みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
42.《ネタバレ》 「ここはお国を何百里 離れて遠き満洲の~」きっちゃんの大人びた節回しを聴いていると、心がしんとしてきます。このワンシーンに、戦争や貧しさ、浮ついた時代への痛烈な批判、親を失った二人の悲哀など、様々な、本当にたくさんの悲しみがこめられています。この映画は、悲しいです。この映画の主題は、のぶちゃん(主人公の少年)の眼からみつめた世の中の悲しみです。泣かせようとする演出ではありません、冷静に幼い彼が感じとった世の中の悲しみを坦々と映し出しています。 この映画のことを説明すると、原作は宮本輝の同名小説(処女作・太宰治賞受賞作品)。監督はこれも新人の小栗康平、白黒の作品です。監督・原作者ともに新人であるため、観ていて映像の拙さを感じる方もおられるかもしれません。しかし、僕は宮本輝後期作品の説教臭さがなく、原作を思い切って切り取った小栗の決断力と、二人の若さも評価すべきだと思います。何度観ても考えさせられる作品ですが、やはり気になるのは銀子の存在です。廓船に住み、笑いを忘れ、過剰なほどに丁寧で控え目なその振舞い。しかし、その中に漂う消しようのない色気。陸の家庭に触れ、笑いを取り戻したかに見えるものの、その奥に隠れる歪み。彼女の存在、演技はこの映画の中でどうしても触れなければならない所です。メインキャストの田村高廣・藤田弓子・加賀まりこが玄人らしい演技をみせており、それに加えてノブちゃん・きっちゃんが拙いながらも心のこもった演技をしていることがこの映画を素晴らしいものにしていると思います。ほぼ満点の内容なのですが、音楽が少々感傷的過ぎていたので減点させていただきました。 【fero】さん 9点(2004-06-12 00:28:49)(良:2票) 41.《ネタバレ》 自分の「体験」と妙にクロスするので、感想を書いてみる。 私は昭和35年の大阪市の東の下町生まれ。このような船宿(売春船ではないが)は見たことがある。 となりに住んでいる駄菓子屋のおばちゃんに、ある日長い手紙が来た。 小学校に上がる前あたりだろうか、ウチの親父や祖母が遅くまで隣の家で何やら相談をしていた。 戦死したと思っていた旦那が別の所に暮らしているという手紙が来たらしい。ですぐ、夜中に電報が届き、 その方が亡くなったとの知らせだった。朝にはおばちゃんは飛び出て、駄菓子屋はしばらく閉まっていた。 別の女性と結ばれ、中学生くらいの子供がいるという。知らせは旦那の弟からだった。 そう、のぶちゃんの父母のような夫婦が実際に居たのだ 馬車。パンを売り歩いているのはロバ(ポニー)だったけど、信号待ちでトラックやバスのクラクションに驚いてバックするのが怖かった。馬車での事故も割にあった時代。 酒を飲んだら軍歌しか謳わないおっさん 友人の父がそうで、歌うと小遣いをくれるので一生懸命覚えたという。 そういう「年代感」 日本が貧しく庶民が片寄せあって暮らしていた時代。 「高度経済成長」と言う歴史のワードだけでは、決して知られることのない人々の生活。 懐かしがる必要はないが、記憶や記録は、入れておいた方が良いと思う。 あ、ズボンのポケットに穴が開いて、夏祭りの夜店で、貰った小遣い全部落とした記憶もありました。 親父は怒るし、祖母は母親をなじるし、母親は泣くし、数日ブルーでした。 そういう「体験」が映画見ながらくるくるめぐるので、まあ、加賀まりこさんの美しさ、きっちゃんの素直さ、晋平父さんの毅然さ、貞子母さんの優しさ あかんがな、もう涙で見られん と、数回に分けてみることになって、それがもう4順目 あのころ、こんな人たちがいたんだ 本当に近くにいたんだ そう思い起こす映画でした。私事ですいませんが、それが感想です。 【亜輪蔵】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-04-17 16:54:43)(良:1票) 40.《ネタバレ》 戦後10年、まだみんな戦争を引きずって生きている時代。 田村高廣のお父さんも戦争で死んでいった仲間たちに申し訳なく生きている。 そして日本がまだ貧乏だった時代。 社会の底辺で生きている姉弟と知り合った主人公の少年の心温まるふれあいと悲しい別れ・・・。 胸にじ~んと来るものがありました。 