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701.  ムーラン(1998) ディズニーアニメって、なにか壮大な変奏曲を聞かされ続けているようなところがあり、同じ定型の勇気のストーリーを趣向を変えて反復し続けている。歌も同じようなトーンに聞こえるし、小さい助っ人がだいたい登場する。そういった中では、本作は珍しい東洋味で、個性は強く出た。雪山のスペクタクル、白と黒の渋さがいい。都での襲撃、実は一番嬉しかったのは、屋根の上に悪漢が立つところで、ある種の懐かしさを感じた。なんだろう、この懐かしさは。子ども向けの活劇もので、よくこういうの見てたのかなあ。屋根の上に立つ怪人てのは実にまがまがしいものがある。なにかが取り憑いたって感じだろうか。ここが都の中心の宮殿で、下に人々が集まって見上げているという状況もいいんだろう。エンディングタイトルの中に、勇敢・決心・孝道・自重などと徳目があらわれるのが愉快。[映画館(字幕)] 6点(2009-01-28 12:14:32)

702.  シークレット/嵐の夜に 《ネタバレ》 古典文学の偉大さは応用が利くということで、「リア王」の脇にスポットを当てればまた違うドラマが生まれ、しかし王の大きさはそのまま裏返されて残っているのが面白い。アメリカの農場を舞台にどう当てはめていくか、という、単純に見立ての面白さもある。ただ近親相姦話を持ち込んだために善悪がクッキリし過ぎてしまい、どちらが善でどちらが悪と割り切れない心理的な“合わなさ”を詰めたほうが面白かったようにも思う。また個人的な好みからすると、村の隣人たちとの交渉をもっとネチネチ見たかった。村人たちがふりかざす“正義”や“良識”の残酷さ、そういったものが“非人間的”なものを擁護してしまうシステムをあぶり出せたのではないか。追放とは、裏を返せば解放でもあるのだ。[映画館(字幕)] 6点(2009-01-26 12:14:50)

703.  ダイヤルM 《ネタバレ》 クールビューティ系が苦手で、苦手って言っても嫌いってわけじゃなく、スクリーンから見つめられると、ついオロオロドギマギしてしまうの。グウィネス・パルトロウも分類すればクール系の顔立ちで、オロオロしてもいいんだけど、でもこの人はなんか口元あたりに、不似合いな幼さというか、いたずらっ子のようなあどけなさが残ってて、そこらへんクールになりきれないチャーミングさという独自の魅力になり、けっこう大丈夫なんだ。『セブン』のときはあんまり印象に残らなかったが、ジェーン・オースティンの『エマ』やったのが良かった。で、この映画だが、考えてみればこのパルトロウ、けっこうアホな役で、亭主にも愛人にもだまされてて、しかもミステリーではよくあるんだけど、密室で証拠突きつけて殺されそうになる。身の危険ということをよく考えて行動してもらいたい。でもそれも、あの口元の幼さがあるんで、仕方ないなあ、って感じで納得できなくもなく、グレース・ケリーとはまた別の味が出てたんじゃないか。[映画館(字幕)] 6点(2009-01-24 12:18:08)

704.  トゥルーマン・ショー 《ネタバレ》 現実のリアリティの喪失という社会的な気分から、世界は実在するかってな大きな哲学的なテーマまでカバーできる設定で、こういう豊かな寓話を生み出せるのはハリウッドの強みだ。そしてハリウッドの伝統である自由への脱出ものにもなっている。実際現代社会のあれこれって何かセットみたいに薄っぺらになってるし。途中に入るCMがおかしい。待機しているエキストラたち。急に作られ解消される渋滞。群衆シーンのおかしさ。かなり笑えた。エレベーターのセットぐらいちゃんと作っておいてもらいたい。月が大きかったのはイメージじゃなかったのね。妻のローラ・リニーに変に不気味な味が出ていた、追い詰められつつココアのCMをしたり。この設定が怖いのは、有名になりたい、という我々の潜在願望も突つかれてるところがあるからで、あるいは、自分が主役であることを知り晴れがましさを感じて島にとどまり続ける、というさらにグロテスクなエンディングも有り得たな。[映画館(字幕)] 8点(2009-01-18 12:13:28)

