みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
7.実在する画家が、マルメロという果実(日本で言うところのカリンですな、蜂蜜に漬けて、咳止めの薬になるという)を描こうとする様子を単にカメラで追っているだけなのだが、これを単純にドキュメンタリー映画だとは呼びたくないほど、マルメロと画家と監督の関係は、とても真摯で親密な関係を築いているようにみえる。画家は「写真に写して描けば」と言われても聞かずにマルメロの実のなっている木の傍を離れようとはせず、マドリッドの陽光を浴びて多彩な表情を見せるマルメロを一心にキャンバスへと写し取っている。そんな画家とマルメロを、カメラは静かにひたすらに捉え続けると言った風に。なんだか、そんな姿を呑気に眺めていると、こちらも次第に幸せな気持ちになっていくのだから不思議だ。例えて言えば、前作が小津のようにごくわずかなカットから「見えないもののありかを指し示す」ように描いていたのに対して、本作では、清水宏(この人も昨年生誕100周年だったんだと。特集もやってました。ホントに観たかったよ~)のように、写す対象全てを愛し、これらを丸ごと写しとろうと言う試みのようだと言ったら、こじつけだろうか? 【なるせたろう】さん 9点(2003-11-10 18:09:31)(良:2票) 6.《ネタバレ》 実在のスペインの画家アントニオ・ロペス・ガルシアは、毎年秋になると庭に手ずから植えたマルメロの木を=その実った果実に降り注ぐ陽光をキャンバスに写し取るべく再び製作を始める。しかし、誂え向きに日々好天が続くとも限らず、また枝も葉も実も留め様も無く刻一刻と姿を変えてゆく中で、いずれ実は地面に落ちて腐り、そして作品はまた未完となるのだ。その、ある年の製作過程をそのままフィルムに収めたという、まずは何よりコレ多分ドキュメンタリのジャンルに入るべき映画っすね(まあ、つくり自体=撮り方やシーンの構成なんかは全然劇映画っぽいですし、当年のカンヌでもコンペティション部門の出品作となって審査員賞も獲ってたりするのですケド)。かつ、主に9月末~12月中旬の二か月半の出来事を追っている、とは言え、殆どストーリー展開の無い映像が140分も続いてゆくのですから、エリセ監督の前二作に比べても遥かに「普通の映画っぽくない」作品だとも思います。その辺の事情は、ある程度頭に入れてから観た方が好いってレベルの作品…かも知れません。 しかし、そのスペインはマドリッド・リアリズムの正真正銘の巨匠…というロペス氏の、丹念に語られる製作過程そのものに関しては、よく観ると(とゆーのもナンですが)かなり面白みが在るとゆーか、最初は木のトコロに縦横に糸を張って(⇒ああコレが垂直線・水平線なんだな、と)んで更に地面になんか釘を打ってんなと思ったらコレは所謂「バミリ」なんですよね(⇒自分の爪先が常にその釘のトコロに来るように、と)。かつ、前述どおり何週間も描いてゆく中でチョコチョコ実や葉に絵の具で印を付けてんなと思ったらコレは今度は「時間経過による変化を測るもの」だとかって、最後は結局実も葉も殆ど全部印だらけになってたり(⇒んな面倒なコトすんならさっさと描き上げろよ!と少しダケ思ったりも)。 ソコは率直に、やっぱリアリズムの画家なんだよな~とか思ってたんですケドも、中盤に同業者?から色々と質問を受けてる場面が在って、ソコで「なら普通は最初に写真撮ったりしない?」とか言われると、いやそうじゃない⇒木の側に私が立って時間を共有するコトが重要なのだ云々…みたいなコトを言い出したりもして、ソコは再びちょっと意外だったりもしたのですよね。聞けば、この人もまた非常に「寡作」な芸術家だとのコトで(⇒このマルメロの画だって毎年未完で何十年も描いてる、とかで)想像ですケド今作、ソコにエリセ監督が大いにシンパシーを覚えた…とかってヤツなのかな~と思ったりもするのですよね。確かに、一般的な映画として楽しめるって作品ではないかとは思いましたが、私自身も(まあソレでも私は雰囲気映画的な楽しみ方って観点ではフツーに十分楽しかったとも思う…その上で)教養とゆーか少なからず何か学び取れたモノは在ったかと思いますし、ソレこそアーティスト=表現者の方々にとっては、更に大いに参考になる様な部分も在るのではないかと思うのですね(⇒特にズバリ画家の方々なんか、より絶対面白く観れると思うのですよね)。個人的にはある種の「芸道」映画に見えたってコトで、こんな評価としてます。 【Yuki2Invy】さん [レーザーディスク(字幕)] 7点(2024-03-17 15:32:10) 5.会社帰りに寄った映画館 上映してるのはマルメロの陽光。勝手にスペインの美しい陽の光を堪能しようと・・、ほんとに軽はずみな行為でした。一向に進まないストーリーに困惑しつつも、何かをつかもうと頑張ること2時間強。そして敗けました。あーあ疲れた頭で挑まなきゃ良かったよ。休日に見ても理解できたとは思わないけど。 