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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 おもしろくなりそうなアイデアや展開がぶちこまれているわけでもない、前代未聞の斬新な見せ場があるわけでもない、しかしこの映画にはとてつもない「何か」が宿っています。絶望的で陰惨で、それでいて皮肉に溢れとてつもなく人間的という独特な世界を完璧なまでに作り上げており、映画全体が生き物のように躍動しています。ストーリーらしきストーリーなど必要ない、というよりもこの世界を味わうためにはストーリーすら蛇足と言えます。人類になぜ子供ができなくなったのか、ヒューマン・プロジェクトとは何者なのか、確かに娯楽作としておもしろくなりそうな要素を相当切り捨てています。普通の監督であれば当然描いたであろうことを一切無視し、あくまで主人公セオの目線のみで作られています。しかしそれで正解。世界の謎を解き明かすことも、未来のために戦うこともなく、行く先々で出会う人から言われるがままに動き、ただ危険から逃げることしかできない。こうしたヒロイズムの否定は、人類全体が死へと向かっている世界で何もできはしないという絶望感をさらに煽ります。これでいいのです。そしてその絶望の対極にある希望の描き方も実に秀逸。クライマックス、軍隊による殺伐とした掃討作戦が開始され、兵士達は銃を無差別に乱射し、テロリストは狂気にとりつかれたかのようにそれに応戦、一般市民はただただそれにおびえるばかり。しかしひとりの赤ん坊が人々の心にあった共通の人間性を呼び起こし、戦闘を止めてしまうのです。アクション、スリル、ドラマ性、メッセージ性、哲学性などがすべて頂点に達したかのような素晴らしいシーンで、映画史上これほどの場面は稀有だといえます。アルフォンソ・キュアロンという監督にはあまり馴染みがないのですが、自ら脚本も手がけてこの作品を作った手腕は神業的としか言いようがありません。娯楽的な要素を相当切り詰めた上に、立派な人物や印象的なセリフが出てくるわけでもないのに、ここまでおもしろくかつ含蓄のある作品を自分のセンスのみを頼りに作ってしまえるというのは恐るべき才能だなと。キューブリックですらこのレベルは作れなかっただろうほどの超絶な傑作です。映画館はガラガラでしたが(笑)、後の世では不動の傑作との評価を受けるであろう作品だと思います。[映画館(字幕)] 10点(2006-12-12 23:55:55)(良:8票)

2.  ドゥ・ザ・ライト・シング 《ネタバレ》 人種問題を扱った映画は多くありますが、これほど核心を突いた映画は珍しいと思います。人種映画は白人の手によって贖罪の意味で作られたものが多く、そのためどれもが腫れ物を扱うような作りで、黒人は決まって立派だが言われなき偏見を受ける人と決まっています。そこに来て本作は黒人社会から見た人種問題という他にありそうでなかった視点で、自身が黒人であるスパイク・リーだからこそ作れた映画だと言えます。異人種がすぐ隣に住んでいることの人種的緊張は「被差別者=一方的な被害者」という単純な図式には収まらないものであり、この映画では黒人側の問題点を浮き彫りにします。言葉が満足に通じないにも関わらずわずか1年で店を成功させた韓国人、彼らは人の何倍もの苦労をして成功を手にしたのでしょうが、一方おしゃべりをして1日を終えるような黒人のじいさんは、彼らを見て「古顔の俺たちより成功するとは何事だ」と自分を棚に上げて八つ当たり。またクライマックスの暴動のきっかけを作るメガネの黒人バギン・アウト。彼はイタリア人のサルが経営するピザ屋にイタリア系の有名人の写真しか飾られていないことに腹を立て、「黒人の写真を飾れ」と怒鳴り込みます。同じく暴動のきっかけとなるラジオ・ラヒームも、あれだけのボリュームで店に入られれば迷惑に決まっているのに、それを注意されると「黒人差別だ」と問題をすり替えてしまいます。水戸黄門の印籠かのように「差別だ」という言葉を使い、自分の都合のいいように相手を黙らせようとする黒人のずるさがきちんと描かれているのです。そして、そうした人種間の行き違いは登場人物の中でもっとも人種的にフラットなイタリア人サルへと向けられます。人種の違いを意識せず、誰とでも同じように接してきたサルは、そのフラットさゆえに「差別」という無敵の言葉を振りかざすバギン・アウトやラジオ・ラヒームとの関係をこじらせ、25年間同じ街で暮らし愛着を感じていた黒人の隣人達から店の襲撃を受けることとなる皮肉。その挙句、不真面目な勤務態度も大目に見て「お前は息子みたいなものだ」と愛情をかけてきたムーキーまで、襲撃でショックを受けているサルの気持ちも考えずに「俺の給料をくれ」と平然とやってくる始末。人種が絡むと思考回路が停止する黒人に対して「正しいことをしろ」と訴える実に珍しい映画で、人種問題をよく知るのには欠かせない作品だと思います。[DVD(字幕)] 9点(2006-11-04 03:21:31)(良:2票)

