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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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681.  スパイダーマン:ホームカミング 《ネタバレ》 IMAX-3Dにて鑑賞。ワシントンモニュメントを登る場面での高さの表現においてはなかなかの3D効果があったものの、スパイダースイングの浮遊感が素晴らしかった『アメイジング・スパイダーマン2』と比較するとインパクトは落ちています。あと、これは他の3D映画にも言いたいのですが、3Dメガネをかけるために只でさえ画面が暗く見えてしまう3D映画において、夜のシーンを多用するのは本当に勘弁して欲しいです。 本作はリブート第一作なのですが、話は『シビル・ウォー』から直接続いている上に、設定の説明は端折られているために、第一作を見ているというフレッシュな感覚はほとんどありませんでした。スパイダーマンは何度も何度も作り直しすぎだし、10年くらい凍結してリフレッシュした方がいいんじゃないかと思います。 また、本作は他のマーベル作品と世界観を共有していることから、この世界ではスパイダーマンクラスのヒーローは大して珍しくもないし、人助けをしても有難がられないという点が、このコンテンツの持つ大きな特色を奪っています。スパイダーマンはオーディエンスの存在が特に重要な作品であり、サム・ライミ版でもマーク・ウェブ版でもオーディエンスに励まされながらスパイダーマンが強敵と戦うことが感情面での盛り上がりを作っていましたが、本作においては肝心のオーディエンスの姿がありません。このために、本作はエモーションが欠けた内容となっています。 とまぁ、長々と文句を書いてきましたが、ヴィランであるバルチャーが大変魅力的だった点は、本作の長所となっています。大企業スタークインダストリーに仕事を奪われ、部下を露頭に迷わせるかどうかという事態に陥ったことから悪事に手を染めるようになり、そのうち悪事が本業となってしまった中小企業の社長なのですが、世に迷惑をかけるとか、アベンジャーズを倒すみたいなたいそうな目的はなく、スパイダーマンと敵対したのも商売を邪魔されたためであり、スパイダーマンよりもバルチャーの方に感情移入してしまいました。演じるマイケル・キートンはリメイク版『ロボコップ』から引き続き、人間味のある悪役を見事に演じており、本当に上手な俳優さんだなと感心させられました。[映画館(字幕)] 5点(2017-08-12 02:07:00)(良:2票) 《改行有》

682.  コップ・カー 『スパイダーマン/ホームカミング』の予習として、謎の監督ジョン・ワッツの出世作である本作を鑑賞しました。 少年の冒険物語とクライムサスペンスという異色の組み合わせが目を引く作品であり、このおかしなブレンドでよくぞ映画を成立させたなと感心させられたのですが、それ以上の作品にはなりえていないという点が残念でした。 また、90分未満というコンパクトな上映時間でありながら畳みかけるような勢いがなく、それどころか妙にチンタラした展開もあったため、イベントの詰め込み方が甘いと感じさせられました。[インターネット(吹替)] 5点(2017-08-10 22:21:52)(良:1票) 《改行有》

683.  コンカッション(2015) 《ネタバレ》 極限まで肉体を酷使するスポーツがアスリートの健康を害しているなんて、当たり前のことじゃないです?特にプロスポーツ選手は好きなことを職業にした上で、普通の人では一生見ることのできない金額を数年で稼ぐのだから、肉体を捧げることに対する見返りは十分に受け取っているわけです。そんな特殊な世界を指さして「アメフトは体に悪い。選手は被害者だ」とした主人公の主張にあまり賛同できなかったため、作品全体への共感は低くなりました。 例えば日本の大相撲だって、無理やり大食いをさせることで力士達の体格を作っており、おそらくは成人病リスクは滅茶苦茶に高いはず。寿命だって短いと思います。しかし、そのことを咎めて「力士には健康的な食事をさせましょう。肥満は厳禁」とやってしまうと、大相撲という競技は消滅するか、存続するにしても形を大きく変えるかしかなくなります。主催者・選手・観客の間での暗黙の了解が成り立っていることをわざわざ突っついて一体誰が得するのかというのが、本作の主人公を見た私の率直な意見です。また、本編の最後には元選手5,000人がNFLを提訴したというテロップが出てきますが、さんざん稼いだ後になって「自分たちに十分なリスク説明がなかった」として主催者を訴えるなんて、いかにもアメリカ的だなと思ってしまいました。 また、物語の構成もよろしくないと感じました。このテーマであれば、正義一直線のオマル医師ではなく、かつて身を寄せていた業界と敵対せざるをえなくなったバイレス医師を主人公とし、大儀と人間関係の間で苦悩する姿を描けば面白くなったと思うのですが。[DVD(吹替)] 5点(2017-08-05 23:30:11)(良:1票) 《改行有》

