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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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21.  ラ・ラ・ランド 《ネタバレ》 ちょっと甘いかなぁと思いつつ、9点評価で! なるほど、この作品を好きか嫌いになるかの大きな分かれ目は、「夢を追いかける人」に共感できるかどうかなのだと、他の方々のレビューを見て感じた。私は、「夢を追いかける」主人公2人にかなり共感ができたから、この作品を好意的に見ている。アカデミーでウケがよかった本作だが、それはアカデミー(つまりは映画産業)に関わる人々全員がなにかしら「夢を追いかける人」だからであるのは間違いないだろう。 はっきりと指摘しておきたいのは、「夢を追いかける人」=「真面目で誠実、常識のある人」ではない、ということだ。主人公たちの価値観や考え方に共感ができないという人は、もしかすると彼らにもっと真面目で誠実なキャラであってほしいと勝手に願ってはいないか?それこそ古い映画の中にしか出てこない、夢に向かってひたむきに頑張る真面目な若者。夢を追う人をそのように定義づけていないだろうか? だが世間を見渡せば、実に浅い考えで夢を追う人はたくさんいるし、浅い考えのまま、大して芸もないのに成功してしまう人だってそこそこ存在するのが現実だ。それはハリウッドを見なくても、日本の芸能界を見ればよくわかることだ。 セブとミア。2人が完璧な人間でないのは確かだ。類い稀な才能を持っているのかも、はっきりとはわからない。2人は考えが浅はかなのかもしれない。欠点も多かろう。ただ、そうした人物たちが繰り広げる物語には、どこか厭らしいリアルさ、現実の泥臭さが綴じ込まれていて、むしろ私はそういう物語の方がリアリティを感じることができて好きだ。完璧な主人公たちがいてもいいし、完璧でない問題だらけの主人公がいてもいいのである。 なににせよはっきりしていることは、主人公2人は成功すること、夢を追うことに対して猛烈に執着し、飢えていることだ。たとえ欠点だらけの人格でも、彼らは夢にしがみつき、チャンスに食らいつく。この点だけについては、主人公2人とも極めて真摯なのである。本作の素晴らしいところは、そうした2人の執着や飢えを、賞賛はしないまでも、明確に肯定しているところにある。ラストシーンにおける二人の視線と表情の交錯に、それははっきりと表現されている。2人は夢にしがみついた。2人が結ばれることはなかったが、それぞれの夢は叶えた。彼らは再び出会い、互いに見つめあった。そして互いを認めあった。それぞれの道を突き進め、というように。やはり映画の最後でも、2人は、夢にしがみつくことに真摯であるのがわかる。2人の無言のやり取り、万感の思いが籠った視線と表情、それを映し出す映像に、夢にしがみつくことへの肯定を見出すことができる。そこには余計な説明も台詞もないけれど、欠点だらけであっても、夢にしがみつき、追いかけ、執着しろ!と映画が熱く訴えかけている。 「セッション」では観客を突き放すかのようなエンディングだったが、本作は、主役2人が自分たちだけの世界に没入するという点では共通しているが、主役2人と映画そのものが観客に主題を訴えかけるエンディングになっている。だから切なくなるのだが、どこか暖かい気持ちで映画を見終えることができた。そして映画の訴えかけに大いに共感できた。こうなったからには、高評価をつけなくてはならない。というわけで、9点評価で。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2020-04-06 22:23:33)《改行有》

22.  ビューティフル・デイ 暴力的で病的な雰囲気ながら、美しく詩的なシーンもあるし、最後はなんだかんだハッピーエンド。良いところはたくさんあるのだが、映画全体に漂う、主人公の不安定な精神を表現したような病的な雰囲気が、あまり心地よくはなかったため、7点評価とする。ただこの雰囲気を高く評価する人が、少なからずいることは理解できる。カンヌで高評を得たのも、本作の病的かつアート的な部分が評価されたからではないだろうか。 タクシードライバーと比較する人もいるようだが、個人的にはタクシードライバーは病的でハードな部分とメロウな部分(バーナード・ハーマンによる、ジャズ調の優しいスコア)が上手く調和していて、どこか心地のよい物語になっていたのだが、本作はメロウな部分が少ないため、アートで病的、そうしたハードな部分が際立ってしまったという印象がある。したがって、完成度についても、タクシードライバーよりは下だろうと評価する(じゃあどうすればよかったんだ?といわれるとなかなか難しいのだが)。 ちなみに観賞していて、なんかインディーズのオルタナ系音楽の香りがするなぁと思っていたら、案の定、音楽はジョニー・グリーンウッドが担当していた。そりゃ音楽も尖った感じになるわな。[レーザーディスク(字幕)] 7点(2020-04-04 14:01:58)《改行有》

