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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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581.  キラー・インサイド・ミー 《ネタバレ》 怖かった!アメリカでは評価されなかったようですが、これはとんでもない傑作だと思います。現実の報道等を見るに、この世界には殺人という行為を生来の欲求として楽しむ人間がある一定数存在するようです。そんな人間の心理・行動を鋭く描いた、恐らく唯一の映画が本作であると思います。それはキューブリックやスコセッシらが描いてきた狂気とは一味も二味も違ったもので、当然のこととして淡々と殺人を行う異様な空気が映画全体を席巻。婚約者を愛し、彼女と一緒にいるとこの上ない開放感が得られると語りながら、もう一方では「この女は絶対に殺さねばならない。もう笑ってしまうくらいにそう思う」とサラっと言いのけ、実際に無惨な殺し方で婚約者を惨殺する主人公ルー。自分を愛してくれた娼婦、すべてを受け入れてくれた婚約者、息子のようにかわいがってくれた上司、兄貴のように慕ってくれた街の若者、それらすべての人々を死に追いやり、その死を鼻で笑うという空前絶後の鬼畜ぶりには戦慄しました。街では好青年として振舞っているものの、明らかに周囲の人間を見下し、調子を合わせているだけという冷淡さが滲み出たキャラクターに、ケイシー・アフレックが完全にハマっています。「ジェシー・ジェームズの暗殺」でも感じたのですが、この人の腐りきった瞳は本当に素晴らしい。レクター博士やアントン・シガーに並ぶ怪演を堪能できます。ルーの中には一応、マトモな人格も存在しているのですが、殺人者としての人格との間に対立や葛藤がまったくないことが、この映画をより陰惨なものとしています。呵責も後悔もなく、平然と殺人を犯してしまうのですから。唯一の救いはラスト。ビル・プルマンが登場して以降はルーの脳内の物語なのですが(keijiさんのレビューでそれに気付きました)、「場違いな畑に生えた草は雑草なんだ」というビル・プルマンの説得によって殺人者としての人格はこの社会において不要であることを自覚し、ルーはその人格を葬り去ります。大事な人をすべて失った後では、もう遅いのですが。。。なお、ラストに流れる”Shame on you”を歌っているスペード・クーリーは、娘が見ている前で妻を殴り殺した人物のようです。まぁ何から何まで陰惨な映画ですね。[DVD(字幕)] 8点(2011-12-30 15:27:20)(良:2票)

582.  ハンナ 「赤ずきん」ミーツ「ボーン・アイデンティティ」。雪山で殺人兵器として育てられた美少女がCIAに追われるというネジの飛びまくったアクション映画なのですが、完成した作品からはそんな内容に対する照れが見られ、バカに徹しきれていないために中途半端な仕上がりとなっています。ドラマ畑のジョー・ライトを監督に起用するというサプライズ人事が脚本との間で化学反応を起こしておらず(他には、ダニー・ボイルやアルフォンソ・キュアロンが監督候補に挙がっていた)、アクション映画に必要な盛り上がりに致命的に欠けています。14年間もハンナを文明社会から隠して大事に育てながら、突如危険な一人旅に出すという父エリックの動機や目的が説明不足だし、彼女を助けるヒッピー家族も親切すぎ。それら不自然な点を誤魔化すためにグリム童話からの引用を持ち出した様子なのですが、現代アクションとグリム童話の絡ませ方も面白みに欠けていました。作品のポテンシャル自体は悪くないのですから、もっと突き抜けた内容にすべきだったと思います。[DVD(吹替)] 5点(2011-12-20 15:51:58)

583.  ディファイアンス 《ネタバレ》 ハリウッドで定期的に製作されるホロコースト映画にはプロパガンダ臭がするため、私はそれらに対して懐疑的な姿勢を持っています。本作についても「どうせいつもの『私達は被害者です』映画だろう」と高を括って観ていたのですが、前半を見終わって、これはホロコースト映画ではないことに気付きました。ユダヤ人の被害者意識が殊更には強調されていないし、ナチスによる残虐行為もほとんど登場しません。それどころか、ユダヤ人の中にも仲間を苦しめる者がいたことや、捕虜となったドイツ兵にリンチを加える場面がきちんと描かれていて、ユダヤ人寄りの映画ではないことがはっきりとわかります。本作のテーマはホロコーストではなく、森で数年間立て篭もらざるをえなくなった人々の戦いという、恐ろしく単純なものだったのです。ダニエル・クレイグ演じるトゥビアの、リーダーとしての苦悩に対して特にスポットが当てられるのですが、リーダーシップに関する考察としては興味深い内容となっています。立て篭もったユダヤ人達は食うにも困る状態にあり、そんな中では「自分さえ良ければ」という風紀が横行しがちとなります。自分の生存すらままならぬ状況では、他人を思いやる余裕などないからです。だからこそ、集団を維持するための強力なリーダーシップと厳格な規律付けが求められるのですが、ここでトゥビアはひとつの大きな問題にぶち当たります。いよいよ状況が極まり、規律を無視する者が現れた時、リーダーとしてこれにどう対処すればよいのか?ある者は、「食糧は全員で平等に分配する」という規則を破り、貴重な食料を独り占めしようとしました。ある者は、「妊娠をしてはならない」という規則を破り、子供を作ってしまいました。トゥビアは、前者に対しては死を与えましたが、後者は無罪放免としました。しかし、規則違反という点では後者に対しても何らかの罰が与えられるべきではなかったのか?ここに集団維持や規則というものの難しさがあります。例外を認めると規律は崩壊してしまうし、かといって厳格すぎると形式が先行して規律が破綻してしまう。結局、トゥビアはこのジレンマを乗り越えることができず、クライマックスではリーダーとして機能不全に陥ってしまいます(運よく援軍に救われただけで、あのままでは全滅していました)。「こんなオチ、ありなの?」とも思ったのですが、なかなか興味深い着地点だとも思いました。[DVD(吹替)] 7点(2011-12-19 01:59:34)

