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【製作国 : アメリカ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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41.  ファントム・オブ・パラダイス 《ネタバレ》 まさにカルトな一本。久しぶりにはっちゃけた映画を観た、という感じだった。 とにかくカメラが動く動く!主観、俯瞰、画面分割、俯瞰からの回転するカメラ。デパルマらしさが全開になったシネマトグラフィにわくわくした。この胸躍るわくわく感こそ、映画を観る醍醐味だ。制作年代や予算の関係上、チープな部分も散見されるが、そんな難点を吹き飛ばすくらいに映画そのもののテンションがとにかく高い。でも意外に本作はオペラ座の怪人やファウスト、ドリアングレイの肖像といった古典文学を下敷きにしているためか、物語は荒唐無稽だが寓意性や奥行きを感じる事ができる(ファウストやオペラ座のオマージュがあからさまな場面があり、無茶な展開でも意外に許せてしまうところがある)。劇半も見事な出来上がり具合。カーペンターズへの楽曲提供で有名なポール・ウィリアムズが奇怪な悪役スワンを演じているのも、何ともおかしい。 …ちなみに、あのシャワー室で脅迫する場面、あれはどう考えてもサイコのオマージュだよな。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-08-13 12:05:39)《改行有》

42.  ゴッドファーザー PART Ⅲ 《ネタバレ》 そんな酷評されるほど悪い映画ではないような…。オペラに被せる形で進行するクライマックスは、前の二作と同じくらいに見応えがあり、シリーズ最終作としての役割をきっちりと果たした作品だと思う。 前二作と比較しての弱点はやはりキャスティングだろうか。デュバル演ずるトムヘイゲンがいないのは問題だろう。トムが毎回粛清される相手と交わす空恐ろしくてほろ苦い会話シーンが大好きな私としては、本作でもぜひそれを盛り込んでほしかったのだが、それは叶わなかった。また、アンディガルシアも若きパチーノやデニーロと比較して確かに演技力不足だったと思う(レジェンド級の二人と比較されるのは酷な話だろうが)。パチーノがパート1で見せた衝撃的な目の色の変化や、パート2におけるデニーロの、マーロン・ブランドに寄せつつもカリスマを全身から放出しているような演技に較べ、彼の演技はそういう領域には達していなかったような気がする(かつてのドンたちには遠く及ばない、それがヴィンセントのキャラクターなのかもしれないが)。 ヴァチカンの醜聞を取り込んだストーリーは今から見ても興味深く、また将来に渡っても議論される余地のある脚本だとは思うが、キャラクターバランスを欠いたところが本作の弱みだろう。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-06-12 14:27:55)《改行有》

43.  大脱走 《ネタバレ》 脱走ものの代名詞となった名作。第二次大戦を扱った異色の戦争映画であるとも評価することが可能だろう。私の親友が本作を非常に気に入っており、その友人と一緒に何度も本作を鑑賞したのが、いまではいい思い出だ。現在の観点からすると物語のテンポがゆったりとしており、もう少しスピーディな流れになれば満点評価をつけられたかもしれない。とはいえ、捕虜たちの逃避行に手に汗を握ってしまうくらいには、本作を楽しむことができた。マックイーンのバイクでの逃走シーンは本当に鳥肌もので、鉄条網をなんとしても潜り抜け、国境の向こう側へ這っていこうとするそのタフで不屈の姿に痺れた。 余談にはなるが、私も初めて本作を観たときには、戦時下の収容施設にしては随分と快適そうな施設だと思い、違和感を覚えて本作の原作本を読んだことがある。すると原作、つまり史実でも、(少なくとも本作の舞台となった収容所に限っての話だが)戦時捕虜たちは国際条約に従って丁重に扱われていたとのことである。残酷な話だが、国の為に戦い捕虜になった戦士と、生きる価値のない存在とされたユダヤ人とでは、その扱いに雲泥の差があったわけだ。映画ではその史実を補強するように、ナチスへの反抗心を隠さない、高潔かつ軍人気質な収容所長が配されている(だから同じ軍人である捕虜たちに対して寛容かつ同情的なのである)。つまり映画は原作に忠実、かつ、かなり史実に寄り添って作られているのだ。いまからすると歴史の勉強のきっかけにもなる映画といえるだろう。[映画館(字幕)] 8点(2019-06-12 14:02:41)(良:2票) 《改行有》

