みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
195.《ネタバレ》 小洒落たタイトル、妻夫木くんが主演、池脇千鶴のヌードの話題先行など、個人的に食指が動かない作品でした。(すいません。嘘です。最後のセンテンスには興味津々です。)でも観てみるとコレが自分のツボ。もう大好き。ほんとに好き。妻夫木を初めて上手いと思いましたし、池脇も魅力的でした。ばあちゃん、板尾、「いてまうど」の兄ちゃん、荒川良々等の濃いキャラも旨味を発揮していました。重いテーマですが、物語と向き合わせる手法に長けていたと思います。死別や結婚という安易な結末に逃げなかったのも好印象。とくにジョゼの気持ちが心に沁みます。動物園で虎の見学。恐怖に対峙したときに、自分を守ってくれる人がいること。これほど心安らかなことはありません。でもこの幸せが長く続かないことも彼女は承知しています。いずれ彼は去っていく。だから車椅子を買おうとしなかった。少しでも長く彼の背中に触れていたいから。乳母車を新調しなかったのも、押してくれる人がいなくなるのを知っていたから。彼女が妻夫木に言う「私をおぶえ」という台詞。それは遠まわしなプロポーズでもあったと思います。頭では彼との別れを予期していたとしても、幸せな結婚生活を夢見ないはずがありません。しかし彼女の願いは叶わなかった。その直後のシーンもたまらない。トイレに入ったジョゼを覗く妻夫木。彼女は「あっち向いてて」と言います。「出て行って」ではなく。その想いに胸がつまります。水族館で見られなかったお魚たちをラブホテルの映写装置で見る彼女。自由に泳ぐ魚たちの中で、至福の時を過ごすジョゼ。貝殻ベットの中の彼女は、まるで人魚姫。幸せを知ってしまった彼女は、もう海の底へは戻れないと言います。彼と過ごした日々を受け止めようとする彼女。切ないほどに強い。いや、強くあろうとする姿に心打たれます。それに比べると男のほうは情けない。でも彼を責める気にはなれません。彼が怖気づいたのも分かる。彼は彼が思う幸せを求めて生きていくでしょう。でも心の傷はずっと残るはずです。それも仕方がない。悲しいこと、苦しいこと、切ないこと。人生には嫌なことの方が多いかもしれない。でもそれを知らずして、幸せを知ることもありません。ラストは料理をするジョゼの姿。食べることは生きること。海の底とは違う世界を、喜びも悲しみもある世界を、彼女はこれから生きていく。ジョゼは死を選ばなかった人魚姫です。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-06-18 18:02:04)(良:9票) 194.《ネタバレ》 ごめん、俺この映画好き過ぎて、いつもみたいにはよぉ語られへん(だから今回は「ゲロッパ!」以来の擬似関西弁。【なにわ君】さん、文体パクってすんません)。何かなぁ、よく映画の登場人物に感情移入しすぎてなり切っちゃうのってよくあるやん?「ロッキー」とかブルース・リーの映画とか。んでな、俺この映画見終わった後、まるで自分が常夫になってジョゼと永遠のお別れをしたような気持ちンなって、しばーらくの間ごっつ哀しくて切ない気持ちだったんよ(笑てもええよ)。あのラストの「ドサッ」と、くるりのエンディング・テーマ、思い出すだけで泣けてきて・・・何やろね、俺そんな恋愛経験豊富じゃないけど、あの映画で描かれてる男の身勝手さ、ずるさ、情けなさがごっつ身に沁みた。ジョゼは強いよなー、ほんで男は弱いよなー。前、渋谷陽一がラジオでジャニス・ジョプリンの「クライ・ベイビー」をかける時「男は恋愛では絶対女に勝てない。何故なら恋愛に関して男はアマチュアで女はプロで、アマチュアはプロに絶対勝てないから」と言ってたけど、ホンマそうかもしれん。あ、あと映画に関してもう一個だけ。この映画、ヌードやベッドシーンがいらんっていう意見が結構あるけど、俺はあれ、必要やったと思う。