23.  トレーニング デイ 《ネタバレ》 そもそも一日に事件を詰め込み過ぎ(笑)。どんだけハードワークやねん、と心の中でツッコミながら映画を観ていた。 本作はどこかリアリティがあるようでリアリティがない。警察上層部の絵に描いたような腐敗ぶりもそうだし、どういうわけかロシアンマフィアといざこざを起こしているアロンゾといい、ちょいちょい無茶な描写が入る。それに加えて元警官の売人襲撃や、メキシカンギャングとのいざこざまで発生する、しかもたった一日の中に。 個人的に本作は、マイケルマンのコラテラルと並ぶ、”一日の中にいろいろ詰め込み過ぎて、結局変てこな脚本になった映画”の代表例だ(そういえばコラテラルもLAが舞台だったな)。 デンゼルワシントンの演技は、これは凄いのだろうか?あまり良い演技ではないような…。そもそも彼は声が甲高いため、なんか怖さや迫力を感じなかった。イカれてるやつだとは思えたのだが。悪ぶってるけど凄い奴なんだろう→蓋を開けてみるとただのクズ野郎だった。この展開は意表を突いているのだが、あまりに映画的カタルシスがなくて、映画として面白くなかった。 あと映像の撮り方も個人的な好みではない。幻覚の時の映像処理や、時間経過を表す太陽の絵、(今の観点からするとかもしれないが、)ちょいちょい2000年代特有のダサさがある。というわけで、点数をつけるなら5.5点くらいかなと。四捨五入により6点にはしておくが。[レーザーディスク(字幕)] 6点(2020-04-04 13:12:53)《改行有》

24.  ミッドナイト・イン・パリ 当時の文学者や芸術家の描写はわりかし細かいのに、タイムスリップの手法はすさまじく雑なのが笑える。 ヘミングウェイ、フィッツジェラルド夫妻、ガートルード・スタインなど、いわゆるロストジェネレーションの文学に詳しかったり、ダダイズム以降のアートに詳しい人なら、いろいろクスクス笑える要素がたくさん盛り込まれているように思う(ヘミングウェイの面倒くさいマッチョな感じや、ダリのキテレツな雰囲気は、個人的にはツボだった)。笑いどころがわからないという方は、とりあえずヘミングウェイの初期作品や回想録を読んでみると、当時の世相やパリの雰囲気を掴むことができるので、そちらの読書をおすすめする。 世の中には知識があると格段に面白くなる映画が確かに存在するが、今作はまさにそれだと思われる。 あと主人公がマリオンコティヤールやレアセドゥといい感じになるなんて、なんてうらやましい。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-04 11:22:48)《改行有》

25.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 天才数学者アラン・チューリングの人生を、時間軸を交錯させながら巧みに描いた作品。 カンバーバッチの演技はさすがの一言。というか、カンバーバッチ自身、チューリング同様に名門パブリックスクール出身のエリートであるから、共通点がたくさんあって、演技がしやすかったのではないか。 主に3つの時間軸が交錯する脚本だが、筋の破綻もなく、有機的に機能しており、実にお見事な出来栄え。脚本、演技は素晴らしかったが、演出面はやや平凡か。特に戦闘機や軍艦が出る場面のCGはちょっとちゃち過ぎないか。パンチの効いた画面作りはあまりなかったような気がする。そういう意味では、満点評価はあげられないというのが本音のところだ。 映画全体を通して、当時のイギリス中・上流階級の様子がよく活写されていたと思う。オックスブリッジの閉鎖性、エリート人脈の中で蔓延する共産主義、同性愛…。余談だが、当時、諜報関連の仕事に従事する人間の多くはエリートの出身で、かつ他人には言えない秘密(共産主義シンパ、同性愛傾向)を抱えていたという。当局も半ば承知の上で、そういう人間を採用していたらしい(秘密を頑なに守ろうとするから利用しやすい、もしくは何かが起きたときに使い捨てがしやすいから)。結局のところ、チューリングも、当局にとっては利用しやすい人間の一人だったのかもしれない。 戦後、チューリングの貢献・功績は徹底的に隠匿され、彼自身は同性愛の告発、その後の投薬治療で心身を害し、遂には自ら命を絶ってしまった。 大変な功績のある人物に対して、当時の社会や国家がした仕打ちはあまりに冷淡だった。それと同時に、戦争や諜報というものがいかにシビアな世界であるのかを感じた。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-04 11:00:47)《改行有》