44.  ファースト・マン 《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。セッションの監督ということもあり、少し身構えて臨んだが、想像していた以上に手堅い映画だった。 インターステラーに影響を受けたと思われる、CGになるべく頼らないフィルムの映像は、手ブレが激しい場面も多いが、フィルム独特のざらつきも相俟って1960年代のアナログな雰囲気を上手く作れていたと思う。劇中に登場する飛行機や宇宙船の、現代からすると極めてチープで古めかしい計器が衝撃で激しく唸るシーンや暗く狭い操縦室に閉じこめられるシーンの恐怖感は素晴らしかった。IMAXだと手ブレが激しい場面も逆に臨場感があって、そこまで悪印象はなかった。ボーンシリーズ等で手ブレ映像に慣れていれば、本作のそれも特に問題ないとは思う。ダンケルクに続く体感型の映画であると個人的には思っていて、ロケット飛行シーンなどは大画面・大音響のIMAX環境で鑑賞するといいと思う。 物語は淡々としているが、それでいてツボを押さえた造りだった。アポロに乗り込む場面の緊張感と高揚感は素晴らしかったし、クライマックスの月面での涙や奥さんとの再会シーンも、多くを語らず、役者の目と表情で語らせる演出は非常に好みだ。言葉はなくとも娘や奥さんへの愛情が伝わってくる。 華やかな歴史と思われがちな宇宙開発競争や月面着陸だが、本作は非常にシビアな目線で描いている。莫大な予算を注ぎ込みながら、犠牲を出しながらも、国家が宇宙開発をを続けるのには、東西冷戦でのソ連側への対抗意識が背景にあった。60年代は東西冷戦が最も先鋭化した時代でもあり、宇宙開発でソ連の後塵を拝するばかりで、何としても宇宙開発競争でソ連よりも先に偉業を打ち立てようと、轟々たる非難もなぎ倒して突き進んでいくアメリカの狂気を本作から感じることができた。主人公ニールも幼い娘の死や同僚の死によって喪失感を抱えており、その喪失感を埋め合わせようと、危険な任務にのめり込んでいく。ニールの狂気とアメリカの狂気がリンクするように映画が作られていて、興味深かった。そして辿り着いた、寂しく侘しい月面で、ニールは亡くなった娘に会えたのだろうか。もしくは娘への愛を月に置いていくことができたのだろうか。解釈は観客に任されているが、こういうハードボイルドな演出が目立つ秀作だった。[映画館(字幕)] 8点(2019-02-14 13:26:11)《改行有》

45.  ダークナイト ライジング 7点か8点かで迷って、結局8点。 いかんな、ノーラン作品は甘めの点数になりがち。 今作の不満点は大まかに二つ。 第一に、作品内でのリアリティが薄れたことによる、物語への没入感の減退。影の同盟や核兵器はやや荒唐無稽な印象が強く、前作で推し進めたマイケルマン風の犯罪劇から物語が離陸したために、物語に上手く入っていけなかった。 第二に、参考にする映画作品を決めていないため、物語も作風もやや散漫になってしまった。ダークナイト以降のノーラン作品は参考にする映画作品を明確に定めて、それを意識した展開や作風にすることで、作品の質を高めていると私は考えているが、本作は参考とする映画作品は定めていないように思える。本作で制作者が決定的に意識した古典作品はディケンズの二都物語。だが、二都物語は有名作品ではあるものの、ディケンズの悪癖であるプロットの破綻や冗長な文章表現が指摘される作品でもある。つまり、本作においては、参考にする古典作品の選定を失敗したために、作品も散漫なものになったのではないかと私は見ている。 ただ、大いに評価できる点も二つ。 一つは、インセプションからの再登板キャストが多い。ノーラン監督の役者への愛着が感じられて好印象。ケイン御大、キリアン、トムハは常連決定だが、ぜひJGLやマリオン姐さんも、今後のノーラン作品への再登板を期待したいところ。 第二が、ラスト付近のバットマンとゴードンのやり取り。あの場面で涙した映画ファンは多かったのでは? バットマンはゴッサムのヒーローだが、バットマンにとってのヒーローはゴードンであった。これ、演じたクリスチャン・ベールとゲイリー・オールドマンとの関係にも当てはめることができるだろう(クリスチャン・ベールの尊敬する俳優は、ゲイリー・オールドマンである)。何より、我々映画ファンにも当てはめることが可能だろう。90年代からエキセントリックな演技で人々を魅了してきたゲイリーは、そこまで映画好きでない人にとっては物凄く怖い悪役の人でしかないだろうが、我々映画を愛する人間にとってはある種のヒーローだった。そういう意趣があの場面には込められており、ノーラン監督の意外な(?)熱い一面が垣間見ることができて、印象深かった。[映画館(字幕)] 8点(2019-01-21 22:42:07)《改行有》

