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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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21.  メタリカ:真実の瞬間 《ネタバレ》 今となっては世界で最も成功を収めたメタルバンドであるメタリカが、迷盤セイントアンガーを発表した時期のドキュメンタリー作品。 私がメタリカを知ったのがちょうどこのセイントアンガー発表時のころで、当時を思い出すと、この映像作品が発表されずとも、バンド内のゴタゴタが多くのメディアを通じて伝えられており、様々な問題がバンドに鬱積していたのだろうなと傍目にもわかっていた。改めてこの映像を見ると、バンドメンバーとの確執だけでなく、健康問題や、巨大ビジネス組織に変貌したバンドそのものの停滞や凋落が複雑に絡まる、厄介な問題にメンバーが極限まで疲弊していたのだとわかる。そしてメンバーたちがそうした複雑な問題を処理し切れず、もがき苦しむ姿が延々と映し出され、大変痛ましく思った。 で、映像作品として本作は面白いのか?という点であるが、これが痛ましい内容にも関わらず大変面白い。 スラッシュメタルの覇者と呼ばれ、頂点を極めたバンドが、いつしかメンバーの意志から離れて巨大な偶像、巨大なビジネス組織、まさにある種の怪物に変貌してしまい、中年にさしかかったメンバーたちは若いころのように自分たちのやりたい音楽をやりたい放題やるということが許されず、軋轢や確執に追い込まれていく。胡散臭いセラピストに大金を払う場面はその金銭感覚に唖然とするしかない。だがこれは、メンバー自身も成功を収める中でいつしか怪物になってしまったという象徴的な場面でもある。レコーディングを投げ捨てて引きこもったり、仲間を口汚く罵倒する場面は、子どもの醜い喧嘩を見ている気分になる。そうしたどん底にメンバーたちが追い込まれてから、復活劇は始まる。メンバーたちは互いの絆を確認し、新メンバーがバンドの空気を一気に変える。痛々しい場面の連続だが、最後にようやくメンバーたちに覇気と笑顔が戻ってくる。もう一度、シーンに踏み出そうとするメンバーたちの姿を描いて、映画は終わる。そう、本作は、決して監督が意図したわけではないが、バンドがどん底に追い込まれてからの復活劇、という物語ができているため、映像作品としてみても抜群に面白いわけである。徐々に徐々にバンドが活気を取り戻していく瞬間を見ると、本当に胸がほっとする。 最後にメタリカの大ファンとしては、新メンバーであるトゥルージロの加入はバンドにとって僥倖だったと心から思う。セイントアンガーそのものは賛否激しい作品にはなったが、ここでのバンドの悪戦苦闘が、のちのバンドの順調な経過や良好な人間関係、デスマグネティックの成功などに繋がると思うと、実に感慨深い。[DVD(字幕)] 9点(2019-01-21 21:29:12)《改行有》

22.  ビフォア・ミッドナイト 《ネタバレ》 さらにまた9年が経過。何とあの二人は、夫婦になって、双子の子どもまで授かっていた。 予告編を見た瞬間から、思わず目元が緩んでしまう。 だが本作は甘い展開がほとんどなく、苦み全開。中年夫婦の危機がこれでもかというほど執拗に描かれる。 まさかセリーヌの垂れた乳を見ることになるとは…、そしてそれを見てもまったく興奮しない自分がいる(笑) 二人が繰り広げる大口論と、その前後の所作のやけに生々しくて嫌なリアリティに惹きつけられた。 散々口論して疲れ果て、あの二人の間にも愛はなくなったのか? 子育て、仕事という生活を前にしては、輝いた記憶も愛も擦り減ってしまうのかと思いきや、最後はどうにかこうにかあの頃の記憶を復活させて、二人は仲直りする。 タイムマシンのくだりを最初きいているときのセリーヌの白けた表情のリアリティもまた良い。最後の最後でジェシーを許す表情も。 また9年後の彼らが見たい。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2019-01-08 13:10:43)《改行有》