584.  復讐捜査線 メル・ギブソン8年ぶりの主演作にして、監督マーティン・キャンベル、脚本ウィリアム・モナハン、編集スチュアート・ベアード、音楽ハワード・ショアというご祝儀のような豪華メンバーが顔を揃えているだけに相当な映画なのだろうと期待して鑑賞したのですが、そんな期待を上回るバイオレンスの快作でした。デビュー作「マッドマックス」以来、家族を殺される男をひたすら演じてきたメル・ギブソンの真骨頂、怒りと悲しみに溢れるヒーローを演じさせると相変わらずこの人はよくハマります。彼に対する敵方の設定もよく考えられていて、巨大軍需企業、その軍需企業に飼われている上院議員、政府、政府の汚れ仕事を請け負う民間セキュリティ会社が同じ目的を持ちつつも別々の指令系統で動いており、そのために大きな混乱が生じているという設定は、妙に説得力があって「なるほどな」と感心しました。特に印象に残ったのがレイ・ウィンストン演じるセキュリティ会社の男で、「殺しを職業としている以上、指令が下れば個人的に恨みのない相手であっても俺はためらわずに殺す。俺にそうさせないよう、お前は絶対に一線を越えるなよ」とわざわざターゲットに警告しにくる職人気質にはグっときました。アクションは控え目なのですが、要所要所では腹にガツンとくる重厚な見せ場が用意されています。バイオレンス一筋のマーティン・キャンベルの手腕はこの手の渋い銃撃戦でこそ発揮されるようで、派手すぎないアクションのカッコよさには大興奮なのでした。[DVD(吹替)] 8点(2011-12-19 01:00:10)(良:2票)

585.  リアル・スティール 《ネタバレ》 本作では「ロッキー」を連想される方が多いようですが、それに加えて私は「オーバー・ザ・トップ」も思い出しました。つまりこの映画、本質的にはスタローンイズムに溢れたB級素材なのです。しかも舞台は「ローラー・ボール」を思わせる未来のハイテクスポーツで、こちらもまた、いかにもなB級設定。特に「ロボット格闘技」なんて面白いと思いますか?格闘技を含めたスポーツ全般は、神から与えられた肉体という制約条件の中にあって人間がいかに身体能力を向上させるかが、その面白さの原点であるわけです。設計次第でスペックをいかんともできるロボットにスポーツをさせたところで、それが面白いわけがありません。そんなこんなでこの映画は絶対につまらないだろうと踏んでいたのですが、見て驚きました。文句の付けどころがないほど面白いではありませんか!脚本・演出・演技という映画の基本的要素が非常に安定していたおかげで、この企画は奇跡的なまでに化けたようです。主人公は息子の存在すら忘れているほどのダメ親父なのですが、同時に適度な愛嬌があるため観客から嫌われるギリギリのところで味のあるキャラクターとなっています。その息子もまた、父親に向かって悪態をつくクソガキなのですが、ウザくなる一歩手前でこれを個性としているきわどいバランス感覚はお見事でした。役者のハマり具合も完璧で、憎たらしさと可愛げの絶妙なバランスを見せた子役のダコタ・ゴヨの演技には目を見張りました。。。 そして素晴らしいのがロボット格闘技の場面で、前述の不安が帳消しにされてお釣りがくるほど燃えましたとも。スポーツ映画としての本作の構成は抜群に優れています。まず前半で主人公が所有するロボット2台に負け戦をやらせるのですが、足を飛ばされ、首をもがれるという容赦のないやられっぷりを観客に見せておくことで、その2台よりも華奢なATOMのバトルの緊張感を高めています。最後には勝つとわかっていても、ATOMも同じ目に遭わされるのではないかと冷や冷やさせられるのです。やられてやられていよいよ反撃に出る場面では、スポーツ映画らしいカタルシスを存分に味わえます。最強のハイテクロボvs職人気質のローテクロボというありがちな対比も存分に映画に貢献しており、ここまで熱くなれる映画は久しぶりでした。ま、この構図は「ロッキーⅣ」そのものなんですけどね。やっぱりこの映画はスタローンイズムの塊なのです。[映画館(字幕)] 9点(2011-12-16 16:14:30)(良:1票) 《改行有》