705.  プライベート・ライアン 《ネタバレ》 冒頭、ノルマディ上陸作戦のシーンは文句なしである。戦争映画というより戦場映画とでも言うか。勝ち戦を描いていながらなんら勇壮さがなく、ただ恐怖とヒステリーが支配している狂乱の場としての戦場を描き切った。水上の騒音と水中の静寂の対比は『ジョーズ』のときと同じだが、ここでは恐怖は水上の音のほうにある。自分の片腕を探している兵や、戦友を引きずって逃げていたら上半身だけだったとか、エピソードが詰まっている。で主ストーリーの、軍作戦としての美談に狩り出される話になっていく。一人の命は地球より重い、ということの正しさと矛盾とがせりあう。兵の母親にしてみれば、どんなにきたない“美談”にもすがりつきたいという切実さがあるわけで、ここらへんの設定が緊張を生んでいた。これでライアンがつまらない男だったほうがドラマとしては正しいように思うんだが、これが好青年で、するとけっきょくこの“美談”を肯定する話になってしまってるようで、アレレ? となった。そういう映画だったのか。ここらへんがハテナである。[映画館(字幕)] 8点(2009-01-15 12:10:53)

706.  ミスト 《ネタバレ》 どこかに立て籠もる話ってのがいたって好きなので、そこそこは楽しめた。以下不満。外に何かがいる気配で引っ張っていくのか、と思ってたら意外と早くタコ足が出てきて、そうか、実在する怪物の存在を周囲に信じてもらえない、っていう不安で引っ張る映画か、と思ったらそうでもなく、ポイントがなかなか定まらない。狂信家のモチーフが一番ユニークなところで、それならそうともっとはっきり中心に据えても良かったんじゃないか。でもそうだとすると、私たちの世界の外側に怪物たちの異世界が包み込んでいる、ってこの映画の発想がなんか旧約聖書的で、マーシャ・ゲイ・ハーデンの世界観と同じになってしまっているのはまずいだろう(彼女の演技はいいのよ)。演出も、徹底してスーパーの内側からの視点に絞らなければならないのに、イナゴの場など無神経に外から撮ったりするので、興ざめ。でもこの映画で感じるのは、今アメリカ人が、どうも我々はあんまり世界から愛されてないみたいだぞ、という不安に包まれてるらしいってこと。この外部の異世界ってのは、なにもイスラム過激派だけではないだろう。アメリカは敵意の霧に包まれていて、物資が豊かなスーパーマーケットはヒステリックに中絶反対を叫ぶ宗教右派に占領され、それが嫌なら外の開拓前の荒野に出ていかなければならない、ってな状況。あの蛇足のラストに意味を見つけようと思えばこんなところになる。車の出発で打ち切ったヒッチコックはやはり偉かった。[DVD(字幕)] 6点(2009-01-13 12:20:31)

707.  シン・レッド・ライン この監督はやっぱり草の映画を撮る。緑あふれる戦場。兵士がふとオジギソウに触れ、葉が閉じる、草にとっては相手が殺気にはやった兵士だろうと遊んでいる子どもだろうと同じ反応をするわけだ。細い葉に一瞬散る赤い血の線。風のように・なめるように移動するカメラ。草の視点から見た戦争映画ということか。この地に殺し合うために呼び寄せられた兵士たち、それをこの地にもともと生えている草たちが観察している。この草の迷宮感が素晴らしく、兵士たちを雑草になぞらえるという単純な比喩を越えて、もっと多義的な思いが次々と湧き上がり、「人と自然」といった軸の周りをめぐり出す。ストーリーはそれほど珍しいものではない(無茶を言う上官と下卒思いの司令官との対比とか)、この映画の眼目は、ガダルカナルを日本軍と米軍が向かい合っている島としてでなく、兵士たちと草が向かい合っている島として描いたことだ。[映画館(字幕)] 7点(2009-01-12 12:19:17)