23.  ビフォア・サンセット 《ネタバレ》 まあ、あのタイミングで、飛行機に乗り遅れるよと言われても、男の性ゆえ残ってしまうだろう(笑) こういうシチュエーションで世の不倫は始まるのか…と思ったり、思わなかったり。まあでも、男と女だから、そういうことになっても仕方がないか。 あんなにピュアだった学生の二人も、9年経てばこう変わるのか、と鑑賞して思う。二人の顔の皺が印象的。 しかしそれでも鑑賞していると、時間が経った二人にまた会えたという嬉しさが込み上げてきた。 こういう映画ってなかなかないんだよな。[DVD(字幕)] 9点(2019-01-08 12:59:25)《改行有》

24.  恋人までの距離(ディスタンス) 恋愛映画の中でも特に好きな一本。とはいっても、恋愛映画の中では結構な変わり種で、ほぼ全編主役二人による会話劇。 でもこの会話がいい。ウィーンの街並みを背景にすれば、どんな会話もお洒落に、かつ哲学的に見えてしまうという奇跡が発生してしまう。 本作のこのちょっと気取ったような会話劇を好意的に見れるかどうかが、本作に対する評価の分かれ目になるのだろう。 どうでもいい余談だが、高校生くらいのころに本作を見て、一人で海外旅行してみるっていいなとか、もしかすると、万に一つの確率かもしれないけど、旅先で素敵な女の子との出会いがあるかもなんてアホな期待を抱いたものだ。それで大学生になって、本当にこの映画みたいに、一人で海外旅行に行く事になった。英語はある程度喋れるくらいに勉強した。選んだ街はウィーンではなくロンドンだった。で、素敵な女の子との出会いはあったのか? 残念ながら女の子とは出会わなかったが、宿泊先で中国やポルトガルやオーストラリアから来たあんちゃんたちと出会い、彼らと映画の話で超盛り上がった。そのころ公開していたダークナイトのジョーカーについて、あれはポストモダン的な悪役だ!とか、アナーキー/パンクの文脈で捉えるべき!だとか、そんな馬鹿な会話を夜通ししていたような…。女の子には出会わなかったが、私の拙い英語に付き合ってくれて、お馬鹿な議論もしてくれる素敵なあんちゃんたちとの出会いはあったわけだ。もちろんそれは一期一会。彼らとはその後二度と会っていないし、彼らがいまどうしているのかもわからない。でも一生忘れぬ思い出だ。 外国でいきなり女の子と出会って、一日中会話して、恋に落ちて、そして別れる。 そんな本作を荒唐無稽だとか、或いは非現実的だと斜に見ているそこのあなた。 海外に一人で飛び込んでみたら、意外にこういう展開があなたを待ち受けているかもしれませんぜ。[DVD(字幕)] 9点(2019-01-03 13:32:14)(良:1票) 《改行有》

25.  チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 アンジェリーナ・ジョリーの出演作では、もしかするとこれが一番好きな作品かもしれない。 荒唐無稽な娯楽作への出演も多い彼女だが、今作では終始重厚な演技を披露している。 警察の杜撰な捜査や非人道的な扱いなど、ぞっとする展開が多い本作だが、 殺人鬼にこき使われる少年の描き方が大変秀逸で、印象的だった。 砂埃舞う寂寥とした荒野に立ち、人骨が埋まった地面を掘り返すよう刑事たちに命ぜられる少年。 人骨が見つかり、刑事から制止されてもなお、とりつかれたように地面を掘り返す少年の姿を見て、いたたまれない気持ちになった。 "All Right"と刑事は少年の肩に手をやって宥めるが、そんなこと言う前に少年を抱き止めてやれよと思った。 罪悪感に追い詰められて必死に土を掘り返す少年、誰からも守られることなく、生き延びるために殺人鬼の悪行に加担せざるを得なかった少年を、 大人は抱きしめてやらないでどうするというのだ。 監督がどこまで意図したかは不明だが、このシーンは展開の非情さと対照的に映像が非常に浮遊的で、映画的な美がある。 あくまでサイドストーリーなのだが、個人的には最も印象的な場面で、この場面を描けただけで9点に値する。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2019-01-03 12:47:52)(良:1票) 《改行有》