基本的にこの映画、ある種ファンタジーっぽいとこもあるから、ちゃんと「性」に関して描かないと、地に足の着いてない絵空事みたくなって、説得力減ったんと違うかな。初めてジョゼと常夫が結ばれるシーンで、夕焼けの中ジョゼが布団を敷く所とか、凄く生々しくてドキッとさせられたし。説得力といえば、あのジョゼの住んでたトタン住宅とか、近所の幼い姉妹とかも、やけに生活感があってリアルに思えたな・・・あれ、俺「よぉ語られへん」とか言うときながら、結局語っとるやん。やっぱ、一生野暮天なんやろなぁ。野暮ついでに最後に一言、これ、ひょっとして若い人よりもある程度年いってはる人のほうがグッと来るかも知れん。「取り戻せない、かけがえのない日々」の映画だから。あーでも痛い失恋してまだ立ち直ってない人にはキツすぎるかもな。<追記>その後、原作も読んだんやけど、映画化に際して原作の雰囲気を損なわずに物語を再構築した脚本に改めて感服。脚本の渡辺あやさんは、この作品が実質的デビュー作らしい。犬童監督とは作風が合っていると思うので、今後も二人のコラボ作品を観てみたいです。 【ぐるぐる】さん 10点(2004-09-03 18:18:14)(良:4票) 193.《ネタバレ》 「優しさ」は「何も考えてなさ」と似ている。 ツネオは何も考えていないからジョゼの家に通ったり一緒に暮らしはじめたりできる。 でも、何も考えていないから優しくできるのかも。 きちんと考えたら他人に優しくなんかできないもの。 優しいふりはできるけれど。 妻夫木はとってもうまかった。 ちょっとちゃらちゃらした普通の何も考えてない男の子らしかった。 池脇千鶴はもうこれくらい当然よ、ってくらいの安定感。 日本の若手の俳優さんたちは上手だね。 日本のテレビドラマには全く期待していないので見ないが 邦画には期待していいのかもしれない。 ツネオが帰ろうとするのをジョゼが引き止めるくだりはとっても切なくて涙が出た。 あとラストも。 【監督】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-05-28 20:16:51)(良:3票) 192.《ネタバレ》 昔から気になっていた映画だったが、アニメ映画化を機に初めて見た。健常者の青年と身体障害者の女性の恋愛を描いたラブストーリーだが、本作に登場するジョゼ(池脇千鶴)はよくある障害者を扱った作品にありがちな描き方をされておらず、それが却ってリアルに感じられるし、そのせいか、恒夫(妻夫木聡)との恋愛も障害者云々をあまり気にせずに見ることができたし、映画自体に独特な雰囲気と力強さがあって見ているうちにだんだんと引き込まれた。なんといってもジョゼの強烈で個性的なキャラクターが印象に残るのだが、そんなジョゼの身の周りの世話をしていた祖母(新屋英子)が亡くなり、心配してやってきた恒夫に対し、はよ帰れと言ったあとにやっぱりおってくれ、ずっとおってくれと言うシーンは普段は強がっているジョゼの孤独さやさびしさ、いじらしさといったものが感じられ、つい、見ながら感情移入してしまった。(ただ、そこから次のシーンでああくるとは思ってなかったのでちょっとビックリしてしまったのだけど。)池脇千鶴もものすごくハマっていて、素晴らしく、今まで何本か出演作見てるのだが、こんなに良いと思うのは初めてかもしれない。映画は冒頭から恒夫のモノローグで始まり、それがクライマックスの二人での旅行につながるわけだが、そのモノローグで何気なく語られていた水族館が休みだったエピソードはジョゼの気持ちを考えると切なく、本物の虎は見れたのに、本物の魚は見られず、結局、ホテルの部屋で壁に映された魚を見るというのが見ていてなんとも言えない気持ちになる。冒頭のモノローグで既に二人の別れを暗示していて、死別とかいうありきたりなものだったらヤダなと思ってしまったのだが、この結末はそんな安直な結末とは比較にならないほど重く、見ていてすごくリアルに感じた。