26.  ベイビー・ドライバー 《ネタバレ》 カーアクション×ミュージカル映画という、異色の組み合わせを実現した作品。冒頭のカーチェイスシーンがすさまじい完成度で、思わず引き込まれた。 選曲のセンスも素晴らしく、冒頭のジョンスペからのハーレムシャッフルの流れには興奮するしかなかった。 キャスト陣も豪華な顔触れ。主役二人は大変キュートだし、ケビン・スペイシーとジェイミー・フォックスはさすがの貫録で映画を盛り上げている。ジェイミー・フォックスがここまでわかりやすい悪役をやっているのはなかなか珍しく、面白い。 コメディ、アクション、音楽や映像、ほとんどすべての面で高いレベルにある作品だが、難点もある。クライマックスのチェイスシーン以降から、力を使い果たしたのか、最後のドタバタアクションは、いつものエドガーライト映画と変わりがない。せっかくカーアクション×ミュージカルという異色の切り口で映画を盛り上げてきたのだから、最後もスタイリッシュにそれで押し切ってしまえばよかったのにと思った。比較的良心的(?)な悪役であるバディが何度も登場して、ラスボスを務めるのはちょっとくどいような。 というわけで、後半までぐっと引き込まれていたが、クライマックスの難点により、7点評価で。でも引き込まれる要素もたくさんある、秀逸な作品だ。[インターネット(字幕)] 7点(2020-03-29 13:40:35)《改行有》

27.  女王陛下のお気に入り イギリス史を少し齧った者から見ると、なかなかどうして本作は、史実の取捨選択が巧みだと感じた。マールバラ侯爵夫人は確かに女王アンと極端に親密であったのは史実であり、同性愛関係についても、その真偽はともかくとして、同時代の人たちが書簡等で彼女たちの関係性を噂する程度には有名だった。アン女王の夫、王配ジョージの存在がまるまるオミットされているのは、彼は政治的野心が皆無で、作中の設定年代ですでに彼が晩年にさしかかっていたため、女同士の政治劇・権力闘争を主題とする本作においては、省略しても構わないという判断があったのだろう。他にも史実との相違を挙げればきりがないが、本作は極端な違和感を抱かせない程度で、史実に緩やかに基づき、女たちの政治的コンゲームを描くことができていたのではないだろうか。 コメディではあるが、ところどころグロテスクで底意地の悪い演出が盛り込まれる、非常に癖がある作風のランティモス監督。本作は英米資本が入っているために、グロテスク要素は抑え気味だときく。確かにぞっとする演出は多いが、ほどほどに手加減が効いていたように思う。 しかし本作の白眉は、女優三人の演技合戦だろう。まさに三位一体となって、映画を盛り上げている(ただし観ていてどんよりとするような方向性で。なんて意地の悪い映画だ笑)。三人の中でオリヴィア・コールマンがオスカーを獲得したが、個人的には三人の協働でオスカーをもぎ取ったようにも思う。エマ・ストーンはアメリカ出身だが、けっこうイギリス英語も似合うと感じた。キャストがイギリス人ばかりで、エマ・ストーンだけアメリカ出身。これは物語登場時におけるアビゲイルの異質感、ある意味でのエイリアンであることを強調するキャスティングだったのだろうか。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-02-05 19:13:46)《改行有》