26.  セブン 昔から散々怖い映画だと言われ、ビクビクしながら観た作品。 で観てみると、意外にハードボイルドで、けっこうちゃんと刑事ものとしての骨格がある作品だと感じた。 アパートでのチェイスシーンなんて、普通にアクション映画然としていて、意外にも思えた。 ビジュアル面はかなり渋いながらもスタイリッシュで、公開から何年経っても古さを感じない。ブラッドピットの熱血ぶりとモーガンフリーマンのいぶし銀の組み合わせも、実に素晴らしい。 ラストの後味がなぁ…と思いつつも、それがあってこそ記憶に残る作品だとも思う。 都市の退廃、20世紀末に漂った厭世観・終末観・混沌ぶりを味わうにはもってこいの映画だ。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2018-11-23 13:01:25)《改行有》

27.  パルプ・フィクション くだらない会話劇を楽しみつつ、捻くれた時間構造も楽しみつつ、なんだかんだでブルース・ウィリスの日本刀かっけー!と大はしゃぎして鑑賞した。 あの話とこの話がここで繋がるのか!と腑に落ちたのはわりかし映画のかなり後半部分だったような気もする。 …ともかくも今となっては豪華なアンサンブルキャストによる最高にくだらなくて、最高に楽しめる映画だった。 1点減点したのは、物語にぐっと動きだすのが後半からで、実はユマ・サーマンのダンスシーンはけっこう退屈気味だったため。[DVD(字幕)] 9点(2018-08-13 10:12:03)《改行有》

28.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 物語=行って帰るだけ。 それだけなのに面白い。荒唐無稽も突き詰めてしまえばとんでもない作品に仕上がる事を証明した作品。[映画館(字幕)] 9点(2018-03-24 20:36:45)《改行有》

29.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 本作を初めて鑑賞した際の素直な感想を書けば、「これってまんまヒートじゃん!」というものでした。 街(特に夜景)の描写、犯罪シーンの雰囲気、善悪の奇妙な対話と共感。 バットマン映画にヒートの秀逸だった要素をこれでもかと盛り込んで、ジョーカーをとことん大暴れさせた映画に仕上げてきたなと思ったものです。 というわけでヒートが大好きな人間からすると、本作の評価は必然的に好意的になってしまう(笑) とはいえ、ジョーカーの新しい魅力を創造したのは紛れもなく本作及びノーラン監督の功績でしょう。 今でも覚えているのが、朝の情報番組で本作の予告編が流れた際、ジョーカーのあまりの怖さに女性アナウンサーたちがざわついていた事です(めざましテレビだったろうか)。 私も衝撃を受けました。ジャックニコルソン版のどこかコミカルなジョーカー像が一気に粉砕されましたから。 バットマン映画としても秀逸、犯罪映画としても秀逸な作品です。 ただ唯一のマイナス要素は、、、、すいませんマギー・ジレンホール、やっぱ美女扱いはちょっと違和感が・・・(大変失礼ですが)[ブルーレイ(字幕)] 9点(2018-01-08 10:27:28)(良:1票) 《改行有》

30.  キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 《ネタバレ》 ディカプリオとデニーロ共演の超大作という触れれて鑑賞。『アイリッシュマン』を上回る上映時間にはなったが、同作で不満だった部分をおおかた改善した快作であった。 3時間半という長尺だが、要所要所で飽きのこない展開を盛り込んでおり、淡々と乾いた暴力描写に終始しがちなスコセッシ監督にしては珍しく、派手な爆発シーン、エピローグではラジオドラマ風の演出を入れ込んで捻りを効かせるなど、観客の注意を惹きつける工夫が全編に渡ってなされていたと言える。結果的には、『アイリッシュマン』で感じた、あまりにも淡々とした物語展開よりもずっと劇的な展開となっていた。これが本作に8点をつけた理由である。 とはいえ残念な部分がないわけではなく、映画の予告であったようなオセージコミュニティ内で起きた連続殺人の謎を追うマーダーミステリの要素は薄く、むしろその連続殺人事件の犯人側、しかも従犯側の視点で物語が進むので、次々と謎を解き明かしていくという快感は得られない。普通のミステリならば、どういう経緯で犯人たちが犯罪に突き進んだのかを解き明かしていくのだろうが、本作ではその点は最初から明示されている。その理由は金のため。犯人たちはあまりにも俗物的な理由で犯罪に手を染めていたのである。1920年代という時代のせいもあるだろうが、あまりにも行き当たりばったりな理由や手段で犯人たちは犯罪を行うため、現代の犯罪ドラマに慣れた観客からすると、犯人たちの犯行理由は浅はかである一方、警察側の捜査の描写も、かなり手ぬるく見えてしまう。 つまるところ、本作は実話に忠実であるがゆえに、かつ、本作では視点を常に事件における従犯的存在に過ぎない主人公にフォーカスした結果、ミステリとしては快感が少ない仕上がりになってしまっているのだ。この点は本作の構造的な弱点であるかもしれない。ディカプリオ、デニーロ、そしてヒロインのグラッドストーンの演技合戦が素晴らしかっただけに、この点は惜しいといわざるをえない。[映画館(字幕)] 8点(2023-11-05 20:43:46)《改行有》