3.  12モンキーズ 《ネタバレ》 これはかなり惜しい映画です。未来描写がもっと杜撰なものであれば、この2倍はすごいことになったと思います。というのも中盤、コールは自分は未来人ではなく、医者の言う通り単なる精神障害者ではないかと疑うくだりがありますね。そんな、主題をも揺るがしかねない謎を観客も共有することができれば、もっと素晴らしいミステリー映画になったはずです。しかし残念ながら、観客はそのミステリーを共有することができません。願わくば冒頭の未来描写を丸々カットし、コールが拘束されるシーンから始まってくれればよかったんです。そうすれば、後にSF的な描写が登場しても、コールの幻覚という処理が可能になるんです。しかし冒頭に未来を持ってきてしまっては、SFという設定が大前提になってしまい、ミステリーがひとつ減ってしまうんですね。とはいえ、それでもこれは紛れもなく大満足の秀作ですけど。張り巡らされる伏線やいちいち意味ありげなセリフ、そしてクライマックスに向けてきっちりと収束していくお話。挙句に「12モンキーズ」自体がミスディレクションといううまさ。見事ですよ。それに話のテンポも悪くなく、その手際のおかげで言われるほど難しさは感じませんでした。そして、やっぱりブラッド・ピットがすごい。精神病院であることないことしゃべりまくりながらも、その言葉の中には思わぬ真理が隠されており、只ならぬ存在感を見せつけます。結局は単なるバカで終わる役柄なんですけど、彼の熱演がジェフリーという人物に「何かしでかすのでは?」というスゴ味を与えており、キーパーソンとしての存在感をいかんなく発揮するわけです。ま、この映画には余裕で9点を献上することができます。できれば、今後テレビ放映する時には冒頭の未来描写をカットしてくれれば完璧なんですけど。9点(2004-11-13 02:09:07)(良:2票)

4.  突撃(1957) 傑作。キューブリック作品ではもっともよくまとまっています。しかもキューブリック作品でもっとも人間らしいし。ここまで感情的な作品って、キューブリック作品では例外的ですよね(「スパルタカス」はキューブリック作品ではないと見なして)。しかしラストではあっさりと死刑を執行してみせ、ここで彼はヒューマニズムと決別してみせます。この映画を象徴する展開であると同時に、その後のキューブリックの作風をも示唆する映画史上の重要シーンだったわけです。9点(2004-06-09 22:04:49)

5.  ドクター・ストレンジ IMAX-3Dにて鑑賞。 ひたすらに強く大きくという方向性での進化を遂げ、そろそろお腹いっぱいになりそうなMCUですが、ここに来て従来の作品群とは異なる趣の本作を登場させたことには驚かされました。というか、MCUという枠を超えてアクション映画全般を眺めてもこれほど独創的な作品は珍しく、娯楽映画史におけるベンチマークのひとつになるのではないかとすら思いました。それほど本作のビジュアルは革新的で強烈なのです。発想力の逞しさ、そして、これほど複雑な見せ場をよくぞ作り込んだものだと感心するほどの緻密さであり、もはや芸術の域にまで達しています。今までボンクラだと思っていたスコット・デリクソン監督が、まさかここまで出来る奴だとは思ってもみませんでした。 一方、物語はヒーロー誕生編としてはかなりオーソドックスなものです。ビジュアルこそがメインの作品なのでお話は観客の目を邪魔しない程度でいいという判断があったのでしょうが、それでも、ここ10年ヒーローものを作り続けているマーベルはちゃんと成功方程式に落とし込んで手堅く仕上げています。適度に笑わせ、適度にハラハラさせ、適度に感動させる、娯楽作として過不足なしです。パワーの源や、世界を滅ぼしかねない脅威の説明、長ったらしい固有名詞の羅列に入ると「MCU内に世界の脅威はどれだけ大勢いるんだよ」と少々退屈になるものの、この辺りにも深入りしすぎないのでストレスは感じませんでした。 華と演技力を兼ね備えた豪華俳優陣は、それぞれ説得力のあるパフォーマンスを見せています。作品全体のスピード感を落とさないよう、主人公以外の背景はほとんど語られないのですが、それぞれに演技のできる役者を配置したことで、そのキャラクターの歴史が透けて見えてくるのです。この辺りの塩梅も見事なものだと思いました。 ある程度の割り切りの下に作られているため傑作とは言えませんが、見せ場の独創性で引っ張るかなり印象深い作品でした。[映画館(字幕)] 8点(2017-01-28 00:19:50)(良:2票) 《改行有》