684.  ワイルド・スピード/ICE BREAK 《ネタバレ》 IMAX 3Dにて鑑賞。3D効果はほとんどないため3Dメガネが邪魔でしかなく、これなら追加料金を払わず通常版で見ればよかったと後悔しました。 本シリーズについては前2作の時点ですでに飽きがきていたのですが、それでも圧倒的な世界興収等の話題性に負けて初日に見てしまいました。で、内容ですが、苦手だった前2作と何も変わっとらんやんけ~という、何ともガッカリなものでした。ま、ユニバーサルからすれば大成功を収めた前2作から路線変更をする理由などはどこにもないわけで、引き続き同じものを出されるということは見る前から分かってはいましたが。 見せ場はとにかく派手に豪華にということで、リアリティなど完全無視の見せ場が次々と繰り広げられます。本作の世界においては、すべての乗り物には自動走行機能が標準装備されているようで、車も潜水艦も無人で走行します。また、すべての乗り物はネットワーク接続されているようで、ハッカーがキーボードを叩けば何百台もの車が走行を始めるし、魚雷発射までが遠隔操作でできてしまいます。リアリティを求めるタイプの映画ではないものの、ここまでムチャクチャな理屈で見せ場を作られてしまうと冷めてしまいます。また、人間が戦っているという感覚が残っていないために、まったく手に汗握ることはありません。 さらに本作の見せ場が歪なのは、これだけ大掛かりな見せ場が続くのに、サイファーがドミニク一人に現場仕事をさせているということ。潤沢な資金と装備を抱え、オーウェン・ショウやジャカンディといった闇のコネクションも持っていた彼女なら現場チームくらい簡単に作れるはずだし、彼女の息のかかった兵隊達にドミニクのサポート兼監視をさせれば計画はうまくいくのにと、終始イライラしてしまいました。これでは起こるべくして起こった失敗であり、優秀なはずのサイファーが愚か者にしか見えませんでした。 また、ドラマもうまく流れていません。事あるごとに友情だのファミリーだの言って武田鉄矢並みにめんどくさくなっていたドミニクが悪の道に戻ったことだけは良かったものの、これに対抗すべくファミリーに合流したのがショウ兄弟というのは、さすがにあんまりでは。兄のデッカードはファミリーの一員だったハンを殺した男だし、弟のオーウェンもジゼル死亡時の敵軍大将であり、さすがに「拳を交えてみて分かり合えた」みたいなノリは通用しない相手。そんなショウ兄弟をすんなり受け入れたことで、友情やファミリーといった本作のキーワードがどんどん胡散臭くなっていくわけです。最後にはドミニクも合流しておなじみのバーベキュー。そこでまた金八先生みたいな演説を始めるので、もうお腹いっぱいでした。ちゅーかサイファーを取り逃がして問題は未解決だし、ドミニクJr.の母親であるエレナは殺されたのになんで祝賀ムードなんだよと、彼らの呑気さにも呆れてしまいました(レティとドミニクからすれば、このままだと扱いに困ったであろうエレナが、彼らにとっての念願だった子供だけを残して都合よく退場してくれたことは歓迎すべき展開だったのかもしれませんが)。 シリーズはあと2作あるらしいですが、さすがに次は見ないかもしれません。[3D(字幕)] 5点(2017-04-29 01:30:49)《改行有》

685.  ゴッドファーザー PART Ⅲ 《ネタバレ》 老いたマイケルの物語と、ファミリーの子供たちの物語を同時に見せるという構成は第一作を踏襲したものであり、第一作でファミリーを継いだマイケルが、今度は後進を育成する側に回るという点がなかなか興味深かったのですが、残念なことに彼とヴィンセントの間のドラマはうまく流れていません。ヴィンセントは、登場場面こそ父親ソニー譲りの狂犬ぶりを見せて「こいつはちゃんとしつけねば」と観客を大いに不安にさせるものの、その後はさほどの暴れっぷりを見せることもなく、気が付けば三代目ドンの座に納まっているのだから、そこに感動も何もないのです。演じるアンディ・ガルシアの力量にも問題があって、第一作のアル・パチーノはドラマの進行とともに表情がどんどん変わっていき、普通の青年から大ファミリーを束ねるドンへの変貌ぶりをきちんと体現できていたのに対して、ガルシアには最初から最後までこれといった変化が見られませんでした。 1979年に発生したローマ法王暗殺疑惑をそのまま当てはめた本作の展開は、スケールが大きすぎて逆にピンとこなかったし、敵がまったくキャラ立ちしていないために、マイケルが一体誰と戦っているのかすら見失いそうになりました。芸術面でも娯楽面でも前2作からかなり後退したと言わざるをえません。 唯一興味深く感じたのはラストであり、一時は世界の権力中枢に迫るほどの勢いを持っていたマイケルがたった一人で亡くなる様は、孫との戯れの中で亡くなったヴィトーの最期と好対照をなしており、マイケルが最後の最後まで孤独な人間であったことを浮き彫りにしています。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2017-03-18 02:49:31)《改行有》

