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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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141.  崖っぷちの男 《ネタバレ》 興行面では世界的に不発だった本作ですが、なぜこれが話題にならなかったのかと不思議になるほど面白い映画でした。傑作とは言いませんが、これよりも面白くない大ヒット作なんていっぱいありますよ。。。 多くの方が挙げられている『フォーン・ブース』を筆頭に、『交渉人』『ミッション:インポッシブル』『マッドシティ』等々、本作の内容は過去作品のパッチワークのような状況となっています。ビルから飛び降りようとする謎の男と、それを止めようとする交渉人という構図は、2011年に製作された『ザ・レッジ-12時の処刑台』と同じだし、本作はオリジナリティに欠ける映画だと言わざるをえません。ただし、イベントの詰め込み方が尋常ではないため、ハイスピードで展開されるサスペンスアクションとしては過去作品達を上回る面白さとなっています。監督を務めたアスガー・レスはドキュメンタリー出身で本格的な劇場映画は本作が初となるのですが、その手腕には目を見張るものがありました。トニー・スコットやデヴィッド・R・エリスら、このジャンルの重鎮の急逝が相次ぐ昨今、意外とすぐにメジャー大作を任されることになるかもしれません。。。 以上が作品レビューであり、これからは鑑賞後に気になった点をいくつか挙げていきます。まず、この手の映画は視点を絞れば絞るほど面白くなるので、崖っぷちに立つ主人公と、敵の総本山に潜入する弟たちの様子を交互に映し出すという構成はいただけませんでした。盗みについては素人同然の弟がイーサン・ハントのような技を見せる点も不自然だったし、作品を通じて視点は主人公に固定して弟達の活動は明確に描写せず、終盤でサプライズ的に登場させるという構成にした方がよかったと思います。次に、交渉に失敗した過去を持つマーサーの設定が本筋とうまく絡んでおらず、ほとんど不要な背景となっています。『ダイ・ハード』のパウエル巡査的なポジションを彼女に託したのだと思うのですが、ならば彼女にも見せ場を与えてやるべきでした。悪役側については頭の悪すぎる行動が多く、「そこで主人公を殺したら、さすがに隠蔽しきれないだろ」という局面もありました。もっと賢く振舞ってくれれば、強力な敵となったはずなんですけどね。。。 まぁこの手の映画は2時間の上映時間を楽しむことができれば勝ちですので、以上の指摘も鑑賞後の小言であって、作品の面白さを損なうものではありませんが。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-01-27 02:21:54)《改行有》

142.  ブロークバック・マウンテン 本作は男同士の『ロミオとジュリエット』。悲恋ものとしてはかなり王道をいく内容なのですが、登場人物をゲイにするというコロンブスの卵的な発想によって陳腐化した物語を見事に蘇らせており、企画自体の目の付け所はかなり良かったと思います。何百年にも渡って全人類に愛されてきた物語を映画の骨子としているのですから、ある意味では負けるわけのない企画なのです。アン・リーもそのことをよく理解しているようで、奇をてらった演出は一切せず、素材の魅力だけで勝負しています。演出しすぎてバッシングを受けた『ハルク』の経験からきた判断なのでしょうが、この方向性は正しかったと思います。。。 ただし問題は、ゲイの性をどう描くのかという点にありました。男同士が抱き合ったりキスをしたりする場面なんて、実写でやると笑っちゃうしかないわけですから。かのイーストウッド御大ですら、『J・エドガー』では直接的な性描写を避けています。そこにきてアン・リーはこれを正々堂々と描いてみせるというチャレンジを行い、かつ、それに成功しました。裸の男が抱き合って会話する場面なんて見れたもんじゃないのに、この映画ではきちんとしたドラマのパーツとして生きているのです。これには驚きました。性描写に説得力があったのでドラマにも深みが増し、最後の密会で喧嘩別れする場面なんて、悲しくて涙が出そうになったほどです。。。 主演4人の演技もすべて最高です。本作の後、この4人は全員売れっ子となったのですから、後付けではありますが非常に的確なキャスティングだったと言えます。ゲイの末路を知っているために感情を押し殺そうとするヒース・レジャーと、気持ちを隠しきれないジェイク・ギレンホールの対比は面白かったし、20年という時間経過を伝える演技が出来ている点でも感心しました。ロマコメのイメージが強くて女優として伸び悩んでいたアン・ハサウェイは本作で思い切った役柄を演じ、見事イメージチェンジに成功しました。女優さんがキャリアに弾みを付けるためにヌードとなることは日本でもよくありますが、ここまで成功した例はかつてないのではないでしょうか。[DVD(吹替)] 8点(2013-01-26 22:06:07)《改行有》