31.  オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分 《ネタバレ》 トム・ハーディの一人芝居で約90分間を突っ走る、ワンシチュエーション心理ドラマ。 ハーディの抜群の演技力に釘付けになると同時に、映画で使用されたBMWにとっては、最高のプロモーション映画になっている。 主人公は私生活の不運と仕事の不運が重なりあい、ロンドンへ向かう車中、さまざまな人物と電話で息が詰まるようなやり取りをせざるを得なくなる。主人公の自業自得といえばそれまでなのだが、主人公はそんな状況でも、なんとかけじめをつけよう、筋道を作ろうとあがくから、なおやるせなくなる。 (幻覚の)父親に語り掛けるシーン、狂気と愛憎が一緒くたになった声と演技はトム・ハーディの真骨頂であり、まさに彼の独壇場であった。またそのあと、息子との会話で涙を浮かべる表情、さながらジェットコースターのような、表情に落差をつける演技も素晴らしい。 決して明るくはないエンディングを主人公は迎えることになるが、 終盤での、同僚からの最後の言葉、息子からの言葉には、ほろりとさせられる。ほんの少しだけ希望があるような気がする。 お母さんには内緒で、一緒にサッカーの試合を見ようぜと声をかける息子、あんたはいい息子だし、いい大人になるよ。[DVD(字幕)] 8点(2022-10-30 10:44:21)《改行有》

32.  キャリー(1976) 大枠がホラー映画とはいえ、デパルマが普通に学校もの・青春映画を作っているというだけで、奇妙な感慨を覚えてしまう(笑) あのデパルマが学校や学生を扱う映画を撮るなんて…。 ただ独特の映像センスは、青春映画になっても遺憾なく発揮されており、いつも通りカメラが動きまくる。 スローモーションの使い方や盛り上げ方は、毎回感心してしまう。 とはいえ、時代を感じてしまう、チープな映像や演出が散見されるのも事実。 ちょっと最後の方はダレながら観ており、「点数的には6点くらいかな~」と思っていたが、 最後の最後、まさかのラストをかまされて、けっこう本気でビビッてしまった。 ラストの演出に8点評価で。[DVD(字幕)] 8点(2022-02-16 07:32:35)《改行有》

33.  スリー・ビルボード アメリカの田舎町を舞台にしたサスペンス。 冒頭に映し出された3枚の広告からどう話が展開していくのか、先が読めないため、グイグイ映画に引き込まれていった。 登場人物のほとんどが、善悪(というか美点と欠点)が混淆した存在として描かれていて、 非常に泥臭い人物造形となっており、これもアメリカの田舎町の雰囲気とマッチしていて、印象深かった。 惜しむべくは、これだけ秀逸な脚本なだけに、物語のオチの部分、 もう少し踏み込んで描くこともできたのではないか、という思いもある。 ある意味で、最後は着地点をぼやかして映画を終わらせたようにも見える。[DVD(字幕)] 8点(2022-02-16 07:13:00)《改行有》

