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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  ダンケルク(2017) 《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。IMAX撮影されたノーラン作品は、IMAXで鑑賞するのが正しい見方ですね。 戦争映画は群像劇と結びつきやすい素材である上に、監督は幾重にも重なる物語を描き続けてきたクリストファー・ノーランだけに、現場や司令部を横断的に描く重厚な作品になるのかと思いきや、なんと話らしい話がないという意表を突いた作風となっています。本作はノーラン版『マッドマックス/怒りのデスロード』とでも言うべき内容なのですが、「ある地点からある地点へ移動する」という単純なストーリーに見せ場をてんこ盛りにした『怒りのデスロード』と同様に、本作も「救助を待つ兵士」「救助に向かう船」「敵を排除する戦闘機」という極めて単純な図式にまで各構成要素を落とし込んだ上で、冒頭からエンドクレジットまで絶え間なく見せ場が続くという男っとこ前な作風となっています。 しかしそこはノーラン、ただ単純な物語を描くのではなく、陸での1週間・海での1日・空での1時間を交互に見せ、ラストですべてのタイムラインを合流させるという恐ろしく難しいことをやっており、相変わらずその構成力には驚かされます。さらには、タランティーノ辺りみたいに「どうどう、凄いでしょ?」というこれ見よがしな見せ方ではなく、こういう難しい芸当をサラっとやってのけてみせるんですね。この余裕に巨匠の貫禄を見ました。 また、戦場での友情とか、個々の兵士の物語や、生きて帰らねばならない背景といった、戦争映画にありがちなドラマ要素がほぼ排除されているという点も、本作の特色となっているのですが、かといって感動的な要素がないというわけでもなく、目の前の描写の積み重ねのみできちっと感情的な山場を作れています。チャーチルの演説が引用されるラストはさすがに甘々すぎやしないかと思いましたが、それでも「良い映画を見たなぁ」という余韻を残してくれます。[映画館(字幕)] 9点(2017-09-09 15:00:45)(良:3票) 《改行有》

22.  GODZILLA ゴジラ(2014) 《ネタバレ》 IMAX-3Dにて鑑賞。全世界ほぼ同時上映から日本公開まで2ヶ月もお預けを喰らわされ、期待をパンパンに膨らませて映画館に駆け込みましたが、そんな上がりまくったハードルを楽々越えてきた本作の完成度には感動しました。子供の頃にゴジラにハマった私としては、これこそが夢にまで見たハリウッド版ゴジラです。。。 怪獣映画は、怪獣を出しすぎるとただの怪獣プロレスになってしまう。怪獣そのものよりも、怪獣が出現したことで混乱に陥る文明社会をどこまで克明に描けるかという点にこそ成功の鍵があるのですが、この点、ギャレス・エドワーズは前作『モンスターズ』でも怪獣が存在する世界をほぼ完璧に創造しており、本企画の監督には最適任者であったと言えます。シナリオは理詰めで考えられているし、歯が立たない相手を目の前にした人類の絶望感の演出も見事なものであり、怪獣映画に必要な空気感を作り上げています。また、この監督は怪獣を出しすぎてはいけないという点も熟知しており、溜めて溜めてテンションが最高潮に高まったところで怪獣をドーンと出すという演出も決まっています。。。 東宝ゴジラは破壊者とヒーローという二つの性格の間で耐えず彷徨っていましたが、本作では、その相矛盾する性格を破綻なく折衷することに成功しています。第1作だけに仁義を切るのではなく、駄作も含めたすべてのゴジラ映画を総括するキャラ造形としており、この点に、東宝ゴジラに対する最大のリスペクトを感じました。一方で、その設定には大胆な変更が加えられています。放射能怪獣という最大のアイデンティティを奪ったことをはじめとして、オリジナルではゴジラ自身が担っていた役回りの大半をムートーに譲っているのです。人類との接点は専らムートーに任せることで、ゴジラは人類程度には及びもつかない超越的な存在として描かれているわけですが、このアプローチによって、かえってゴジラはオリジナルに近い存在感を獲得するに至っています。この判断は見事でした。。。 本作の欠点としては、ムートーのデザインは線が細く、どう見てもゴジラには勝てそうにないという点がまず挙げられます。もっと強そうなデザインにするか、ゴジラを追い込むような特殊な必殺技を持たせるべきだったと思います。あとは、核兵器の扱いが相変わらず雑。覆いもかけず剥き出し状態の核弾頭を列車で輸送する場面には失笑するしかありませんでした。[映画館(字幕)] 9点(2014-07-29 00:48:43)(良:1票) 《改行有》