【tottoko】さん [映画館(字幕)] 3点(2011-08-04 16:28:39) 4.道の向こうから画家がやってくる。カンバス作り。マルメロと向かい合ったセッティング。対象にマス目を作っていく。基準。足の位置も決める。不確かに流れゆく世間のなかにあって、ここだけピチッと決まっている関係。糸を垂らすのが『エル・スール』を思い出させるが、この下向きのオモリは、ゆっくりとした重力・時間を暗示していたようで、やがてマルメロの実がゆっくりと沈下していくことにつながっていく。ピチッと決まったまま止まってくれず、時間の中で絶えず更新していかねばならないもの。けっきょく木をピチッとした画に移し替えるのは無理で、たわみにつれて永遠に描き直さねばならない。一緒に生きていくってのはそういうこと。最初は目に見えなかった時間も秋の深まりとともに立ち現われ、画家はついに追いつけない。時間の勝利。マルメロを輝かせていた光、光はすべてを鉱物と灰に変えていく、って。理想的な絵画とは、時間の変化を織り込んだ積分値として存在するのか。なんか中国の古典の寓話にでもありそうな話を映像化したような作品で、私にはちょっと高尚すぎた。後半画質が急に悪くなるのも、この監督の場合つらい。それとも単純に少女が出てこなかったのが物足りなかったのか。これ観てからかつての二本の少女映画を思い返すと、やがてオバサンになって腐敗していくものとして少女を見てたのかなあ、この監督。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 7点(2011-07-27 12:18:09) 3.《ネタバレ》 この作品は永らく観たいと思っていたのに観ることができなかった作品で、まず鑑賞することができたことを嬉しく思う。 内容としては、ジャック・リヴェットの『美しき諍い女』を想起させるもので、画家が対象物とひたすら格闘するという、一種のドキュメンタリーである。 ただ、本作『マルメロの陽光』は、その描く対象物が言葉を発する人間ではなく、“マルメロ”という名の果実という部分において、更にストイックさが強化されているように思う。 何ヶ月もかけて、陽光の当たるマルメロを描いては消し、描いては消し、その作業を延々と繰り返す。 それが140分という尺で描かれているわけで、もちろん、ストーリー展開で楽しむ映画ではない。 自然光がマルメロに当たり、その微妙な陰影を、主人公がとり付かれた様にして、無心に描いていく。 一番の目的は、画を描き完成させることではなくて、その陽光に輝くマルメロと長い時間を共に過ごすことなのである。 これは、ある見方をすると、好きな事に没頭し、それで生計を立て、マルメロが枯れてしまったら、あとは寝る、みたいな、まさに天職に彩られた人生で、理想の人生と言えるだろう。 陽光に輝くマルメロを描く初老の男性を映しただけの作品だが、そこから読み取れるものは人により異なるであろうし、様々なテーマが浮かびあがってくるに違いない。 監督のヴィクトル・エリセは、超がつくほどの寡作な監督として有名だが、長い時間をかけただけの深遠なるテーマを、本作から感じとることができた。 【にじばぶ】さん [インターネット(字幕)] 6点(2010-02-19 18:18:10) 2.《ネタバレ》 カリン(マルメロ)の樹を20年かけても描ききることの出来ない画家ロペス。彼にとってマルメロの果実=実が生り熟し朽ち果てるその姿は「人生」そのものだったのではないか。対象はあまりにも大きく、キャンバスに描くことは困難な代物なのかもしれない。ただ人間の美を愛する心・夢を描き出すことはまさに自由なのだと若輩者の大学生であった私にとって胸を打った一本。昔の映画ファンは名監督達の作品をリアルタイムで観ることが出来た点、羨ましいとも思うが我々にはまだ「エリセの新作を観ることが出来る」特典があるのだ。なんて幸福な事なのだろう。〔追記:2013年4月末~6月中旬まで東京でアントニオ・ロペス展(その後長崎→岩手と移動予定)が行われ、未完のマルメロの絵も見ることができた。この人の絵に他の作家とは異なる、より「暖かさ」を感じたのは自分だけだろうか。てかさ、こんなタイミングでソフト再発・再映の機会もないとは…無常なり~。〕 【Nbu2】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-01-11 14:11:45) 1.だいぶ前に見て感銘を受けてDVDを買いました。少ない音楽が印象的で、少しの光の動きが感動的な映画です。サントラのCDも買ってしまいました。得点はからいかも知れないですが7点。なんとなく7点あたりが居心地良さそうな映画です。 【omut】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-03-27 03:11:06)
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