34.  日の名残り 《ネタバレ》 古き良き英国を体現するかのような、静謐で重厚なトーンで構築された渋い味わいの作品。ジェームズアイヴォリーの巧みな演出と、アンソニーホプキンス、エマトンプソンの演技が光る。原作とは趣きを少し変えており、映画では主役2人の淡いロマンス、もとい名優2人による演技合戦がよりフォーカスされている。薄暗い部屋の中、2人が本を巡って触れ合うシーンは特に秀逸。結局キスシーンにはならなかったのだが、凡百のキスシーンよりも甘く切ない場面になっているのはどうしたわけだろう。これぞ演出の妙であり、演出の教科書に載ってもおかしくないくらい、印象的な場面だった。 映画は名優同士の演技合戦に比重を置いてあるせいか、原作で読者を騙す巧妙なトリックや、原作における(ミスケントンが関わらない)感動的なクライマックスについては、バッサリと削られている。ストーリーの妙や、物語のテーマをより深く味わいたければ、原作を読むことをお勧めする。[DVD(字幕)] 8点(2021-10-20 07:41:32)《改行有》

35.  ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー 職人気質な男たちとスタイリッシュな夜の映像を撮らせれば天下一品、マイケルマンの映画デビュー作。良くも悪くも監督のエッセンスが凝縮された一作。シンセサイザーを多用した、タンジェリンドリームによる80年代感全開の妖しいBGMも、意外と映像とマッチしている。 物語そのものは非常にシンプル。たとえるなら、『鬼平犯科帳』に出てくる本格派の盗人を主人公にしたような話。昼間はしがない勤め人、夜は凄腕の盗人。長い牢屋暮らしを経て、最後のお務めを果たした後は、足を洗って堅気に暮らしたい…。書き起こすと、そのまんま鬼平犯科帳にも流用できそうなプロットをしている。池波正太郎の世界観が好きな人は、きっとこの作品を好きになれるだろう。 プロットはシンプルながら、ディティールへの異様なこだわりが、作品に独自の色をつけている。金庫破りの手口は、実際に犯罪者たちが行っていた手口を再現したものだという。金庫破りを達成したあとのジェームズカーンの表情が特に印象に残る。この一連のシーンが映画のハイライトになっており、実はそれからあとの展開は蛇足のようなものだ。身辺整理とはいえ、妻を追い出したり、家や仕事場を爆破したりと、無茶な展開が多い(マン監督の悪いエッセンスが出ているのはここ)。 マイケルマンの原点ということで、少し甘めの8点評価で。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2021-07-14 07:46:32)《改行有》

36.  ジョジョ・ラビット 《ネタバレ》 ユーモアとシリアスを巧みに織り交ぜた、素敵な寓話的映画だった。子役たちのキュートな演技もさることながら、美人で肝っ玉なお母さんを演じたスカーレット・ヨハンソンの好演が光る。少年と母親との愛情あふれる、ユーモラスなやり取りを経た上での(だが一方で母親は息子のナチスへの熱狂ぶりを警戒しているというのがいい塩梅になっている)、後半の靴のシーンは大変衝撃的で、まさに肺腑を抉られるようだった。ぶら下がる母親の足に縋りながら、涙する少年の悲壮な表情は痛ましく、涙が出そうになった。 少年と年上の少女との交流も微笑ましい。感受性が強く、純粋ゆえに残酷でもある少年が、少女との交流でそれまでの偏見を捨て去っていく過程は印象的だ。特にゲシュタポが憎悪と偏見に溢れた少年の日記を朗読したときの、少年と少女の視線のやり取りが秀逸。ゲシュタポの醜悪な笑い声、かすかに涙ぐむ少女、少年の痛切なまなざし。少年はここにおいて、自分の行いがいかに少女を傷つけたのかを知ったはずだ。少女の身元が割れてしまうかもしれないという緊迫感ある場面だが、同時に少年の残酷な仕打ちが明らかになって、少年が反省と成長を見せるという、非常に高度な展開がここではなされている。 完成度の高い本作だが、ケチをつけるとしたら、主に二点。他の方も指摘されているが、BGMの使い方がややあざといところがある。I wanna hold your handのドイツ語ver、ラストのデイビッドボウイ(しかもベルリン三部作からの選曲)など、選曲があまりに安直過ぎるのはいかがなものか。また、重要なシーンや戦争の悲惨さを感じさせるシーンではお決まりのように映像がスローになり、マイナー調のバラードを流す演出も一本調子でどうかとは思う。ここも音楽の使い方があざといと感じた。 さらに違和感を感じたのが、ヒトラーの細かい描写だ。少年の妄想だから、どれだけ奇天烈でも荒唐無稽でもいいとは思うのだが、この時代のヒトラーは喫煙をしないはずだ(むしろ嫌煙家であり、周囲に禁煙を勧めていた)。本作は寓話的ストーリーなので、リアリティは二の次というのは理解できる。ただ、悲惨な時代を背景に、ナチスの蛮行を描いた作品であるからこそ、悪役を担う存在にも丁寧な考証に基づく描写があってもよかったのではないか。 全体的には伏線が非常に巧みに張られた映画で、ユーモラスな世界観に、過酷な時代情勢を盛り込み、伏線も素晴らしい、という傑作と呼ぶべき作品だった。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-07-06 10:46:59)《改行有》