586.  2012(2009) 《ネタバレ》 21世紀のジョン・ギラーミンことローランド・エメリッヒが放つ、映画史に残る大バカ超大作でした。これまでもエメさんは大風呂敷広げまくりのバカ映画を作ってきましたが、今回はバカの度合いが桁外れ。合衆国大統領が娘にまで隠している国家機密を、なぜかド田舎でDJやってるキ○ガイが事細かに知っているという不思議。超極秘とされている箱舟建造場所まで知っているのはナゼなんだ。その箱舟は全長が数キロにも及ぶ巨大船であるにも関わらず、工具がたったひとつ挟まっただけで動かなくなるというハリボテ仕様。「ドアが完全に閉じないとエンジンが動かない」って、一体どんな設計してるんだ(笑)。主人公は自分達が助かりさえすれば良いと思っている超絶ワガママ人間で、眼下で数千万の人間が死んでいても冗談を言えるタフな心を持っています。彼らが乗る巨大輸送機を使えば数百人の命を救えたにも関わらず、10人程度の身内・知り合いだけを乗せて火事場から飛び立つという倫理観の欠落ぶりには呆れました。合衆国大統領、輸送機のパイロットら、勇気を出して自己犠牲を買って出た人間は必ず死ぬという暴虐ぶりで、生き残った人間達はその自己犠牲について省みることもなく「俺が俺が」と言い続ける有様。ラストでは、家族の絆を取り戻したんで邪魔になってきた再婚相手が、実に調度良いタイミングで死んでくれるというハイパーご都合主義が炸裂します。生き残ったファミリーは、彼らの生存のためにあれこれ頑張ってくれた再婚相手のことを微塵も思い出すことなく、「俺ら生き残って良かったよねぇ」と新天地への希望を膨らませるのでした。。。なんだこの映画は(笑)。もしこれらすべてが計算のうちで、アメリカ人の貪欲さを描く壮大なブラックコメディであったとしたら、この映画は世紀の大傑作であると思います。ただし、ヘルムズリー博士がたまに英雄的な行動をとったり、家族愛で泣かせようとするくだりがいくつか挿入されている点から判断すると、エメさんはこの映画を大真面目に作ってるっぽいんですよね。その頓珍漢ぶりがなんともカックンなのですが、映画史上最大の破壊が繰り広げられる前半の素晴らしさに免じて5点とします。[DVD(吹替)] 5点(2011-12-06 20:20:06)(笑:2票)

587.  アンノウン(2011) リーアム・ニーソンと言えば、マイケル・コリンズやオスカー・シンドラー、ロブ・ロイといった歴史上の偉人達を演じてきた正真正銘の演技派でした。その素晴らしい存在感は多くの映画人から絶賛されており、ジョージ・ルーカスはジェダイの大師匠としてニーソンの起用を切望し、マイケル・ベイは「トランスフォーマー」におけるロボット軍団のリーダーについてニーソンをイメージしてそのキャラを作り上げたと語っています。そんなニーソン、55歳を過ぎて突如B級アクションに目覚めて迷走をはじめています。スティーブン・セガール、メル・ギブソン、ハリソン・フォード等の個性をたったひとりで表現できてしまう器用さが製作側にとっては便利なようで、ここんとこは娯楽アクションへの出演が相次いでいますが、本作についてはニーソンクラスの俳優が出るべき映画ではないと断言できます。そもそもの着想がありがちだし、ディティールもボロボロ。つっこみ出すとキリがないほどマヌケな殺し屋集団には呆れてしまいました。陰謀の核心も魅力的ではなく、爆弾解除に走り出す後半に至っても緊張感を出しきれていない演出は改善の余地ありです。「96時間」で起こった化学反応がいかに偶然の産物であったかが、本作を見ればよくわかりました。[DVD(吹替)] 4点(2011-12-05 09:24:23)

588.  ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記 「インディ・ジョーンズ」も「ハムナプトラ」も古代エジプトに題材を求める中で、アメリカ合衆国の浅い歴史からアドベンチャーを捻りだすというこのシリーズの基本コンセプトは嫌いではありません。また、過去のアドベンチャー大作が古き良き時代をその舞台として設定していたのに対し、「現代を舞台にアドベンチャーをやったら?」という本シリーズの思い切った切り口も悪くはないと思います。撃ち合い、殴り合い、殺し合いはなく(主人公は銃を持っていない)、あくまで頭脳を駆使した謎解きと追っかけのみという見せ場作りも、その意気込みは買いましょう。。。 ただし、製作陣が自らに課した厳しい条件に耐えられるだけの脚本を準備できていないことが、本作を不幸にしています。謎は魅力的ではないし、謎解きにも面白みがありません。先祖の汚名を晴らすことと、幻の黄金郷を発見することがどうやったらイコールになるのかがまったく腑に落ちないし、ニコラス刑事がブツブツつぶやくとすぐに謎が解けてしまうというマヌケな謎解きにも、途中から付き合いきれなくなります。英国女王の執務室に潜入する、合衆国大統領を誘拐する、歴代大統領のみしか見ることを許されない極秘文書を覗き見る、やってることはとんでもないのに、どれもこれもがアッサリと成功するためにまったく見応えがありません。せっかくの見せ場が見せ場として機能していないのです。キャラクターの動かし方もうまくなくて、エド・ハリス演じるウィルキンソンは場面によって別人かと思うほど性格が安定していないし、ハーヴェイ・カイテル演じるセダスキーはその存在自体が不要。今回はゲイツの助手のライリーにスポットが当たっているものの、残念ながら彼の成長物語にはなっていません。もみあげのないニコラス刑事の髪型は気持ち悪いし、ダイアン・クルーガーは相変わらず学者には見えません。テンポは悪くないので見れない映画ではないのですが、一方問題点をここまではっきりと指摘できる映画も珍しく、良い評価のしようのない仕上がりとなっています。 [DVD(吹替)] 4点(2011-12-05 01:16:21)《改行有》