23.  ブレーキ・ダウン 《ネタバレ》 東宝東和によって意味不明な放題をつけられたり(ブレーキダウンって何?)、実は共通点の少ない『激突!』と無理やり関連付けられたり、ジョナサン・モストウが驚異の新人扱いされたりと(モストウは1989年に監督デビュー済)、日本公開時にはやや過剰な宣伝がなされていた本作ですが、肝心の中身は、小細工に走らず一気に見せる、竹を割ったようなサスペンスアクションとして仕上がっています。90分、本当にハラハラドキドキさせられました。。。 本作の構成は極めて秀逸で、『バルカン超特急』のようなミステリーものと見せかけておいて、実は『悪魔のいけにえ』の流れを汲むテキサスものの変種でしたという本編には嬉しくなりました。奥さんがいなくなるミステリー部分にしても、『フライトプラン』のようなおかしな引っ張り方はせず、設定のボロが出る前にさっさとネタバラシをして第2幕へ入ってしまうという思い切りの良さには感動しました。第2幕はノンストップのサスペンスアクションとなるのですが、上記の通り、根底にはテキサスものの精神が横たわっているため、通常のサスペンスアクションにはない不快感が作品のスパイスとなっています。また、犯人像もよく考えられています。この手のサスペンスアクションでは、どれほど不気味な人間にするかという方向性で犯人像が作られていくものですが、本作はそれとは正反対のベクトル、家庭を持ち、意外と良いパパだったりもするという設定を置くことで、その一方で部外者に対してはいくらでも凶暴になれるという残酷性をより強調することに成功しています。これを演じるJTウォルシュのねちっこい存在感も素晴らしく、私が心から死んで欲しいと思った悪役トップ5に名を連ねるほどの印象を残しています。。。 もうひとつ評価すべきは、カート・ラッセルの演技の幅の広さです。従来より多様な役柄を演じてきたラッセルですが、本作ではそんなラッセルの個性が作品に大きく貢献しています。序盤では、田舎者に絡まれても喧嘩になるのが怖くてヘラヘラと誤魔化すような男だった主人公が、徐々にバイオレンスに染まっていくという『わらの犬』的な役柄を見事モノにしています。後半では「普通の男がそこまでやれるか」とツッコミたくなるような過激なアクションもこなすわけですが、ラッセルが本来持つ個性によって、そこに大きな違和感を覚えないという点にキャスティングの妙があります。[DVD(字幕)] 9点(2014-07-15 01:22:19)(良:2票) 《改行有》

24.  ゼロ・グラビティ 《ネタバレ》 IMAX3Dにて鑑賞。見たのは先週なのですが、どうしても感想がまとまらず、レビューの投稿に1週間かかりました。なんせ、「物凄く面白かった!」以外の感想がまったく頭に浮かばなかったのですから。。。 アルフォンソ・キュアロンは、ここ10年で私がもっとも衝撃を受けた大傑作『トゥモロー・ワールド(邦題がクソ過ぎ)』を撮った監督。フィクションの現場に観客を放り込むということに徹底してこだわる人で、『トゥモロー・ワールド』においても、主人公が見聞きするもののみで映画を構成していました。本作はそのコンセプトをより先鋭化したものであり、余計な説明というものが一切排除されています。早々に地上管制官が劇中から姿を消し、生存方法の説明が終われば相棒・ジョージ・クルーニーも退場し、以降は主人公たった一人の戦いが延々と描かれます。主人公には、娘を失って生きる意欲を失っていたという背景が設けられているものの、それすら過大に扱われていません。ただ生きようとする者の執念を、圧倒的な技術力と演出力で描いただけの映画。そりゃ、「面白かった!」以外の感想は浮かびませんよね。。。 本作のビジュアルは驚異のレベルに達しています。従来のSF映画が時代遅れに感じる程であり、本作のスタッフは映画を新しい局面へと進化させたと言えます。また、観客に宇宙遊泳の感覚を味わわせるという点で、本作は史上最高のライドムービーとしても評価できます。本作については映画館での鑑賞が必須であり、家庭での視聴は論外。本サイトにおいても、映画館での上映終了後のレビュー投稿は禁止して欲しいと感じる程です(DVDがリリースされた際には、作品の本質を味わえなかった人たちによって、「思った程ではなかった」という否定的なレビューが続出するであろうことが容易に予想できます)。。。 蛇足ですが、本作を見ていると、ハリウッドにとって中国は大事なお客さんなんだなということがよく分かります。2007年に人工衛星の破壊実験をしたのは中国だったのですが、本作ではロシアが犯人にされており、一方、中国の宇宙船が主人公の命を救う救命艇の役割を担っています。すべてが完璧で禁欲的な映画だっただけに、こうしたマーケットへの配慮が、作品の完成度を多少なりとも毀損しているように感じられて残念でした。[映画館(字幕)] 9点(2013-12-23 02:56:55)(良:3票) 《改行有》

25.  クロニクル 【8bit】さん同様、1年以上前にイギリス版ブルーレイにて鑑賞しました。劇場公開前の映画を、個人で簡単に海外から取り寄せることができる。良い時代になったものです。。。 本作の内容も、そんな現在のネットワーク社会の特徴をうまく利用したものになっています。「テクノロジーを扱った映画でもない本作のどこが?」とお思いになるかもしれませんが、それは主人公がカメラを回し続けることの理由付けの部分にあります。例えば『クローバーフィールド』では、いかに映像をリアルに作り上げても、登場人物がカメラを回し続ける点については合理的な説明をすることができず、そこが映画の穴となっていました。しかし、それから数年で個人がSNSを利用する局面は大きく広がり、FacebookやTwitterで私生活の一部を世界に公開することも、YouTubeにアップする目的で動画を撮ることも当たり前のものとなりました。本作の映像や編集は意図的にYouTubeに似せており、数分程度の短い動画の積み重ねにより全編が構成されています。pov映画は掃いて捨てる程ありますが、YouTubeに似せてきたものは恐らく本作が初めて。10年後の観客が本作の手法を受け入れられるかについては不安が残りますが、少なくとも現在の観客にはマッチしたやり方でした。。。 以上、長々と語ってしまいましたが、手法については本作の魅力の一部に過ぎません。青春ドラマとしてよくできていたことが、本作を傑作にした最大要因だったと思います。地味で陰気、彼女なし、友達なし、家では父親からの暴力を受け、学校ではアホにいじめられるというあんまりな青春を送るアンドリューの悲惨な物語が胸に突き刺さります。物語中盤で一瞬の平穏を見せるものの、その後、急速に悲劇へと雪崩込んでいく様は見ていて辛くなりました。他方、彼を一方的な被害者として描いていないという点もよく考えられています。彼が破滅したきっかけはいじめでも貧困でもなく、初体験での失敗をバカにされたことを必要以上に根に持ってしまったことでした。それは他者と触れ合いたくても触れ合えない者の悲劇。初期ティム・バートン作品を思わせる独特の暗さがあるのです。アンドリューを演じるデイン・デハーンはハマり役で、明るい表情の時にはかつてのレオナルド・ディカプリオの面影があるものの、暗い表情の時にはケイシー・アフレックのような腐った目を向けるという二面性が非常に印象的でした。[ブルーレイ(吹替)] 9点(2013-12-21 04:37:46)(良:1票) 《改行有》