46.  シング・ストリート 未来へのうた 主役2人のカップルがなんと可愛らしいことか。たぶんあの二人は、海を渡って夢を叶えたのだ、と思うことにしている。 気が付いたのはルーシー・ボーイントンは声が異様に若い。顔はどう見ても20歳過ぎだが、声は10代で全然通用すると思った。あれでイギリス英語全開で喋られると、確かにモテるだろうな。ヒロインがモデル志望のませた女の子ということを考えると、意外に良い人選だったのではないか。 物語も良い。劇中曲も良い。不満点はといえば、ラストの貧相なCG、あとお兄ちゃんの描き方をもう少し深くできなかったのだろうかと思う。確かにいい兄ちゃんなのだが、どうもこの手の物語にありがちな人物像な気がして、あまり惹かれなかった。 ラストに表記される「すべての兄弟たちへ」の一言は、とにかく粋である。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2019-01-21 22:02:58)《改行有》

47.  キャロル(2015) 様々な切り口で論評できる作品だが、ラストのケイト・ブランシェットの表情が特に印象的だった。 まさに大女優の一世一代の演技だろう。 何も語りはしない、しかし妖艶とも悠然とも言えるあの表情の中に、様々な感情やメッセージが込められており、圧巻だった。 皆さまは彼女のあの表情からどのような思いを読み取るだろうか?[ブルーレイ(字幕)] 8点(2018-11-23 13:17:29)《改行有》

48.  フェイス/オフ 顔を入れ替える…このアイデアからして「んなアホな」という展開の本作。 しかしまあ荒唐無稽な展開のオンパレードなのだが、しかし華麗で熱の入ったアクションと、トラボルタとケイジの濃い演技(顔芸?)で乗り切ってしまった稀有な一作。他の方も書いておられるが、顔の入れ替えという設定、そして自分以外はみんな敵というシチュエーションに主人公が追い込まれ、そんな孤立無援からの反撃というプロットが、多少の荒唐無稽も気にならぬほど観客を物語に釘付けにした大きな要因ではなかろうか。 まあ二丁拳銃はかっこよかったぞ、ということで8点。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2018-11-23 12:51:44)《改行有》

49.  インセプション 《ネタバレ》 「夢の中に潜入する産業スパイ」この設定だけで完全に持って行かれた映画だ。単に夢に潜入するだけでなく、夢の中の夢に潜入するという設定が新たに出てきて、これにも度肝を抜かれた。よくこんなアイデアを考え付くなと感嘆するしかなかった。8点評価としたのは、アクションの描き方が凡庸(雪山のシーンはボンド映画のオマージュなのはわかるが、まあ凡庸 苦笑)なのと作中の日本に関する描写がやや不十分だったため(ちょっとリアリズムに欠けてたかなと)。ここが完璧になっていれば文句なしの10点評価だった。[映画館(字幕)] 8点(2018-09-02 12:52:56)