589.  トロン:レガシー 《ネタバレ》 チャチながら味のある映像、安いながらも独特の雰囲気を醸していた音楽、そんな「トロン」第1作を見た直後に「レガシー」を鑑賞したのですが、その素晴らしいアップグレードぶりには目を見張りました。最先端の映像は美しくてやたらかっこよく、仰々しい音楽は腹にドスンと響きます。とにかく目で驚かせる、これぞスペクタクルだと思いました。前半のハイライトである「ゲーム」の作り込みはハンパではなく、平面だけではなく垂直方向も意識したアクションの連続には大興奮させられました。21世紀に入って突如「トロン」続編の製作が発表された時には「なんで今更『トロン』なの?」と世界中が首をかしげたのですが、この映像を見せられると、「なるほど、これを見せたかったのか」と合点がいきました。ビジュアル的には百点満点の映画だと思います。。。 ただし、お話の方が弱いと感じました。どのキャラクターも薄味で感情移入できないし、タイトルロールである「トロン」の扱いもぞんざいなものです。ビジュアル的にはかっこいいのに、キャラクターとしてまったく掘り下げられていない点が非常に残念でした。心変わりの背景などをもう少し丁寧に描いていれば、見違えるほど良くなったと思うのですが。さらには、観客に世界観を伝え損ねていることも問題です。ポータルがどうのこうのとか、ケビンのディスクがどうのこうのという話はサッパリ意味不明だし、デジタル生命体アイソーの件も、やはりよくわかりませんでした。難解な世界観をうまく観客に飲み込ませていた「マトリックス」という先例があるのですから、もう少し丁寧に脚本を作り込むべきだったと思います。 [DVD(吹替)] 6点(2011-12-04 09:54:45)(良:1票) 《改行有》

590.  トロン 現在の目で見ても映像はかなり斬新で、視覚的にはかなり満足できる仕上がりです。「史上初のCG大作」と謳われつつもCGが使われているのは15分程度であり、残りは職人による膨大な手作業で作られたという映像には独特の味があって(当時ディズニーの社員だったティム・バートンもアニメーションスタッフとして参加したとか)、なかなか目を飽きさせません。使えるツールが限られている中で、よくぞここまで映像を作り込んだものです。ストーリーもかなり斬新で、現実世界と並行して仮想世界が広がっていたり、プログラムが擬人化されて彼らなりの社会を形成していたりと、その概要は「マトリックス」を大きく先取りしたものとなっています。もっと幼稚な内容を想像していただけに、これだけ硬派な世界観には驚かされました。これでお話が面白ければ…。斬新な着想を一本の映画として成立させ、使えるか使えないかわからない技術で視覚面を引っ張るというプレッシャーの中にあって、監督は一定の成果を挙げているとは思います。これ以上の働きを求めるのは酷かもしれませんが、とはいえ映画が全然面白くないのでは評価できません。抑揚のない演出、ダラダラとしたクライマックス、安直なハッピーエンド、もうちょい何とかならなかったのでしょうか。[DVD(字幕)] 4点(2011-12-04 09:53:54)

591.  タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 フィルム撮りを愛し、新技術に対して懐疑的なスピルバーグがついに挑んだ3D大作だけあって、技術的には物凄いことになっています。これまで見たどの3D映画よりも滑らかかつ迫力ある立体映像は入場料分の価値あり。特に凄いのが、3枚の羊皮紙を巡ってのバイクとハヤブサとのチェイスシーンで、「もう一回見せて」と言いたくなるほどのパワーと迫力に圧倒されました。やはりスピルバーグはスペクタクルの巨匠なのです。キャラクターの演出も相変わらず巧いもので、タンタンの愛犬スノーウィは誰からも愛される理想的なパートナーに仕上がっているし、失敗ばかりのハドック船長を観客からウザがられる一歩手前で愛すべきおとぼけキャラの域に留めている辺りのサジ加減も抜群です。。。 ただし、全体としてはアニメーションという初体験のジャンルをうまく活かせていないように感じました。「謎を解く→次の冒険へ→新たな謎の発生」という点と線をつなぐストーリー展開は「レイダース」を思わせるのですが、アニメ作品としては少々込み入っているように感じました。もうちょっとスリムにすべきだったと思います。また、アニメ作品のひとつの醍醐味は実写作品では不可能なほどの青臭いメッセージを大真面目に主張できることなのですが(「アイアン・ジャイアント」「ヒックとドラゴン」etc…)、本作はアニメならではの熱さを盛り込むことをしておらず、「実写で撮ってもよかったのでは?」という印象を受けました。これらについては、監督を担当したスピルバーグ、オリジナル脚本を書いたスティーブン・モファット、それをリライトしたエドガー・ライト、その全員が実写畑の人だったことが原因ではないかと思います。アニメ界の人材をブレーンとして入れていれば、結果は違っていたかもしれません。[映画館(字幕)] 6点(2011-12-04 09:15:33)《改行有》