田村高廣は、どんな人にも優しく、一本筋が通ったお父さんを演じており、とても魅力的です。ほんと尊敬できる人間だと思います。 そんな父親をみて育った少年も、素直で純粋で心優しい良い子。それだけに、終盤、きっちゃんのお母さんが身を売る姿を見てしまったシーンはほんと痛々しかった。 主演の少年、姉弟たちの表情、特に目の演技がほんと素晴らしかった。ただし大阪弁はイントネーションは少しおかしかったかな。 それと余談ですが、少女のふろ場シーンは、今の時代だったら絶対アウトでしょうね。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 9点(2020-05-09 18:31:01)(良:1票) 39.《ネタバレ》 これはすばらしかった。子供と大人、それぞれの世界をバランスよく描いていました。そのからませ方がうまく、とくにきっちゃんが「戦友」を歌う場面は絶品。父の田村高廣と母の藤田弓子はやさしさが光るし、加賀まりこは出番が少ないのに存在感抜群。姿を見せない時から存在感があります。 本作では、一部を除いて町の中にあまり人が見られません。ほとんど主要2家族だけで話が進んでいきます。予算の都合とかあったのかもしれませんが、この家族が「もはや戦後ではない」、「神武景気」といったような世相とは、離れたところにいることを象徴しているように思えます。右肩上がりとは異なる、当時忘れられようとしていたかもしれない人の心を感じさせました。有名な映画だと思うのですが意外とレビューが少ないですね。モノクロだからでしょうか。もっと多くの人に見てもらいたい作でした。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2011-11-29 22:26:28)(良:1票) 38.一番ジーンとしたシーンは、姉弟が初めてうどん屋を訪れたとこ。大人は子どもたちを・姉は弟を・招いた者は招かれた者を・招かれた者は招いた者を、それぞれ見守っている。いたわっている。弱者同士が肩寄せ合って生きていく、っていうとクサくなってしまうのだが、そういう高揚した感じはなく、実に礼儀正しくいたわり合うのだ、まるで自明の作法があるように。決して水臭いというのではない。「カスのように生きてきた者」にとってのルールなのだろう。こちらからは傷つけないから、そちらも傷つけないでくれ、っていう。この帰り道、送っていくと橋の下を舟が通り抜けていく、ここらへんの正確さがたまらない。少年が初めて加賀まりこの部屋を訪れる場面もいい。ここにあるのも礼儀正しさだ。女の溢れるばかりの感謝の気持ちを、じっと静かに保たせている緊張がいい。「おばさんもおいでよ」「りこうな子やね」。礼儀正しさが頂点を極めるのはラストであり、子どもの呼びかけに絶対人影を見せない舟の姿である。我々はその舟の中でじっと一つの恥を中心に肩を寄せ合っている家族の姿を想像し、その腹立たしいまでの礼儀正しさに感銘を受けるのである。 /(蛇足)田村高広と池部良の俳優歴って似てる。デビューはズレるがどちらも戦後民主主義の時代を体現する若者として登場し、役柄は「まじめ」。が東京オリンピックに向けた経済成長期になると、そのまじめさが俳優としての幅を狭めてしまい、影が薄れた。ところがオリンピック後の1965年に、どちらもプログラムピクチャーの脇役を得る。田村は『兵隊やくざ』、池部は『昭和残侠伝』、勝新太郎と高倉健という戦後民主主義を「体現しない」主役との戦中戦前を背景にした作品で新境地を開き、その後の渋いバイプレイヤーの地位を確定する。なんかこの二人の俳優歴に、戦後史そのものが重なって見えてくるよう。だから田村のデビューごろの時代を描いた本作で、彼は自分の俳優生活の総括をしたようにも思われるんだ。(11年9.29) 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-12-29 12:07:26)(良:1票) 37.名優、田村高廣がつい最近亡くなった。この映画、初めて観ましたが、田村高廣と父、阪東妻三郎、本当によく似てる。この作品の中に出てくる男の子、2人、食堂の息子、信雄と廓舟に住む幼い姉弟の弟の喜一と三人で手品をして遊ぶ時のあの何とも言えない優しそう表情など父、阪東妻三郎にそっくりだ!