50.  ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 《ネタバレ》 公開終了間際、滑り込みで映画館にて鑑賞。 ”ダンケルク”補正がかかっており+2点追加で8点としている事を予め書いておく。 俯瞰ショットが多用が光る映画で、特に映画冒頭、当時のモノクロ映像からの議場を俯瞰するショット及びタイトルの映し方は、BGMと相まって素晴らしい出来だった(その議場に不在の主人公、という流れも含めて完璧)。 ゲイリー・オールドマンの演技や役への没入ぶりは、オスカー獲得も当然というレベルだった。 目元はゲイリーだが、身振りや口調は完全にチャーチル本人になりきっていたと言っていい。いささか大仰ながら格調高い文章をボソボソと聞き取りづらい口調で話す様子や、興奮した際の独特の抑揚のつけ方、猫背気味の立ち姿は本人そのものに見えた。事前に相当な研究を重ねたのだろう。 冒頭での見事な演出があったように、脚本や演出の出来もある程度満足できるレベルだった。ただ、ゲイリーの演技面での奮闘に較べれば、少し脚本や演出に文句をつけたい個所がある。 脚本面で言えば、地下鉄での市民との会話。さすがにあれはフィクション要素が強過ぎる。譬えは悪いが、それまでの史実に沿った話からいきなり”暴れん坊将軍”の松平健が市井の人々と触れ合う場面を見させられているような気になった。 あの場面よりも確執のあった国王との和解・協力を濃く描いた方がリアリティもあって、伏線の回収という意味でもよかったのではないだろうか。 演出面では、ゲイリー/チャーチルのような大物的キャラクターは、表情をあまり見せないか、内面をあまりわかりやすく描かない方が良かったと思う。ゲイリーの名演によってチャーチルの強さや弱さは描けていても、史実におけるチャーチルの老獪さ、どす黒さまでは描き切れてないような気もした(心情がわかりやすい分、多面性が感じられないというべきか)。 CGも予算不足なのか、ダンケルクのリトルシップの映像は明らかにCGとわかるレベルのものだったのが残念(”ダンケルク”が実写に拘っていた分、粗が目立つ)。 文句もいろいろと書き連ねたが、偶然にも本作は”ダンケルク”と表と裏をなしており、私は”ダンケルク”に大変高い評価をしているため、その補正により、本作は6点+2点追加で8点とした。 できれば本作と”ダンケルク”、セットでの鑑賞をお勧めする。その後はもちろん”空軍大戦略”へ。[映画館(字幕)] 8点(2018-05-09 19:27:05)《改行有》

51.  インターステラー 《ネタバレ》 公開時に劇場で見よう見ようと思っていたが、結局見逃した一作。 正直IMAX画面でブラックホールや氷の惑星の美しさを体感したかったと後悔せずにはいられなかった。 宇宙に旅立つまでの描写が長く、説明的で、ここがこの映画の弱いポイントだと個人的には思った。 伏線を張るために仕方ないのかもしれないが、もうちょっと序盤にメリハリのある展開が欲しいと思った。 宇宙空間に突入してからは、ノーラン作品お決まりのノンリニアストーリー(時系列通りに進まない、直線的でない物語)、カットバック盛りだくさんの演出、重厚華麗なヴィジュアルでごり押しする展開に、否が応でも引き込まれた。 文系人間の私には、登場する理論がさっぱりわからなかったが、とりあえずあの開き直ったかのような五次元空間の表現の仕方については、感動というか自然と笑いが零れてしまった。”現代の科学では検証不能、だから俺の好きなように演出するぜ!これがおれのかんがえた五次元空間じゃい!!”というノーランの叫びが聞こえてきた気がした。あの表現や展開について唖然とする方も多いと聞くが、個人的には苦笑いしつつ、まあ検証不能だからそういう可能性もあるかもしれないと思えた次第である。 何にせよ、鑑賞後は宇宙の広大さや深遠さに思いを馳せるいい機会になった。宇宙の未知の領域に対する希望、関心、それから少なくない恐れ。 技術が発展した現代で、その技術で人は宇宙に向かうのでなく、パソコンの画面や携帯の画面にくぎ付けになっている。そうした状況への反発と、もう一度宇宙に対して関心や希望を持ってみないか、というのが本作の隠れたテーマでもある。本作は冷静知的なノーラン監督らしからぬ、熱いメッセージが込められた映画なのだ。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2018-05-05 16:05:07)《改行有》