708.  ラスト、コーション 《ネタバレ》 さすがに上海の賑わいの再現は金がかかっており、『スパイ・ゾルゲ』とは雲泥の差、こういうところでケチると、映画の空気全体がその時代になりきれない、悔しいけど負けている。ヒロインの上目づかいが印象的。はにかんでいるようで、警戒しているようで、親日政権に取り入り麻雀に閉じ籠もっている上流階級をじっと観察している目でもある。けっきょく映画のサスペンスは、彼女の内心がどうなっているのかに絞られていく。この映画はレジスタンス映画なのか、メロドラマなのか、それはただただ彼女の内心にかかっている。それを観客に読み取らせまいとしている目つきのようでもある。「みな私を恐れている、あなただけが恐れない」と男に思わせる目つき、先の見込みのなくなりつつある状況で男が溺れていく隠れ家のようなヒロイン、その両者のドン詰まり感・切迫感が、首を締め上げたかと思うと一つの肉塊になったりする、すさまじいベッドシーンに凝縮する。ヒロインは、自分を徹底的に道具とし、レジスタンスに忠誠を誓ったつもりでいて、最後の土壇場で道具ではない声を発してしまった。だから情に脆い女は闘士になれぬ、ということになるのだろうか、道具に徹し切れなかったことは弱さなのだろうか。男はとりあえず救われたが、殺されるより深いダメージに傷ついただろう、しかも政権の崩壊はすぐそこに迫っている。レジスタンス映画とメロドラマが一つの肉塊のように絡み合って、完全に一体となっている。[DVD(字幕)] 7点(2008-12-29 12:21:06)(良:2票)

709.  クローバーフィールド/HAKAISHA せっかくの趣向を生かしていない。最初のほうの混乱なんか、けっこう臨場感があって期待できたのに、しぼんでいく。物語を語り出してしまうからだ。友情物語やら救出物語やら、既存の“物語”に寄りかかって“記録”の視線を忘れてしまう。記録の目に徹する自信が作者になかったのだろう。カメラはこういう異常事態なら、とにかく怪獣を捉えようと懸命にならなければならないはずだ。それを友だちばかりに向けている。軍の発砲からパンして怪獣にカメラを向けるってのは、新米素人カメラマンのそれではなく、劇映画のカメラマンの動作である。一生懸命対象を見ようとして、それでもよく見えない、ってところにサスペンスが生まれてくるので、最初っからカメラが効果を狙って控え目なのでは、おののきたくてもおののけない。軍の前線基地みたいなところに入っちゃうのも、よくない。事態をまとめる視点を排除して、とまどいの視点に徹しきらなければ。さらに言えば、俳優の演技の質がもろにドラマのそれで。[DVD(字幕)] 6点(2008-12-16 12:10:25)

710.  ノーカントリー アメリカ映画って執念深い人を描くといい。追う者と追われる者、もう途中から金より意地の世界になって、自分で道具を工夫したり、自分で怪我を治療したりして、執念が徹底的に燃え上がる。そしてモーテルとホテルの場の緊張が素晴らしい。これであと話が理解できたら文句なかったんだけど、これが分からない。終わりのほうのテープ張られた現場が何なのかが、恥ずかしながら、分からなかった。あそこの前に、映画では描かれなかった事件がひとつあったってこと? 外された空調の枠を見て保安官が何を理解したのかが、こちらが理解できなかった。アメリカ映画は説明しすぎるって常々不満を表明していると、今度はこうなる。もしかして簡単に理解できる映画だったりするんじゃないか、という不安は残り続け、脳の老化のスピードに思いを馳せる今日このごろ。[DVD(字幕)] 7点(2008-12-13 12:11:30)