28.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド タランティーノ作品にしては珍しく、レオ様とブラピの2大スターを擁していながらも、とても静かで比較的穏やかな(?)映画であった。 タランティーノが子供のころに見ていたハリウッドを懐かしむような映画に仕上がっていて、映画通を自称する人々にはウケがいいのは間違いないだろう。しかし現代の人が見たときに、ある程度知識が必要な映画でもあると思う。シャロンテート、マンソンファミリー、ヒッピー文化、スパゲッティウエスタン…これらの背景の解説が必要最低限にとどめられているため、知っていればクスっと笑える場面や運命の皮肉を感じる場面も、何も知らない人はスルーしてしまうか理解できないまま、ある意味起伏の少ない非常に静かな物語を追いかけることになる。人によっては何が面白いのかわからないという人が出てくるのも、仕方がないことだろう。自分も何も知らない状態では、この映画に高めの点数をつけられたかどうか怪しいものだ。とはいえ、上記の背景を理解していると、確実にクスっと笑える場面が増えるだろうと思う。 個人的にはもう少し主役二人がアクション的な意味で大暴れしてもよかったのではないか。タランティーノはアクションを追求する監督ではないので無理な話だろうが、たとえばブルースリーとのシーンは、もっとリーをボコボコにしてもよかったんじゃなかろうか(笑)。いつも通りサスペンスを煽るシーンの緊張感、緊迫感は素晴らしい出来であり、お決まりのように出てくるスタンドオフシーンにも興奮したのだが、その上でさらにアクションシーンを追加すれば、映画的にはより良くなった気がする。 しかしそれにしても、やはりブラピはどっかイカれた役をやらせると、めちゃくちゃ光る役者さんなのだと再確認。ヒッピーやブルースリーをボッコボコにするシーンは容赦なさ過ぎて思わず笑ってしまった。[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-12-19 22:10:46)《改行有》

29.  ザ・アウトロー(2018) 雑に本作を説明すれば、ヒートとGTA5をベースにして、最後はユージュアルサスペクツ風味を加えた映画だった(笑) 冒頭からとにかくヒートとGTA5へのオマージュがだだ漏れで笑う。ただオマージュがあまりにも強過ぎるせいで、独自性をあまり感じることができない映画になっているのは否めないだろう。独自性を出す意味で最後に盛り込んだどんでん返しも、ユージュアルサスペクツ感が強いせいで、新鮮味を感じることはなかった。名作へオマージュを捧げる、それによってその映画も名作になるわけではないというのを実証したような映画だった。 独自性のなさに加えて、キャスティングも難点だろう。おそらく予算の関係であまり有名でない俳優たちを選んでいるわけだが、どうも魅力に乏しい。悪い連中だが何とか危機を切り抜けてほしい、捕まらないで逃げ切ってほしいと客に思わせるような演技は誰もできていなかったように思う。後半のどんでん返しのために、強盗チームの魅力を意図的に乏しくした可能性はあるにしても、しかしどうも物語にのめり込むことができなかった。細かいところでいえば、家族のストーリーが消化不良なところや、全体的にどうもB級映画臭というか日本で言うVシネ感が強い点も難点か。ヒートのようなガンアクションと最後のどんでん返しに全精力を注ぎこみ過ぎて、シネマトグラフィや演技がスカスカになっているような気がしないでもない(笑) まあヒートやGTA5への愛は確かに伝わったので、それに免じて6点とする(笑)[インターネット(字幕)] 6点(2019-12-19 21:38:18)《改行有》

30.  マイ・インターン デニーロの器用な役者ぶりを再確認できた映画。ギャングや犯罪者役で見せる鋭い視線は封印して、笑顔が素敵な老紳士になりきっている。さすが名優といったところだが、肝心の映画そのものは非常に微妙な完成度だった。登場人物みんなありきたりというか、デニーロの役を含めて誰にも深みやリアリティを感じることができなかった。脚本も非常にぬるい。シビアな展開や毒のある要素がほとんどないため、気楽に観れるが、その一方で映画のテーマや訴えかけたいことが陳腐化している。もう少し重たい展開を盛り込んで、リアリティを高める工夫をしていたら点数を上げたかもしれない。[ブルーレイ(字幕)] 6点(2019-11-16 16:41:31)