そんな田村高廣のこれぞいかにも日本人って雰囲気の良き父親の顔、演技がとても良い印象を残します。幼い子供3人の視線と大人達の子供達への愛情豊に見つめる視線、小栗康平監督は実に優しく描いていて好感が持てます。それにしてもこの映画、本当に子供達の演技が抜群に上手い。テーマそのものは暗いけれど、親と子の関係が美しく描かれている為、暗さというものを感じることなく見せる演出の素晴らしさ、日本人で良かった。いかにも日本的、こういう映画こそ今の世の中に必要な映画だと思いました。 【青観】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2006-05-29 22:17:35)(良:1票) 36.生も死も、大人も、人間の業も、かつてはこんなに子供の近くにあったんですね。大人はそれらをなるべく子供から遠ざけようとしますが、隠し切れない、ぎりぎり漏れて伝わってくる大人の価値観を、ひとつずつ小さな頭で消化しながら人間を形作っていくものです。だから、大人が考えるより子供は大人なんですよ。50年前にこれほど身近にあった死生観は、今や電話の陰に、テレビの奥に、PCの向こうに追いやられてしまいました。日常的に隠されているものだから、いざというとき、大人も死生観について子供にどう伝えてよいのか、全くわからなくなってしまったのではないでしょうか。最近の子供は何を考えているかわからないというようなことを平気で言ってのける無責任な大人は、その想像力を欠いた固い頭をこの映画に粉砕されるでしょう。信雄も喜一も銀子も、大人と同じように強く、同じようにもろいんです。作品を重ねる度に難解さが深まっていった小栗康平の、僕にとっては最高傑作です。 【アクシス】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2005-11-07 01:58:35)(良:1票) 35.子供の視点で忠実に描かれていてすばらしい映画でした。自ずとノスタルジーに浸れる場面も少なからずありました。物語はよくわからないうちに強制終了的に一段落し、おそらく今もあいまいなままになっているというような最後でしたが、原作もいずれ読んでみたいと思います。それほど古くないのにモノクロ作品ですが、仮にカラーでも映画の印象はあまり変わらなかったのではないでしょうか。それにしても、田村高廣と藤田弓子演じる両親が常に優しくて感心しました。家庭のあり方を見せつけられ反省です。「子供に責任はない。(子は)親を選べない。」 物質的に多少貧しくても、ノブちゃんはきっと幸せですね。 【黒い鶫】さん 8点(2004-07-25 12:40:24)(良:1票) 34.少年はいつから美しさを理解し、いつからそこに妖しさを求めるようになるのか。少年は確かに妖しい美しさに惹かれた。憧憬が引き裂かれ、そして哀しみを知った。闇の存在を感じた。幼い純真な心に響く哀しみの和音。辛くとも生きていく、その意味の不可解さ。忘れられない情景。そして、情念が芽生えた。 【onomichi】さん 9点(2003-11-07 01:46:39)(良:1票) 33.小栗康平監督が「流星人間ゾーン」というお子様怪獣モノTV番組の演出を担当していたってコトは君と僕だけのヒ・ミ・ツだよ~♪加賀まりこの色っぽさと子役演技に…乾杯! 【へちょちょ】さん 7点(2003-10-30 23:49:17)(笑:1票) 32.《ネタバレ》 子ども目線で描く戦後。各エピソードがそれぞれとても印象深い。貧困に振り回される子どもたちの友情…。80年代の映画とは思えない泥臭さ。 加賀まりこが美しい。 原作は未読だが、宮本輝のデビュー作とのことで、いきなりこの完成度の小説を書いたことに感服する。 【eureka】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-04-20 08:08:05) 31.《ネタバレ》 予備知識なく視聴したので、本当に昭和30年代の映画かと思った。家や船のつくりなど、本当に当時のもののような素朴さがよい。 きっちゃんの歌声には、なぜか涙がこみ上げた。 【チェブ大王】さん [インターネット(邦画)] 8点(2022-05-29 21:11:31) 30.舞台は昭和三十一年の大阪。わざとのモノクロが実に良い味を出している。 