711.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 資本の論理と宗教の倫理がアメリカの二本の柱で、それが狂ったのが現在の状況、ってことを言ってる話なら納得できるけど、もひとつ焦点が分からない映画だった。主人公と狂信家、たしかにどちらも個性の強いキャラクターだが、モンスターって言うほどではなく、なんか二流なんだな。主人公も財を成したけど、けっきょく最後に勝ち残るのは、あのレストランで隣のテーブルにいたような都会的で垢抜けた連中のほうでしょ。宗教屋のほうも、財の蓄積に失敗して滅んでいく。どちらもコツコツやる庶民を最初から呑んでかかってくヤリ手なんだけど、モンスターとして抜きんでていくだけの力量はなかった。ニセの息子を作っても、ニセの弟に騙されてしまう。家族を求めても、うつろなシンメトリーが際立つ家だけが残る。それとも、私たちは二流だったというアメリカの反省の映画なのかな。よくわかんない。この監督の才能、アルトマンもどきのときも半信半疑だった、なんかありそうなんだけど、まだ私はつかみきれない。弦楽器のみの音楽(ときにバルトークのような、ときに湯浅譲二のような)はいい。[DVD(字幕)] 6点(2008-11-22 12:08:43)

712.  アイズ ワイド シャット 最初のパーティー会場の冷え冷えとしたまぶしさに、一番この監督らしさを感じた。あとは夫婦の会話が、切り返しの積み重ねで緊張を高めていくあたり。まあこれだけでもけっこう満足できたが、ただ肝心の仮面パーティーがどうも弱い。その死を抱えた弱さそのものを描いたのかもしれないし、冒頭の見知らぬ者のパーティーの陰画かもしれないが、イタリアの監督だったらもっとノリノリで見せてくれるところだなあ、と思ってしまう。ここらへんで歯車が狂ったまま、うまく乗り切れずに見終わってしまった。この人はずっと理性の外側の世界に興味を抱き続けてきたわけで、制御不能なものに取り巻かれ・あるいは制御不能なものを抱え込んで生きている人間を見つめてきた。本作もその線はあるのだけど、キリキリと絞り込まれていくいつもの力は感じられなかった。これ原作読んでみたけど、世紀末ウィーンという背景の中で生きる物語って気がしたな。だから『バリー・リンドン』みたいな、克明に時代を再現する種類の映画にした方が良かったんじゃないか。まあそれをするだけの体力がもうなかったんだろうけど。ショスタコーヴィチの物憂げなワルツとリゲティのピアノ曲、ワルツとリゲティって言ったら『2001年…』と同じ組み合わせだ。[映画館(字幕)] 7点(2008-11-18 12:05:50)

713.  マイ・フェア・レディ すごく大ざっぱだけど、ミュージカル映画はダンス中心から歌中心に移行してすたれた、って言えないか。この64年はもうダンスは付けたりで、踊ってても絶頂期のハレバレとした感じが出ない。「踊りあかそう」なんてどんどん狭い部屋へ入ってしまい欲求不満が残る。「時間どおりに教会へ」もいろいろやってるんだけど、コワザって感じ。競馬場での白黒の効果は見事だったが、『巴里のアメリカ人』ですでにやってるし、それにこれはミュージカルの味とは関係ない。いや、いい映画だとは思うんです、思うんですけど、峠を過ぎたジャンルの緩さも目立つ作品なんだな。かえって翌年の『サウンド・オブ・ミュージック』は、もうミュージカルの形にこだわらないことで成功したと思うんだ、でもそれはまた別の話。あ、この2つの映画、手元の「ぴあシネマクラブ」によると、どちらも上映時間は172分だぞ。[映画館(字幕)] 7点(2008-11-10 09:17:02)(良:1票)