31.  ファントム・オブ・パラダイス 《ネタバレ》 まさにカルトな一本。久しぶりにはっちゃけた映画を観た、という感じだった。 とにかくカメラが動く動く!主観、俯瞰、画面分割、俯瞰からの回転するカメラ。デパルマらしさが全開になったシネマトグラフィにわくわくした。この胸躍るわくわく感こそ、映画を観る醍醐味だ。制作年代や予算の関係上、チープな部分も散見されるが、そんな難点を吹き飛ばすくらいに映画そのもののテンションがとにかく高い。でも意外に本作はオペラ座の怪人やファウスト、ドリアングレイの肖像といった古典文学を下敷きにしているためか、物語は荒唐無稽だが寓意性や奥行きを感じる事ができる(ファウストやオペラ座のオマージュがあからさまな場面があり、無茶な展開でも意外に許せてしまうところがある)。劇半も見事な出来上がり具合。カーペンターズへの楽曲提供で有名なポール・ウィリアムズが奇怪な悪役スワンを演じているのも、何ともおかしい。 …ちなみに、あのシャワー室で脅迫する場面、あれはどう考えてもサイコのオマージュだよな。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-08-13 12:05:39)《改行有》

32.  サイダーハウス・ルール 《ネタバレ》 ケイン御大の演技を堪能したくて観た一作。ドア越しに涙する老医師の姿に、胸を打たれた。…確かに胸を打たれたのだが、他の部分が色々と問題多過ぎるという実に困った作品(笑)。経歴詐称、無免許での医療行為、不倫、近親相姦、殺人。映画はわりかし青春・感動ドラマ的なノリで進むのだが、そのくせ映画のテーマだけ切り取ろうとすると不道徳極まりない単語ばかりが並んでしまう。実際のところ映画は感動的なドラマとして何とかまとまっているが、上記のような暗い題材を作品が内包しているせいか、感動的だがどこか後味が悪い作品なのだ。 映像も演技も満足できるし、物語も悪くはないのだが、どこか好きになれないという意見が多いのも頷ける。正直私も本作をあまり好きにはなれなかった。もちろん、クオリティの高さは評価して7点をつけるのだが。 個人的にどこが好きになれなかったかというと、主には主人公の演技や描写だろうか。トビーマグワイアの、シリアスな場面でなぜか不用意にニヤつく演技に私は終始イライラしていた。だいたい真面目に悩んでいる人を前にしてあのニヤついた顔を浮かべるのはいかがなものか。たとえそれがあらかじめ原作で設定されている主人公の癖だったとしても、生理的に受け付けなかった。あと、周囲の人物たちがみな何かしらの業を背負うような物語展開に対して、主人公だけやけに幸福で穏やかなエンディングを迎えるのも、物語のバランスが取れていないと思った。老医師は薬品の過剰摂取が原因で死に、人妻の場合はあたかも不倫の代償であるかのように夫が下半身不随となる、黒人の親子は娘が親を殺すという形で破局する、主人公は無免許だが老医師の心配りで医師免許を得て、孤児院に舞い戻る(そしておそらくは自分を慕ってくれていた娘とくっつくのか?)。これだとさすがにバランス悪過ぎるだろう(笑)。そういう意味で後味が悪い。ケイン御大の名演技と若いシャーリーズ姐さんに幻惑されて高評価を与えそうになるが、よくよく見れば問題作である。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2019-08-07 15:12:55)《改行有》

33.  ウインド・リバー 《ネタバレ》 冒頭、”事実に触発されたストーリー”とは何なのかと思っていたが、最後まで見るとストンと腹に落ちた。 アメリカの中でも、へき地の中のへき地で起こる事件。 映画が描くストーリーは非常にシンプル。殺人事件の謎は回想で明らかにされる。 社会性に富んだストーリーだが、物語的には非常にスケールの小さい話であるため、点数的には7点くらいだろう。 不満を言えばジェレミー・レナーがかっこよすぎるのがなんだかあまり腑に落ちない。いわばよくある心に傷を抱えたハードボイルドなキャラクターで、それ以上のオリジナリティはないキャラだ。ボーダーラインのときにも思ったが、この脚本家は非常に手堅い作品を作るが、逆に突出した部分がないため、それ以上の感想や評価を与えることができない。本作も手堅くまとまってはいるし、社会性も感じることはできたが、圧倒されるような感覚は得られなかった。[DVD(字幕)] 7点(2019-08-01 12:14:19)《改行有》