6.  トランスフォーマー/ロストエイジ 《ネタバレ》 IMAX-3Dにて鑑賞。『4』製作開始のアナウンスがあった時には、「『3』で締まった話の続きをどうやって作るんだ」と心配したのですが、考えてみればこのシリーズには話も設定もあってないようなものなので、本編には何の問題もありませんでしたね。心配した私が愚かでした。。。 そもそも適当なこのシリーズですが、本作の適当ぶりは映画史上屈指のレベルに達しています。オートボッツが何のために戦っているのかわからない、そもそも誰と戦っているのかわからない、ロックダウンが地球で何をしているのかわからない、冒頭の恐竜絶滅に何の意味があったのかわからない、ラストで突然オプティマスが空を飛んでビックリetc…基本的な話がまったく理解できません。また、人間パートも同様の手抜きぶり。『アルマゲドン』でやったことを繰り返してるだけですから。主人公は貧乏発明家。SF映画における発明家といえば『ゴーストバスターズ』のようなオタク臭い面々を連想しますが、本作でこれを演じるのはマーク・ウォルバーグなので、出来ちゃった婚で高校を中退した元アメフト選手のムキムキ男という設定が加えられており、どうやっても発明家には見えません。実戦においても専ら使うのは頭脳ではなく肉体であり、素人とは思えない素晴らしい戦闘スキルでオプティマスの援護をします。その娘は、テキサスのド田舎の女子高生にはどうやっても見えない超ゴージャスなルックス。どんなに激しい戦闘の中でも、決して顔は汚れません。。。 以上、映画としてはガタガタなのですが、これが欠点となっていないのが本作のすごいところ。カーチェイスとロボットバトルをゲップが出るほど見せられる中では、ドラマとか設定とかはどうでもよくなってしまうのです。さらには、見せ場は多いもののきちんとバリエーションがあるので、同じようなアクションを何度も見せられるようなことはありません。また、「ロボットの区別がつかない」という前作までの欠点がきちんと修正されている点にも感心しました。3Dの使い方も素晴らしく、3D効果を実感しやすいショットが意図的に入れられているのでアトラクション映画として上々の仕上がりです。本作の上映時間は『ウォッチメン』や『ダークナイト』をも超えているのですが、それだけの長丁場を見せ場のコラージュだけで見せきったベイの絶倫ぶりには心底驚かされます。バカをやりきって偉業の域に達したような映画でした。[映画館(字幕)] 8点(2014-08-10 23:55:28)(良:1票) 《改行有》

7.  トロピック・サンダー/史上最低の作戦 役者が本物の戦闘に巻き込まれるというありがちな物語ではあるのですが、ベン・スティラーの人脈を駆使して揃えられた豪華キャストによって他作品との差別化が図られています。『オーシャンズ11』や『エクスペンダブルズ』を見ればわかる通り、この手のオールスター映画はキャストの動かし方が難しいのですが、本作は遊んでいるキャストがいないという点で感心します。コメディを本業としている俳優達は専らサポートに回り、コメディとは無縁の大物に思い切った役柄を割り振るという配置は、なかなか斬新でもありました。。。 とにかく凄いのが、トム・クルーズとロバート・ダウニー・Jrの大暴れです。トムが演じるのは、ジョエル・シルヴァーをモデルにしたと思われる映画プロデューサー。このキャラの狂い方が非常に素晴らしくて感動してしまいます。とにかく勢いで捲し立て、相手に反論の隙を与えず強引に話を結論に持っていく。本格的なコメディは初となるトムのハジケっぷりは楽しいし、「笑わせようとしてはいけない。不真面目な設定を真面目に演じることが笑いにつながる」という鉄則を守った演技には感心させられました。『マグノリア』でも感じたのですが、この人は脇に回るととんでもない演技と存在感を披露します。。。 一方ダウニー・Jrが演じるのは、サミュエル・L・ジャクソンになりきろうとするラッセル・クロウ(笑)。得意げな表情でブラザー言葉を使い、語尾で「メ~ン」と言う様には笑ってしまいました。かつてはメソッド演技を極めた実力派として名を馳せていたダウニー・Jrが、メソッド演技のやりすぎで自分を見失ってしまった俳優を演じるというセルフパロディとなっている点にも注目なのです。。。 最後に、本作の字幕の酷さについて触れます。笑いを理解していない人が字幕を担当したようで、せっかくの笑いどころがことごとく潰されています。例えば、「retard(知恵遅れ)」という言葉が「愚か者」と訳されているため、あえて差別用語を使った作り手の意図が伝わっていません。英語のジョークを原語で理解できる方以外は、本作を吹き替えで鑑賞されることをオススメします。笑いの量が3倍に増えますから。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2012-12-12 00:51:30)《改行有》

8.  トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン 《ネタバレ》 ↓ムランさんが詳しく書いておられますが、とにかく脚本が支離滅裂。「コンテナを破壊されたからもう飛べない」と言ったオプティマスが、次の場面では空を飛んで登場という展開には腰を抜かしました。本作は万事がこの調子で、筋らしい筋がない上に行き詰ると平気で方向転換、相変わらずドラマと本筋がうまく絡んでおらず、金のかかったプロジェクトでよくぞこんな手抜きの脚本が通ったものだと思いました。上映時間が長い割に時間の使い方もうまくなくて、ジョン・マルコビッチの出演場面は丸々不要な一方で、裏切り前のセンチネル・プライムの描写は少なすぎ。センチネルは本作最大のキーパーソンなのですから、彼が偉大な指導者であったこと、オートボッツ達からは父のように慕われていることを示す描写は必要でした。そして犯罪的に問題なのがシカゴ陥落場面を端折ってしまったことで、「昨夜シカゴが敵の手に落ちました」で済ませてはいかんでしょ。「インデペンデンス・デイ」も「宇宙戦争」もそうでしたが、侵略ものはファーストコンタクトが最大の見せ場。終末を感じさせる圧倒的な敵の登場、本作で言えばディセプティコンズの戦艦がシカゴ上空に飛来する場面こそが作品のアクセントとなるはずだったのに、そこを丸々落としてしまったのではもったいなさすぎます。。。とまぁ問題点の塊のような映画なのですが、それでもこの映画は面白いのです。ロボット達がドンガラガッシャンと大暴れしまくるボリューム満点の2時間半の前では、細かいケチは野暮に感じます。前作まではロボットプロレスの域を出ていなかったこのシリーズも、本作ではついにロボット大戦争に。敵の目を潰し、腕をもぎとり、内臓を引きずり出し、脳天を吹っ飛ばす、「ロボットならレーティングの心配も不要だぜ!」とばかりに悪趣味番長マイケル・ベイがやりたい放題やっています。クライマックスの戦闘ではそんなベイの手腕が光りまくりで、オプティマス登場のタイミング、センチネルの圧倒的な戦力の描写など、必要な演出はバチっバチっと決まってきます。キャメロン直伝という3D技術の扱いも上手いもので、猫も杓子も3Dでガッカリ3Dが氾濫する昨今において、「3Dで見てよかった」と思わせる素晴らしいアトラクションを提供してくれます。映画としてはイマイチな出来なのですが、大スクリーン、大音響で楽しむ3D大作としては破格の作品であったと思います。[映画館(字幕)] 8点(2011-08-03 00:20:39)(良:1票)