26.  ジャックと天空の巨人 《ネタバレ》 ”怖い、気持ち悪い、容赦がない”の3拍子揃った巨人たちのインパクトが災いしてか、日本ではまったく話題にならなかった本作ですが、これが壮絶な面白さでビックリこきました。おとぎ話をベースにした前半の冒険活劇では、ほのぼのとした古典の空気に現代的なスリルや笑いが加えられており、21世紀仕様の『ジャックと豆の木』が見事に仕上がっています。悪い婚約者に、かっこいい騎士に、怖い巨人にと定番の要素を寄せ集めつつも、見事なバランス感覚でまとめられた脚本が絶妙だったし、ひとつひとつの場面を丁寧に作り上げるブライアン・シンガーによる演出も、予定調和の世界を飽きのこないものにしています。古典の新解釈としては、ほぼ完璧ではないでしょうか。。。 以上の前半パートだけでも充分に満足のいく映画だったのですが、本作の真の見せ場は後半パートでやってきます。『進撃の巨人』を思わせる大チェイスを皮切りに人類vs巨人の大決戦が始まるのですが、延々と続く合戦のテンションの高さには圧倒されました。城の防御が細かく考えられていたり、アイテムを登場させるタイミングが絶妙だったりと、脚本・演出も絶好調。さらには、物語の世界と観客の世界を繋いでみせたエピローグにおける含みの持たせ方も面白く、頭から尻尾の先まで完璧にまとめられた満足度の高い娯楽作に仕上がっています。これは必見です。。。 最後に、何かと批判の多いタレント吹替ですが、本作の吹替はなかなかよくできていました。ウェンツ瑛二とガレッジセール・ゴリはさすがの芸達者ぶりで主役キャラを無難にこなしているし(特にゴリはプロの声優並みの巧さ)、平愛梨もお姫様らしい上品な雰囲気を出せています。常にこのレベルを維持できるのであれば、タレント吹替も歓迎できるんですけどね。なあ、『プロメテウス』。[ブルーレイ(吹替)] 9点(2013-09-25 01:21:33)(良:2票) 《改行有》

27.  マン・オブ・スティール 《ネタバレ》 IMAX3Dにて鑑賞。 「スーパーマンは難しい」。その圧倒的な強さ故に強敵を作ることが困難だし、設定が非現実的過ぎて実写でやるとお笑いになってしまう。前作『リターンズ』の製作に10年以上かかってしまったことからも、これは魅力的でありながらも実現困難なコンテンツであることが充分に伺えます。そこに来て、バットマンを理詰めで実写化したクリストファー・ノーランがスーパーマンをどう料理するのかに関心があったのですが、ノーランはこの歴史あるコンテンツを驚くほど自分色に染めていて、その大胆さには心底恐れ入りました。。。 ヒーロー映画としての面白さを徹底的に追求した『リターンズ』と比較すると、本作には驚くほどカタルシスがありません。ノーランはアクション映画を多く手がけながらも、基本的に暴力は忌むべきものと考えているようであり、本作においてもスーパーマンの力を否定的に描いているのです。クリプトン人としての能力は特権ではなく呪縛として機能しており、それは幼少期よりクラークを苦しめます。また、暴力の帰結としての人の死からも逃げておらず、ゾッド将軍を殺した後のスーパーマンは苦悶の叫びをあげます。さらに、スーパーマンが戦った街では大勢の一般市民が巻き添えとなって死んでいることが容易に想像できる描写が続き、全体を通してかなり後味が悪いのです。はっきり言うと、スーパーマンの企画でやってはいけないことを並べ立てた内容としています。そのポストモダンな作風ゆえに原作ファンは納得しないだろうと思うのですが、ドラマ性が高まったことで映画としては抜群に面白くなっています。自分にとって邪魔でしかない個性とどう向き合うのかという、非常に普遍的なドラマとなったのですから。また、ケビン・コスナーから意外な熱演を引き出したという点でも、本作の脚本は評価できます。。。 以上、ひたすら暗く地味な脚本なのですが、ビジュアルの鬼・ザック・スナイダーが監督に就任したことで見せ場のテコ入れが図られ、ドラマの暗さをアクションの面白さで打ち消すという絶妙なバランスが実現しています。見せ場の迫力や面白さは群を抜いており、本作と比較すると『アベンジャーズ』すら二流のヒーロー映画に見えてしまいます。スーパーマンの強さや速さの描写は非常に的確だし、スピーディながらも見辛くなる一歩手前のところで踏みとどまっている監督のサジ加減にも驚かされます。[映画館(字幕)] 9点(2013-09-02 01:43:40)(良:3票) 《改行有》

