みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
3.《ネタバレ》 19世紀のプーシキンの短編小説、及びそれを原作としたチャイコフスキー作曲の歌劇をもとに制作された映画である。歌劇のように死人を増やして大仰な悲劇にしたりせず、晴れやかな終幕にしたのは好印象だった。 主な3人以外の登場人物は変えられていて、序盤でゲルマンに妙な話を吹き込んだのは友人ではなく古本(なぜか英語版)ということになっている。また歌劇のゲルマンには恋する男と金の亡者の二面があったのを分割し、前者をアンドレイ・ナルーモフ公爵という別人格にして歌劇のエレツキー公爵と兼ねさせたことで、善玉と悪玉をわかりやすく整理したように見える。 本来の主人公だったゲルマンは悪玉専業なので特に共感できるものはなく、一方でリザヴェータ・イヴァノヴナが実質的な主人公に見える。原作にない「鳥の市場」の場面は、この人の境遇を端的に表現するものとして効果的だった。中間点あたりで、この人を間に置いて善玉悪玉が対峙する構図が決定的になったので、これでもうこの人も安心だと先読みできた。 また伯爵夫人の人物像もかなり原作に沿った表現になっていて面白い(横暴)。コメディ要素も結構あり、叔母を頼って伯爵夫人に取り入ろうとした男が、高齢で記憶が確かでない人物に対し馬鹿正直に本当のことを言って叔母に怒られていたのは笑った。ここも原作にある要素を発展させた形になっている。 ほか後半にはなかなかホラーっぽい場面もある。死者の目が強調されていたのと、床に裾の擦れる音で人物が表現されていたのが特徴的だった。 物語としては、カードに関わる呪術のようなものが本当にあったわけではなく、単にゲルマンの頭が変になっただけと思っても通る話ができている。怪しげな古本のCountess R***が、実在の「ラニエフスカヤ夫人」だといきなり思い込むことからして頭が大丈夫かと思わせるが、実際にはその伯爵夫人をはじめ、本にあった3枚のカードのことを知っていたとわかる人物は誰もいなかった。1746年の場面は事実というより本のイメージ映像と思うことにすれば、要は終始ゲルマンの独り相撲だったことになり、オカルトでなく現実寄りの真面目な映画だったと取れる。 結末に関しては、原作の淡々とした後日談も感慨深かったが、個人的にはリザヴェータが幸せになるかが気になっていたので、この映画もかなり喜ばしいラストになっている。「鳥の市場」がこういう形で最後につながったのは正直感動的だった。 【かっぱ堰】さん [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-12 19:57:47) 2.お目当て無し、予備知識ゼロでの鑑賞。 トップクレジットのアントン・ウォルブルックに「へぇ」「当たりかも」でしたが、抑揚無い辛気くさい姿に「ダメだこりゃ」のリタイア寸前に。しかしながら、伯爵夫人との対峙シーンから結末まで、昔よく思った「ガマンガマンここから面白くなる」が当てはまる、演出演技共に画面に釘付けとなった絶品ぶり。空に羽ばたいて行く鳥達の姿が粋でありました。 トータルで当たりと言える作品です。 【The Grey Heron】さん [DVD(字幕)] 7点(2022-02-06 19:06:29) 1.《ネタバレ》 毎度のジュネス企画版での鑑賞になります。 原作はプーシキンの短編小説。有名なのはチャイコフスキーのオペラ版だが、あちらは個人的にはちょっと話を膨らませすぎた感があり、長くてかったるくてあまり好みでないのですよね。 この映画版は、オペラ版の設定を色々と取り込みつつも、だいぶんコンパクトに纏め直すにあたって所々修正を加えている(リーザとゲルマンの関係性を大分シンプルにした上で、リーザの悲劇的な結末はやや穏便なものに改変していたり)。前半は結構スローかつ丁寧に展開を運んでゆくが、見せ場の色々を残り30分に凝縮した終盤はスピーディに盛り上がるのでまあまあ面白い。オーラスもそこそこ劇的(まあここはオペラでも思いっ切り盛り上がる所だけど)。ただ、時代的にもそこまで演出に派手さが在る訳でもないので、現代的なプロダクションのオペラ版と比べたなら少しばかり地味に感じられるかも知れない。クラシックなスリラーとしては手堅い出来だが。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 6点(2020-11-22 01:39:18)
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