686.  不屈の男 アンブロークン 原作に不適切な表現があったことから反日映画とのレッテルを貼られて大変なバッシングに遭った不幸な作品ですが、作品内容は極めてフェアーなものだったと思います。本編は個人と個人のぶつかり合いに終始しており、決して日本を批判するものでもありません。さらには、日本に対する無差別爆撃の被害状況など通常のアメリカ映画が避けて通る描写にも果敢に挑んでおり、私生活でも平和活動に積極的なアンジェリーナ・ジョリーは作品にも一本筋を通しています。また日本人として面白かったのは、主人公の乗る爆撃機がゼロ戦に襲われる場面の恐怖心の演出であり、アメリカさんから見た戦争はこんな感じだったのかと興味深く感じました。 ただし、映画としては面白くありません。元から強いメンタルを持っていた主人公がただひたすら虐待に耐えるだけの内容であり、そこにドラマがないのです。主人公、主人公に暴力を振るう看守、凄惨な現場を眺める他の捕虜達、これら全当事者の誰にも何の変化もなく、これでは残酷描写を売りにしたゲテモノホラーと大差ありません。 この点については、アンジーの個人的な思想が作品にとってマイナスに働いたように感じます。アンジーはいわゆる進歩的な文化人であるため、アメリカ万歳映画にはしないという意図を持って本作を製作したと考えられます。それゆえに、主人公の持つ愛国心という重要なファクターが丸ごと落とされているために、話の通りが悪くなっているのです。主人公はなぜ暴力に屈服しなかったのか、日本当局からの懐柔案にも乗らなかったのか。それは愛国心ゆえのものだったのに、アンジーはあくまで個人のドラマとして本作を製作したために、暴力を振るう側も振るわれる側も何やってんだかよく分からない内容になっているのです。 また、歴史映画でありながらリアリティの造成にも失敗しています。前述した東京大空襲やゼロ戦の描写など、表面的な事実を描くことには一定の成果を挙げている一方で、本編においては実際に起こったことならではの生々しさというものがないのです。例えば、渡邊伍長が狂人の如く振る舞っている最中に、他の日本人看守達は一体何をしていたのか。虐待に参加するでもなく、上層部に告発するでもなく、無味無臭でそこに存在しているだけ。こうした細かい部分に演出の目が向いていないために、全体としてリアリティを感じられない話になっています。[インターネット(字幕)] 5点(2017-01-09 13:36:13)《改行有》

687.  トリプル9 裏切りのコード 多数の人気俳優を持て余すことなくそれぞれから良質の演技を引き出しており、同じくスター共演作だった『欲望のバージニア』と同様に、ジョン・ヒルコート監督は良い仕事をしています。特に、マフィアのボス役を演じたケイト・ウィンスレットの迫力や凄みは非常に素晴らしく、彼女は作品の要としてきちんと機能しています。また、見せ場もかなりこだわって作り込まれており、強盗団がちゃんと優秀に見えていた点も評価できます。 ただし、各構成要素はよくできていても全体としては面白くなっておらず、映画としては残念な出来でした。ひとつひとつの構成要素は良いものの、量があまりに多すぎることと、それらを捌くには尺があまりに短すぎることからすべてがアッサリと流されている状態であり、もはや消化試合のような有様となっています。観客に何を感じ取って欲しいのかという観点から全体を構成し、描くものをより絞り込むべきだったと思います。 本作の山場は、トリプル9発動のために相棒・クリスを殺すことに決めたマーカスのドラマにあったと思います。当初は、まったくソリの合わない相棒なんてぶっ殺しても構わないと思っていたものの、その後ヒスパニック系ギャングとのいざこざを契機に仲良くなり、殺しづらくなってしまう。二人の関係性に焦点を絞れば映画に一本筋が通ったと思うのですが、残念ながら監督はこのドラマもアッサリと素通りしてしまいます。これは本当に残念でした。さらには、この部分を重視しなかった結果、一応は主演であるはずのケイシー・アフレックが居ても居なくてもどっちでもいいような状態となっています。これはさすがにマズイでしょ。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2017-01-07 21:01:27)《改行有》

688.  クリムゾン・ピーク 《ネタバレ》 おぞましくも美しい美術はさすがのデル・トロであり、十分に目を楽しませてもらいました。ティム・バートンの角がとれた今、このジャンルの先頭に立っているのはデル・トロであるということは間違いないようです。 ただし映画として面白かったかと言われると、それは微妙。物語の舞台がクリムゾン・ピークに移るまでに1時間もかかっている展開の遅さや、幽霊話と殺人事件がうまく絡んでいないという構成のまずさ。また、クリムゾン・ピークに移る前から主人公は怪奇現象を経験していることから、クリムゾン・ピークとおばけ屋敷のインパクトが相対的に薄まっているという点もいただけませんでした。おばけ屋敷ものにするのであれば、怪奇現象はそこでしか起こってはいけないと思います。 本作の制作にあたってデル・トロはキューブリックの『シャイニング』を意識したと言っており、確かに幽霊よりもキ○ガイの方が怖いというオチにはなっているものの、閉鎖空間でキ○ガイと過ごさねばならないことの恐ろしさの描写がいま一歩足りていません。ルシールが絶対的な強者ではなく、かつ、イーディスが絶対的な弱者でもなく、それどころか二人の間にいるトーマスはどちらかと言えばイーディス側に寄っているため容易に逆転可能な勢力図になっていることがその原因であり、そのために主人公側の絶望感が絶対的に不足しています。 そのトーマスはトーマスで、煮え切らない態度をとるのでイライラさせられます。敵は姉一人であり、男が本気を出せば力で押さえ込むことは容易なはずなのに、彼がウジウジと悩んでいる間に状況がどんどん悪化していくのだから困ったものです。真相に気付いて屋敷までやってきたアランを殺したと見せかけて実は急所を避けていましたという偽装工作にも、一体何の意味があったのかわかりません。あの場でトーマスとアランが力を合わせてルシールを押さえにいけば誰も死なずに済んだはずであり、彼の不合理な行動の数々が映画のテンションを下げています。 あとお母さんの幽霊、ヤバそうな雰囲気で登場して「クリムゾン・ピークに近づくな~」となぞなぞみたいな警告の仕方をしないでね。あれでは絶対に伝わりません。「結婚詐欺に気を付けて~」と言えばよかったのに。[インターネット(字幕)] 5点(2016-11-11 12:29:29)(良:1票) 《改行有》