9.  トゥルー・ロマンス 女にモテず、服装もダサいオタクのフリーターが巨乳の金髪に勝手に惚れられるという、イケてない男子なら誰もがしたことのある妄想が繰り広げられます。エロくて、かわいくて、おまけに趣味の話を聞いてくれる彼女なんて最高ではありませんか!家の外で趣味の話をしないことが大人になることなんだなと学ぶ18の春を男はみな経験するわけですが、このクラレンスは趣味と彼女を両立させるという奇跡を成し遂げます。うらやましい!美人にモテて気が大きくなったクラレンスはバイオレンス一直線に走りますが、これまた学校のヤンキーにビクビク脅えつつ、「こいつらを全員俺の鉄拳で倒し、校内に平和を取り戻してやる」という文科系男子のバイオレントな妄想が素直に実写化されています。ド素人のクラレンスがマフィアや警察を敵に回し、ハリウッドの大物プロデューサー(モデルはジョエル・シルバー?)相手に大きな取引を成功させる展開はうまく行きすぎですが、タランティーノのバイオレントな妄想の実写化であり、オタク青年のファンタジーとして見ると、これは非常に楽しめます。。。「レザボア・ドッグス」で注目されたばかりでまだ「パルプ・フィクション」も世に出ていない時期に製作されながら、意味のない会話、B級趣味、度の過ぎたバイオレンス等、本作はタランティーノ作品の特徴を驚くほどよく押さえています。すでに売れっ子監督だったスコットが、昨日今日注目されたばかりの若手クリエイターの個性を殺すことなく、よくぞここまで「タランティーノらしい」映画を作ったものです。同時期に製作され、一方こちらはオリバー・ストーンが好き勝手にいじり倒してタランティーノを激怒させた「ナチュラル・ボーン・キラーズ」とは対照的です(「ナチュラル~」の後、親友のロバート・ロドリゲスを除いてタラは自分の脚本を他人に監督させなくなった)。トニー・スコットは見せ場だけの大味な映画を作る監督だと思われがちですが、本作を見ると企画の良さを的確に理解し、従来の自分のスタイルにこだわることなく企画本来の良さを活かす工夫のできる、器用で謙虚な監督という印象に変わります。[DVD(吹替)] 8点(2009-08-14 17:41:57)(笑:1票) (良:1票)

10.  トリプルX 再起動 《ネタバレ》 まず断っておきますが、私は『1』『2』は嫌いです。 というわけで、まったく期待値の上がらない中での『3』の鑑賞でしたが、不良・遊び人・変わり者が世界を救うという前作までのコンセプトが丸まんま引き継がれた本作の前半は、やっぱり厳しかったですね。特に50前のヴィン・ディーゼルが気の良い不良役をやっている辺りが何とも痛々しいし、作品の世界観では彼がかなりモテる男という設定にも違和感があり、映画に全然乗れませんでした。 お話の方も、CIAの悪だくみをNSA所属のトリプルXチームが阻止するという何ともドメスティックな内容なのに、無駄に世界を股にかけているので状況が感覚的に分かりづらいし、トリプルXチームが中国人・インド人・タイ人とインターナショナルすぎる顔ぶれで構成されており、もはやNSAの一プログラムという設定が置き去りにされていたりと、もうメチャクチャなのです。一応はアメリカ映画ではあるものの、アメリカ人による鑑賞をまったく前提としていないかのようないい加減さ、闇鍋加減には少々困惑してしまいました。 が、ザンダーチームとゴーストチームが合流する後半の高揚感や、ヤケクソの如くてんこ盛りにされた見せ場の連続には目を見張るものがあり、クライマックスまで絶え間なく続くアクションにはかなり見せられました。好敵手だったザンダーとジャンがついに手を組むタイミングや、2代目トリプルXが救援に駆けつけるタイミングなども絶妙で、B級アクション界の巨匠であるD・J・カルーソ監督の手腕も絶好調。こんなに楽しいクソ映画は久しぶりだなぁと最後には大満足できました。[インターネット(吹替)] 7点(2017-10-28 15:17:52)《改行有》