34.  メメント ノーラン監督のブレイクスルーとなった作品で、何度か観返してしまう作品である。 時系列の分解、時間の逆進といったノーラン監督のエッセンスが詰め込まれた作品であると今ならそう評価できるかもしれない。 ただ後のノーラン作品にみられるようなヒューマニティは本作では皆無。もちろん予算の関係で、IMAXの映像特性を活かしたシネマトグラフィーや重低音を効かせたBGMといった特徴も本作には存在しない。終始沈鬱で不穏なノワールが展開される。基本的には時系列ネタ一本で勝負するスタイルの作品であるため、点数的には7点くらいが妥当ではないだろうか。ダンケルクやインターステラーのように人間性に訴えかける部分が少ないため、余韻があまりないのも弱点か。 正直に告白すると、初めて本作を観たときは、面白いとは思いつつも、なんか奇を衒った印象の作品だなあと思っていた。いわゆる面白いし評価はするけれども、決して好きなタイプの作品ではない、というのが本作だ。ノーラン監督についてもこのころは、暗いノワールばかりを作る、気取った印象のイヤな監督でしかなかった。しかし、本作の成功をきっかけに、ノーラン監督は色々と成長をしていく。成長の過程で人間性を全開にした作品も手掛けるようになった。ちなみに私はノーラン監督のクールさの中にある生真面目で熱い人間性が大好きだ。久しぶりに本作メメントを観返すと、作品そのものの評価はあまり変わっていないが、監督に対する印象はまったく変わったことに気がつく。今や映画界を牽引する巨匠の一人だが、このころはエッジの効いたとんがった作品を作っていたのだ。[ブルーレイ(邦画)] 7点(2019-07-31 17:41:12)《改行有》

35.  ゴッドファーザー PART Ⅲ 《ネタバレ》 そんな酷評されるほど悪い映画ではないような…。オペラに被せる形で進行するクライマックスは、前の二作と同じくらいに見応えがあり、シリーズ最終作としての役割をきっちりと果たした作品だと思う。 前二作と比較しての弱点はやはりキャスティングだろうか。デュバル演ずるトムヘイゲンがいないのは問題だろう。トムが毎回粛清される相手と交わす空恐ろしくてほろ苦い会話シーンが大好きな私としては、本作でもぜひそれを盛り込んでほしかったのだが、それは叶わなかった。また、アンディガルシアも若きパチーノやデニーロと比較して確かに演技力不足だったと思う(レジェンド級の二人と比較されるのは酷な話だろうが)。パチーノがパート1で見せた衝撃的な目の色の変化や、パート2におけるデニーロの、マーロン・ブランドに寄せつつもカリスマを全身から放出しているような演技に較べ、彼の演技はそういう領域には達していなかったような気がする(かつてのドンたちには遠く及ばない、それがヴィンセントのキャラクターなのかもしれないが)。 ヴァチカンの醜聞を取り込んだストーリーは今から見ても興味深く、また将来に渡っても議論される余地のある脚本だとは思うが、キャラクターバランスを欠いたところが本作の弱みだろう。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-06-12 14:27:55)《改行有》

36.  大脱走 《ネタバレ》 脱走ものの代名詞となった名作。第二次大戦を扱った異色の戦争映画であるとも評価することが可能だろう。私の親友が本作を非常に気に入っており、その友人と一緒に何度も本作を鑑賞したのが、いまではいい思い出だ。現在の観点からすると物語のテンポがゆったりとしており、もう少しスピーディな流れになれば満点評価をつけられたかもしれない。とはいえ、捕虜たちの逃避行に手に汗を握ってしまうくらいには、本作を楽しむことができた。マックイーンのバイクでの逃走シーンは本当に鳥肌もので、鉄条網をなんとしても潜り抜け、国境の向こう側へ這っていこうとするそのタフで不屈の姿に痺れた。 余談にはなるが、私も初めて本作を観たときには、戦時下の収容施設にしては随分と快適そうな施設だと思い、違和感を覚えて本作の原作本を読んだことがある。すると原作、つまり史実でも、(少なくとも本作の舞台となった収容所に限っての話だが)戦時捕虜たちは国際条約に従って丁重に扱われていたとのことである。残酷な話だが、国の為に戦い捕虜になった戦士と、生きる価値のない存在とされたユダヤ人とでは、その扱いに雲泥の差があったわけだ。映画ではその史実を補強するように、ナチスへの反抗心を隠さない、高潔かつ軍人気質な収容所長が配されている(だから同じ軍人である捕虜たちに対して寛容かつ同情的なのである)。つまり映画は原作に忠実、かつ、かなり史実に寄り添って作られているのだ。いまからすると歴史の勉強のきっかけにもなる映画といえるだろう。[映画館(字幕)] 8点(2019-06-12 14:02:41)(良:2票) 《改行有》

