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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. ハンナ ジョー・ライト監督の作品の中では文学作品の映画化よりも映画らしい内容でいいと思います。シンプルにこの映画の魅力を言いますと主人公のハンナ(シアーシャ・ローナン)がかわいくて強いということに尽きますね。アート風味を利かせているだけで内容はただのアクション映画でしかないんですが、とにかく絵作りと編集に凝っているので常にどんな画面が出てくるか先が読めない楽しさがあります。タイトルの出し方もカッコいいです。冒頭の雪原ではらわたを取り出すのは帝国の逆襲でモロッコのロケーションも妙にスターウォーズっぽかったり、ラストはグリムの家だったりと神話やおとぎ話を連想させるようなところがまたいいんですよね。登場人物に感情移入させるような作りになっていないのも意図してのことではないでしょうか。全体的にストーリーよりも雰囲気を楽しむタイプの作品なのでそこは好き嫌いが分かれるのでしょうけれど私は気に入りました。ケイト・ブランシェットの役はなんだか間抜けでコミカルなところがあります、血まみれの歯磨きとか何なんでしょうか(笑)。[インターネット(字幕)] 7点(2023-09-18 23:49:25) 2. 83歳のやさしいスパイ スマホもまともに使えないおじいちゃんが虐待の告発のために老人ホームに潜入する、こう書くと重苦しい社会派映画のようですが作品から受ける印象は真逆で朗らかで優しくかわいらしい感じの映画です。お年寄りって子供みたいなところがありますよね。妙にずれたことを言ったり、またある時は素直だったり、そこがおかしみを生んだり時にはもの悲しさを感じさせたりもします。この映画はチリが舞台ですが日本でもどこの国でもあり得ることでしょう。ドキュメンタリーとは思えないほど絵作りや色づかいは凝っており、ストーリーの構成も明確です。悪く言えばやらせっぽくもあり、そこが気になる方もいるかもしれません。しかしもし劇映画ならば役者の自然な演技が上手すぎますのでやっぱりこれはドキュメンタリーなのでしょう。カメラマンやマイクが映り込むのも演出のうちで、見ているこっちまで本来の目的を忘れそうになるとちゃんと劇中でもツッコミが入ります(笑)。聖フランシスコ特養ホームという名前を見ても舞台はカトリックが運営している老人ホームらしく、あちこちにキリストの十字架や像が置かれており、それが意図的にカメラに収められています。これは宗教的押し付けがましさというよりも、この映画が人間を愛することについての物語だということを象徴しているのだと思います。やさしいスパイという邦題は内容を的確に表現できています。[インターネット(字幕)] 8点(2023-08-28 23:36:28) 3. 蝿男の恐怖 青を基調とした夜の場面とプレス機はターミネーターに継承されているのかもしれません。序盤の雰囲気は結構悪くないとは思ったのですが、結局ほぼ原作を忠実に映像化しただけの作品でしかないので物足りませんでした。原作にはない映画独自の演出と言えるのは転送に失敗した猫の鳴き声が静寂の中で聞こえる場面と蝿男の複眼の主観ぐらいでしょうか。手紙での語りを回想に変えるのは単純な置き換えでしかなく、舞台が一軒家からほとんど移動がないのも映画としては明確な欠点です。カラー撮影であるため今でも見やすく、そこは50年代のSF映画としては強みです。しかしこの映画に限ったことでもないのですが、この時代のハリウッドのシネマスコープ画面の映画はクローズアップをあまり用いずにほとんどロングショットだけで物語が語られるため映像のメリハリがなく見ていてダレてくるところがあります。この映画でクローズアップが用いられているのは蝿と文字を映す場面ぐらいのものです。文字は大きく映さないと読めないというだけですし、結果として蝿が映される場面が一番刺激的にはなっています。[DVD(字幕)] 5点(2023-08-22 23:19:42) 4. パール・ハーバー この映画は言われてるほど悪い映画だとは思いません、前半は魅力的な場面がたくさんあります。