143.  コナン・ザ・バーバリアン 全米での苦戦が影響して日本公開が1年近くも遅れ、おまけに3D作品であるにも関わらず国内での3D上映はなしというあんまりな扱いを受けた本作。私は出来が悪いことを想定して鑑賞したのですが、そんな予想に反してこれが滅法面白くて驚きました。チープなジャケットに騙されてはいけません。本作は7,000万ドルもの製作費が投入された紛れもないハリウッド大作であり、その製作費をきっちりと画面に反映させることにも成功した、堂々たる娯楽作です。。。 『コナン』リメイクの企画は90年代から存在しており、2000年頃には『マトリックス』のヒットで飛ぶ鳥を落とす勢いだったウォシャウスキー兄弟も参加したものの、結局は話がまとまりませんでした。1982年版は成功した映画ではありませんでしたが、それでもあの映画が持っていた訳の分からん重厚さに勝るものはなかなか生み出せなかったようです。なんせ、ジョン・ミリアスとオリバー・ストーンというハリウッドトップの脚本家が二人掛かりで仕上げた作品ですからね。そんなこんなで何度も潰れてきたこの企画ですが、ハリウッドの何でも屋さんブレット・ラトナー監督が加わった2008年辺りから、話はサクサクと進み始めました。再映画化企画として1982年版からは完全に切り離し、純粋な娯楽映画として練り直したことが勝因でしょうか。。。 その後、スケジュールが合わずにラトナーも降板し、その跡を継いだのが『テキサス・チェーンソー』のマーカス・ニスペル。ラトナーは器用であるものの、その反面薄味で無難な映画しか撮らない監督。もしラトナーが完成させていれば出来損ないの『グラディエーター』になった可能性もあった本作ですが、残酷大将ニスペルの参加によって、映画はかなり引き締まりました。一方、ニスペルにも弱点はありました。演出に瞬発力はあるもののパワーが持続せず、連続活劇を不得意としていたのです。本作においてはそんな両者の個性が調度良い具合に混ざり合い、ノンストップアクションとして上々の仕上がりとなっています。[DVD(字幕)] 8点(2013-01-18 01:14:45)《改行有》

144.  メン・イン・ブラック3 《ネタバレ》 惨憺たる仕上がりだった『Ⅱ』から10年、誰も待っていないのに復活したシリーズ最新作ですが、これが驚異の完成度でぶったまげました。気鋭の脚本家イータン・コーエンに原案を書かせ、それを娯楽作の経験豊かなジェフ・ネイサンソンとデビッド・コープに手直しさせるという鉄壁の布陣で練り上げられた脚本がとにかく絶品。本作では宇宙人モノにタイムパラドックスの要素まで加えられ、おまけにアポロ11号発射という歴史的イベントと登場人物のプライベートな物語をリンクさせるという欲張りな内容となっているのですが、これらの要素を簡潔にまとめあげ、クライマックスに向けてひとつに収斂していく脚本力には脱帽させられました。。。 そんな脚本力に刺激されてか、演出の方も乗りに乗っています。90年代には確かにヒットメーカーであったものの、2000年代に入ってロクな映画を撮っていなかったバリー・ソネンフェルドが、本作では人生最高の演出を披露しているのです。冒頭の脱獄劇(舞台が月面であったことが判明する場面のインパクト!)からロケット発射台でのクライマックスに至るまで、見せ場の仕上がりはシリーズ最高レベルです。シリーズで唯一、観客に恐怖心を抱かせる悪役を登場させたことでアクション映画として全体が引き締まったし、笑いとアクションのバランスも絶妙な加減に調整されています。。。 惜しむべきは、MIBというコンテンツの賞味期限が完全に切れてしまっていたということ。これだけの完成度であるにも関わらず並レベルの興行成績に終わったことが、まさにそのことを示しています。10年前の『Ⅱ』の時点でこの完成度を披露していれば映画史に残るシリーズになったかもしれないだけに、遅れてきた傑作を残念に思います。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-01-06 19:44:26)《改行有》