37.  ヘルプ 心がつなぐストーリー 《ネタバレ》 60年代アメリカ南部の人種差別という重いテーマを、万人が楽しめるような手堅い脚本と演出で描いた作品。特に黒人のハウスメイドたちに対する差別に焦点が当てられており、女性たちが主役という点で、これまで人種差別をテーマにした映画とは異なる切り口の作品だと思った。 本作の素晴らしいところは、コメディとシリアスのバランスが絶妙なところだ。明るく笑える部分は多いが、完全にコメディに振り切れるわけでもなく、最後はややほろ苦いエンディングを迎える。作品の主題を考えれば、そして鑑賞した多くの人が差別について思いを巡らせることまで考えると、ある意味で差別の歴史を喜劇化しない、この苦いエンディングは妥当なものだろう。 減点要素としては、ジェシカ・チャステインのキャラクターと、ヒール的扱いをされる白人女性たちのキャラクターの掘り下げがやや足りないところか。チャステインのキャラは、この手の映画にありがちな、「おバカだけど良心的な存在」を地で行くものであり、正直意外性はなかった。あと、役者と役にミスマッチが起きていると気もする(それにしてもチャステインはよくこの役を引き受けたものだ。ブレイク前だったからだろうか)。ヒール役の女性たちについては、完全な悪役ではないのはもちろんわかっているし、悪人ではないと示唆する演出も盛り込まれていたが、特にヒリーの描き方については、もう少し彼女の複雑な人間性を提示した方が映画的にはよかったかもしれない(差別が個人の人格の問題だけでなく、社会構造的な問題でもあるというのを示唆する意味で)。 あと個人的に本作が凄いというか、ハリウッド映画が凄いと思ったのは、このような社会的なテーマをもつ作品にちゃんと予算をつけてあげて、上質のエンタメ作品として世に送り出す点だ。悲しいかな、日本だと、この手の作品はどうしてもこじんまりとしたものになっているだろう。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-05-10 16:47:50)(良:1票) 《改行有》