689.  キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け 《ネタバレ》 還暦過ぎているにも関わらずリチャード・ギアがとにかくかっこよく、年齢が半分の愛人を夢中にさせていることにもまるで違和感がありません。さらには、百戦錬磨の経営者らしい落ち着きや、いざとなればダーティな手段も厭わないという老練ぶり、家に帰れば良い家庭人であり、孫からも慕われている優しいおじいちゃんぶりなど、「これが同一人物なのか」と思うほど幅の広い役柄を違和感なくこなしており、ギアの良いところがたっぷり詰まった作品となっています。 ただし、リチャード・ギア以外の部分の出来があまり良くないのが困ったところで、映画としてはそれほど面白くありませんでした。何不自由ない金持ちに見えるギア社長も実は投資で会社の財政に大穴を空けており、粉飾がバレれば全財産を失う上に刑務所にも入らねばならないというギリギリの状態にいます。そこで彼のとった行動が、問題が明るみに出る前に会社を銀行にM&Aさせようというものでしたが、ここがよく理解できませんでした。M&Aさせるのであれば買い手企業からのデューデリジェンスを受けるはずであり、その過程で隠したい粉飾決算が明るみに出るおそれがあります。粉飾をしているのであれば自力で穴を埋めにいくべきであり、そんな状態でM&Aなどちょっと考えられません。 また、愛人を交通事故死させた件が本編とうまく絡んでおらず、ここだけが別の映画のように見えていることもマイナスでした。さらには、主人公を追いかける刑事がコロンボや古畑任三郎のような腕利きかと思いきや、パラノイア的に金持ちを恨んでいるだけの小物であり、証拠偽造というアホな手段をとって自爆してくれるために、こちらのパートも盛り上がりに欠けました。 唯一面白かったのは、自分の娘が担当する部門に粉飾を押し付けていることであり、親の名前で会社に入っている娘や息子では能力的にも技術的にも未熟で粉飾に気付かないだろうという主人公の魂胆を興味深く感じました。彼は確かに良き家庭人であり、子供達を愛しているものの、ビジネス面では二世の能力を低く評価しているというシビアな面がここから窺えます。[インターネット(字幕)] 5点(2016-11-07 00:10:35)《改行有》

690.  スター・トレック/BEYOND 《ネタバレ》 IMAX 3Dにて鑑賞。前作『イントゥ・ダークネス』に続いて3D効果を実感しやすい見せ場が多く、3D料金を払うだけの価値はありました。 ただし、内容の方は難ありです。JJエイブラムスが『スター・ウォーズ』の引き抜きに遭って監督選びが難航した新シリーズ第3弾ですが、娯楽作の経験豊かなジャスティン・リン(ここんとこの大作の監督候補にはとりあえず彼の名前が挙がる)という人選が本作では裏目に出ていました。彼の演出は常にせわしなく、じっくり見せて欲しい画を全然見せてくれないのでSF向きではないのです。例えば宇宙基地ヨークタウンなんて実に素晴らしいデザインだったのに、その全体像が見られるのは登場場面のほんの10秒程度。もったいない限りです。戦闘に入るとさらに画面は忙しくなり、もはや誰が何をやっているのかがサッパリわかりません。危険区域にいるのは誰で、その人はどっちを目指さなければならないのかという基本的な情報すら伝わってこないため、スリルも何もあったもんじゃないのです。 お話の方もイマイチです。無軌道な生き方をしていたカークが宇宙での仕事に生き甲斐を見出した前々作、大失敗の後にリーダーとしての本分を見出した前作と、本シリーズはカークの成長物語でもあったのですが、本作ではその要素が弱いために作品を貫く主軸を失っています。一応は、長い航海に飽きが来て転属を希望してたけど、いろいろあってまた仕事の楽しさが分かりましたって話はあるものの、大事なエンタープライズを破壊され、多くのクルーを殺害され、しかも敵は自分自身の将来像かもしれないという鬱展開の多かった今回の冒険でどんな楽しみややりがいを見出したんだよと思ってしまいました。これだけの災難を経験すれば、普通は艦長辞めたくなるでしょ。話の内容とドラマの方向性が一致していないため、こちらでも感じるものが少なくなっています。 また、今回は敵も微妙。「実はジャミラでした」というクラールの正体が明かされた瞬間だけはちょっと面白かったものの、連邦が生み出したテロリストという設定は前作のカーンと重複しているためにその存在意義は薄くなっています。また、終盤まで彼の正体を隠していたために、劇中のほとんどの時間においてその行動原理が不明であったことも作品のテンションを落とすことに繋がっており、監督や脚本家の意図が悪い方向に出てしまっているように感じました。細かい点をつっこむと、中盤にてカーク達が拠点として使用していたUSSフランクリンは敵に場所を知られていないということになっていたものの、そもそもクラールがフランクリンの艦長だったのならその場所を知らないはずがなく、なぜ彼はフランクリンを攻撃しに行かなかったのかと不思議に思いました。 「スタートレックは偶数回が当たり回、奇数回が外れ」と言われていますが、その伝統通り、今回はハズレ回でした。ただし、次回は傑作になるはずなので、新作が出ればまた見に行きます。 それはそうと、前作で意気揚々とエンタープライズクルーになったアリス・イヴは一体どこへ消えたんでしょうか。[映画館(字幕)] 5点(2016-10-21 22:59:02)(良:4票) 《改行有》