果たしてハンディを持った人をパートナーに迎えたときにそのパートナーのことをどれだけ受け止めることができる人がどれくらいいるだろうと考えさせられるし、またもし、恒夫の立場ならパートナーを受け止める覚悟があるかということも考えさせられ、これが本作の真のテーマだったのではないかと思えてくる。ジョゼを受け止めきれなかった恒夫の弱さや、ジョゼの一人でも生きていくという意思の強さといったものをこのラストシーンではしっかり描いていて、犬童一心監督の演出も巧み。これから別々の人生を歩む二人にとってこの出会いは決して小さなものではなかったと思いたい。本当にいろいろと考えさせられる良い映画だった。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2021-01-11 02:29:12)(良:2票) 191.《ネタバレ》 「帰れって言われて帰るようなヤツははよ帰れ」 泣きながら恒夫を叩くジョゼがいじらしい。 池脇千鶴、上野樹里、江口のりこと、恒夫を取り巻く女性たちが個性的でいい味を出している。 ジョゼの施設仲間のヤンキーもバカっぽくておもしろい。 実家にジョゼを連れて行く道中で、現実のギャップを肌で感じてひるんでしまった恒夫。 ジョゼが海が見たくなったからと行き先変更の指示をしたのは、その気持ちの変化を敏感に察知したからだろう。 別れを予感しながら「お魚の館」というラブホテルで愛し合う二人の姿がせつない。 愛する人と一緒に見たかった魚は水族館が休みで見ることができず、ホテルで見たのは壁に映し出された虚像の魚。 サガンの小説にあるジョゼとベルナールの話は、二人の別れを予知していたかのようだ。 前の彼女に乗り換えてジョゼのもとを去る姿に、恒夫のずるさが浮き彫りになる。 涙を流してはいるが、それさえも軽く感じる。 障碍者とパートナーになることを本当の意味でわかっていなかった。 覚悟もなく中途半端なやさしさで付き合ったのと同じ軽薄さだ。 ドライな選択をしながら号泣したのも、自分自身に免罪符を与えようとしたともとれる。 一番傷ついたはずのジョゼが、ふっきれたように淡々と日常を送っていたのが救い。 人間を描けているいい映画だとは思うが、主人公を好きになれないということはどうしてもマイナス材料になる。 【飛鳥】さん [地上波(邦画)] 6点(2013-06-07 00:14:18)(良:2票) 190.《ネタバレ》 この映画をどう観るかはその人が今までどんな恋愛をしてきたかによってかなり異なると思う。私にとって、この映画は非常に「哀しい」映画だった。そして、同時に「正しく」生きていこうと決意するきっかけになった。 まず、筋はありえなさそうでありえそうな、日常の中の非日常といった感じ。若者向けのメルヘンとしては良いところを衝いている。その後の展開も特におかしな点は無かった。 キャストの面から見ると、妻夫木も池脇もとても良い演技をしていたと思う。妻夫木はイケメンだが普通の大学生を、池脇はエキセントリックな中にも可愛げのある女の子を好演していた。板尾の自然な演技も光る。関西弁はよく分からないが、上野が不自然で池脇のが可愛いと思った。博多弁はちょっといただけない部分もあるが、まあまあ合格点か。 さて、何が「哀し」かったかだが、やはりラスト付近の妻夫木の嗚咽だろう。「守る」と決めた人間を守れなかった口惜しさ、彼女に対する罪悪感、自分に対する慰めなどの全てが詰まった涙だったのではないか。彼を責めることは容易い。しかし、私にはそれはできなかった。自分も他人を捨てたことがあるから。別れの予感があるにもかかわらず一度は受け入れ、そして切り離すのはあまりにも残酷な行為ではないか?彼も私も残酷だったということだ。池脇が「帰れと言われて帰る奴は帰れ!」と妻夫木を詰りながら、背中に縋って泣くシーンがあるが、私は心の中でずっと「帰れ!帰れ!」と叫び続けていた。映画として成り立たなくなるけど。「帰れ」と言われて、いったん帰ろうとする人間には相手を救うことなど結局は出来はしない。