11.  ドリームハウス 《ネタバレ》 作品中にはよくできた部分とダメダメな部分が混在しており、たった90分程度の映画なのにえらくムラがあることが気になったのですが、鑑賞後にプロダクションの背景を調べてみて納得しました。製作会社であるモーガンクリークと監督のジム・シェリダンが完成した作品を巡って対立し、モーガンクリークは監督から作品を取り上げて再編集版を勝手に作成。シェリダンは監督協会に訴えてクレジットから自分の名前を外すことを要求し、ダニエル・クレイグとレイチェル・ワイズは監督を支持して作品のプロモーションへの参加をボイコットするという泥沼の事態に陥ったのだとか。クレイグは『インベージョン』でも同様のトラブルを経験しており、お疲れ様としか言いようのないキャリアを歩んでいます。 【注意!ここから激しくネタバレします】 内容はよくある本人オチ系の物語ではあるのですが、中盤でさっさとネタバラシをしてしまうため、「あといくつかネタフリがあってからオチだろう」と油断して見ていた観客はかなり度胆を抜かれます。また、主人公家族の描写が極めて丁寧で感動的であることも作品の目玉となっています。『マイ・レフトフット』や『父の祈りを』を手掛けてきたシェリダンだけあって、家族の描写では外していないのです。 家族は主人公の妄想による産物と見せかけているのですが、終盤で一度、主人公を助けるために物理現象を起こす場面があります。この描写により家族は幽霊であることが判明するのですが、そこから浮かび上がってくる、哀れなお父さんのために奥さんと娘たちが「都会から郊外に引っ越してきたエイテンテン一家」という家族ごっこに付き合ってあげていたという図式には泣かされました。また、一家惨殺の真相が暴かれたことで奥さんは自らの役割が終わったことを認識し、「私たちのことはもういいから、あなたは新しい人生を始めなさい」と言って主人公を送り出す場面ではもっと泣かされました。ここまで泣かされる幽霊映画は滅多にありません。意外なほど幅の広い演技を見せるダニエル・クレイグの腕前や、どこか超越性を感じさせるレイチェル・ワイズの存在感の貢献もあって、エイテンテン一家の物語がとにかく良いのです。 他方、お向かいさんに係るエピソードはボロボロで、このために最後の大オチがまったく決まらないという事態を起こしています。事件の真相を要約すると、親権裁判に勝てそうになかったジャック・パターソンは妻・アンの殺害を計画するが、殺人を請け負ったチンピラが間違えてお向かいのウォード家に侵入して一家を惨殺したというもの。一家惨殺についてこれだけ引っ張っておいて「家を間違えた」が真相ではズッこけてしまうので、もう少しうまいオチを考えて欲しいものでした。また序盤から中盤にかけての、主人公ウィルとパターソン一家との関係性の描写が希薄であったことから、この一家が物語の真相に深く関与するという点にも唐突感がありました。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2016-02-12 14:29:00)(良:1票) 《改行有》

12.  トランジット この映画、序盤はとにかくつまらんです。主人公一家はどいつもこいつも面倒臭い性格で好きになれないし、強盗団は安っぽくてまったく怖くありません。しかし、いよいよ強盗団が一家に接触すると突如として緊張感が高まります。それと同時に主人公一家に愛着を覚えるようになり、最後には「親父がんばれ!」と力いっぱい応援してしまうのでした。クライマックスで突如ランボー化するお母さん、異常に機転の利く長男などジョエル・シルヴァーならではのやりすぎ感も不思議とアダになっておらず、それどころかどんどんエスカレートしていく展開からはかなりのカタルシスが得られました。。。 カーチェイスや銃撃戦などの見せ場も意外と細かく作りこまれています。田舎道を2台の車が走っているだけという貧相なシチュエーションでありながら、撮影や編集の丁寧な仕事のおかげでスリリングな見せ場を作り上げているのです。この辺りの手慣れた仕事もさすがジョエル・シルヴァーといったところです。。。 この映画、ジョン・キューザックとモーガン・フリーマンが共演した「ザ・スナイパー」という映画とまんま同じ話なのですが、退屈で死ぬかと思った「ザ・スナイパー」と比較すると本作の面白さは際立っています。スタッフの仕事の手際の良さや適材適所のキャスティングなど(長男役の子供はどこで見つけてきた?)、B級アクションに必要な下準備がきちんとできているのです。決して傑作ではないが、観て損のない小品だと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2012-06-20 10:12:54)《改行有》

13.  トゥルーライズ ここまで中身のない話に空前の予算と最高の技術を投入できるハリウッドの懐の深さには感心します(誉めてます)。何か意味のあることをしようとして、結果的におかしなことになった底抜け超大作は日本にも多々ありますが、企画の段階で「これは頭からっぽにして見る娯楽作です」と決めた上でシャレにならない製作費をポンと与え、手抜きなしにきっちり作り上げることは、他では決してマネ出来ないことでしょう。そういう意味で本作はハリウッド娯楽作の象徴であり、ひとつの頂点と見ることもできます。コメディで笑って、見せ場で目を楽しませて、最後はスッキリと終わる。本当に良い気分で楽しめる娯楽作です。。。他方、アクション映画史においては、アクションスター時代の終焉を決定づけた作品だと見ることができます。本作の主役は怒涛のSFXであり、シュワ氏が担っていたのはその活躍の場を提供する役割でした。筋肉隆々のヒーローが暴れ回ることが第一の見せ場ではなくなり、SFXがついに主役となった分岐点にあたるのが本作です。SFXが見せ場を担うのであれば、ドラマパートは演技のできる役者を使えばいい。本作以降はジーナ・デイビスやニコラス刑事といったオスカー経験者がアクション大作の主演をつとめるようになり、演技は二の次だったアクションスター達の存在感は急速に衰えていきます。マーシャルアーツという代替の難しい特技を持っていたヴァンダムやセガールはその後しばらく全米1位を出せていたものの、筋肉だけが取り柄だったシュワ氏、スタさんの凋落はかなりのものでした。[DVD(字幕)] 7点(2009-10-21 21:00:08)(良:2票)

