みんなのシネマレビュー |
|
|
|
ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
5.《ネタバレ》 本作は非常にアニメ的な作品である。そのために敷居の高さはあるが、その一方でそのアニメ的なところが本作の大きな魅力にもなっている。まずは魅力について順番に述べていこう。 本作を観ていて最初に奇妙に思ったのは島津組の組長・島津の会社のたたずまいであった。彼は用心棒を連れて仕事に出掛けるのだが、そのオフィスはがらんとしており、他に誰もいなければ彼の机と椅子以外の物も見えないのだ。 そんなのっぺりとした空間でただ机に向かっている島津を見て僕は思った。「(これは)エヴァンゲリオンだ」と。 TV版『新世紀エヴァンゲリオン』の特徴の一つに「書かなくてもいいものはとことん書かない」ことがある。島津のオフィスもリアルに描写した方が作品としての風格は上がるだろう。だが、本筋に直接関係のないオフィスを緻密に表現しなくても物語の進行自体に支障はない。しかも、ハリボテのようなオフィスは、島津と彼を見張っている主人公の殺し屋・上村の、狙う者と狙われる者という特殊な状況を浮かび上がらせて強調する役割を果たしているとも言えるのだ。 上村のキャラクターもかなりアニメ的である。彼には過去もなければ未来もない。別の言い方をすれば、劇中で過去にも未来にも触れられず、なおかつ本作を観ている観客の興味がそれらに向ける必要のない、極めて分かりやすい設定となっている。 一切のしがらみがない状況で殺し屋として生きる上村に、宍戸錠という名優の存在感やパーソナリティーが加味されることで彼はさらに魅力を増す。特に島津を狙撃するためにライフルを構える上村には華があり、不思議な色気と独特のカッコよさにゾクゾクさせられる。余談ながら宍戸に関しては、これまで中年以降のバラエティやワイドショーでの姿しか見たことがなく、彼がスターとしてマスコミで扱われていることについて少々違和感を持っていたが、本作を観てそれが理解できた。彼はまごうことなきスターだったのだ。 アニメ的なのは、島津や彼に敵対していた大田原組に属する組員も同じだ。上村とは逆に、彼らにはキャラクターが与えられていない。上村を追い、彼を捕獲あるいは抹殺しようとする役割のみが与えられている。だから彼らの顔の区別はつかない(これは僕が日活アクション映画を殆ど見ておらず、役者に疎いからかもしれないけれど)。個性的なキャラクターとして描かれないことで、彼らはアニメの(その他大勢の)悪役のようになっているのだ。 本作の敷居の高さとなっているのは、こういった上村と組員の虚構性だ。現実世界を舞台に、現実的かつ本質的な心理を描く物語に虚構の登場人物が存在する。繰り返しになるがこれは多分にアニメ的であり、非現実的な側面がどうしても目につきやすい。そこから本作を受け付けない人も多いだろう。 ただ、本作上映当時に比べ、現在ではアニメ作品はすっかり市民権を得ている。モノクロ映画という点や、時代を感じさせる風俗に抵抗を感じる人もいるかもしれないが、もしかしたら現代の方が受け入れられやすい作品なのかもしれない。 ここからは、これまでの流れとは違う、映像作品ならではの本作の魅力を書きたい。 まずは、巧みに表現されているサスペンス。たとえば、何らかの車でやって来ると分かっている上村を港で待ち受ける組関係者の前にタクシーが現れる。身構える彼らだったが、実は立小便をしにきた運転手だったシーン。モーテルに潜んでいる上村達に突然乗り物の音が聞こえ、組関係者かと身構えたがそれは新聞配達のオートバイだったシーン。ベタと言えばベタなのだが、文章では伝えられない絶妙さが、観ているこちらもドキッとさせてくれるのだ。 それから、本筋とは直接関係がないのに大胆に挿入されるカットの存在。たとえば、島津を狙撃する直前の上村のライフルのスコープに小鳥が見える。小鳥は数秒映り、しかも小鳥が首をかしげる可愛らしい仕草までとらえられているのだ。 あとは、上村と組関係者の最終決戦の直前。指定した埋立地に約束の時間よりも早めに行き、穴を掘るなどの細工を施す上村だが、傍らの砂の上に一匹のハエが止まる。それを見ている上村。次の瞬間に激しい銃撃戦が始まるのだ。 どちらのカットにも直接的な意味はない。だが、何かを感じさせてくれるのだ。それは観ている人にゆだねられる。緊迫した場面での一瞬の平和かもしれないし、手塚治虫の漫画に多く見られるギャグ的表現かもしれない。観ている人が日常生活で感じたり背負ったりしている何かを連想するかもしれない。いずれにせよ、こちらも間の絶妙さが堪能できる、映像作品でしか表現出来ない魅力であることは間違いない。 