そもそも「救う」という考え方が心の中に入り込んでいる時点で非常にその恋愛は難しくなる(と思う)。それが出来る人を私は尊敬する。私も含め大部分の人間はそれが出来ないのだからそういう恋愛をする権利は無い。だが、1回目は分からない。私のように傲慢な人間は本気で救えると勘違いする。しかし絶対に繰り返してはならない。ちょっと長いけどこう思った。 映画に戻るが、ラストの料理のシーンは救いだ。だが、病んだ私には彼女の神々しい背中は彼岸のもののように映った。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-03-26 22:29:44)(良:2票) 189.《ネタバレ》 本作はとても考えさせられる作品だ。 相手の女性が障害を持っている、それがきっかけで愛するようになった。 そして、少なくともある期間は、相手を本当に愛した。 だけど、やっぱり重荷に感じた。 そして別れを決心した。 ただ単純に捉えれば、好奇心で近寄った女性を、飽きたから捨てたということになるだろう。 でも果てして、そんなに単純か? 男が障害を持つ女性に惹かれたという事実、そこに嘘はない。 先まで読んで、それで付き合うか付き合わないかを決める。 確かにそれが一番賢明な考え方だろう。 でも本当の愛にそんな打算が必要か? 本当に愛しいと思ったからこそ、後先考えずに女性を好きになったのではないか? そう考えると、この男の心情もとても良く理解できる。 かくいう私もこの男を好きになれない。 だけど、どこかで理解できる。 殊に、男女間の恋愛というものは、理屈では整理しきれない部分がある。 そういった問題を、本作はうまく問題提起している。 物事をただ一面からしか捉えなければ、ただ肯定的もしくはただ否定的な解釈ばかりが浮かんできそうだが、より客観的にこの男をみれば、何が絶対に間違っているとか、こうしなければならないとかの結論は出ないように思う。 こういったことを観る者に投げかけ、観た後にも考えさせられる。 これは映画としての、大事な魅力の一つではなかろうか。 ただ楽しければでいいといった様な娯楽作品だけを観たければ、本作は観ない方が良い。 逆に、映画から色んなことを考えさせられ、自分の人生観などと比較し、人間的に幅の広い考え方を持ちたいという人にはオススメしたい作品である。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-07-30 00:21:38)(良:2票) 188.《ネタバレ》 タイトルが秀逸。だけどこれは原作通りなので、やっぱり田辺聖子っていいなあ、ということか。但し、一流作家の小説といえど、題名は実は編集者がつけていることも多いということですからね、ほんとの意味で誰がセンスよかったのか、については不明。あとは、久々に全体像としての完成度の高い邦画の誕生に「バンザイ」! リアルでありながら、おとぎ話でもある。自立の話でありながら、自立しきれない弱さに対する視線が優しい。極端な矛盾の両立・・ありうるんだなあ、これが!! 稀有なことだとは思うけど。 ちょっと違和感を感じたのは、虎を見に行った場面での、ジョゼの帽子と洋服の派手さくらい。あそこまでダサくする必要あったんだろうか。それだけが、ちと疑問。ラストが賛否両論みたいですが、私は全面的にマル! 切ないけれど、あー見てよかったなあ・・と思うラブ・ストーリーでした。最初に見たのはもう3年以上前ですがその後もCSで放送してるとちょくちょく見ています。でも、色あせないいい作品です。9点か10点か、で迷ったけど、久々の10点! 【おばちゃん】さん [DVD(邦画)] 10点(2007-11-12 11:13:14)(良:2票) 187.《ネタバレ》 男性と女性、それまでの恋愛経験、(当たり前ですが)性格によって、感情移入、共感、感動の度合いが異なる映画だと思います。