14.  逃亡者(1993) 《ネタバレ》 バリバリの娯楽アクションでありながらオスカー作品賞ノミネートという快挙を成し遂げた作品だけあって、面白さはズバ抜けています。この栄誉、公開当時はアンドリュー・デイビス監督の手柄とされていましたが、本作によりAクラス入りして後に撮った「チェーン・リアクション」「ダイヤルM」を見ると、やはりこれは実力以上の作品だったようです。真の功労者は、「ダイハード」でもジョン・マクティアナンに実力以上の仕事をさせた脚本家のジェブ・スチュワートでしょうか。「ダイハード」同様、本作も作りの精巧さが光っています。派手なアクションはあるもののご都合主義のウルトラCはなく、すべての行動が理にかなっているのです。またジェラード保安官の作り込みが素晴らしく(オリジナルのテレビシリーズでは感情移入しがたい人物だった)、「俺は無実だ」と言うキンブルに対し「知ったことか」と切り返す様は最高にかっこよく、また「ヘリを飛ばして、パトカーを2台よこせ。3キロ先まで封鎖だ」などと恐ろしく的確に指示を出す様は本物よりもプロっぽいわけです。キンブルを追う公権力の立場にいながら真実の究明についてフラットであり、キンブルの冤罪の可能性が高くなると、柔軟にその姿勢を変えるあたりも好印象でした。この役に巡り合えたトミー・リーは幸運だったと言えます。…と、すぐれた作品であることを前提としつつ難を言えば、前半のハイテンションな逃亡劇と比較して、後半の謎解きに入ると途端に作品の勢いが衰えることでしょうか。後半部分も通常の作品と比較するとそれなりのレベルを保っているものの、前半の圧倒的な面白さとの落差でどうしても見劣りしてしまいます。また、キーパーソンであるはずのニコルズ医師の存在感が驚くほど薄く(すべての黒幕なのに、特に印象に残らない素晴らしさ)、彼をより際立たせれば、ドンデンの衝撃度がより増したはずです。[DVD(吹替)] 7点(2009-07-30 20:25:02)

15.  トランスフォーマー/リベンジ 《ネタバレ》 自分は前作を評価していないのですが、前作とまったく同じ路線ながら特盛り状態でやりきった本作には脱帽です。相変わらずコメディがくどいし、暗号の謎や人類とロボットの歴史などは実にどうでもいいし、脚本の出来が今ひとつなのは相変わらずですが、しかし評価できるのはロボットの描写が圧倒的に良くなっていること。アニメのトランスフォーマーが愛された最大の理由はロボットに個性を持たせたこと、味方だけでなく敵方のキャラクターも充実させたことにあります。前作ではオプティマスとメガトロン以外のロボットは個性がないに等しい状態でしたが、本作ではきちんと各ロボットのキャラが立っています。特に、古参兵スカイファイヤー、途中から人間方へ寝返るウィーリーは映画を面白くしています。情報収集を行うサウンドウェーブのクールさも気に入りました。また、アニメではおなじみの場面も再現されています。アニメにおけるコンボイは、デストロン航空部隊に悩まされると「なんでうちには飛べるのがいないんだ」と元も子もないことで怒り出したり、「私にいい考えがある」と言って提案する作戦がたいていしょーもなかったりと天然の部分があったのですが、今回の映画版においてはその天然ぶりも再現。「人間の君の言うことなら聞くだろう」と、いち大学生のサムにオバマ大統領を説得しに行かせようとします。またメガトロンによるスタースクリームへの容赦のない罵倒、「覚えとけよ~」と情けなく戦場を後にする様もこの映画にはあります。そして男子の心を燃えさせたのは、「変形」と並んでロボットには欠かせない「合体」が盛り込まれたことです。7体合体の超巨大トランスフォーマー・デバステーター登場には「これが見たかったんだ!」と心底感動しました。そしてオプティマスとスカイファイヤーの合体には、感動を通り越して若干涙目になってしまいました。元は敵方にいたスカイファイヤーとの合体ですから、これは両軍のテクノロジーが合わさった究極の合体なのです。合体後のベラボーな強さ、「動きにくくないか?」というほどのゴテゴテしたデザイン、どれも私のツボでした。よくぞここまでロボット好きの期待に応えるものを見せてくれたものです。ベイのアクションは相変わらずド派手で、たまに美しさを見せるものの、長い長い戦闘シーンがひたすら同じリズムなのでもう少し流れを意識したアクションにすべきでしょう。[映画館(字幕)] 7点(2009-07-14 19:22:22)