【はあ】さん [DVD(邦画)] 7点(2020-09-22 19:21:36) 4.《ネタバレ》 カルト映画と呼ばれる宍戸錠主演のハードボイルドガンアクション映画。モノクロの画面が渋い独特の雰囲気を醸し出していて、やはりこういう映画にはモノクロの映像がよく似合うとあらためて感じる。冒頭の組長暗殺シーンも緊張感にあふれていて、見せ方も手を抜かずリアルでこれだけでもう見てよかったと思える。暗殺の標的になるこの組長をこういう雰囲気の映画にはあまり似つかわしくないようなアラカンが演じているのが意外に感じるが、同時にそこがツボだった。(一言もセリフがないというのがまた良い。)そのあとは主人公たちの逃避行とそれを追うヤクザたちの攻防が描かれているが、それも見ていてハラハラドキドキさせられる展開で飽きさせない脚本が良い。途中で出会うヒロインを演じる小林千登勢も可愛らしく魅力的だ。冒頭のタイトル部分から西部劇のような音楽が流れているのもカッコいいが、クライマックスの決闘シーンは本当に西部劇を思わせる演出で、なるほどと思った。それにリアルタイムで見る宍戸錠というのは西部劇にかぶれた人という印象があるのだが、それも妙に納得。ラストこの主人公は殺されるのではと思わせておいての大逆転劇も(確かに敵が少し油断しすぎのようにも見えるのだが。)見事。これがデビュー作となる共同脚本の永原秀一はこの後、加山雄三や松田優作主演のハードボイルド映画を手がけることになるのだが、その片鱗はじゅうぶんに感じられる作品になっている。少し甘めなのだが8点を。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-01-15 23:30:05)(良:1票) 3.《ネタバレ》 いかにも何かのマカロニ・ウエスタンを参考に作った感のある、決闘映画。冒頭の音楽を聞いた時に感じたことが、クライマックスの決闘時になるほどと理解できる。…と思ったら原作あるのか!藤真利子のお父さんか! 請け負った殺しの事情などはあまり重きを置かず、主人公たちとそれを追う連中の攻防に的を絞った話がゾクゾクさせて良い。途中、アニキと一緒に逃げようと思っていた女、駿とうまくやれるといいな。 胸に仕込んだ鉄板や棺桶から出すガトリングガンに相当するヤツ、もうちょっと謎めかしても良かったかもしれないが。 ところで、画面で見た時に思ったし、セリフでも言ってるけど、コルトじゃなくてベレッタじゃん。だれがこのタイトル決めたんだ? 【Tolbie】さん [DVD(字幕)] 6点(2013-07-13 22:53:29) 2.《ネタバレ》 『ある殺し屋』と並ぶ和製ハードボイルドの傑作として挙げられることの多い本作。 まずは、陰鬱なモノクロ映像が雰囲気を盛り立てる。 冒頭の暗殺シーンは、発砲場所の位置取りから始まって、銃を手際よく組み立てるシーン、そして発砲してからの逃亡にいたるまで、まさにプロの仕事と言えるシーンの連続で、息をのむ緊張感に漲っている。 ただ、後半に進むにつれ、この序盤で見せた緊張感はトーンダウンし、やや都合の良い結末へと収縮していってしまうのが残念である。 それにしても、宍戸錠の膨れた頬は、今みても不自然すぎる。 あの人工形成した頬がなくても、十分渋くてかっこいいと思えるのだが・・・ 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2010-01-03 17:58:12) 1.《ネタバレ》 日活プログラムピクチャーと言えば”荒唐無稽”の代名詞のような駄作アクションの吹き溜まりをイメージするが、中にはキラリと光る佳作もいくつか生み出された。本作もそんな一作である。先ず、宍戸錠扮する主人公が依頼を受けアラカン親分を狙撃する冒頭の殺しの場面が、銃の組み立てから射殺まで実にキビキビとしてキマっている。哀れアラカンは一言も発することなく退場。凶器の銃も車ごとプレスして証拠も隠滅、後は高飛びするだけのハズだったが、敵の追跡が異様に手際が良く、空路・海路共にたちまち手が回って追い詰められる辺りのテンションもナカナカ。途中で挿入されるジェリー藤尾の主題歌はどうも頂けないが、敵に捕まってからの痛めつけられっぷりがハンパじゃねーくらいにキマってたんでマァ良しw。小林千登勢も若くて可愛い!マカロニウェスタン風の主題曲をバックに決めるラストの逆転劇も鮮やかな演出で結構楽しめた。ただ…敵がちょっと余裕こいて、主人公があれこれ逆転への小細工を弄するに充分な時間的ゆとりを与え過ぎ!油断は禁物、3点マイナス。 【へちょちょ】さん 7点(2005-02-11 02:56:27)
【点数情報】
|
Copyright(C) 1997-2025 JTNEWS