592.  G.I.ジョー(2009) 原作が男の子向けの玩具であり、アメコミよりもさらに下の年齢層を対象とした作品であるため、本作の設定の粗さには文句を付けません。敵組織の目的がサッパリわからなかったり、国際社会におけるG.I.ジョーという組織の位置付けが謎だったりしますが(各国領空に自由に侵入する権限を持っている一方で、地元警察に拘留されたりする)、男の子向けのアクション大作でそういう細かいことを言うのは野暮ってやつです。しかし、本作の構成のマズさは指摘されるべきでしょう。とにかくペース配分がメチャクチャで、映画は2時間もたずに失速します。G.I.ジョー登場にはじまり(スネークアイズかっこよすぎ!)、メタルスーツによる見たこともないチェイスが繰り広げられる前半は大いに楽しめるのですが、物語にまったく起伏がない状態で緊張感皆無の撃ち合いをダラダラ続けているだけでは、後半に入ると一気に飽きが来ます。前半ほどインパクトのある見せ場を配置できなかったことも致命的で、本作はペース配分が完全に狂っています。。。 「ハムナプトラ」以降のスティーブン・ソマーズ作品はすべてこの傾向にあって、冒頭からフルスロットルで見せ場を畳みかけるものの、途中で息切れしてクライマックスでは平凡なドンパチをやってしまい、尻すぼみになって終わるということをここ10年間繰り返しています。この監督が「インディ・ジョーンズ」に憧れているということはわかります(「ザ・グリード」は当初、ハリソン・フォードが主演する予定だった)。冒頭で観客の心を掴み、冒険の世界に引きずり込むというアクション映画が心底好きなのでしょう。ただし、冒頭でハデな掴みをやれば、観客はそれ以上の見せ場を本編に期待します。スピルバーグにはその期待に応える力量があったのですが、残念なことにこの監督にはその力量がありません。だからこの人の映画はつまらない。予算制約によって冒頭に掴みのアクションを入れられなかった「ザ・グリード」がフィルモグラフィ中もっともバランスの良い娯楽作に仕上がっていることが何とも皮肉です。 [DVD(吹替)] 4点(2011-11-02 23:44:35)《改行有》

593.  アジャストメント ある日、私は行く予定のなかったある場所に思いつきで足を運び、そこで現在の妻と出会いました。妻もまたその場所には行く予定がなく、友達に誘われてたまたまその日・その場所に足を運んだということで、本当に偶然の出会いで私達の人生は決まってしまったというわけです。私は赤い糸や運命といったものは信じないのですが、偶然により人生は決定するということはかの経験から身に染みて感じています。そんな偶然と運命をテーマにしたラブストーリーが本作なのですが、重くなり過ぎず軽くなり過ぎず調度良い塩梅の娯楽作に仕上がっていて、2時間はきっちり楽しませてくれます。。。 本作のお話や雰囲気は「普通じゃない」や「ジョー・ブラックによろしく」に似ているのですが、ユニークなのは天使の設定です。彼らは人格的に優れているわけでもなければ、超越した知見を持っているわけでもない。神の指示通りに淡々と個人の運命を管理しているだけで、時として管理の目的すら見失い、凡ミスも犯してしまうという人間臭い設定は映画を面白くしています。彼らの能力には制限があって、物理的な事象はコントロールできるが、人間の心に直接影響を与えることはできない。そこで人間の出会いを管理することで、その人生を運命通りに導いているという設定となっています。「愛とは偶然なのか?それとも運命なのか?」というテーマや人間の心の扱い、扉を用いた見せ場はSF映画の傑作「ダーク・シティ」と酷似しているのですが、天使の設定の特殊性により差別化は図れています。「この恋を諦めればお前の夢は叶うが、その女性を選択すればお前の人生は平凡なものとなる」という定番のジレンマもばっちり決まっており、映画は非常にうまくまとまっています。。。 理解できないのは本作を「マイノリティ・リポート」のようなSFサスペンスとして売り込んだ日本の宣伝戦略で(本国ではラブストーリーとして宣伝されています)、配給会社の人達はSFサスペンスを期待して鑑賞した人達を落胆させるということが分からなかったのでしょうか?[DVD(吹替)] 7点(2011-11-01 22:59:30)(良:3票) 《改行有》