28.  レッド・ステイト 《ネタバレ》 『ホステル』みたいなホラー映画なのだろうと思って何気なく手にとったのですが、見始めると展開の速さと、二転三転どころか五転も六転もするストーリーに驚かされました。練り上げられた脚本、見せ場の作り込み、鬼気迫る演技、どれも超一流です。あまりの凄まじさに呆気にとられていたのですが、エンドクレジットを見て納得がいきました。「脚本・監督:ケヴィン・スミス」、なるほど、そこいらのB級ホラーとは別格の映画だったわけですね。。。 タイトルの『レッド・ステイト』とは共和党支持の州を指し、これらの州にはキリスト教原理主義者や銃規制反対派がウヨウヨしています。水野晴郎さん風に言えば、病んだアメリカを象徴する場所なのです。そして、イカれた宗教団体が銃で武装するという内容は、1993年にテキサスで発生したブランチ・ダビディアン事件をモチーフにしていると思われます。ブランチ・ダビディアンとは終末思想と選民思想を思想体系とする宗教団体であり、来るべきアルマゲドンに備えて大量の銃器を保有していたことから、司法当局やマスメディアに注目されることとなりました。ついにATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)による強制捜査が入った際には、信者たちは「いよいよアルマゲドンがはじまった」と興奮して銃撃戦となり、双方に死傷者が発生。その後、ATFから現場を引き継いだFBIによる大規模な突撃によって25名の子供を含む81名の死者を出すという悲劇的な結末を迎えるに至りました。教団側の生存者はわずか9名。教団から降伏文書が出されていたにも関わらず、その事実は司法長官に知らされていなかったこと、「強行突入は逆効果である」というプロファイリング結果が無視されていたことが後に問題視され、時のFBI長官は引責辞任を余儀なくされました。。。 以上が本作の背景ですが、ケヴィン・スミスはこの事件を非常に素直に映画化しています。変に捻りを加えたりせず、事件の概要をそのまま映画に反映させているのです。ただしストーリーテリングの技術は非常に見事で、通常の映画であれば生き延びるであろう人間をいとも簡単に殺してみせたり、中盤において善悪を逆転させたりと、観客の裏切り方を心得ています。その凄惨な内容が祟って配給会社が見つからなかったため、監督自身が配給権を買い取り、自主上映という形で全米公開したとの経緯も男らしく、これは必見の怪作です。[DVD(吹替)] 9点(2013-01-28 01:31:08)《改行有》

29.  ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 IMAX3Dにて鑑賞。予告やCMで押されているだけのことはあって、3Dには圧倒的な迫力がありました。10年前に『ハルク』を撮ったきりで、最新テクノロジーに明るいイメージのなかったアン・リーですが、本作では技術を完璧に使いこなしています。リドリー・スコットやピーター・ジャクソンといった一流監督達が長年の経験で身に付けてきたことを、この人は本作だけですべてやりきっているのです。これには驚きました。素晴らしい映像と音響、そして3D効果、映画館で観てよかったと思える映画でした。。。 技術面の素晴しさも然ることながら、内容面も最高でした。オスカー最有力候補はダテじゃありません。動物たちの描写がとにかく上手くて、あざとい擬人化を避けながらも各個体にきちんとした性格付けを行っており、肉食動物が草食動物を食べるという当然の事実からも逃げていません。かなり生々しい描写もあるのですが、露悪的になる一歩手前で踏みとどまるという抜群のバランス感覚には唸らされました。息を呑むほど美しい場面も一つや二つではなく、芸術的にも非常に充実しています。3D効果と相まって、本当に素晴らしい体験ができました。笑いあり、見せ場あり、スリルあり、その上オチの付け方まで素晴らしく、悪いところのまったくない完璧な映画でした。リアルタイムで観たことが人生の宝になるレベルの映画だと思います。[映画館(字幕)] 9点(2013-01-26 22:02:30)(良:1票) 《改行有》

30.  26世紀青年 『MIB3』が奇跡的な仕上がりだったことから同作の脚本家であるイータン・コーエンに関心を持ち、TSUTAYAの棚に埋もれかけていた本作に辿り着きました。本国においては完成後1年も塩漬けにされた挙句にロクな宣伝もなく捨てるように限定公開され、日本に至っては劇場公開すらなくひっそりとDVDリリース。さらには悪名高きフォックスジャパンによって安っぽい邦題を付けられるというあまりに不遇な扱いを受けた本作ですが、内容は非常にしっかりしていて驚きました。下品なギャグで息ができなくなるほど笑える一方で、その基礎はしっかりとした知性によって支えられているという、理想的なコメディ映画となっているのです。本作が興行的に惨敗したにも関わらず、コーエンは直後に『トロピック・サンダー』の脚本家に抜擢されるという異例の大出世を果たしましたが、確かにこれは評価されて当然の仕事だったと思います。。。 バカしか生き残っていない未来というアホな話なのですが、結婚や育児に慎重すぎるインテリ層が必然的に人数を減らし、一方で無計画にボコボコと子供を作りまくるDQN層が多数派をとり、結果として上記の社会が出来上がったという設定には大いに納得させられました。この映画、細部に至るまで手抜きがなく、とにかくよく考えられています。未来のアメリカでは白人が減って有色人種ばかりになっていたり、アホな政府が金融政策を行ったためにハイパーインフレとなっていたりと、バカバカしい設定をうまく現実世界とリンクさせているのです。愚かな娯楽と扇情的な報道によって国民を総白痴化させるメディアと、そんなメディアが垂れ流す情報を鵜呑みにする国民という関係も現実世界を映し出したものであり、社会のために尽力したはずの主人公が、目先の結果のみを求めるメディアと国民からの猛バッシングを受け権力の座から引きずり降ろされるという展開などは、我が国でも思い当たるフシがあります。バカバカしい電解質問答にしても、電解質をコラーゲンやヒアルロン酸に置き換えれば、身につまされる方も多いのではないでしょうか(ありがたがって服用されている方が多くいますが、どちらも経口摂取ではほとんど意味がありません。念のため追記)。「もっと自分の頭で考えろ」、非常にシンプルなメッセージですが、多くの社会で切実に当てはまる問題だと言えます。[DVD(吹替)] 9点(2013-01-21 01:21:04)《改行有》