714.  ディープ・ブルー(1999) 《ネタバレ》 『ポセイドン・アドベンチャー』に『ジョーズ』をミックスしたような映画で、ただ基本のモチーフはしっかりSFを守っていて、予想していたより面白かった。アルツハイマー治療の目的で鮫の脳を膨らませたら鮫が高度な知能を持ってしまい、医薬品の材料にされてたまるかと鮫が自由を求めて反乱するって話。SF小説の古典「脳波」にも通じていく設定で、自然界で人間が優位に立っていられるその基盤の脆弱さ、ってなことに思いがいく。ただ肝心の発達した鮫の知能ってのが、強化ガラスを割るために“道具”を使ったりするぐらいで、もっと被実験物が何かを考えているという不気味さを、手を替え品を替え押し出してもらいたかった。けっきょく元からある鮫の原初的な獰猛さが恐怖のメインになってしまっていたような。半分水に浸かった部屋ってのが怖い。下半身が未知の世界に浸かっている、部屋の半分が確認できない、っていうどこか異次元につながっていくようなブキミさ。そして人があっさり死んでいくその唐突さ。ヒロインは償わねばならなかったからなあ。実業家ってのは食われてもいい部類に入るらしい。[映画館(字幕)] 7点(2008-11-07 12:15:05)(良:1票)

715.  その名にちなんで 《ネタバレ》 人が異文化に溶け込んでいくさまを、ビーカーの水にたらしたインクが拡がっていくのを観察するように見つめていく映画。アメリカに渡ってもベンガル人だけのつきあいで閉じていた母の世代。でも子の世代になると、金髪娘とつきあい、親の決めたベンガル生まれの妻の心はフランス人に流れ、妹はアメリカ人と結婚、とゆっくり拡散していく。アメリカの寒さに震えた親の世代に対し、子の世代はインドの暑さがこたえる。アメリカ‐インドを両極とする軸に、もうひとつロシア人作家の名が絡んでくるところが膨らみになっていて、血でなく精神の受け渡しが描かれる。自分のアイデンティティを、血や土地と関係のないよその国の昔の作家に求めてもいいんじゃないか、と思えば、なんとなく気持ちもほぐれていく。見ている間は、ちょっと話があちこちしてダラダラしてるかな、という印象だったが、終わってみれば、言うべきことを言い尽くしていたのかも知れない。[DVD(字幕)] 6点(2008-11-03 12:12:27)

716.  クアトロ・ディアス 《ネタバレ》 いかにも中産階級の坊っちゃんたちの革命ごっこのように始まる。射撃訓練など、部活のノリ。しかし抽象的だった“敵”がしだいに具体的となっていくにつれ、彼らも闘士の顔になっていく。一番ヤワそうなのが、筋金入りの革命家に憧れていくのもいい、話としてはさして発展してないが。周囲も描けていて、拷問者も単なるサディストではなく、そのことによって心にうつろを抱えていたりする。大使も、恐怖で失禁しトイレでさめざめと泣くシーンなどいい。どれも人間らしい人間なのに、政治がからむことで非情になっていく世界。「けっきょく君たちは軍事政権の対極のようでいて、よく似ている」って言葉が重い。[映画館(字幕)] 6点(2008-10-27 12:05:21)

717.  ジェシー・ジェームズの暗殺 《ネタバレ》 西部劇の時代に遅れてきた男たちの物語、ってことか。列車強盗ってのが、もう牧畜業と同じく時代遅れになっていく。非定住者が定住していく。ジェシーが最後に馬の絵を見ていたのも象徴的だ。林の中で帽子をかぶってワイワイやっていた仲間うちの楽しさは消え、逃避行の末に疑いが蔓延し、緊張しながら作り笑いをしなければならなくなる。連合赤軍の末路はこうでもあったかと思った。その“すがれた”トーンが全編を通して一貫する(やたら草原が出てきて、テレンス・マリックの映画を思ったら、この監督『ニュー・ワールド』のスタッフ欄でthanksとなってる)。その遅れた英雄に憧れるさらに遅れたボブは、デカいことするんだという遅れた夢を持ち続け、最後は厚化粧して舞台に立つ、時代のピエロにならざるを得ない。キャシー・アフレックスは、普遍的な青年の愚かを演じてとても良かったと思う。160分の長尺、ぜんぜん退屈しなかったと言えば嘘になるが、ピリピリしている人々の緊張の描写は素晴らしく、その果てに、恐怖することに疲れきった兄弟と、疑うことに疲れきったジェシーとによって、あたかも肩の荷を下ろすように演じられる暗殺の場は、いままでのどんな暗殺シーンとも違う悲痛さが漂うものになった。ここだけでも、この監督は注目する必要があると思う。 [DVD(字幕)] 7点(2008-10-22 12:18:15)《改行有》

