンターテイナーとしての面だわね)、『トゥルーライズ』『ピースメーカー』『トータル・フィアーズ』『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』等に登場する「核兵器はただの威力がでっかい爆弾」のイメージを一新させたかと言えば、とてもそうは見えないのよね(せいぜい高熱の波って感じだわね)。 核兵器を開発せざるを得なかった背景とか、オッペンハイマーのごくごく一人の人間としての小ささとか、物理学の発展からの到達点とか、でも結果として現時点で唯一アメリカって国が大義の名目(?)の上で多数の民間人に対してそれを使ったという歴史的事実の前では言い訳にしか映らないのよね。娯楽映画に落とし込んでアメリカだけではなく世界の問題ですよ、ってカタチにするあたり、それは違うんでないの?と思うわけ。 赤狩りの再来みたいなハリウッドのイスラエル擁護パレスチナ排斥、プレゼンターとなった東洋人への軽視が目立ってしまった今年のアカデミー賞でこの作品が高く評価されたあたり、色々雄弁に語ってしまっている感じがしてイヤね。 あ、ちなみにノーラン作品が苦手なアタシとしてはカット割が細かすぎて莫迦っぽい(会話シーンでの単純な切返しの多用ときたら!)、音楽が状況を語り過ぎていて五月蠅い、というのが映画そのものとしての感想。そんなもん。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 1点(2024-04-08 15:28:18)(良:1票) 31.鑑賞して4時間近く経っているが、頭が重い。。。鑑賞した人にはそれがわかるはず。。 ・・・。 NHKのクローズアップ現代で、桑子キャスターと監督の対談を見て、この作品を知りました。 どんな難解な物語になるのか。。。きっとついていけないだろう(テネットの時のように)。。と思いながら、劇場へ。脳がまだ思考停止していない昼間に。 2024年3月31日。 日本公開後初の日曜日。劇場内は、ざっと40人といったところだろうか、、年齢層は高めに感じた。 3時間の大作。さらにノーラン監督の難解(だろう)物語。 ここにいる全員がエンドロールまで辿り着けるのか。何人が途中退場するか。。。それも楽しみの一つだった。私は3人は退場すると踏んだ。 結果 退場者は1人だった。トイレに行ったか、退場したか、、、微妙な時間だったが、戻ってこなかった。きっとついていけず退場したのだろう。 私もセリフと音と、映像で脳が爆発寸前のところまで来てたので、退場したかった。。 この中でついていけた人間は何人いたのだろうか。 ノーラン監督の作品。。。かなりの覚悟を持って挑んだたが、そのエネルギーを受け止める脳のスペースが全然足りなかった。 物語を語るには、一回見ただけでは不可能。 人物相関を自分で描いて、時間軸を整理して、2度、3度見る必要があるだろう。。 クローズアップ現代で監督は、「1つの作品を完成させた時、“問い“が必ず残る。次の作品はその“問い“を拾い上げるところから始まる」と語っていた。 この作品を見て、自分なりの“問い“を考えたいと思う。 【へまち】さん [映画館(字幕)] 6点(2024-03-31 19:43:46)(良:1票) 30.トリニティ計画が成功して大の大人たちが狂喜乱舞するシーンは本当に恐ろしく、日本人としてもかなり苦しかったです。 でもお話自体はなんのことやらさっぱり分からず…登場人物が多すぎるし時間軸がバラバラ。どうして本国で(バービーと並んで)あれほどヒットしたのかがよく分かりませんでした。オッペンハイマーは日本で言う龍馬や信長みたいなものなんですかね?機会があればいつか、もう一度観てみたいと思います。 多くの米国民が本作に触れて原爆、そして日本について関心を持って貰えれば幸いですね。 ノーラン作品はダークナイトから劇場で観ていますが、次はアクションかSFが観たいな。 【Kの紅茶】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-03-30 01:20:45)(良:1票) 29.《ネタバレ》 日本に落とされた原爆を開発した科学者チームの中心的存在である男の物語。基本、僕はバカなんで、劇中、今何が描かれているのか、なんとなくしかわかってない部分も多く、しかも時間軸があっちこっち行くし長いしで、普通なら観るのがしんどくなるんですけど、全然退屈じゃなかったのは、やっぱそれだけすごい映画なんやろーなー。オッペンハイマーって人物にもこれっぽちも興味がなく、なんとなく巷の評判だけで観てしまったんやけど、最後まで十分集中できたので、そーゆう人物の背景を、ちょっとだけでも知れました。すべてが本当ってわけじゃないと思いますが、勉強になりました。確かに、ストローズってサリエリっぽい。 【なにわ君】さん [インターネット(吹替)] 10点(2025-03-05 20:56:58) 28.《ネタバレ》 クリストファー・ノーラン 監督が大好きで、流石に期待をしすぎてイマイチでした。 期待なしで評価したとしても、あまりに長い上映時間に対し、盛り上がりに欠け、映画好きの私でも途中で疲れてしまいました。 感想としては、オッペンハイマーという人物+αのドキュメンタリーとして見る分にはいい作品だと思いますが 楽しむための映画として見る分には苦痛といった感じでした。 【メメント66】さん [インターネット(字幕)] 5点(2025-02-26 09:55:00) 27.話題作だけに 期待して鑑賞..かなり変則な編集..某N○Kで 予備知識を入れていたので、大体なんとか理解できた..が、物語として 映画として 伝えたいことがぼやけてしまっている..映画は、原子爆弾開発のエピソードの他に オッペンハイマーの秘密聴聞会と ストローズの公聴会、この3つの時間軸が入り乱れて進行する..かなり複雑な編集..ここまで複雑にする必要はあったのか..話が散漫になってて 何がメインテーマなのか分からない..さらに 冷静に振り返ってみると 大した内容ではなかったりする..残念.. 【コナンが一番】さん [インターネット(吹替)] 6点(2025-02-16 00:32:09) 26.作品の重要さは分かるし、緊迫感ある場面もある。 それでも、この長さを集中して観続けるモチベーションを保つのは難しい。そして今現在はもう一度観ようという気にはならない。それが望まれていたとしても。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-01-04 11:05:17) 25.《ネタバレ》 ”あまり観る側に親切ではない映画”という印象が第一。 伝記ものということで、ある程度の歴史的背景や理系知識を持っていないと すぐに置いて行かれてしまう。 その上ハイスピードでどんどん話が展開し、しばしば時系列が前後し、 おまけに登場人物も多いので、シーンごとに状況を整理するのにかなり苦労する。 これで尺が長いので、非常に疲れました。 繰り返し鑑賞することを前提に作られていそうな映画。 主役のオッペンハイマーに関しては、女性にだらしなさすぎる点を除いては 概ね感情移入しやすい人間像。 彼を取り巻く環境・状況などをふまえると、 原爆投下に至るまでの経緯は概ね自然なもののように思える。 被曝による人体影響などはあまり描かれていないけれど、 まあアメリカ映画だし、そのあたりも違和感はなかった。 【2年で12キロ】さん [インターネット(字幕)] 5点(2025-01-03 11:05:32) 24.これならNHKのBSドキュメンタリーを見る方がずっとよい 【東京50km圏道路地図】さん [CS・衛星(吹替)] 3点(2024-12-30 14:46:44)
【点数情報】
【その他点数情報】
|
Copyright(C) 1997-2025 JTNEWS