38.  恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ 《ネタバレ》 ミシェル・ファイファーがビジュアル的に向かうところ敵なしだった時期の作品。もうね、ほんと無敵の美しさ。 蓮っ葉でちょっとやさぐれた、けれど華々しい美しさをもつスージー・ダイヤモンドを好演。赤いドレスがとにかく似合っていて、かっこよくて美しいこと。 彼女に魅了された熱狂的なファンが多いのか、英語版wikipediaでは、スージー単独の記事まで出来ている。しかも映画本体よりも記事の内容が濃い(笑)。 人情喜劇調で物語を進め、最後もハッピーエンドで締めるのかと思いきや、ラストはほろ苦い展開で終わる(今後の明るい展開を予想させる描写、セリフを盛り込んでいるが)。これは題材でもあり、舞台装置の一つでもあるジャズを大きく意識したのだろうか。ポップスやロックと違い、一筋縄ではいかない、思いがけない展開を取るのは、確かにジャズという音楽だ。 80年代のちょっとくすんだアメリカの景色や、主人公たちがスパスパ煙草を美味そうに吸うシーンなど、いまではあまり見られなくなった光景が盛りだくさんの、渋くてちょっと大人向けな良作だった。 大人になってみると、主人公ジャックよりもお兄さんフランクの方が遥かにプロフェッショナルで立派な男だと感じてしまう。望まない仕事だろうが、仕事を受けたからには、きっちりとプロ意識をもって仕事に向かう姿は立派だ。ああだこうだ理由をつけて仕事をしないジャックがすさまじくダサい奴に見える(笑)あと、ジャックは誰に対しても素直に謝らない。これもダメ。迷惑をかけたり、傷つけた相手になぜsorryの一言も言えんのだ。そうやって不貞腐れているままなら、今後もきっと成功しないだろう。後半になるにつれて、主人公のダメさ加減がどんどん判明してくるのは、結構意外な展開だった。8点評価とするのは、彼が結局人間として成長したのか、あるいは改心したのかどうかを描かず、曖昧に映画が終わったからだ。ラストのあの感じだと、あまり彼の本質は変わってないんだろうな、とは思うが(笑)。 自分でもまったく予想していなかったのだが、大人としての仕事や人への向きあい方について、いろいろと教訓を与えてくれる映画だった。ジャックではなく、スージーやフランクのような大人になろうと思った(笑)[DVD(字幕)] 8点(2020-04-12 13:34:51)《改行有》

39.  ミッドナイト・イン・パリ 当時の文学者や芸術家の描写はわりかし細かいのに、タイムスリップの手法はすさまじく雑なのが笑える。 ヘミングウェイ、フィッツジェラルド夫妻、ガートルード・スタインなど、いわゆるロストジェネレーションの文学に詳しかったり、ダダイズム以降のアートに詳しい人なら、いろいろクスクス笑える要素がたくさん盛り込まれているように思う(ヘミングウェイの面倒くさいマッチョな感じや、ダリのキテレツな雰囲気は、個人的にはツボだった)。笑いどころがわからないという方は、とりあえずヘミングウェイの初期作品や回想録を読んでみると、当時の世相やパリの雰囲気を掴むことができるので、そちらの読書をおすすめする。 世の中には知識があると格段に面白くなる映画が確かに存在するが、今作はまさにそれだと思われる。 あと主人公がマリオンコティヤールやレアセドゥといい感じになるなんて、なんてうらやましい。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-04 11:22:48)《改行有》

40.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 天才数学者アラン・チューリングの人生を、時間軸を交錯させながら巧みに描いた作品。 カンバーバッチの演技はさすがの一言。というか、カンバーバッチ自身、チューリング同様に名門パブリックスクール出身のエリートであるから、共通点がたくさんあって、演技がしやすかったのではないか。 主に3つの時間軸が交錯する脚本だが、筋の破綻もなく、有機的に機能しており、実にお見事な出来栄え。脚本、演技は素晴らしかったが、演出面はやや平凡か。特に戦闘機や軍艦が出る場面のCGはちょっとちゃち過ぎないか。パンチの効いた画面作りはあまりなかったような気がする。そういう意味では、満点評価はあげられないというのが本音のところだ。 映画全体を通して、当時のイギリス中・上流階級の様子がよく活写されていたと思う。オックスブリッジの閉鎖性、エリート人脈の中で蔓延する共産主義、同性愛…。余談だが、当時、諜報関連の仕事に従事する人間の多くはエリートの出身で、かつ他人には言えない秘密(共産主義シンパ、同性愛傾向)を抱えていたという。当局も半ば承知の上で、そういう人間を採用していたらしい(秘密を頑なに守ろうとするから利用しやすい、もしくは何かが起きたときに使い捨てがしやすいから)。結局のところ、チューリングも、当局にとっては利用しやすい人間の一人だったのかもしれない。 戦後、チューリングの貢献・功績は徹底的に隠匿され、彼自身は同性愛の告発、その後の投薬治療で心身を害し、遂には自ら命を絶ってしまった。 大変な功績のある人物に対して、当時の社会や国家がした仕打ちはあまりに冷淡だった。それと同時に、戦争や諜報というものがいかにシビアな世界であるのかを感じた。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-04 11:00:47)《改行有》

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