31.  戦火の馬 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』以降四半世紀に渡り、いかにして悪趣味描写を娯楽作に持ち込むかという難題に勝手に挑戦し続けてきたスピルバーグですが、本作ではついに悪趣味を卒業し、かつての健全な娯楽映画に回帰した内容としています。同時に製作した『タンタンの冒険』も同様の趣旨でしたが、そちらは初のアニメ作品ということもあってやや失敗した感がありました。しかしスペクタクルの巨匠スピルバーグ、実写では外しません。90年代以降のスピルバーグ監督作品としては間違いなくNo.1の面白さであり、この人は映画を撮るのが世界一うまい人であることを再認識させられました。。。 主人公は馬。ディズニー映画のように人間の言葉を喋ることも、誰かがその気持ちを代弁することもなく、本当にただの馬を主人公とした映画なのですが、この馬のキャラがきちんと立っていることに驚かされます。擬人化の名人スピルバーグが久しぶりにその腕前を披露したわけですが、演技部門でオスカーにノミネートされてもよかったんじゃないかと思うほど馬が素晴らしすぎます。そんな馬を囲む人々も基本的には良い人ばかりで、良いドラマを観たなぁという気持ちを存分に味わわせてくれます。。。 最近仲良くしているピーター・ジャクソン(第一次大戦オタク)に影響されてか、本作の舞台は第一次世界大戦。これが実に独特な戦争で、初期には職業軍人による伝統的な騎馬戦が主流だったものの、後期には大量破壊兵器と大人数の素人兵士がその主役となり、開戦時と終戦時とではまるで違った様相を示すこととなった戦争でした。大量破壊兵器の登場とともに、かつての戦場には確かに存在していた「戦いの美学」というものが失われ、戦争はただの殺し合いとなったわけですが、本作はそんな時代背景をきっちりと内容に反映させています。当初は軍馬として大事に扱われていたジョーイが、後には交換可能な運搬手段としてこき使われることとなるのですが、戦場における人道のあり方と主人公の扱いを丁寧にリンクさせている脚本には感心しました。。。 不満点を挙げるならば、ヨーロッパ人が当然の如く英語を喋る点と、ドイツ帝国が一方的に悪者にされている点でしょうか。ユダヤ人弾圧のあった第二次大戦ならともかく、三国同盟と三国協商のどちらに正義があったのかについて議論の割れている第一次大戦においてこの扱いは無神経であると感じました。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-08-10 17:43:31)(良:1票) 《改行有》

32.  ダークナイト ライジング IMAXシアターにて鑑賞。 関係者の想定以上によく出来てしまった『ダークナイト』の続編。傑作になることを義務付けられた完結編という相当な重荷の中、上がりまくったハードルをきっちり超える映画に仕上がっています。アクションはより派手に、ストーリーはより重厚に、世界が見たがっているバットマンを正確に理解した映画となっているのです。『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』『マトリックス・レボリューションズ』等、要らないものを足しすぎて失敗する完結編が多い中で、ここまで過不足なく綺麗にまとめられた完結編は珍しいと思います。とにかくクリストファー・ノーランの仕事が圧倒的。日本のオタク以上に厄介なアメリカのオタクを納得させてきたストーリーテリングの手腕はさすがのものだし、アクション演出は前作以上に的確です。『ビギンズ』の時には演出に固さがあったものの、娯楽部分の演出はどんどん巧くなってきています。007を思わせるスカイアクションにはじまり、ウォール街襲撃に、バットマン再登場に、ゴッサム陥落にと圧倒的な見せ場が連続するのですが、CG全開のマーブルヒーローとは一味も二味も違うリアリティある見せ場には大変恐れ入りました。。。 物語については賛否が割れているようですが、私は良い内容だったと思います。最大の武器であった財力とテクノロジーを奪われた時、ブルース・ウェインはどう戦うのか?というのが本作のテーマ。なかなか面白い点に目を付けたなぁと感心しました。第2のロシア革命を目論むベインという敵にも、完結編に相応しい重厚さがありました。無目的な狂人であったジョーカーでは完結編の主役は務まらなかったはずであり、バットマンとは相要れぬ信念のために突き進む怪人こそが、サーガの幕引きには適任だったと思います。。。 そして最期に一言。どんなに扱いが悪くてもシリーズに出演し続けたキリアン・マーフィの度量は素晴らしすぎる![映画館(字幕)] 9点(2012-07-29 01:08:11)(良:1票) 《改行有》