594.  パーフェクト・ゲッタウェイ 《ネタバレ》 デヴィッド・トゥーヒーはハリソン・フォード版「逃亡者」のオリジナル脚本を書いたことで注目され、当初は子供向けアドベンチャーだった「ウォーターワールド」をダークなディストピアSFに書き直すなど(ケビン・コスナーがせっかくの毒気を消したために映画の出来は散々でしたが)90年代のハリウッドでは一目置かれる脚本家でしたが、2004年にユニバーサルが年間最高クラスの予算を投じて製作したSF大作「リディック」を微妙な結果に終わらせてしまい、それ以降はハリウッドの表舞台から姿を消していました。そんな御大が5年ぶりに手掛けたのがこの「パーフェクト・ゲッタウェイ」なのですが、大物脚本家の満を持しての復帰作とだけあって、これが壮絶な仕上がりとなっています。あまりに面白くてぶったまげました。。。 この映画、不気味な予兆を重ねる前半部分からイヤ~な汗をかかせてくれます。ちょっとした不親切からヤバイ相手に絡まれ、凄惨な事件に引きずり込まれていくという導入部はいわゆる「テキサスもの」の流れなのですが、これを閉塞感のあるテキサスではなく開放感あるハワイでやったところが本作の新しいところ。陰惨な連続殺人とハワイとはイメージ的に結びつかないのですが、浮かれた新婚カップルが他人とトラブルを起こして楽しい気分がブチ壊されるという誰もが容易に想像できる不快感を間に挟んだことで、両者をうまく結び付けています。主人公カップルが疑心暗鬼に陥る中盤も巧く作られていて、現在行動を共にしているカップルはどうやらヤバそうだが、もっとヤバいカップルから目を付けられている手前、このカップルからは離れられないという緩やかな八方塞がり感がお見事です。そしてラストには空前絶後のオチが待っているのですが、加害者と被害者が逆転し、主役と脇役が交代するという大胆なオチには意表を突かれました。「ズルい!」とも思ったのですが、犯人カップルの会話を振り返ると、これがオチと見事に整合しています。観客の先入観を利用して彼らを被害者であると錯覚させていただけで、彼らの会話は獲物を選別する犯人の会話としてきちんと成立しているのです。この大胆さと緻密さには完全にやられました。お見事![DVD(吹替)] 8点(2011-10-31 19:52:29)(良:1票) 《改行有》

595.  マイティ・ソー 痛快なアクションと能天気な笑いの絶妙なブレンド、これぞアメコミ映画の王道といった仕上がりで大変楽しめました。現代アメリカにやってきたムキムキが頓珍漢な行動で騒ぎを巻き起こす前半は「ミラクルマスター7つの大冒険」や「マスターズ超空の覇者」といった80年代B級映画を思わせる軽い作りで安心して楽しめるし、彼が力を取り戻してからのバトルは21世紀ならではの素晴らしい視覚効果の連続で目を釘付けにします。父と子の確執、兄と弟の確執、父の愛を得ようとした弟の歪んだ愛情表現等のドラマも重すぎず軽すぎず無難にこなせており、ケネス・ブラナーを監督に起用するというサプライズ人事が見事に功を奏しています。クリス・ヘムズワースは完璧にソーになりきっていて、力自慢の傲慢な王子であるが、同時に仲間思いの良いお兄ちゃんという愛嬌あるキャラクターをきっちりモノにしています。オーディン王やジェーン・フォスターのキャラはやや弱いように感じたのですが、それらの役柄をそれぞれアンソニー・ホプキンスとナタリー・ポートマンという実力ある俳優に演じさせたことで、こちらもまた奇跡的に何とかなっています。地味~にホークアイも初お目見えし、いよいよ「ジ・アヴェンジャーズ」への期待も高まるところなのですが、神様であるソーって他のヒーローと比べて力がありすぎやしませんか?キャプテン・アメリカなんて単なるムキムキですからね。[DVD(吹替)] 7点(2011-10-31 19:50:53)

596.  ブギーナイツ 《ネタバレ》 撮影・編集は凝りに凝っており、技術的には非常にレベルの高い映画です。題材選びも面白いし脚本も素晴らしいので良く出来た佳作には仕上がっているのですが、惜しいところで傑作にはなりきれていないという印象です。この監督は登場人物を冷めた視点で描く傾向があり、傲慢な大富豪を描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」ではその傾向が吉と出ていましたが、若者の成長物語でもある本作では、この冷たさが時にアダとなっています。監督自身がキャラクター達を愛していないのでドラマはエモーショナルな抑揚に欠き、劇中さまざまな事件が起こってもどこか平板な印象を受けるのです。本作で例外的に感情が爆発するのは主人公エディが家出をする序盤なのですが、これは監督自身の経験を元にしているため。監督は映画以外の物には関心を抱けない人物であり、そのため学生時代には成績も悪かったようなのですが、彼の母親はそれを許さず口汚く罵られる日々が続いたとか。そんな過去を主人公エディにも追体験させたため、映画全体から浮いてしまうほどにあの場面だけが突出して生々しいのです。。。 本編で注目すべきはダメ人間達の生き様です。オヤジであるジャックをはじめポルノ一家の面々は「自分達は映画という作品を作っているのだ」という一点に人間としてのプライドをかけています。自分達は監督・俳優であって、裸だけが売りの人間ではないというプライドを。しかし劇中劇を見ると、悲しいほどにこのプライドが滑稽に感じます。セリフはすべて棒読みだし、演出も編集もボロボロ。無能な人間が寄り集まって「俺達はダメじゃないんだ」と傷を舐め合っているようにしか見えません。エディは裸以外にも取り柄があるはずだと信じてポルノ一家を飛び出しました。性描写のみに特化したAVを撮れと言われたジャックは「俺はフィルムメーカーだぞ!バカにするな!」と激怒し、激しくこれを拒否しました。しかし、結局彼らは裸の世界に戻ってきます。他に生きる場所がないことを思い知ったからです。唯一、ドン・チードル演じるバックはポルノ業界から脱出することに成功しますが、それは神がかった幸運のおかげであって彼が無能であることに変わりはありません。一家が再集合するラストをハッピーエンドと見る向きもありますが、ポルノという閉じた世界に居場所を見出さざるをえないエディ達の姿は、むしろバッドエンドと考えるべきでしょう。 [DVD(吹替)] 7点(2011-10-29 21:14:27)《改行有》