145.  ホビット/思いがけない冒険 IMAX3Dにて鑑賞。本日のシネコンは『ONE PIECE』に席巻されており、公開第一週の週末であるにも関わらず本作のスクリーンは悲しい程にガラガラ。10年前の『ロード・オブ・ザ・リング』初公開時には確かにあった熱気も今や昔、大変寂しい環境下での鑑賞となりました。。。 内容や雰囲気は、良くも悪くも旧シリーズを引き継いでいます。世界観を統一するためか、本作に登場するものは10年前に見たようなものばかりで目新しい要素や新機軸なるものは皆無。おまけに、ストーリー展開はご丁寧にも『旅の仲間』をなぞったものとなっており、旧シリーズが肌に合わなかった方は、恐らく本作もつまらないと感じるはずです。一方、旧シリーズのファンにとって、これは最高の新シリーズとなっています。テンションの高いイントロにはじまり、美しい撮影に、熱いドラマに、ド派手な見せ場にと、旧シリーズの良い部分がすべて受け継がれているのです。ピーター・ジャクソンの演出は10年でより進化を遂げており、見せ場における間の取り方などは神がかっています。ファンタジー映画を撮らせると、この人は世界一の監督であるということを再認識させられました。。。 『ロード・オブ・ザ・リング』というコンテンツと3D技術との相性は抜群に良く、画面に奥行を得たことで中つ国がより魅力を増しています。ジェームズ・キャメロンが『アバター』で実践した演出法が用いられているのですが、それによって観客は世界の広さを実感することとなります。同時に、本作では飛び出すアトラクションとしての面白さも追求されており、最大の見せ場であるゴブリンの洞窟での戦闘は、現状において存在するすべての3D映画で最高の仕上がりとなっています。。。 3D映画と言えば、字幕を読むことが苦痛になるため吹替での鑑賞が考慮されますが、その点、本作は吹替版の仕上がりも完璧です。普段は吹替を避けておられる字幕派の方も、本作では吹替にチャレンジしてみても良いかもしれません。[映画館(吹替)] 8点(2012-12-15 23:10:59)《改行有》

146.  トロピック・サンダー/史上最低の作戦 役者が本物の戦闘に巻き込まれるというありがちな物語ではあるのですが、ベン・スティラーの人脈を駆使して揃えられた豪華キャストによって他作品との差別化が図られています。『オーシャンズ11』や『エクスペンダブルズ』を見ればわかる通り、この手のオールスター映画はキャストの動かし方が難しいのですが、本作は遊んでいるキャストがいないという点で感心します。コメディを本業としている俳優達は専らサポートに回り、コメディとは無縁の大物に思い切った役柄を割り振るという配置は、なかなか斬新でもありました。。。 とにかく凄いのが、トム・クルーズとロバート・ダウニー・Jrの大暴れです。トムが演じるのは、ジョエル・シルヴァーをモデルにしたと思われる映画プロデューサー。このキャラの狂い方が非常に素晴らしくて感動してしまいます。とにかく勢いで捲し立て、相手に反論の隙を与えず強引に話を結論に持っていく。本格的なコメディは初となるトムのハジケっぷりは楽しいし、「笑わせようとしてはいけない。不真面目な設定を真面目に演じることが笑いにつながる」という鉄則を守った演技には感心させられました。『マグノリア』でも感じたのですが、この人は脇に回るととんでもない演技と存在感を披露します。。。 一方ダウニー・Jrが演じるのは、サミュエル・L・ジャクソンになりきろうとするラッセル・クロウ(笑)。得意げな表情でブラザー言葉を使い、語尾で「メ~ン」と言う様には笑ってしまいました。かつてはメソッド演技を極めた実力派として名を馳せていたダウニー・Jrが、メソッド演技のやりすぎで自分を見失ってしまった俳優を演じるというセルフパロディとなっている点にも注目なのです。。。 最後に、本作の字幕の酷さについて触れます。笑いを理解していない人が字幕を担当したようで、せっかくの笑いどころがことごとく潰されています。例えば、「retard(知恵遅れ)」という言葉が「愚か者」と訳されているため、あえて差別用語を使った作り手の意図が伝わっていません。英語のジョークを原語で理解できる方以外は、本作を吹き替えで鑑賞されることをオススメします。笑いの量が3倍に増えますから。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2012-12-12 00:51:30)《改行有》