16.  ドリームキャッチャー 恐ろしいまでに不完全で、それを楽しむか怒るかは完全に各個人に丸投げされたというセルフサービス映画です。ちなみに私は楽しみましたが、嫌いになる方の意見は十分理解できます。というより、好きになる方がおかしいと思います。この映画ではスティーブン・キング作品の悪い面がドバっと出てますね。スティーブン・キング最大の特徴は、前半のネタふりがやたらうまいわりに後半の尻すぼみ加減が尋常ではないことですけど、この映画はまさにそれ。これが嫌いと言う方でも、前半の盛り上げ方のうまさは認めると思います。うまく伏線を張っていくし、アイデアがおもしろいので先読みさせないし、印象的なビジュアルがいくつもあるし。しかし、一転して後半では「本当にそんなオチでいいの?」と思わせるのがスゴイところ。「あそこまで伏線張っといて、まさかこれはないだろう」みたいなことを堂々とやってきますからね。シャマラン映画と同じと言えば同じなんですけど、一方巧妙な脚本で想像力をかきたてないのがシャマランのうまいところ。しかしキングは容赦なく想像力をかきたて、期待を膨らませるので、後半の脱力感は高級フランス料理のデザートがガリガリ君だったみたいな感じです。4人の特殊能力や宇宙人の生態など、拾い切れてない伏線も山ほどあるし。みなさんこれに怒ってるんだと思いますけど、「イット」「ランゴリアーズ」「ザ・スタンド」などを経験してしまえば、「あ、またか」程度で許せるようになります。それどころか、その破綻ぶりが楽しみにもなります。そんなわけで、お客さんを選ぶ映画ってわけですね。これだけ豪華なメンツでそれをやってくれるってのが、好き者としてはまたうれしかったりするわけですけど。7点(2004-09-07 11:19:39)(良:2票)

17.  トータル・リコール(1990) 《ネタバレ》 2012年8月9日 レビューを変更しました】 『エイリアン』の脚本家チームがフィリップ・K・ディックから本作の映画化権を買い取ったのが1974年。しかし、たった23ページの原作を長編映画用に書き換える作業は難航を極め、脚本の完成までにかかった時間はなんと10年。その間に6人もの監督が関与するも遅々として企画は進まず、挙句、物語を気に入ったシュワルツェネッガーによって当初は小市民だった主人公が筋肉隆々のスーパーマンに書き換えられ、どう考えても駄作しか生まれようのない状況で本作は製作されたのですが、これが奇跡的に何とかなっているのが凄いところ。この企画に関与した7人目の監督、ポール・バーホーベンの手腕がとにかく圧倒的で、この難物を力技でまとめあげています。。。 バーホーベンは、基本的に『ロボコップ』と同じ方法論でこの映画を撮っています。とにかくスピーディに物語を展開し、観客に考える隙を与えない。『ロボコップ』は、”止まっている時間がまったくなく、かつてないほどスピーディな映画である”と評されてアカデミー編集賞にノミネートされましたが、本作についても同様の編集がなされています。冒頭十数分で状況説明を終えるとさっさと本題に入ってしまい、そこから先は見せ場の連続でラストまで突っ走るという豪快な編集。豪快ではあるが雑ではないところがバーホーベンの立派なところで、ひとつひとつのシーンは驚くほど細かく作り込まれています。鼻から発信機を引っ張り出す場面や、おばさんの顔が割れるとシュワが現れる場面など、やたら印象に残る場面が多いのは監督のセンスのなせる技。また、異常な血糊の飛び交う銃撃戦や、必要以上にグロテスクなミュータントの登場などで独特な雰囲気を作り上げていますが、こうした”規格外”の積み重ねが観客に適度な緊張感を与えることに成功しており、他の平凡な娯楽作とは違う風格を放つに至っています。。。 この企画、一時はディノ・デ・ラウレンティス&デヴィッド・クローネンバーグの『デッドゾーン』チームの手に渡っていたのですが、彼らが製作していれば『デューン/砂の惑星』の二の舞になっていたことでしょう。印象に残る場面はいくつもあるが、一本の映画としてまとめあげることは放棄された珍作に。バーホーベンのように芸術性よりも俗物性を重視する監督が手掛けたからこそ、この映画は無事に完成したのだと思います。[DVD(字幕)] 7点(2004-07-26 00:09:56)(良:1票) 《改行有》

18.  ドーン・オブ・ザ・デッド この映画はアクションですね。(ゾンビとは言え)群集に向かって銃を乱射する、情けをかけず殺しまくるなどなど、通常の設定では倫理的にいかがな描写も、ゾンビ相手ならOKとばかりにやりたい放題。ゾンビ映画の醍醐味のひとつってこれなんですよ。大勢で、しかも単品では弱い連中をとにかく殺しまくると。こういう正直な映画、アクション好きとしては奨励したいと思います。そしてクライマックスは「マッドマックス2」!プロパン大爆発、誰もが思い描くナイスな作法でチェーンソーを振り回すなどなど、とにかくわんぱく放題です。しかしこれがかの「ゾンビ」のリメイクとして見た場合には、確かに問題もあるわけで。ゾンビの存在以上にオリジナルのキモだったドス黒い世界観が継承されておらず、その点で言えば「28日後」の方がオリジナルに近いんですよね。そしてやっぱりゾンビはユラユラ歩きの方が不気味でいいです。殴られようが撃たれようがユラユラ歩いて来る、目的がわからないから怖いんですよね。でも目標めがけて全力疾走してしまうと、その怖さがなくなってしまいます。それに走ってしまうと、どうしても人間に見えてしまうんですよね。全員陸上選手みたいにいいフォームだし。でもゾンビが走ればアクションの緊迫感は高まるわけで、やっぱりこの映画はアクションとして評価すべきなんです。なのでこの点数で。7点(2004-06-03 22:29:26)(良:1票)