33.  グッドフェローズ LAの裕福な芸術一家に育ったコッポラがマフィアの世界を荘厳に描く「ゴッドファーザー」を撮ったのに対し、NYの貧民街で育ったスコセッシが「チンピラなどは唾棄すべき人種だ」という考えで本作を撮ったのは興味深い事実。本物のマフィアの姿を見て育ったスコセッシが監督を担当したことが、本作の最大の強みとなっています。。。 虚弱体質で気の小さかったスコセッシ少年にとって、街を仕切るマフィアは死ぬほど怖い存在だったようです。大人になり映画監督になったスコセッシは、子供の頃に自らが感じた恐怖を観客に追体験させます。ジョー・ペシ演じるトミーこそがその恐怖の象徴。悪気ない一言にしつこく絡んでくる、些細な出来事がきっかけで人を酷く痛めつける、ヤクザ特有の理不尽な恐怖が見事なまでにスクリーン上で再現され、観客は身を凍らせるのでした。このアプローチはスピルバーグに似ています。極度の怖がりだったスピルバーグは、その強い感受性をスクリーンに再現することで観客に恐怖の追体験をさせましたが、本作もヤクザの怖さを追体験させているのです。本作はマフィア社会の描き方が素晴らしい等と絶賛されていますが、正直言ってそんなものは二の次。この映画が他のヤクザ映画よりも抜きん出ているのは、一般人がヤクザを見た時に感じる恐怖心を完璧に再現できていることです。”多くの人はテレビで戦争を見るのだから、カメラ越しの戦場映像こそが最もリアルに感じるはずだ”という理屈で撮られた「プライベート・ライアン」と同じ話で、”一般人がヤクザを見た時にどんな感情を抱くのか”という点に徹底的にこだわっている点が素晴らしいのです。。。 さらに、技術面でも注目すべき点が多数あります。絶え間なく流され続ける音楽、あることないこと話しまくりまったく途切れない会話、テンポの良い編集など、タランティーノやポール・トーマス・アンダーソンらに明らかに影響を与えているのです。本作にてスコセッシは驚くべき手腕を披露しており、これが彼のベストワークだと思います。 [DVD(吹替)] 9点(2012-06-07 01:22:19)(良:2票) 《改行有》

34.  スーパー! 《ネタバレ》 ダメ人間が現実世界でヒーローごっこをする物語といえば「キック・アス」が代表格となりますが、本作は基本コンセプトこそ共通していても、中身はまったく異なる内容に仕上がっています。「キック・アス」は既存のヒーローものをバラバラに分解した上で再構築した作品であり、クライマックスでは新たな形でのファンタジーを提示しましたが、本作は分解したものを組み立て直すことなく、身も蓋もない形で観客の前に晒しています。「正義に目覚めて他人に暴力を振るう人間とは、一体どんな人格なのか?」「凡人が悪党に勝つためには、どんな手段をとることとなるのか?」「武装した者が他人に暴力をふるうと、相手はどうなるのか?」こういった疑問を煮詰めに煮詰め、出てきた答えをぶちまけているのです。描写はスプラッタホラー並にドぎつく、主人公は完全にキ○ガイ。前半こそコメディ映画として成立していましたが、後半では一切笑えません。とにかく衝撃作で、「もっとも似ている作品は?」という問いには「タクシードライバー」と答えるのが適切でしょう。トラビス並か、それ以上の狂気がこの映画を支配しているのです。「タクシードライバー」がそうであったように、本作も表面上はハッピーエンドを迎えます。しかし、あれはバッドエンドと解釈すべきでしょう。主人公は暴力の惨たらしさは認識しましたが、多くの人命を失ってまで自分が守ったものが無意味だったことは受け入れられませんでした。そこで、妻は自分のおかげで更生して幸せな人生を送っているのだ、自分は価値あるものを守ったのだという妄想にとりつかれたと考えるのがもっとも自然だと思います。 あれだけの惨事を引き起こした主人公が警察の捜査やマフィアの復讐から逃れて平穏な生活を送っているとは考えづらいし、あの結末を額面通りに受け取ると、作品全体に込められた監督の意図(現実世界で正義に目覚める奴がいるとしたら、それは迷惑この上ないキ○ガイだろう)にも反してしまいます。[DVD(吹替)] 9点(2012-01-14 22:58:20)

35.  リアル・スティール 《ネタバレ》 本作では「ロッキー」を連想される方が多いようですが、それに加えて私は「オーバー・ザ・トップ」も思い出しました。つまりこの映画、本質的にはスタローンイズムに溢れたB級素材なのです。しかも舞台は「ローラー・ボール」を思わせる未来のハイテクスポーツで、こちらもまた、いかにもなB級設定。特に「ロボット格闘技」なんて面白いと思いますか?格闘技を含めたスポーツ全般は、神から与えられた肉体という制約条件の中にあって人間がいかに身体能力を向上させるかが、その面白さの原点であるわけです。設計次第でスペックをいかんともできるロボットにスポーツをさせたところで、それが面白いわけがありません。そんなこんなでこの映画は絶対につまらないだろうと踏んでいたのですが、見て驚きました。文句の付けどころがないほど面白いではありませんか!脚本・演出・演技という映画の基本的要素が非常に安定していたおかげで、この企画は奇跡的なまでに化けたようです。主人公は息子の存在すら忘れているほどのダメ親父なのですが、同時に適度な愛嬌があるため観客から嫌われるギリギリのところで味のあるキャラクターとなっています。その息子もまた、父親に向かって悪態をつくクソガキなのですが、ウザくなる一歩手前でこれを個性としているきわどいバランス感覚はお見事でした。役者のハマり具合も完璧で、憎たらしさと可愛げの絶妙なバランスを見せた子役のダコタ・ゴヨの演技には目を見張りました。。。 そして素晴らしいのがロボット格闘技の場面で、前述の不安が帳消しにされてお釣りがくるほど燃えましたとも。スポーツ映画としての本作の構成は抜群に優れています。まず前半で主人公が所有するロボット2台に負け戦をやらせるのですが、足を飛ばされ、首をもがれるという容赦のないやられっぷりを観客に見せておくことで、その2台よりも華奢なATOMのバトルの緊張感を高めています。最後には勝つとわかっていても、ATOMも同じ目に遭わされるのではないかと冷や冷やさせられるのです。やられてやられていよいよ反撃に出る場面では、スポーツ映画らしいカタルシスを存分に味わえます。最強のハイテクロボvs職人気質のローテクロボというありがちな対比も存分に映画に貢献しており、ここまで熱くなれる映画は久しぶりでした。ま、この構図は「ロッキーⅣ」そのものなんですけどね。やっぱりこの映画はスタローンイズムの塊なのです。[映画館(字幕)] 9点(2011-12-16 16:14:30)(良:1票) 《改行有》