597.  クライム&ダイヤモンド 《ネタバレ》 残念ながら面白く感じませんでした。全体的なプロットは良いのですが、細部があまりに雑なのでアラばかりが気になります。そもそも主人公フィンチは詐欺師なのですから、彼の語る物語には真実と嘘が巧妙に混じり合っていて、その嘘を解き明かしていく過程で全体像が見えてくるというのがこの手の映画の基本でしょ。例えばダイヤモンドに係るエピソードはラスト近くにまで伏せられていて、最後の最後で主人公の目的はダイヤモンドを奪うことだったという話にすればよかったのですが、そういう捻りがこの映画にはありません。詐欺師がバカ正直に事実を話してどうすんだって感じです。また、タイトルにもなっているクレディス・タウト氏に係る謎についても同様です。刑務所を脱獄した主人公フィンチは逃亡用の新たな身分を得るためクレディス・タウトという死者の名を騙るのですが、このクレディス・タウトとはマフィアの逆鱗に触れて暗殺された人物でした。タウト氏は生前から正体不明の人物であったことが劇中で語られるため、彼の正体が映画の重要なピースのひとつになると考えるところですが、驚いたことにタウト氏に係る伏線は完全に放棄されて映画は終わってしまいます。この雑さはさすがにアウトでしょ。その他にも本作にはご都合主義が横行していて、中でもダイヤモンドを掘り起こしたい主人公が自ら刑務所に収監されるエピソードの粗さには唖然としました。主人公:俺を刑務所に収監してくれ→警察:自分を刑務所に入れろっておかしくないか?ま、いいか。主人公:俺が刑務所内の庭を掘ることを認めてくれ→警察:刑務所の庭に何か埋まってるのか?ま、いいか。結果、何の苦労もなくダイヤモンドを掘り起こしてしまう主人公。犯罪ミステリーでこんな頭の悪いやりとりをしちゃいけないでしょ。詐欺師である主人公が口八丁手八丁で警察に無理な要求を飲ませるというプロセスを入れていればストーリーの説得力が増すし、主人公のキャラクター付けにもなったはずなのですが、シナリオはそうした工夫を完全に怠っています。監督・脚本を担当したクリス・バー・ヴェルなる人物は本作以降ハリウッドから姿を消していますが、有名俳優を何人も配置したこの企画をこの程度の仕上がりに終わらせたのでは、干されたのも仕方ないと思います。[DVD(吹替)] 3点(2011-10-28 09:51:06)(良:1票)

598.  告発のとき 《ネタバレ》 これは困りました。まったく面白みのない捜査が90分以上も続くため酷い評価をしてやろうと思っていたら、ラスト30分で監督の意図がわかった瞬間に傑作になってしまいました。まったく面白くないが、素晴らしさは十分に伝わってくる映画。とても評価に困ります。 タイトルの” the Valley of Elah”とは古代イスラエル軍とペリシテ軍の決戦の地。ペリシテ軍が誇る巨人兵士ゴリアテにイスラエル軍は戦意喪失し、誰も戦いを挑まない状態が40日に及んでいました。そんな中ゴリアテ退治に名乗りを上げたのがダビデという羊飼いの少年でしたが、その小さな体では甲冑を身につけることも刀を振ることもできないダビデは、小石5つとパチンコだけを手にゴリアテに挑みます。絶望的な戦力差の戦いでしたが、ダビデは恐怖に負けず冷静に石を放ち、見事ゴリアテの額を砕いてこの戦いに勝利しました。。。 この物語が示すことは、勇気を持てば大きな力が与えられるということ。本作の主人公ハンクも、息子達に勇気を持つことを求めました。しかし現実は伝説ほど容易ではありません。もしゴリアテが都合良く倒れてくれなかった場合、ダビデはどうなっていたのか?それが明かされるのが本作のクライマックスです。「勇気を持て」という親達の期待に応えてイラクに出征した若者たちは戦争の狂気に勝つことができず、完全に壊れた状態で祖国へ戻ってきました。ハンクは息子を殺した犯人を探して執念の捜査を続けてきましたが、その捜査の果てに、若者を戦地に送り込んだ自分達こそが息子を死に追いやった加害者であることを思い知るのです。ハンクには息子を救うチャンスがありました。戦争の狂気に直面したマイクがハンクに助けを求めて電話をかけてきたのですが、ハンクは息子のSOSに気付かず、ただ「戦友に涙を見せるな」というアドバイスだけをして会話を終わらせてしまいます。もしここで息子の弱さを受け入れていれば、息子を狂気で失うことはなかったのですが。。。 本作は戦場の狂気というよくあるテーマを扱っており、その内容は「ディア・ハンター」「フルメタル・ジャケット」はたまた「ランボー」とも似通っているのですが、ダビデの物語を絡めることでテーマを普遍的な親子の葛藤にまで敷衍している点がポール・ハギスの抜群の構成力の為せる技。本作は評価に困る映画ではあるものの、この惚れ惚れするほどの構成の巧さに8点以下は付けられません。 [DVD(吹替)] 8点(2011-10-27 21:18:24)(良:3票) 《改行有》