本作は女性の主人公の歩行ができないという身体的障害が男性の主人公に圧倒的優位性をもたらすものとして表現されていますが、これほどまでの身体的障害ではなくても、恋愛相手に対して、容姿、職業、学歴、経済、生育環境、家族関係などなどで、何か優位性を感じる、あるいは意図的にせよ無意識的にせよ優位性を探し出す時があるのではないでしょうか?しかしまた、その優位性のもととなる要因は負担ともなりうるもので、その負担が大きく愛情だけでは支えきれないとお互いがわかった時に、誰が悪いわけではなくても別れなくてはならない現実があり、とても切ない思いの別れとなります。誰でもがする恋愛ではないかもしれませんが、支えきれない負担と優位性を感じた恋愛の経験者なら、本作で説明が不足気味の部分も十分に解釈を補完でき、計算された見事な省略と感じると思います。男の主人公の別れた後の嗚咽をはじめ、随所にそうであろうと同意できる会話や行動がいっぱいで、見終わった後に二人で会話ができる映画ですが、デートで見てその後に会話をするのはちょっと重いかもしれません。 【ダルコダヒルコ】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-09-23 01:58:48)(良:2票) 186.ラストの男の泣き崩れで「道」を思い出したのは私だけだろうか?「道」は不可解であったが、これは理解できる。私は仕事柄障害者との付き合いがが過去に幾つかあったが、彼らは健常者よりも非常に傲慢で・ワガママだった。別に卑屈になる事も無いと思うが、逆にその反動が出ているような気がした。西脇はそれを上手く表現していたと思う。ラストの気丈さは女のの強さではなく、障害者の強さに思える。ツマブキはは単純に食欲・性欲で彼女に惹かれたんでしょう。(自分でスパゲティー作る事や、ヤラセナイでもったいぶる相手に嫌気が差してたと思われる)ただし、それらの欲が満たされると、相手が障害者という事が段々面倒になってくる。これは普通といえば普通なのかもしれないが、障害者から逃げたというワダカマリというかシコリというか複雑な心境も残っているんでしょう。(ただし、女の前で泣き崩れる事もないと思うが。) 【東京50km圏道路地図】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-14 23:23:27)(良:2票) 185.《ネタバレ》 恒夫は逃げた。と、言ってるし実際逃げたことには変わりない。でも、誰もそのことを責めることはできない。ただ恋をしてそれが醒めた。それだけだろう。逃げた理由としてジョゼが身障者であり、現実として重荷になってきたというのもあると思う。しかし、恒夫はジョゼが身障者ということもひっくるめて一人の女性として恋をしたのだろう。例えば、「あの娘、かわいいな。すこしおしゃべりだけどそこは彼女の個性だしな。」と言う女の子に恋をする。でも時が経つにつれて恋が色褪せたとき「うるさいヤツだな、最近そこに我慢ができない!」ということは良くあることだし、経験した人もいると思う。恒夫もそう考えただけだ。「おしゃべりと一緒にするな。失礼だろう!」と怒る方もいるかもしれないがその考え方こそが失礼だと思う。とにかく一つの恋愛物語として良くできているし、考えさせられる映画でもある。 【sice】さん [DVD(吹替)] 8点(2005-10-31 14:47:19)(良:2票) 184.《ネタバレ》 この映画を見る度に、男性がいかに脆く純粋な生き物で、女性がいじらしくも強い生き物であるかを実感する。 ジョゼのキツい物言いは、恐らく自らの不安・恐怖・コンプレックスを隠すための防壁なのだろう。 乳母車に隠れ乗る事でしか外界を知る術がないジョゼ。 外の世界を知りたいジョゼが自分の願いを叶えるには、 「好奇の目を向ける人々の存在」というリスクを背負う必要がある。 ゆえに自己防衛本能が生まれる。 また、それを譲れないのは「壊れ物だろうと私は私」という自我確立の意味もあるのだろう。 