691.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。 『アルティメイタム』で綺麗に終わった話をどうやって再開するのかという点が鑑賞前の不安だったのですが、案の定、完成した作品は語るべき物語を見失って迷走していました。ジェイソン・ボーンのアイデンティティを探る話はまだまだ続くのですが、シリーズ継続のために捻り出された後付けの設定があまりにご都合主義的なので醒めてしまいます。『24』もそうでしたが、エージェントもので実は父親も陰謀に関わっていたという話を出し始めると、いよいよお終いですね。 国家が作り出した殺し屋というものを見たことがある人はほとんどいないため果たしてそれがリアルなのかどうかは分からないが、少なくとも「殺し屋とは、きっとこんな感じなんだろう」と思わせるような説得力ある描写こそがボーン3部作の魅力でした。地下鉄を脱線させろとか、大爆発を起こせとか言ってくるスタジオと喧嘩しながら堅実な作風を守ったダグ・リーマンが本シリーズの基本路線を作り、ポール・グリーングラスがそのスタイルを継承発展させることでボーン3部作は本物志向のアクション映画の太祖となったのですが、一転して本作は『ボーン・アイデンティティ』が登場する前の単純な爆破アクションに先祖返りしています。観客を楽しませたいというサービス精神は理解できるものの、ド派手になりすぎた見せ場にはもはや生身の人間が闘っているという感覚が残っておらず、見せ場が派手になればなるほど手に汗握らなくなるというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入っています。クライマックスのカーチェイスなどは『ワイルド・スピード』の新作のような有様であり、本シリーズのファンが求める見せ場からはかけ離れています。そういえば、『ボーン・レガシー』続編の監督にジャスティン・リンが起用されたという話が一時期ありましたが、結果的にボツとなったその企画で考えられていたカーチェイスがそのまんま本作に流用されたのではないか。そんな邪推を生むほど、クライマックスのカーチェイスはシリーズ全体の雰囲気から浮いていました。 見せ場のインフレとともにジェイソン・ボーンはさらに超人化。パンチ一発で格闘家を気絶させるほどの格闘スキルに、プロのレーサーをも超える反射神経とドライビングテクニック、スリのような小手先の技に、電気配線に細工をする技術と、もはや何屋さんなのか分からないほどの多才ぶりを披露します。殺し屋みたいな潰しの利かない職業なんかにはつかず、何かひとつでも特技を極めていればその道で食えていたんじゃないかと思うほどの器用さであり、その多才ぶりゆえに殺し屋というそもそもの設定が没却してしまっています。これもやりすぎでした。 また、敵エージェントとの関係も変質しています。悪いのはラングレーのオフィスにいる上層部であり、現場のエージェントはただその指示に従っているのみ。命を狙われてもボーンは敵エージェントを恨んでいないし、殺し合いを演じつつも互いに敬意を払い合うエージェント同士の武士道のような関係性こそが本シリーズの熱さに繋がっていました。また、そうしたエージェント達の姿がエンディング曲”Extreme Ways”の歌詞と見事にシンクロしていたのですが、一方本作のエージェントは私怨剥き出しでボーンに襲いかかってくるため、戦いの意味合いがかなり変わっています。私としては、従前のエージェント達のプロフェッショナル道が好きだったため、この変更を良いとは思いませんでした。 国家によるSNSの監視や諜報機関OBによる機密情報漏洩などの時事ネタを出してきているものの、こちらもジェイソン・ボーンの物語とはうまく絡んでいなくて不発に終わっています。アクション映画としては及第点ではあるものの、待ち望まれた『ボーン・アルティメイタム』の続編としては期待外れな出来だったと言えます。[映画館(字幕)] 5点(2016-10-08 03:16:24)(良:2票) 《改行有》

692.  ラスト・ナイツ 中世ヨーロッパと思われる国が舞台ではあるものの、アフリカ系、東洋系、中東系、果てはマオリ人までが入り乱れるという多国籍ぶりであり、リアリティとは一線を画した世界観で繰り広げられる時代劇。ただし、監督が日本で製作した2作品のような荒唐無稽な映像表現はなりを潜め、リドリー・スコット作品のような重厚な時代劇として仕上げられており、少なくともルックス面は完璧です。この監督さんは意外と引き出しの多い人なのだと感心しました。 問題は、キャラクターへの感情移入が難しいこと。モーガン・フリーマン演じるバルトーク卿は年齢の割には向こう見ずな性格で、ロクな策もなしに権力者に盾ついて家族も家来も不幸にするのだから、愚かにしか見えません。憎まれ役たるギザ・モットは分かりやすい悪役に徹しているものの、その人物造形にまるで深みがないために、なぜこいつが皇帝から一定の信頼を得て重職を担わされているのかがわかりません。両者には、もっと頭を使わせた方がよかったように思います。 また、日本人にとっては当たり前すぎて気にしたことのなかった忠臣蔵という物語の欠点も、設定と舞台を変えたことから露わになってしまいます。領主を失ったライデン隊長以下騎士団の面々は1年以上をかけて復讐の段取りを整えるわけですが、なぜそんなことに労力を費やしているのかが途中から分からなくなるのです。特にライデンは、残された主君の家族や部下達を不幸にしないよう新生活の構築に全力を挙げるべきなのに、復讐という後ろ向きな目的に突き進むものだから、次第にこちらも愚かに見えてくるのです。 序盤にて、主君と騎士との精神的な繋がりをもっと克明に描いておくべきだったし、騎士という立場を失えば彼らは生きる意欲までを失い、社会にとって有害な野良騎士になるおそれがあったことからライデンは彼らに復讐という目標を与え続けた等の合理的な背景も欲しいところでした。[ブルーレイ(字幕)] 5点(2016-08-10 13:26:46)《改行有》