冒頭の父親がドイツ軍と侮辱され傷つき、それに子供がそれに寄り添う場面は複雑な心理を描いており印象的です。黒人の水兵がボクシングで勝利し"respect"を得た、一度も銃を撃ったことがない、その方がいいと語られるエピソードも心を揺さぶるものです。夕日の真珠湾をこっそり軍に隠れて飛行するのも抒情性溢れる良いロマンスシーンです。嘲笑の的となる日本軍の屋外での会議シーンですが、確かに考証的にはメチャクチャなのでしょうが軍人の苦悩の表情と子供たちが遊んでいる姿を交互に見せる編集は日本側にも守るべきものがあることを示してはいないでしょうか。ハワイの日系人の歯医者もあくまで状況を理解しないまま利用されただけという描き方であり、日系人はスパイであるという偏見を助長しないよう注意を払っています。真珠湾攻撃のシーンでは日本軍の飛行機のコクピット内に家族の写真が貼られていたり、野球をしているアメリカの少年に日本兵が逃げろと呼びかける場面を入れたのも日本側を単純に悪魔化しない配慮だと思います。ただしドーリットル空襲のくだりは明らかに蛇足です。米国側が攻撃を受けるシーンでは日本側を描写する余裕があるのですが、いざ米国が攻撃側に回るとほとんど敵を描写しなくなるのも公平性を欠いています。三角関係も一方の死で有耶無耶にされちゃいます。この程度の展開しかできないなら真珠湾攻撃で物語を終わらせるべきでした。ドーリットル空襲以降は反撃シーンを入れなければ米国の観客は満足しないだろうと無理やり付け加えられたとしか思えず、そこは非難されても仕方ないです。まあ何よりこの映画の評価にとって最悪だったのは直後にアメリカ同時多発テロが起きてしまったことなのでしょう。[DVD(字幕)] 5点(2023-05-04 23:48:16) 5. バンビ 動物たちのアニメーションにはデフォルメされながらも実際の動きを再現したような圧倒的なリアリティがあります。しかしこの映画の魅力は単に技術的な達成だけではありません。この映画は生き物が生まれ成長し死んでいく様を美しい四季の光景と共に描き切っています。温かいまなざしと容赦のない厳しさ、両方の目線がここにはあります。ディズニークラシック作品の中でその物語内容が最も古びてない作品と言えます。近年ディズニーは過去悪役を割り当てられたキャラクターを別視点から語り直す作品を何本も作っていますが、この作品にはその必要がありません。なぜなら悪役は人間そのものであり、その時点でこの映画は既存の価値観を揺さぶるものであり続けるからです。実はディズニーの作品の中で最も大人向けの作品なのかもしれません。[DVD(字幕)] 9点(2023-04-14 22:40:45)(良:2票) 6. バビロン(2022) 監督デミアン・チャゼルは1985年生まれ、バック・トゥ・ザ・フューチャーが公開された年である。当然この映画で描かれた時代を実際に経験したわけではない。ファースト・マンのような映画ではあくまで客観的に史実の再現に注力していたから良かったものの、この映画はまるで死んだ人間の意見を勝手に代弁しているかのようである。そしてその意見すらもはや時代錯誤でしかない。劇中ブラッド・ピットの語る演劇に対する対抗心など果して今の映画関係者にどれだけ残っているのやら。映画はもう今では学も金もない人間の娯楽じゃない、既に芸術として認められており権威を振りかざす立場ですらある。もしそうでなければデミアン・チャゼル自身がこんな映画を作ることが許されたわけがない。それで出来上がったのは若者の年寄りごっこ、金持ちの貧乏人ごっこ、インテリの不良ごっこ。あるいは白人の黒人・メキシコ人ごっこ、男の女ごっこを加えてもいい。経験に裏打ちされていない捏造された思い出に何の価値があるというのだろう。愛国心はならず者の最後の砦というが、これでは映画愛も似たようなものである。[映画館(字幕)] 0点(2023-03-04 22:19:40)(良:2票)
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