誰にも頼らず、誰に頼ればいいのかも解らず、頼み方も知らないとは、なんとも悲しい。 しかし、そうした生き方を選ぶ事しか彼女は知らなかったのだろう。 強いフリをした弱い人間は、肝心な時に素直になれず、本心とは裏腹な事ばかり口にする。 「帰れと言われて帰る奴は帰れ!」と心にもない事を泣き叫びつつ、 すぐに「・・・嘘や、おって」と翻すいじらしさには、同性の私でさえ彼女を愛しく感じた。 愛する人に心からの望みを口に出来たからこそ、ジョゼは纏っていた鎧を脱ぎ、女になったのだろう。 しかし、ジョゼには二人の関係が永遠に続かない事も解っていた。 出来るだけ長く一緒にいたい気持ち、変わりゆく自分、叶った夢、そこにあった幸せ。 それだけで十分なのだと、彼女は自分に言い聞かせていたようにも思える。 それがサガン著「一年ののち」にの、例の台詞に帰結するのだろう。 対する恒夫は、純粋にジョゼを愛するも、背負う物の大きさに気づき、逃げ出す。 しかし「失って初めて気づく存在の大きさ」で、初めて心の痛みを知る。 寂しさに弱いせいか無意識に「独り」を回避してきた恒夫の決断が、傷口に塩を塗る結果となってしまったのだろう。 みっともない姿を晒しながらも涙が止まらない彼の姿は、切なさを覚える。 最後、ジョゼの目は力強く、凛としている。 過去、現在、未来の全てを受け入れ、生きていこうとする強さが感じられた。 池脇千鶴の「セックスの無い恋愛など有り得ないから脱いだ」という発言と、彼女のその度胸に盛大な拍手! <追記> 前回鑑賞から2~3年経ち、改めて見直したが、何故か初めて涙が出てきた場面があった。 それは、二人が結ばれた時のジョゼの「うち、あんたのこと好きや」と言う場面。 なぜ、こんなに優しく切ないのだろう。 【港のリョーコ横浜横須賀】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-06-29 17:38:40)(良:2票) 183.あのお魚のラブホテルはすごい!行ってみたい。 それはともかくとして、あえて2人のセックスシーンに時間を割いたのは、恒夫は「障害者の女性」を愛したのではなくて、「女」を愛したということを伝えるためだったと思います。 恒夫は同情で障害者のジョゼを好きになったわけではなく、つまり多くの男性が「ふつうの女性」を好きになるのと同じように恒夫も、ジョゼという女性の体と心を求めていた。 とても自然なことで、すんなりと、この特殊な恋愛に入り込むことができるようになっています。 そしてジョゼの偉いところは、歩けないという事実を素直に受け入れていることだと思います。けっして愚痴を言ったり健常者に嫉妬したりしません。 それに比べ健常者の私たちは、「自分が持っていないもの」を持っている人を見ると嫉妬したり不満を感じたりします。自分よりも出世している人間や、お金を持っている人間、または自分よりも愛されている人たちをみて、「ああ、自分は何も持っていない。なんて不幸なんだ。羨ましい」と嘆いたりすることもあるのでは? ジョゼは生意気な女性ですが、あるがままの自分を受け入れて生きている。とても尊敬できる女性。 「障害者なのに、男に捨てられた」と思うのは、ある意味で健常者の驕りなのではないでしょうか。 彼女をみて「自分が持っていないもの」を悲観せずに「いま自分が持っているものだけ」を素直に喜べる姿勢に強く共感しました。 【花守湖】さん 9点(2005-03-05 01:31:48)(良:2票) 182.ジョゼは陸に生きる人魚みたい。だけど彼女は童話の人魚姫のように泡にならずに鮭を焼いている。そんなジョゼが素敵です。 【paraben】さん 8点(2004-11-13 13:29:13)(良:2票) 181.《ネタバレ》 観終わって5時間以上経っているのに頭の中はこの映画のことでいっぱいです。 久しぶりです、そういうの。この作品に共感できるかどうかは、おそらく男性の人なら主演の妻夫木くんに共感できるかにかかっていると思われます。