戦争を生き延び、貧困を生き延びてきた、大人たちの陰影。裏切りや罪の過去と、泣けるほどのやさしさ。 子供たちは子どもたちで、誰もが通り過ぎる、理屈抜きのともだち、仄かな憧れ、格差(隔たり)の感覚、引け目や罪の意識、そういった微妙な経験を重ねていく。 出てくる俳優は皆すばらしい。子役たちも昨今の無闇な美形主義でなく自然であどけない表情をしていて、なおかつ演技がうまい。 観客が年齢を重ねてはじめて味わいがわかってくる、そんな胸にのこる映画だった。 【せい】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-08-12 02:02:09) 29.終戦から10年が経った大阪の、子供達の交流と、彼らを見守る貧しい大人達の心情を丁寧に描いた作品。正直、この映画を見るまで当時の大阪の(おそらく底辺の)庶民が、こんなに貧しく厳しい生活を送っていたということを知らなかった。このため感想を言葉にしづらいが、悲しさは伝わって来て胸が締め付けられる。田村高廣の優しい笑顔は、父親である「王将」や「無法松の一生」の阪東妻三郎を思い出させる。 【wayfarer】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-06-14 02:25:01) 28.《ネタバレ》 関西人だし、なんとなく懐かしい映画。子供が、ランニングシャツで遊び回っているシーンは特に。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-02-03 19:50:10) 27.《ネタバレ》 ○午前十時の映画祭にて鑑賞。○本来なら関わりたくないのだけど、優しく接する板倉一家。特に田村高廣の好演が光る。それぞれが距離を縮める家庭が絶妙だった。○お金を落としたきっちゃんが信雄に何か返してやらなきゃと蟹を拾い上げ酒に浸して火をつけるなんて。優しい信雄はドン引きだっただろうな。 【TOSHI】さん [映画館(邦画)] 8点(2017-10-29 11:10:42) 26.公開数年後くらいにTVで観ていて印象が良かったのですが、最近単体でDVDが発売されたので、久々に再見しました。 筆者の加齢に伴い、若いころは気づかなかった登場人物達の心情が諸々身にしみ、とても感動しました。 子役三人、田村高廣、藤田弓子、加賀まりこらの素晴らしい演技、モノクロ映像に1950年台頃の映画のような抑えた演出で、かつてのこの国の市井の人々の生活、その中のそれぞれの悲しみを見事に描き出していると思います。 【クリプトポネ】さん [DVD(邦画)] 10点(2017-08-04 19:42:02) 25.温かさと切なさ、余韻が残る映画です。みんな貧しかったんですね。 【東京ロッキー】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2016-12-01 17:25:22) 24.宮本輝さんの小説を読んだことがあったので何気に鑑賞しました。 何気に鑑賞したはずなのにどんどん引き込まれて一気に休憩も入れずに最後まで観てしまいました。 すべての役者さんが登場人物になりきっててよかったです。 子役3人とも凄いです。あれ本当に監督の演出でやってる演技だろうか? これぞ映画という気がします。観客をいい意味でだましてくれる映画。 本当にリアルな世界を作り出しています。 このような映画にまた出会いたいです。だから映画っていいんですよね。 【キャメル】さん [DVD(邦画)] 10点(2015-11-03 13:11:22) 23. 好きなんだけれど、なぜ好きだかわからない奇妙な映画だったんですが、最近やっと好きな理由がわかりました。 小学校の低学年の時の、少し年上のお姉さんってものすごく年上に感じられて憧れの対象になるんです。ある意味、未だ第二次性徴の前って人生の中で一番純粋な気持ちを異性に持てる時期かもしれません。 そういった、気持ちを思い出すことができました 【rhforever】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-07-04 07:01:07)
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