693.  白鯨との闘い 《ネタバレ》 原作、メルヴィルの『白鯨』ともに未読です。 職業映画を撮らせるとピカイチのロン・ハワードが監督しただけあって、19世紀初頭の捕鯨船の様子が描かれる前半部分はかなり面白くできています。また、エリート家系出身ではあるが経験のなさゆえに見栄を張りたがる船長と、身分は低いものの叩き上げで船員達からの信頼も厚い一等航海士との対立などは月並みながらもよくできており、見せ場、ドラマ、ともに充実しています。 ただし、海難事故を経て漂流が始まる後半になると、作品のテンションは一気に落ちます。職人的な航海士達が知恵を出し合って難局を乗り切るのではなくただ潮に流されているだけなので、ロン・ハワードが得意とする職業映画という領域から外れてしまうのです。飢えの中で人肉に手を出すという展開も作り手が意図するほど衝撃的ではなく、これだけ何もなければ仲間の肉を食うしかないでしょとしか感じませんでした。もっと容赦のない描写ができる監督が撮っていれば後半パートの訴求力はより強いものになったと思うのですが、ロン・ハワードでは無難にまとまり過ぎたように感じます。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-08-10 00:43:48)(良:1票) 《改行有》

694.  ファンタスティック・フォー [超能力ユニット] 劇場公開時に一度見たきりのまま、私の心には特に何も残らず忘却の彼方に去っていた本作ですが、2015年のリブート版が良くも悪くも異形の大作となっていたことから、本作の出来がどうだったかが気になって10年ぶりに再見しました。 2005年当時にアメコミ実写化作品の成功作と言えば『X-MEN』と『スパイダーマン』くらいのもので、『アイアンマン』も『ダークナイト』もまだなかった時代。そんな時代に製作された本作には小難しい主張やリアリティへの目配せなどほとんどなく、高い再現度でコミックを実写化するという方向性のみで製作されています。顔だけはヨアン・グリフィスのゴム人間がびにょーんと伸びる様などは相当に素っ頓狂なのですが、お話しの方もマンガレベルなので一連の描写にも特に違和感を覚えず、物語とヴィジュアルがうまく調和しているものだと感心させられました。当時、世界一セクシーな女性だったジェシカ・アルバのお色気ギャグなども見事にハマっており、マンガ映画として求められるレベルには十分に達しているのです。 ただし、何かひとつでも大人の鑑賞に足る要素があれば良かったのですが、そうしたものが皆無であることが作品のリミッターになっています。手の込んだ仮装大会レベルにとどまっているために100分という上映時間が無駄に長く感じられるし、鑑賞後に何も残るものがありません。[DVD(吹替)] 5点(2016-08-08 20:07:44)《改行有》

695.  マイ・ブラザー 哀しみの銃弾 《ネタバレ》 ウォンビンのドラマに、トビー・マグワイアが戦場でおかしくなる話と、『マイ・ブラザー』と邦題の付けられた作品は複数あって非常にややこしく、安直な邦題をつけたがる日本の配給会社には文句を言いたくなります。原題は血縁を意味し、お互いにとって不都合な存在ではあるが、血縁がある以上は逃げることもできない兄弟の愛憎関係が本作の主題となっているのですが、温かみのあるドラマを連想させる邦題はその趣旨からも外れているように感じます。 兄・クリスはかなりのクズ野郎です。ほっとけば社会復帰は絶望的な兄のためにと、弟・フランクが社会的なリスクを冒しながらも住まいと仕事を手配してくれたのに、感謝の気持ちはまったくなし。それどころか、地道に働かねばならない堅気の仕事にはすぐに嫌気がさして辞めてしまい、大した葛藤もなく犯罪者の道に戻っていきます。さらには、警官として一定の社会的信用を持つフランクを自身のアリバイ作りに利用し、無自覚な弟に犯罪計画の片棒を担がせて警官を辞めざるをえない状況にまで追い込んでしまいます。 本作の問題点は、クリス役をクライヴ・オーウェンが演じているためマイケル・マンの映画にでも出てきそうな職人的な犯罪者に見えてしまい、設定ほどのクズ野郎とは感じられないことです。クズ野郎のクリスが、最後の最後で弟のために服役覚悟の人殺しをすることが作品の山場だったと思うのですが、クライヴ・オーウェンがかっこよくてクズ野郎に見えなかったために、この点がアッサリと流れてしまいます。 フランス映画のリメイクであるためかヨーロッパ風にまったりやりすぎて、観客を引っ張るだけの大きな流れを作り出せていない点も不満でした。感情の大きな起伏があるわけでもなく、視覚を楽しませる見せ場があるわけでもなしで、2時間が淡々と進んでいきます。さらには、完成作品を見る限りではミラ・クニスやジェームズ・カーン絡みのエピソードが大幅に切られている様子であり、一部のドラマがうまく流れていないことも問題でした。[インターネット(字幕)] 5点(2016-07-04 11:49:59)《改行有》