52.  マルホランド・ドライブ 《ネタバレ》 デイヴィッド・リンチ監督作でも、特に人気が高い作品。 冒頭からシュールでミステリアスな作風が全開。観客が内容をよくわかっていなくても、その不思議な世界観に強引にでも引き込こんでしまうあたりが、デイヴィッド・リンチという監督の真骨頂なのだろう。 いま改めて本作の立ち位置を考えてみると、1990年に放送が開始された初期の『ツインピークス』と、2017年に復活した『ツインピークス シーズン3』のほぼ中間の時期に制作されていることがわかる。新旧のツインピークスに出演している俳優が本作にも起用されているため、実質『ツインピークス シーズン2.5』と捉えることができるだろう。群像劇、現実と超現実の交錯、意表を突くサスペンス描写、異形の人物など、見れば見るほど新旧のツインピークスと本作の要素が重なっていることがわかる。 ただ、ツインピークスとの決定的な違いは、物語の論理性、首尾一貫性を保つのに重要な役割を果たしたマーク・フロストが不在なことだ。本作では、各シーン・各プロットが論理的にどのように関係しているか、(おそらく製作者の意図で確信犯的に)省略がなされていて、もはや意味不明な展開になってしまっている点、物語としての面白みは残念ながら落ちてしまっていると言わざるを得ない。 マーク・フロストが関与していれば、おそらくもう少し物語がロジカルになって、観客に親切な内容となったのではないか。実際、『ツインピークス シーズン3』もリンチ節が全開になっていたが、脚本のロジックは、筋が通っていてわかりやすいという親切設計であった(笑)。 とはいえ、それでも現代ハリウッドのダークサイドを、シュールレアリスティックな手法で描いた名作であることに間違いはないだろう。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2024-01-26 21:58:34)《改行有》

53.  JFK JFK暗殺事件の真相を追うジム・ギャリソン地方検事を描いた現代史ミステリー。大統領暗殺という一大事件を取り扱うだけに、登場人物は膨大、上映時間も長大である。だが、カットバックを多用した飽きのこない映像と、オリバーストーンの巧みな脚本構成によって、観客をぐいぐい引っ張っていく。正直、凡庸な脚本家なら、この題材を3時間半で収められたかどうか極めて怪しいものだ。それだけストーンの脚本力と編集力が光っている一作。こと退屈になりがちな登場人物のモノローグにカットバックを大量に挿し込むことで、事件の背後にあった怪しげな人間関係や陰謀を、活き活きと浮かび上がらせる手腕は特筆すべき点だろう。 全体的な編集力や脚本力、また裁判シーンでのコスナーの名演技など、高評価できる部分は多いのだが、物語のクライマックスが個人的に弱く感じた。というのも、劇中で指摘した証拠のみでクレー・ショーをJFK暗殺の犯人とするにはさすがに無理がある。決定的な証拠に欠けていて、論理の緻密さが足りないのだ。映画はその後、コスナーの感動的な名演説を入れることで、映画的な見せ場を作っているのだが、その前の展開が腑に落ちていないせいで、素直に感動することができなかった。真実を知りたいと言うわりには、細かなディテールの積み上げを疎かにしてもよいのだろうか、と疑問に思ってしまった。 事件を追うギャリソン検事の姿に、オリバーストーンの真実追究への思いが仮託されているのは否めないだろう。現代的な観点で見れば、真実を探し求めて周囲の人間と軋轢を生む姿は、典型的な陰謀論者のそれでもある。自分が追い求めたい真実については熱く語る一方で、細かなディテールの積み上げは疎かにする、あるいは目を向けない姿勢というのは、妙に示唆的である。自分の見たい真実を追い求めたオリバーストーンは、その後、アメリカとは別の真実を提供すると謳うロシアのプロパガンダに見事に引っかかることになる。ある意味で本作は、のちのち陰謀論者となってしまうストーン監督の萌芽が見られる映画ともいえよう。言葉を返せば、鑑賞時にはある程度の真贋を見分けるリテラシーが観客にも求められる映画にもなっている。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2023-08-13 14:37:05)《改行有》