映画館を出てからしばらくそのことを考えていたんですが「もう自分は主人公の妻夫木くんに共感できるようになってしまったんだ」ということですね。中高生のときの自分だったら仮にこのような作品に触れたとき主人公の「弱さ」と、誰しもが望むハッピーエンドとはならない非ハリウッド的な普通すぎるラストを見せられたら「何だこの男は!だらしがない」となっていでしょう。しかしこの作品を観ながら自分の過去の恋愛や別れと気付かぬうちに照らし合わせていて、結果的に彼女から離れた「ずるい自分」「情けない自分」を共感しないまでも許容できるようになってしまっている。男性は一度は、かよわい女性に憧れます(ちょっと変なニュアンスかもしれませんが)。「守ってあげたい」とどこかで思ってしまうのかもしれません。自分よりも弱い立場の人を守ることで自分の「弱さ」から目を背け、傲慢で臆病な自尊心を育てることができる。ジョゼは歩けないという最大のハンディキャップを持っています。そして外の世界からは隔絶した毎日を送ってきた。そこで共感できる男性の観客は自分を主人公に投影し、かつて成し得なかった「か弱き女性の王子様」へと自らに置き換える(それが最近目にする「萌え」なのかもしれません。よくわかりませんが)。しかし終劇の恒夫とジョゼのコントラスト。次へと歩き出しているのになぜか涙が止まらない恒夫とあんなに嫌がっていた車椅子(しかも電動)に乗りながら颯爽と歩道を通り抜けるジョゼ。「なにいつまでも王子様気取りの馬鹿なこと考えているの?」と自身が問いかけられているかのようです。「慈しみ」かもしれないけれど、全体を流れる障害者に対するへんてこな優越感や「守ってあげたい」という甘い感情はこのラストで否定された気がします。弱さも強さもそれは身体的なものからはこないということですね。そんな、いまさら当たり前なことを感じました。どっぷり感情移入して観た映画でしたが、作品としてもバランス感覚はピカイチです。ちょっと女性の裸が多すぎたかなとは思いますけど・・・だからそれで点数高いわけじゃないけど(ぉ。でも観終わった後にとても残る映画ですね。 【ひろすけ】さん 9点(2004-02-04 18:15:38)(良:2票) 180.《ネタバレ》 確かに、ともすればアレなオチだと思います。ただ、一生彼女を背負い続けることが出来るのか、という現実に直面したときに、誰しもが十分に強くなれるという訳ではないのも事実でしょう(少なくとも私自身は、同じ状況でその決断は出来ないと思います)。その意味では私はこのラスト、自分の無力さに涙する主人公にはその面からは大いに共感できましたし、それを許容したジョゼの優しさ・強さにも深く感じ入りました。人間というものの描き方として、私はここはかなり好きですね。そしてこの恋愛は、決してふたりにとって無意味なものであった訳ではないのです。その直後にジョゼの変化・成長を感じさせるシーンを持ってきてそれでジ・エンド、という流れも巧みであり、また適切だったと思います。そこは、アレなオチを演出・演技のテクニックで巧く乗り切った、という感じだといつ観ても思いますね。 色々と変わりダネな映画だと思いますが、この映画で一番変わっているのはやはりヒロインでしょうか。見た目や喋り方、性格も含めて、パッと見はどーにも魅力的には見えないのですが、じーっと観ていると次第に魅力が滲み出てくるというか、そこら辺の表現も奥ゆかしく、また巧みだったと思います。その大部分を担っていた池脇千鶴は、やはり凄い女優だと思いますね。 【Yuki2Invy】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-12-29 17:44:46)(良:1票) 179.《ネタバレ》 邦画はあんまり気乗りがしない方なんですが、途切れることなくレビューを目にするし、ちょうど有料放送のチャンネルで観られたし、妻夫木くんだし、観てみることに。 