37.  ターミネーター 久しぶりに鑑賞。2の印象が強すぎるせいか、1の内容は殆ど忘れてしまっていた。 改めて鑑賞すると、当時本作がB級映画程度の低予算で作られたというのが嘘のように思える素晴らしい出来上がりで驚きを禁じ得ない。 低予算だろうが何だろうが、名作を作れるのはさすが巨匠といったところか。 アクションシーンのスピーディな展開や演出、サスペンスの盛り上げ方、ここぞという場面でちょいちょい入るスローモーションは、センス抜群。 今から見ると未来のシーンやシュワちゃんが完全に機械になったシーン以降は、ちょっと時代を感じる場面もあるが、背景を暗く落として、映像面の拙さを上手く誤魔化しているあたりも、制作側の工夫や努力が感じられて巧みだなと思った印象。 いやー名作。でも本作を上回る2があるので、点数的には9点とする。[インターネット(字幕)] 9点(2019-04-16 09:05:23)《改行有》

38.  ファースト・マン 《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。セッションの監督ということもあり、少し身構えて臨んだが、想像していた以上に手堅い映画だった。 インターステラーに影響を受けたと思われる、CGになるべく頼らないフィルムの映像は、手ブレが激しい場面も多いが、フィルム独特のざらつきも相俟って1960年代のアナログな雰囲気を上手く作れていたと思う。劇中に登場する飛行機や宇宙船の、現代からすると極めてチープで古めかしい計器が衝撃で激しく唸るシーンや暗く狭い操縦室に閉じこめられるシーンの恐怖感は素晴らしかった。IMAXだと手ブレが激しい場面も逆に臨場感があって、そこまで悪印象はなかった。ボーンシリーズ等で手ブレ映像に慣れていれば、本作のそれも特に問題ないとは思う。ダンケルクに続く体感型の映画であると個人的には思っていて、ロケット飛行シーンなどは大画面・大音響のIMAX環境で鑑賞するといいと思う。 物語は淡々としているが、それでいてツボを押さえた造りだった。アポロに乗り込む場面の緊張感と高揚感は素晴らしかったし、クライマックスの月面での涙や奥さんとの再会シーンも、多くを語らず、役者の目と表情で語らせる演出は非常に好みだ。言葉はなくとも娘や奥さんへの愛情が伝わってくる。 華やかな歴史と思われがちな宇宙開発競争や月面着陸だが、本作は非常にシビアな目線で描いている。莫大な予算を注ぎ込みながら、犠牲を出しながらも、国家が宇宙開発をを続けるのには、東西冷戦でのソ連側への対抗意識が背景にあった。60年代は東西冷戦が最も先鋭化した時代でもあり、宇宙開発でソ連の後塵を拝するばかりで、何としても宇宙開発競争でソ連よりも先に偉業を打ち立てようと、轟々たる非難もなぎ倒して突き進んでいくアメリカの狂気を本作から感じることができた。主人公ニールも幼い娘の死や同僚の死によって喪失感を抱えており、その喪失感を埋め合わせようと、危険な任務にのめり込んでいく。ニールの狂気とアメリカの狂気がリンクするように映画が作られていて、興味深かった。そして辿り着いた、寂しく侘しい月面で、ニールは亡くなった娘に会えたのだろうか。もしくは娘への愛を月に置いていくことができたのだろうか。解釈は観客に任されているが、こういうハードボイルドな演出が目立つ秀作だった。[映画館(字幕)] 8点(2019-02-14 13:26:11)《改行有》