19.  トラフィック(2000) 《ネタバレ》 まず、麻薬撲滅担当の大統領補佐官に就任した判事とその家族の物語。本作中最大のビッグネームであるマイケル・ダグラスが主演している関係上か、はたまた観客にもっとも近いアメリカ人家族の物語であるためか、作品中もっとも力点の置かれたエピソードとなっているのですが、これがまったくのダメダメでした。何がダメかって、マイケル・ダグラス演じるウェークフィールドの行動が出鱈目なこと。彼の権力を総動員すれば失踪した娘なんて簡単に見つけ出せるはずなのに、麻薬撲滅活動のトップにいる自分がスキャンダルに晒されてはならないからと個人で問題解決に当たっているうちに、事態はどんどん悪化していきます。また、娘が見つかったら見つかったで、今度は最悪のタイミングで「個人的な問題を抱えている自分では任を全うできません」と言って職務から逃げ出してしまう。あんたは一体何がしたいんだと呆れてしまいました。 次にベニチオ・デル・トロが主人公を務めるメキシコパート。デルトロのオスカー受賞から察するに、世間的にもっとも評価されているパートがこのエピソードのようなのですが、テレビドラマ『ナルコス』などを見てしまうと、本作の描写は完璧にパンチ不足。15年も後に制作された作品と比較するのは酷と言えば酷ですが、それでもメキシカンマフィアのヤバさはかなり控えめだし、サラザール将軍を売るという危険な決断に至る過程に存在したであろうデルトロ捜査官の葛藤も不足しており、「ちゃんと描いていればもっと面白くなったはずなのに」と残念になってしまう点が多々目につきました。 最後に、夫が麻薬密輸業者であることを知った有閑マダムとDEA捜査官の攻防を描いた西海岸パート。キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、デニス・クエイド、ミゲル・フェラー、ドン・チードル、ルイス・ガスマンと知名度も演技力もある俳優が多く配置されたこのパートがもっとも勢いがあり、娯楽性も高くなっています。追う者と追われる者の双方の視点で描かれることでドラマもサスペンスも絶好調に盛り上がるし、家族を守るという絶対正義の下で悪事に手を染めざるをえなくなった有閑マダムの存在によって、作品は善悪二元論に収まらない広がりを見せます。本作で評価されるべきはデルトロではなく、ゼタ・ジョーンズであったと思います。[DVD(吹替)] 6点(2017-03-20 03:05:33)《改行有》

20.  ドローン・オブ・ウォー 《ネタバレ》 『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』において、スパイ衛星で捕捉した敵を、常時航行しているヘリキャリアーからの攻撃により自動排除するというインサイト計画なるものが登場しましたが、「そんなもんはファシストのやり口じゃねぇか!」と激怒したキャップにより当該計画は豪快にぶっ潰されるのでした。 本作で主人公が従事するミッションは、まさにインサイト計画と同様のもの。テロリストであるとタレこみがあった人物の居場所にまでドローンを飛ばし、ミサイルで始末するだけの簡単なお仕事です。そして、キャプテン・アメリカの怒りを買ったインサイト計画と同様に、このミッションにも正義はありません。農夫にしか見えないアフガン人をテロ関係者として殺したり、ドローン攻撃で死亡した人物の葬儀に集まった人たちにもミサイルを撃ち込んだりと、もはや歯止めが利いていないのです。少しでも疑いをかけられた人物はクロと見做して殺す。たった一人のテロリストを殺すために無関係な一般市民を巻き添えにする。被害者と加害者の国籍が逆であればどれだけの非難を受けているだろうかということをアメリカはやっているのです。 そもそも戦争とは命の奪い合いであり、そこに良い殺し”Good Kill”などはないのですが、それでも従来の戦場には一定の掟や美学というものが存在していました。戦闘行為は兵士のみが行い一般市民は巻き込まないこと、相手の命を奪いに行く以上は自分も殺される覚悟をしておくこと。しかし、ドローンによる殺戮は絶対安全な場所でボタンを押すだけで片がつき、そこには最低限のモラルすらありません。主人公はF-16のパイロットに戻して欲しいと何度も上司に懇願しますが、それは一人の戦士として今やっていることに耐えられなかったためでしょうか。 昼間は遠隔操作での殺戮に手を染めながら、夜には帰宅して家族との時間を過ごす。そんな生活を送る中で兵士たちは次第に精神を蝕まれていきます。ある者は麻薬に走り、ある者は任務から離れていく。主人公もまた、大儀のない殺戮に順応するため他者への共感を絶たねばならなかったことから、家族との間で溝ができていきます。若い女性部下と何となく良い感じになっても不倫に走らず家へ帰るあたりからは、彼の中でも行動を制御しようとする意志が見られるのですが、それでも人格そのものが崩壊していくことは止められなくなっているのです。 以上、なかなか意欲的な姿勢で作られた作品ではあるのですが、物語はどこか牧歌的。主人公がウジウジと悩む様はある意味呑気であり、ミサイルを撃ち込まれる側からすれば、「発射ボタンを押す人だって苦しんでるんですよ」と言われたところで「それがどうした!」としかなりません。本作はより被害者目線に立った作品であるべきだと感じたのですが、これがアメリカ映画の限界なのでしょうか。[DVD(吹替)] 6点(2016-08-12 18:49:24)《改行有》

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