696.  ラストミッション ベタな中規模アクション映画に意外性あるキャスティングで特色を出すヨーロッパコープによる作品ですが、今回はケビン・コスナーに手を出しました。90年代後半からの長い低迷期を経て『マン・オブ・スティール』や『エージェント・ライアン』等の大作映画に助演し、全盛期とは違った魅力で再起を果たしたコスナーを主演に迎えての作品ですが、本作でコスナーは抜群の渋さとかっこよさを披露しています。美貌がピークに達していた20代後半のアンバー・ハードと並んでもまったく見劣りしないほどの色気を発し、見せ場での身のこなしは華麗。さらには軽妙なコメディもこなしており、かつてハリウッドのトップにいたコスナーは、歳をとってもなお輝きを保っています。映像派のマックGはそんなコスナーの魅力を十二分に引き出すことに成功しており、スター映画としてはほぼ満点の仕上がりではないかと思います。 問題は、映画としてまったく面白くないということ。コメディを志向した作品であるにも関わらず笑える場面は少なく、スパイ映画としてのスリルは皆無。冒頭をピークに見せ場のテンションは下がる一方であり、印象的な見せ場が皆無というアクション映画としては何とも寂しい状況となっています。 また、設定と物語が整合していない点も気になりました。主人公イーサンがパリでのミッションを命じられたのは、正体不明の大物テロリスト・ウルフの顔を見た可能性があるという理由からでしたが、物語ではウルフの方から勝手にパリへやってきて騒動を起こしてくれるため、そもそもイーサンがこの暗殺ミッションに就いた理由が没却しています。また、イーサンをリクルートしたヴィヴィは病身のイーサンにミッションを任せっきりであり、本当にウルフを殺す気があるのか疑わしくなってしまいます。テロリスト側の殺し屋がイーサンの娘の写真を持っていたことから家族を人質にでもとられるのかなと思いきやそんな展開はないし、ウォッカを飲むことで薬の副作用が軽減されるという特異な設定も本筋にはまったく絡んでおらず、脚本は行き当たりばったり、支離滅裂で安定していません。 家族のドラマとしても月並みであり、特に感動的なものはありません。ヘイリー・スタインフェルドとコニー・ニールセンという贅沢なキャストを揃えながらも定番の域を出ないやりとりに終始するため、こちらでも拍子抜けしました。[インターネット(字幕)] 5点(2016-06-27 17:39:42)《改行有》

697.  レヴェナント 蘇えりし者 IMAXにて鑑賞。 序盤のインディアン(表現が不適切でしょうか)襲撃シーンは素晴らしい迫力であり、大傑作の予感がしました。実際、本編はエマニュエル・ルベツキによる美しい撮影や、つい「もう一回見せて」と言いたくなるような驚きの見せ場があって、これは何か賞を与えねばと思わせるだけの風格が備わっています。 ただし、イニャリトゥ監督作品でお馴染みの、わかりきったことをやたらチンタラ描くという悪癖は今回も健在であり、どれだけ素晴らしい撮影があるにしても、観客の生理を考えずにダラダラと見せられるのではこれにもだんだんと飽きてきます。 ディカプリオは本作で悲願のオスカーを受賞しましたが、これについても厳しい撮影をよくやりきったという努力賞的な印象が強く、観客を圧倒するほどの鬼気迫る演技というレベルには達していませんでした。 本作は全体的に「賞好みの映画」という印象であり、一般の観客を喜ばせるタイプの映画ではないように感じます。[映画館(字幕)] 5点(2016-04-23 10:33:22)《改行有》

698.  ザ・ブリザード IMAX3Dにて鑑賞。 『ラースと、その彼女』のクレイグ・ギレスピー監督ということでドラマ寄りの作品かと思っていたのですが、ドラマパートが薄味で特に感動も興奮もなくてガッカリさせられました。 “based on true story”が裏目に出た作品であり、米国沿岸警備隊においては半ば神格化された事件だけあって脚色の余地がほとんどなく、さらには登場人物全員を良い人として描く必要があったためか、ドラマに起伏が生まれていません。主人公・バーニーの引っ込み思案な性格についても、1年前の失敗によるトラウマが原因なのか、本質的な気質なのかがはっきりとしないため(恐らくその両方なのでしょうが)、彼の成長譚として微妙な出来映えとなっています。もう一方の主人公シーバートについても、どうやら彼は他のクルーとの間で確執を抱えているようなのですが、そういった従来の人間関係が明確に描写されていないために、事故後に彼が生き残ったクルーをまとめ上げる際の苦労が伝わってきません。 本作はリーダーシップ論を描いた作品でもありますが、自分がリーダーになるしかないと腹を決める瞬間や、リーダーとして苦渋の決断を下す場面など、このテーマでの定番の盛り上がりどころをことごとく外しているため、なんだかボヤっとした印象となっています。 他方、見せ場の迫力はなかなかのものでした。VFXの凄さも然ることながら、大海原に投げ出されることの恐怖や、真冬の海の寒さをきちんと表現できており、海難事故を扱うにあたって必要な描写を外していないのです。ディズニー製作なので痛々しい描写や明確な人の死の描写が控え目であることは不満だったのですが、生存者たちがどれほど大変な目に遭ったかという点を掘り下げることで観客の感性にはきちんと訴えられています。 ただし3D効果は微妙であり、それどころか夜の場面が多いため3Dメガネをかけていると画面が暗くて見づらく、これだったら2D版を選択すればよかったと後悔しました。[映画館(字幕)] 5点(2016-02-27 13:48:33)《改行有》