718.  ブレア・ウィッチ・プロジェクト 禁欲の徹底が成功だと思う。こういう試みは多くの人が考えただろうが、つい伏線めいたものを作りたくなったりするもんだ。そこをじっと我慢した。死体が一つも出てこないホラー、内臓みたいなものは出たけど。作品の性質上、当然音楽がないのもありがたい。だいたいホラーでは音楽が邪魔になることが多い。本作では、テントを包み込んでくる音、足音、子どもの笑い声に、耳を澄ませられる(ただ本当なら真暗になるべき場面で、日本だと消防法で劇場内がうすら明るく、また字幕も白く光って明るく出てくるのが難点だった)。そしてやっぱり家ってのが怖い。家は巣であり、他者の領域であり、この森がこっちを他者としつつあるとこで、ヌッと王宮のように出てくる。家が出ただけで、ああ怖いな、と思ったもん。とにかく作者たちがなにものかに似せて作っていないところが一番いい。[映画館(字幕)] 8点(2008-10-18 12:10:40)(良:3票)

719.  ストレイト・ストーリー 自分の力で兄に会いに行く、ということが主人公にとっては重要で、それも「会う」よりも「行く」の方がより重要みたい。そのマッスグさ。このトラクターの遅さがよくて、一度カメラが空を仰いで戻ってきても、さして進んでいない。妊娠娘や自転車青年など若い人も出てくるが、老人の述懐を引き出すだけの役割り、この映画に出てくる他者は老人の対立物にはならない。この監督にしては意外と定型に収まってしまう。兄のもとへ向かうという熱が、もう少し彼に混乱を起こさせてもいいような気もするが、つまりこれが老いというものだ、と言っているのか。一週間に一度鹿を轢いてしまう女性のあたり、ちょっとリンチ臭が立ち込めかけた。[映画館(字幕)] 6点(2008-10-12 12:08:21)

720.  カサノバ(1976) 《ネタバレ》 おそらくフェリーニで一番ペシミスティックな作品。醜女が次から次へと現われてくる前半はいささかうんざり気味だが、昆虫みたいな衣裳を着けた貴族の屋内オペラあたりからか。思わず「待ってました!」とかけ声を掛けたくなるフェリーに顔の男で、クネクネしたその気味悪さが実に気持ちいい。ローマでの精力競争の馬鹿騒ぎぶり、芝居が終わった後の劇場の空漠、ドイツでのオルガンの狂い演奏(ここはニーノ・ロータの独壇場)と、名場面はいろいろあるが、どこか悲痛な気配が常に漂っている。カサノバは女性の人格を、口では尊重していた。おそらく貴族的に崇拝はしているのだろうが、しかしコトに至ると、女性嫌悪・女性恐怖としか思えない相貌に女は変わって見えてくる。そして精力競争で相手の女が浮かべた哀れな表情は、目にしていない。彼は人格としての理想の女性を求めすぎて遍歴を続け、最後にたどり着いた相手は、心を持たないものだった。乱痴気騒ぎの連続の果てに訪れた孤独の平穏、凍りついたベネチアでのラストダンスで悲痛は極まった。[映画館(字幕)] 8点(2008-10-10 12:13:20)

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