関西弁喋ってるけど、誰が観てもはっきり関西の土地とはわかる所が無く、ココいったいどこなの?みたいなのがいいです。どこか昭和40年代のような風景ね、雀荘でバイトっていうのもなんだし、女の客が真理アンヌとは!! 世間から隠れるように生きてきたジョゼの、恒夫を糧にした自立成長モノかな。 恒夫がジョゼに惹かれるのは、自分が優位に立てることと、ご飯が美味しいことが結構大きいんじゃないかと。居心地がいいんですね。 しかし彼はそれ以上のことは何も考えてない。「ずっと一緒にいて」と言われれば後先考えずに引っ越してくる。ジョゼに優しいのは責任の無さでもあり、水族館の前で駄々をこねるジョゼをおんぶする恒夫の表情が全てを物語ってると思う。 まあね、荷が重すぎて当然といえば当然。 実家行きをやめにすることをジョゼにどう伝えたのかがいちばん気になるところです、あえてソコは飛ばすという演出が良いですね。 ラクな方へ流れて行く自分の甘さ、いい加減さ不甲斐なさにたまらず泣いたと思う。でもそれに気づくだけマシです。 乳母車を押す人はもう必要なくなったジョゼ、必要な時におんぶしてくれる人がいつか現れるといいなと思いながら観終わりました。。。 その人は、あのヤンキーの幼馴染だったりするかしらん。 殆ど観てないけど、妻夫木くんの出てる映画は今のところアタリです。日本の俳優で妻夫木くんほどキスシーンの巧い俳優さんも珍しいんじゃないの?プライベートでかなり経験積んでらっしゃるのかしらね。 【envy】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-02-28 11:14:35)(良:1票) 178.《ネタバレ》 いつまでも記憶に残って離れない邦画。くるりの音楽が、「幸せだけどせつない」雰囲気を見事にだしていると思う。最後は一緒にいることはできなかったのに、「かわいそう」ではなく、ラストのジョゼの姿を見てとてもすがすがしい気持ちになりました。 【はちまろ】さん [DVD(邦画)] 10点(2013-02-27 21:36:35)(良:1票) 177.《ネタバレ》 池脇千鶴は体当たりで見事に難しい役どころをやり通したと思うのですが、 これ以降、なぜかアンダーグラウンドというか、単館シネマ系の映画ばっかりに出ている印象があります。 妻夫木聡はこの映画で見せつけたキスシーンの嵐に次ぐ嵐で、世の女性方の支持を一気に持って行った。のか、どうかは知らないけど この監督は、なかなかエロいなぁ、と思わせる獲り方。 あと、脇で存在感を今もなお発揮し続ける江口のりこが、かなりのチョイ役で脱いでまでいたのは、ちょっとビックリ。しかも美乳だったのもビックリ。 可愛い子の駄乳より、ブスの美乳。俺も歳を取ったなぁ。 あと、くるりのエンディング曲が妙に良かったです。 【バニーボーイ】さん [地上波(邦画)] 7点(2013-01-06 20:28:02)(良:1票) 176.《ネタバレ》 恋愛ものは途中で眠くなることが多いのだが、これは最後まで飽きずに観られた。妻夫木君はいつも通りといった感じだが、池脇さん演じるジョゼのキャラクターには引き込まれる。ただし、身も蓋もない言い方をすれば、イケメンリア充の男が身障者の女をヤリ捨てるだけの話。最後まで誰にも感情移入はできなかった。綺麗事で終わらない部分は評価するべきなのだろうが、かと言って手放しで称賛する気にもなれない。昔、女癖の悪い友人がやたらとこの映画を絶賛してたのを覚えているが、これを甘酸っぱい青春ラブストーリーとして脳天気に受け取れる人達は、たぶん自由恋愛とやらを簡単に謳歌できるタイプなんでしょうねぇ。 【オルタナ野郎】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-12-08 12:05:42)(良:1票)
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