36.  ワイルド・バレット 各々思惑を胸に秘めた悪人達が多数入り乱れるサスペンスアクションはよく見かけるジャンルですが、本作の面白さはその中でも群を抜いています。タランティーノやガイ・リッチー作品にも比肩するほどよく出来た脚本に加え、トニー・スコット風のかっこいい画面作り、ノンストップのスピード感、ハマりまくりの俳優陣(ポール・ウォーカーかっこよすぎ!ヴェラ・ファーミガ美人過ぎ!)、もはや文句のつけようのない仕上がりです。ヤクザ同士の権力闘争に加え、DVや児童ポルノなどネタにしていいのか微妙な題材にまで臆することなく手を付けたおかげで、本作は独自性を打ち出すことに成功しています。話が桁外れに陰惨なのです。陰惨ではあるが、救いがないわけではない。バイオレントな落とし前はきっちり付けるため、後味は妙に爽やか。その辺のバランスの取り方も最高です。この監督、「トゥルー・ロマンス」や「ナチュラル・ボーン・キラーズ」といったタランティーノ自身が監督していないタランティーノ作品の大ファンと見ました。[DVD(吹替)] 9点(2011-05-29 19:55:08)(良:2票)

37.  アンストッパブル(2010) 味付けについて自由度の高いラーメンには名店も多くありますが、例えばそうめんで客を唸らせる味を作ってみろと言われれば、これはとんでもない難題です。映画の世界でそんな難題に挑み、奇跡的に満足できる商品を作ってしまったのが本作。しばしば「スピード」との類似点が指摘されますが、テロリストとの駆け引きがあり、さまざまなトラップや見せ場を準備することができた「スピード」と比較すると、無人で暴走する列車を止めるだけというシンプルな本作は遥かに難儀な代物だったと思います。シンプルだからこそ監督の手腕がモロに問われ、逃げも隠れもできない素材。私はロン・ハワードのような堅実なタイプの監督に任せるべきで、ビジュアルばかりが先行するトニー・スコットは適任ではないと思っていました。が、観終わればそれは大きな間違いだったことに気付かされます。スコットは驚異的な演出力を披露し、難儀な企画を燃える傑作に変えてしまっているのです。いつものビジュアルセンスはもちろん健在で、他の監督が撮っていれば単調になったであろう本作の見せ場も、スコットの手腕によってかっこいい場面の連続に。列車を追うヘリやありえない台数のパトカーの並走など、乗り物を撮らせるとスコットは相変わらず良い仕事をします。クライマックスに向けて計ったように盛り上がっていくテンポ作りも見事で、どんどんエスカレートしていく物語には手に汗握りっぱなしなのでした。そして、今回のスコットが凄いのはここから。見せ場とドラマのバランスがほぼパーフェクトであり、神がかった職人芸を見ることができます。本作のメインはもちろんアクションでありドラマは添え物という扱いなのですが、映画のテンポを邪魔することなくアクションの高揚感に貢献させるという、アクション映画にあるべきドラマ作りが完璧になされています。ドラマを挿入するタイミングやその分量が本当に絶妙で、スコット兄やスピルバーグですらここまで巧くはできないでしょう。30年ものキャリアにおいてひたすらアクション映画を撮り続け、主要な映画賞へのノミネート経験が一度もないというアクションバカがついに辿り着いた究極の作品。それが本作なのです。。。強いて苦言を言うならば、カタカナにすると語感の悪いこの邦題、作品の趣旨から外れたヘタレな宣伝文句は何とかならなかったのでしょうか。[映画館(字幕)] 9点(2011-01-16 23:31:49)(良:1票)

38.  3時10分、決断のとき 《ネタバレ》 多額の借金を抱えた上に長引く干ばつによってその返済の目途も立たない、さらには鉄道会社に大事な土地を奪われそうな状態にあり、身体的には戦争で足を不自由にし、長男からは腰抜け、嫁からは負け犬と思われていて、おまけに次男は重病持ち、、、主人公ダンの境遇はいくらなんでも酷過ぎるでしょう(笑)。そんな切羽詰まったお父さんが、家族を幸せにするため多額の報酬を得られる囚人護送に参加する物語なのですが、家族のためならお父さんはいくらでも泥にまみれるし、身の危険だって厭わない、無口なダンの背中から漂うそんな思いにはグっときました。お父さんというのは奥さんや子供が思っている以上に家族の幸せを願い、もし家族が幸せでなければ自分を責め、そして家族の幸せのためならいつでもわが身を危険に晒すことができる健気な生き物なのです。そんなお父さんの律儀な思いがこの映画では十分に表現されていて、それだけで涙が出そうになるくらいに感動します。毎年父の日には、日曜洋画劇場でこの映画を放送して欲しいと思ったほどです。また、凶悪犯ウェイドを目の当たりにして危険な仕事であることを認識したダンの奥さんが、旦那に対して「護送団からは降りるべきよ」と言う場面も妙にリアルでした。毎日仕事でボロボロになって帰ってくる旦那に向かって「そんな辛い仕事なら辞めちゃえば」と言うアレです。家族を養うというのは、身近にいる奥さんですら想像できないくらいに大変なことなんですね。。。カッコ悪くても家族のために必死で仕事をするお父さんと、派手に生き、金と自由を謳歌するアウトローとの対比が前半で描かれるのですが、後半になると映画は男と男の物語にシフトします。牧場には念願の雨が降り、さらには護送を完了しなくても200ドルやるという提案までなされ、ダンがこの仕事に命をかける理由がなくなります。家庭人であれば、このまま金を受け取って帰ってしまえばいいのです。しかし、ダンは男として息子に情けない姿を見せたくない、そして自分自身のプライドを取り戻したい、自分は負け犬ではないことを証明したいという思いから、この大仕事を最後までやり遂げようとします。その思いに乗ったウェイドとともに大勢の敵が待ち構える駅へ走り出す様は男泣き必死の名場面で、盛り上がるドラマ、高鳴る音楽、腹に響く銃声、良い映画を見たな~という気分を存分に味わうことができます。[ブルーレイ(吹替)] 9点(2010-09-18 20:40:29)(良:1票)