54.  レディ・バード グレタ・ガーウィグの、監督としての評価が一気に高まるきっかけとなった青春映画。遅ればせながら鑑賞したが、なかなか悪くない出来だった。演出、脚本、映像、どれもが高いレベルでまとまっている。物語のテンポの良さ、気の利いたセリフ回しやちょっとした伏線の使い方に、監督の優れた技量が表れている。ちょっと自意識過剰で、ちょっと痛い、でもやや陽キャラで、ブサイクではないから、それなりに人付き合いはできる17歳の女子高生の一年を、過度に美化することもせず、描き切っている。 海外では手放しで大絶賛されている本作だが、個人的にはそこまで完璧な映画か?と思う。数ある青春映画の中では秀逸な出来だが、比較的起伏の少ない物語であるため、スコーンと突き抜けるような盛り上がりはなかったように思う。 大名作というには留保をつけたいのだが、優れた映画であるのは間違いない。故郷への強い愛着が窺える、街の風景のモンタージュが印象的だった。映画内で度々繰り返されるそれらのシーンに、抑えても抑え切れない監督自身の故郷への愛を感じることができた。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2021-07-14 08:46:12)《改行有》

55.  TENET テネット 《ネタバレ》 ノーラン監督のスパイ映画愛に溢れた、それでいて実に珍妙で難解な作品だった。初見では、ハイウェイでのカーチェイス以降の展開に、頭がついていくのに必死だった。クライマックスの戦争シーンでは、何がどうなっているのかさっぱりわかっていなかった。それでも本作をもう一度観てみたくなったし、他人に本作について語りたくなるという、不思議な仕上がりの映画だった。逆行世界の珍妙な光景や、変テコなルール設定、妙に癖のある不思議な登場人物たち。鑑賞した後で、とにかくいろいろと議論したくなる映画であるのは間違いない。 映画的に質が高いかというと、難点が多いのは否めないだろう。個人的には、逆行が本格化する後半から急激に難解になるため、伏線回収の快感やタイムサスペンスのスリリングさ、そして感動的な人間ドラマが、その難解さのせいで伝わり辛くなっている気がした。正直に言うと、クライマックスシーンでは、逆行と順行の展開を考えるので頭がいっぱいになり、ニールの自己犠牲の尊さや、セイターとキャットのやり取りなどは、すぐに腹に落ちてこなかった。つまるところアクション描写が難解過ぎるせいで、本来映画が企図していたスリルや感動が低減しているのだ。ここはこの作品の最大の難点だと私は思う。 登場人物も癖はあるが、優れた人物造形かというと、そういうわけでもない。セイターには破局を望む理由をもう少し具体的に語らせてもよかったと思うし、キャットとの夫婦関係はちょっと無理くりな感じが否めない。キャスティングも今回はミスがあったのではないだろうか。ニールとキャットは、キャラクター設定と演者の年齢がフィットしていない気がする。一方で、主人公の造形はなかなか好みだった。任務遂行に命をかけるが、一般人の犠牲を良しとしないその性格。スパイのくせにスパイらしくないお人よしな性格は、観ていて好印象だった。特に冒頭のオペラハウスで、一般人を巻き込む爆弾が仕掛けられているとわかった瞬間、躊躇なく走り出した姿には痺れた。彼が自分自身のテネット(信条)を語る場面は少ないが、彼の行動パターンから、彼のテネット(信条)はしっかりと伝わった。[映画館(字幕)] 7点(2020-11-15 21:19:49)《改行有》