599.  ストーリーテリング 《ネタバレ》 トッド・ソロンズという監督は過激な題材を扱いつつも直接的な暴力や性描写は徹底して避ける人なのですが、「フィクション」編ではかなり露骨な性描写がなされています。また、主題について登場人物がセリフではっきりと喋ることも例外的であり、「フィクション」編はソロンズ作品としてはかなり異色な仕上がりなのですが、ここにソロンズの意図があります。恐らくこのパートは過激な描写があれば立派な社会派作品として扱われる風潮への反乱であり、外面的なショックのみに反応する観客達を挑発するためだけに作られたパートなのです。こんな底意地の悪い前振りを作り、そしてそんな前振りのためだけに当時人気が出始めていたセルマ・ブレアを裸にしてあんなことやこんなことをやらせたソロンズ、恐るべしです。 そうして「フィクション」編によるウォーミングアップを終えて後半の「ノンフィクション」編に入ると、映画のイタさはフルスロットル状態となります。殺人者やレイプ魔がひしめき合っていた「ハピネス」をも超える漆黒の闇が広がるのですが、そのあまりのイタさにすっかり魅了されました。本作にヘンタイは登場しないのですが、無気力人間スクービーを除く登場人物全員が無神経であり、本人の自覚のないうちに他人を傷つけまくります。「ハピネス」のような極端さがないだけこちらの方がリアルだし、身近に感じる分見応えがありました。さらに本作が凄いのは映画史上最大のタブーにまで踏み込んだことで、ユダヤ人の被害者ナショリズムや拝金主義にまで鋭く言及しています。「うちのおじいさんはホロコーストの被害者だ(おじいさんは戦前にアメリカに移民しているため、実際にはホロコースト経験者ではない)」と言い張るリビングストン家の人々が南米からの移民である家政婦をボロ雑巾のようにコキ使い、その献身に一切の感謝もせず使い捨てにしてしまうという展開が準備されています。その家政婦が善意の被害者であるかと言えばそうでもなく、レイプ殺人を犯した孫のために涙し(孫の無実を信じているわけではなく、孫は確かにレイプ殺人を犯したが、それは悪いことではないという無茶な論理で泣くのです)、ラストでは一家虐殺までを行います。とにかく登場人物全員がどうしようもなく、観客に何の拠り所も残さない徹底したダークぶりには恐れ入りました。 [DVD(吹替)] 8点(2011-10-24 23:47:55)(良:1票) 《改行有》

600.  クレイジーズ(2010) ロメロをプロデューサーとして迎えているだけのことはあって、オリジナルをかなり尊重したリメイクに仕上がっています。細かいエピソードにはオリジナルから引用したものが多くて、「ゾンビ」とは似ても似つかぬ映画になってしまった「ドーン・オブ・ザ・デッド」などと比較すると、その製作姿勢には大変好感が持てました。その一方で、ただオリジナルをなぞるだけではなく21世紀版としての適度な改編がなされている点でも本作は評価できます。細かいネタはオリジナルから拾いつつもその味付けを変えており、オリジナルとはまた違う楽しみが出来る作品に仕上げているのです。オリジナルはかなり体制批判的な作品でしたが、その作風は公民権運動やベトナム戦争を経た70年代という時代背景を反映したものであり、そんな作風をそのまま現代に復活させても時代錯誤なリメイクが仕上がるだけ。そこで本作は体制批判的な面をバッサリ落とし、ソリッドなサバイバルアクションとして「クレイジーズ」を再構築しています。最大の変更点は軍隊の指令系統をまったく描かなかったことで、これにより社会派作品としての魅力は失ってしまったものの、映画の視点を逃げる主人公のみに絞ったことでアクション映画としての面白さは倍増しています。主人公は、自身がウィルスに感染するという脅威だけでなく、感染者による襲撃と軍による追跡という複数の脅威と戦うこととなるのですが、描写を限定したおかげで主人公の苦境がオリジナル以上に鮮明となっています。アクションの面白さやショックシーンの作り込みはオリジナルを凌駕しており、電ノコを持った感染者、鍬で人を串刺しにする校長先生、洗車場での襲撃等、気合いの入った描写が目白押しです。アクション映画として作り直したことで映画全体のテンポも変わっており、序盤からサクサクと話が進んでいく点でもオリジナルより見やすい娯楽作となっています。オリジナルを尊重しながらも時代に合わせて作風を変える、これは理想的なリメイクの形であると思います。[DVD(吹替)] 7点(2011-10-21 01:13:36)(良:2票)

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