39.  スター・ウォーズ/帝国の逆襲 EPⅣは映画史上において重要な作品だと思うのですが、製作から30年以上を経た現在の目で鑑賞するとビジュアル的にもストーリー的にも不十分な点がいくつかあって、時代性を差し引いて評価せねばならない作品だと言えます。一方続編である本作の面白さは圧倒的で、現在の娯楽作と比較しても遜色のない仕上がりとなっています。起承転結の「起」と「結」は前後作にお任せし、本作は頭からお尻までフルスロットル。当時の作品として、ここまでの密度とテンションを保った作品は他になかったと思います(翌年の「レイダース」も担当した脚本家のローレンス・カスダンの手腕でしょうか)。ビジュアルの進化も著しいものがあります。EPⅣのVFXは当時としては画期的だったとは言え、現在の目で見るとスピード感に欠けており、空中戦の場面であってもゆっくりとした動きが気になる部分がありました。しかし本作ではその欠点が解消されていて、新3部作と比較しても見劣りしないほどビジュアルが完成されています。また空中戦のイメージの強かった「スター・ウォーズ」において雪上での戦闘を映画の冒頭に持ってきたことは、サーガの世界観を広げるために効果的でした。迫りくる巨大歩行ロボットから走って逃げる歩兵の図というものは見たことがありませんが、戦争映画としての側面を突き詰めると当然行き着く結論であり、これをきっちり見せたことでスター・ウォーズという作品の深化を図ることに成功しています。この場面はメカデザインもVFXも演出もシリーズ中最高峰であり、本作製作時にはルーカスもスタッフも絶好調だったことが伺えます。。。ホスの戦いが象徴するように、単純明快な冒険活劇だったEPⅣから一転して物語は戦争の過酷な面が強調され、またガンコな師匠の登場や悲劇的な恋愛要素の追加でドラマもアダルトなものに。これは、ドキュメンタリー出身のアービン・カーシュナーを監督に、ハワード・ホークスのお抱えだったリイ・ブラケットを脚本家(初稿を書き上げた直後に死亡したため、仕上げたのは新人のローレンス・カスダン)に起用したことの成果ですが、スター・ウォーズの続編としてハード路線への転向を決定したルーカスはさすがの慧眼でした(ただし公開当時は不評で、EPⅥではソフトな面を強調するためイウォーク族が登場することに)。本作がEPⅣの延長に過ぎなければ、シリーズの熱狂的なファンなどは現れなかったはずですから。[DVD(吹替)] 9点(2010-09-05 00:36:42)(良:2票)

40.  スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐 EPⅠⅡと実に惨い仕上がりでしたが、本作はそれらの続きとは思えないほど突出してよく出来ています。いよいよクローン戦争が本格化し、全宇宙が戦場に。全世界のファンが「ジェダイの復讐」以来待ち続けたのはこれでした。続々と登場するかっこいいメカの数々に、ジムの如く局地戦仕様に改造されたクローントルーパー、クローントルーパーの大群を率いてバトルドロイド軍団へ突進するジェダイ達。男子悶絶の映像が続きます。やればできるじゃないか、ルーカス!そして、このシリーズは毎回悪役が良いのですが、本作のグリーヴァス将軍も意表を突くデザイン、ユーモラスな性格付けで強烈な印象を残します。。。パルパティーンがついに本性を現し、アナキンがダークサイドに落ちると、物語はさらに加速。ジェダイや共和国の理念は破れ、アナキンはダースベイダーになるという結末はわかっているものの、それでも心をぐいぐい掴む強力な物語が展開されます。弟子を育て損ねたオビワンの苦悩、愛する旦那が宇宙一のワルとなり、おまけにその男の子供を妊娠しているパドメの苦悩が描かれるのですが、スター・ウォーズにおいてここまで深い人間ドラマが見られるとは思いませんでした。ラストのバトルにおいて、アナキンへの思いを叫ぶオビワンと、オビワンへの怒りを叫ぶアナキンの熱いやりとりは必見です。後半のドラマについては、期待を完全に超えるものとなっています。それに付随する描写も実に気合いが入ったもので、EPⅠⅡと残酷描写について腰が引けているのが気になったのですが、本作においては必要な場面をきっちり見せてきます。ジェダイが惨殺される場面や、両手両足を失い、さらには火だるまになるというアナキンの衝撃的な最後に至るまで躊躇がなく、ルーカスが腹を決めて本作を作っていることが分かります(EPⅠ公開の時点で、EPⅢは悲惨な内容になるため観客に拒絶されるかもしれないとルーカスは語っていました)。また、人類史において時折登場する悪の帝国とは一体何だったのかという考察も交えており、「今、自由は死んだ。万雷の拍手の中で」という名セリフは本シリーズがついにおとぎ話を超えたことを象徴しています。。。ファンの頭の中でパンパンに膨らんでいた以上のクライマックスを準備し、これまで水と油だった新シリーズと旧シリーズを見事につないでしまったのですから、本作の完成度は驚異的と評価するしかないでしょう。[映画館(字幕)] 9点(2010-09-02 00:19:39)(良:1票)

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