39.  タクシードライバー(1976) 《ネタバレ》 この映画を見た男の子の二人に一人くらいは、映画を観終わったあとに腕立て伏せを始めてるのではないだろうか?(笑) 個人的に本作は、ロッキーシリーズやファイトクラブに並ぶ、鑑賞した男子どもを容赦なく筋トレに誘うマッチョポルノ映画だと私は見做している。かくいう私も中学生くらいの頃、本作を初鑑賞してすぐ腕立て伏せに取り組んだ記憶がある。 …まあ冗談はそれぐらいにしておいて、本作は都会の頽廃や若者の鬱屈、狂気を描いた作品だが、意外と鑑賞後の後味は爽やかであることに気がつく。悲劇的な結末が多いアメリカンニューシネマの系譜に位置づけられる本作だが、その結末はハッピーエンドとも解釈できるものになっていて、これが先ほど述べた後味の良さに繋がっている。さらに、狂気や憂鬱をテーマとする作品のわりには、作中で常に流れるBGMは非常に甘美なものとなっている。総じて本作は作品のハードな部分とメロウな部分が絶妙に調和しており、一つの作品の中で長所短所が極端に現れやすいスコセッシの他の作品と比較しても、映画としての完成度が高いといえる。パルムドール受賞も納得の出来栄えだ。これは文句なしで10点![ブルーレイ(字幕)] 10点(2019-02-10 16:07:34)《改行有》

40.  ボヘミアン・ラプソディ 《ネタバレ》 IMAXにて遅ればせながらの鑑賞。世間での高評価に水を差すようで申し訳ないが、結構な粗が目立つ作品だった。 この内容で7点以上の評価は付けられないと思った。 本作をよく注意してみてみると、クイーンという要素を外してしまえば、本作の物語の骨子は驚くほどありきたりなものだ。とある集団の栄光と挫折、そこからの復活。サイドストーリーには運命の恋人との出会いと別れ、家族との確執と和解まで、実にテンプレート的に盛り込まれている。映画の脚本としては、今からすると非常に陳腐な内容とも言え、そこには新鮮味もなければ深みもない。さらに言えば、クイーンファンなら即座にわかると思うが、本作では史実の順序が入れ替えられていたり、或いは誤解を招きかねない史実の省略を含んでおり、もちろん本作はドキュメンタリーでなく映画であるから仕方がないのだが、しかしそれでも、史実に対しての誠実さをあまり感じることができない脚本となっている。 演出面に目を向けても、フレディ以外の登場人物の描き方が雑。Love of My Lifeというわりにあまりにあっさり付き合い、あまりにあっさり別れるメアリーとの関係、バンドの他のメンバーのあまりに一面的な描写には、とにかく雑な演出という印象しか覚えなかった。クイーンは何もフレディ一人に依存していたわけではなく、他のメンバーの演奏能力の高さや各自が様々なジャンルの音楽を咀嚼してヒット曲を制作できる能力もあって、世界的にブレイクしたバンドであった。たとえば本作ではブライアンメイのレッドスペシャルや、ジョンやロジャーがいかに音楽的な成長を遂げて、ヒット曲を制作できるようになったのかといった部分が見事にオミットされている。結果的にフレディのみがフォーカスされて、他の人物の描写が粗雑になってしまったのでは、と思う。 とはいえ本作はあくまで映画である。限られた時間の中で史実の完全再現など出来るわけがなく、誇張や省略があってもいいと私も思う。ただし、史実の誇張や省略を含んだ映画が、それでも人の心を撃ち抜くためには、何かずば抜けた、それこそ狂気に近い域の演出や脚本や演技が必要だと私は思う。ただ残念ながら、本作でそうした部分を見つけ出すことが私はできなかった。史実への偏執的な拘りよりも映画的ダイナミズムを優先させた脚本はあまり高評価できず、演出も上述したように雑、CG合成だとまるわかりのライブエイドの映像も興ざめだし、ラミマレックの熱演は素晴らしかったものの、私が驚嘆する域までは達していなかった。フレディの振り付けは似ていても、歌唱部分は過去の音源の流用であり、これがもし彼自身で歌唱まで行っていればそれこそ驚嘆するしかなかったのだが…。 長々と書いたが、本作をまとめると映画的ダイナミクスを優先した、エンターテイメント要素の強い伝記映画ではあるものの、一方で不正確な史実の描き方や雑な演出も目立つ作品でもある。また、そうした難点をぶち破り、観客をねじ伏せるほどの狂気的な拘りもない映画である。クイーンに初めて触れる人や音楽ファンでない人たちには大満足の作品かもしれないが、ある程度目の肥えた批評家からの評価が高くないのは、本作のそうした弱点を見抜かれたからではないだろうか。[映画館(字幕)] 6点(2019-02-02 10:56:58)(良:2票) 《改行有》

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