56.  ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ 《ネタバレ》 ボーダーラインシリーズ第2作目。前作よりエンタメ寄りになったので、見やすかった。点数としては6.5点くらいで前作よりは劣ると思うが、四捨五入で7点とする(結局、前作と同じ点数になるな笑)。 前作はエミリーブラント演ずる若いFBI捜査官が主役でありながら、クライマックスでデルトロ演ずるCIAの殺し屋が事実上の主役に躍り出て、意外性に富む物語になっていた。本作は前作ほどの意外な展開はないものの、前作よりもストーリー上でストレスを感じる部分(若い捜査官の倫理的葛藤、周囲との衝突)が減っており、それが見やすさに繋がっていた。 前作からわずか数年の経過で、米墨国境上では、麻薬密輸だけでなく不法入国が問題化している描写は印象的だ。麻薬戦争でメキシコが政情不安になればなるほど、アメリカへの不法入国も増え、それがまた犯罪組織のビジネスになる悪循環。現実では国境上に壁を作る話も出ているが、これも不法入国ビジネスをさらに助長することになるのだろうか。不法入国の描写だけでも、国境の現状とその闇を知ることができて、興味深かった。映画では国境上の問題が、テロリズムにも繋がる可能性まで盛り込んで描いている。劇中では結局テロと国境上の出来事は無関係だったとされたが、その結論に至るまでの過程がなかなかスリリングで面白い。ブラックサイトでの容赦ない拷問、偽装と扇動工作、理不尽な証拠隠滅。アメリカだとやりかないというか、俄然説得力が出る(笑)。 見どころの多い映画だが、それでも点数があまり高くないのは、やはり前作と同様、全体として手堅い出来だが、一方でパンチのある描写が足りない。麻薬戦争が我々の常識では考えられないほどの惨状になっているのは周知の事実だ。老若男女問わず、あらゆる人間が巻き込まれて犠牲になっている。翻って本作の描写は、まだまだぬるい。本作ではイザベラ、ミゲルという少年少女が登場するが、彼らもストーリー上運よく生き延びる。客に極度のショックを与えない配慮だと思うが、個人的には彼らにもっと過酷な運命を与えた方が、映画としての質は上がったのではないかと推測する。武装を解除させ、無抵抗になったギャングたちを平然と射殺し、その上でとどめの銃撃も加える冷たいリアリズムが光っていたのに、そこにミゲルを巻き込ませなかったのは、ぬるいというしかなく、残念だ。[インターネット(字幕)] 7点(2020-06-03 08:52:34)《改行有》

57.  アイリッシュマン 老人版グッドフェローズといった作品。それにしても長い長い(笑)。明らかに配信前提の作品であり、客が自発的に何回かに分けて鑑賞することを意識して作品が作られている。つまり3時間半にわたって観客を釘付けにするような展開や創意工夫はあまり盛り込まれていない作品ともいえる。ずっと静かで、乾いた、即物的なトーン、つまりいつものスコセッシ調で作品は終始する。映画作品としてみた場合には、これでは満点評価は難しい。 アメリカンマフィアの栄枯盛衰、長年の謎であるジミーホッファ暗殺を描いた超大作で、かつデニーロ・パチーノ・ペシ・カイテルという、名優たちの出演。かなり期待して見たのだが、ちょっと肩透かしだったのは事実だ。最新技術でデニーロを若返りさせたそうだが、アクションシーン等では粗が目立っている。無理してそこに資金を使うよりは、他の役者に若かりし頃を演じさせた方がまだ自然だったのではないか。まあ名優たちの集結ということで、少し甘めの7点とする。[インターネット(字幕)] 7点(2020-05-05 01:15:07)《改行有》