699.  リピーテッド 『メメント』と同様に前向性健忘(新しいことを覚えられなくなる記憶障害)を扱った作品なのですが、本作ではさらに設定が追加され、主人公は40歳であるが意識は20歳の状態で、間の20年間の記憶がないというお話となっています。新しいことを覚えられない上に、過去の記憶も大幅に失われている。これはなかなか怖い設定で、例えば私は30代なのですが、朝目覚めた時には自分は中学生だと当然に思い込んでるわけですよ。でも鏡を見ると、確かに自分なんだけど異常に老けた顔があると。そして隣で寝ていた知らない人から「君はもう30過ぎなんだよ。で、うちらは夫婦なんだよ」と言われる。さらに、いかにも怪しい医者から電話がかかってきて、「僕らは秘密の治療をやってるから、今日も迎えに行くね」と言われる。何を信じていいのか分からないが、疑っていても物事が進まないから、とりあえず言われるがままに動く。しかし、自分は良いように操られているだけではないのかという不安は常に付きまとう。自分のバックグラウンドを解明しようとしても、記憶は一日しかもたないから情報の積み上げができない。本作冒頭は、この「何が何だかわからん」という空気感や主人公の抱く不安が見事に描写されており、なかなかの滑り出しとなっています。 ただし本編に入ると、短い上映時間の割には退屈さを感じさせられる内容となっており、サスペンス映画特有の緊張感も作り出せていません。序盤の素晴らしい空気感は維持されているし、メインキャスト3名の演技も素晴らしいので作品は破綻していないものの、大きな山場を作り出せておらず、すべてが淡々と進んでいくのです。 本作の問題点のひとつとしては、寝ると記憶がリセットされる主人公に焦りがないという点が挙げられます。寝たら終わりというサスペンスは、過去にキッドマンが主演した『インベージョン』と同様のものなのですが、生物にとって避けられない睡眠というイベントからどうやって逃げるのかにフォーカスしてなかなかの緊張感を生み出していた『インベージョン』と比較すると、本作の主人公は睡眠を普通に受け入れているため、ひとつの山場を逃しているのです。 また、上記の通り記憶の積み上げができない以上は、一日で真相まで辿りつかねばならないというタイムリミットサスペンスの要素も持った作品でもあるのですが、そんなおいしい部分も素通りしてしまっています。過去20年間の主人公の歴史を辿る物語に重きを置いてしまったために、前方性健忘というもうひとつのコンセプトが希薄化したという印象を受けました。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2016-01-15 12:03:37)《改行有》

700.  パージ 《ネタバレ》 1年に一度、12時間だけあらゆる犯罪が罪に問われないという着想は独創的で素晴らしかったし、年一度のガス抜きにより残り364日の治安が飛躍的に向上するという社会的な利点や、自己防衛手段を持たない弱者の間引き手段でもあるという裏の機能までがきちんと考えられており、突飛な基本設定でありながら、あの世界では受け入れられた法律であるということを観客に納得させるに至っている点でも感心しました。 ただし、良かったのは設定がテンポよく説明される冒頭15分のみであり、よくできた設定とは裏腹に本編の方はユルユルでガッカリさせられました。バカな奴がバカなことをしでかして事態が悪化していくという、この手の映画で一番やって欲しくない方法で物語が進んでいくため、いちいちストレスが溜まります。娘の恋人が突如親父に発砲してきた。さらには正体不明の人間が家に紛れ込んでどこに潜んでいるか分からないという状況で、娘が一家からはぐれてしまった。こんな逼迫した局面でありながら、残された一家はチンタラと会話をしたり、バラバラに行動して隙を作りまくったりで、見ていてイライラさせられっぱなしなのです。一刻も早く娘を回収して防御態勢を築くべき状況にありながら、一向にそれを実行に移さないというのはどういうことなのかと。 そもそも、一家の息子がホームレスを匿ったために惨劇が始まるのですが、あの子が見ず知らずの人を助けようとした背景がまったく描かれないため、「なぜそんなことを」と誰しもが思ってしまいます。本作では人命の扱い方がメインテーマとなっているにも関わらず、主要登場人物が元来それをどのように捉え、そして極限状態でどう変わっていったのかが明確に描かれていないためそこにドラマが発生しておらず、納得できなかったり、突飛に感じたりする展開が多くなっています。もっとも不自然に感じたのは主人公たる親父の心変わりで、このままではパージャーの群れに襲われてホームレスも一家も皆殺しにされるという状況下にあって、いったんはホームレスを突き出そうという意思決定を下すものの、直後にそれを覆します。この判断がどう考えても不合理であり、ショットガンや自動小銃で武装した十数人の若者を相手にした戦いに嫁・子供を巻き込んでまでホームレスを守ろうとした理由がサッパリわからないため、本編中もっともドラマチックであるべき箇所で疑問符の嵐となってしまいます。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-12-31 01:10:26)(良:1票) 《改行有》

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