58.  レヴェナント 蘇えりし者 アメリカの美しい原野の景色が印象的な作品だった(ロケそのものはカナダや南米の高地でやったそうだが)。イエローストーン川流域が舞台ということは、ワイオミング州やモンタナ州、サウスダコタ州、つまりアメリカ北西部が舞台ということでもある。これらの土地で植民者とネイティブアメリカンが収奪と虐殺の応酬を繰り広げていた血みどろの時代が、この映画の背景にある。植民者である白人がネイティブアメリカンたちを虐殺し、犯す一方で、ネイティブアメリカンたちも報復として白人を殺し、その頭皮を剥ぐ。人間を突き放すかのように美しく過酷な世界の中で、人間たちは旅をし、殺しあう。アメリカの原風景の一つでもある壮大で残酷な世界を圧倒的な映像で提示したところに、この映画の価値はある。156分という長大な作品の中に、山岳や森林の神々しい景色が何度も登場する。 修正西部劇小説の大家、コーマック・マッカーシー(ノーカントリーやザ・ロードの原作者)の作品世界をヴィジュアル化したような、壮大な作品だった。風景描写と並び、冒頭における銃弾と矢が飛び交い、異人種同士が血みどろになって殺しあう戦闘シーンは特に秀逸だ。ただ映画作品としては、上映時間は長いものの、話の筋がシンプル過ぎること、復讐や報復のテーマ性を掘り下げが不十分であることといった欠点もあり、それで7点評価とした。本作は史実をベースにした作品ではあるが、ヒューグラスの妻や家族についての設定は完全にフィクションである。グラスたちを追跡するネイティブアメリカンについても、おそらく史実とは異なる。話の筋をもう少しエンタメ寄りにすることはできたはずだが、あえてそうしなかったために、物語としての面白さが薄くなっているのは否めないだろう。 役者の演技についても最後に一言述べておこう。レオ様よりトム・ハーディの演技の方が素晴らしかったと私は思う。粗暴だが、神について一言述べるなど達観した男でもあるフィッツジェラルドを演ずるにあたり、その野性味と知的深淵さを目の演技で的確に表現しているのには唸らざるを得なかった。ぶっちゃけ、レオ様と役を入れ替えた方が、もっと面白くなったのではないかと個人的には思っている。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2020-05-05 00:58:52)《改行有》

59.  ビューティフル・デイ 暴力的で病的な雰囲気ながら、美しく詩的なシーンもあるし、最後はなんだかんだハッピーエンド。良いところはたくさんあるのだが、映画全体に漂う、主人公の不安定な精神を表現したような病的な雰囲気が、あまり心地よくはなかったため、7点評価とする。ただこの雰囲気を高く評価する人が、少なからずいることは理解できる。カンヌで高評を得たのも、本作の病的かつアート的な部分が評価されたからではないだろうか。 タクシードライバーと比較する人もいるようだが、個人的にはタクシードライバーは病的でハードな部分とメロウな部分(バーナード・ハーマンによる、ジャズ調の優しいスコア)が上手く調和していて、どこか心地のよい物語になっていたのだが、本作はメロウな部分が少ないため、アートで病的、そうしたハードな部分が際立ってしまったという印象がある。したがって、完成度についても、タクシードライバーよりは下だろうと評価する(じゃあどうすればよかったんだ?といわれるとなかなか難しいのだが)。 ちなみに観賞していて、なんかインディーズのオルタナ系音楽の香りがするなぁと思っていたら、案の定、音楽はジョニー・グリーンウッドが担当していた。そりゃ音楽も尖った感じになるわな。[レーザーディスク(字幕)] 7点(2020-04-04 14:01:58)《改行有》

60.  ベイビー・ドライバー 《ネタバレ》 カーアクション×ミュージカル映画という、異色の組み合わせを実現した作品。冒頭のカーチェイスシーンがすさまじい完成度で、思わず引き込まれた。 選曲のセンスも素晴らしく、冒頭のジョンスペからのハーレムシャッフルの流れには興奮するしかなかった。 キャスト陣も豪華な顔触れ。主役二人は大変キュートだし、ケビン・スペイシーとジェイミー・フォックスはさすがの貫録で映画を盛り上げている。ジェイミー・フォックスがここまでわかりやすい悪役をやっているのはなかなか珍しく、面白い。 コメディ、アクション、音楽や映像、ほとんどすべての面で高いレベルにある作品だが、難点もある。クライマックスのチェイスシーン以降から、力を使い果たしたのか、最後のドタバタアクションは、いつものエドガーライト映画と変わりがない。せっかくカーアクション×ミュージカルという異色の切り口で映画を盛り上げてきたのだから、最後もスタイリッシュにそれで押し切ってしまえばよかったのにと思った。比較的良心的(?)な悪役であるバディが何度も登場して、ラスボスを務めるのはちょっとくどいような。 というわけで、後半までぐっと引き込まれていたが、クライマックスの難点により、7点評価で。でも引き込まれる要素もたくさんある、秀逸な作品だ。[インターネット(字幕)] 7点(2020-03-29 13:40:35)《改行有》

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