147.  007/スカイフォール IMAXにて鑑賞。映画の日であるにも関わらずIMAX料金込みで2,000円も取られましたが、大作らしいボリューム感は入場料の元を充分にとっていました。ドッカンガッシャンと通常のアクション映画以上に強烈な音響も映画館向きであり、設備の整った環境でこそ観るべき映画だと思います。。。 内容の方は、シリーズ中でもかなりの異色。なんせ、今回のボンドガールはMですからね。これまでのボンドガール最年長記録だったモード・アダムス(『オクトパシー』)の38歳を大きく更新した77歳、枯れまくっております。そんなMに合わせ、今回はボンドもセックスアピール控えめ。世代交代や老いが作品全体のテーマとなっているのですが、新米スパイだった『カジノロワイヤル』からたった1作を挟んだだけの本作でこのテーマは早すぎるような気がします。映画全体を振り返っても、ボンドが老いている必要性はあまり感じなかったし。。。 以上の通り、テーマや内容には少なからずの疑問符が付いたのですが、それでも映画としてはシリーズ中随一の面白さだと思いました。やはり監督力の差がモノを言っているようで、これまでシリーズを演出してきた11人の監督の中では最大のビッグネームであるサム・メンデスの手腕が光りまくっています。淡々とした中に激しさを秘めた大人のドラマには大変な見応えがあり、シリアスボンドとしては『カジノロワイヤル』をも超える完成度だと感じました。ジョン・ローガンによる脚本は娯楽性とドラマ性の間で絶妙なバランスを保っており、前任のポール・ハギス以上の仕事を披露しています。しばらく薄味が続いてきた悪役についても、今回は『ノーカントリー』で最強の悪役を演じたハビエル・バルデムの投入によってテコ入れが図られています。バルデム演じるラウル・シルヴァについては、設定上多くの穴が存在しているのですが、それでもバルデムの圧倒的な存在感によって何とか誤魔化せているので感心します。次回作を期待させるラストも面白く、総じて満足度の高い作品でした。[映画館(吹替)] 8点(2012-12-01 20:04:09)(良:1票) 《改行有》

148.  アメリカン・クライム 《ネタバレ》 怖い!暗い!不快!の3拍子揃った実録犯罪映画。インディアナ史上もっとも恐ろしい事件と言われたシルヴィア・ライケンス事件を扱っているだけに内容は超重量級なのですが、その一方で、露悪的な描写は最小限にとどめられています。血や裸はまったくと言っていいほど出てこないし、被害者役を演じるエレン・ペイジの顔も過剰には汚されません。安易な映像的ショックに走ることなく、演出や構成、演技の力で事件の恐ろしさを再現しようとした製作陣の真摯な姿勢には感心しました。本作と同様の企画をブチ上げると、必ずと言っていいほど血みどろの悪趣味映画を作ってしまう邦画界とはまったく違った奥深さを味わうことができました。。。 被害者少女の家庭環境や加害者女性の心理的背景、虐待の事実を知る者が大勢いたにも関わらず誰も通報しなかったという集団心理の恐ろしさ等、この事件には考えるべきさまざまな要素があるのですが、監督はその中でも加害者女性の心理にフォーカスしています。映画の視点を散漫にしないようひとつの要素に絞り込んだ監督の判断は支持できるし、物語の中心に立つガートルード・バニシェフスキーの完成度は驚異的なレベルに達しています。自分にとって都合のいいように物事を解釈し、理不尽を理不尽とは言わせない異様な空気を作り上げる恐ろしい女なのですが、それと同時に彼女は決してモンスターではなく、あくまで普通の人間の延長線上に位置づけられています。これを演じるキャサリン・キーナーの演技には鬼気迫るものがあって、序盤からラストまで嫌な汗をかかせてくれました。[DVD(吹替)] 8点(2012-11-07 01:15:58)《改行有》

149.  ディア・ブラザー 《ネタバレ》 無実の罪で投獄された兄を18年かけて取り戻した妹の実話なのですが、この兄弟の生い立ちから無罪を勝ち取るまでの約40年を、わずか107分の上映時間に収めてしまった驚異の構成には目を見張りました。かといって駆け足感があるわけでもなく、重要な場面は丁寧に描かれていることがこれまた驚きです。観客に提示する時系列を徹底的に計算し、ムダな場面を1秒たりとも作らないことで、この奇跡の構成を成し遂げています。監督は9年かけて本作を製作したと語っていますが、長期の取材で得た膨大な素材を適切に取捨選択し、事件にとっては重要であっても映画にとっては不要な要素(兄妹の母親、兄の前妻、妹の旦那etc…)をバッサリと切り捨てた決断力も大いに評価できます。。。 主人公を演じるヒラリー・スワンクは、オスカー女優ならではの抜群の貫録と安定感を披露。おまけに彼女自身もホワイトトラッシュの出身というだけあって、役柄に大変な説得力が与えられています。他方、兄役のサム・ロックウェルはやや意外なキャスティングだったのですが、コミカルなイメージのあるロックウェルのおかげで映画全体が適度に柔らかくなり、お涙頂戴のベタベタなドラマになることが避けられています。もしエドワード・ノートン辺りが演じていれば、嫌味な実録ドラマになっていたかもしれません。。。 本作は兄弟愛のドラマとして非常に充実しているのですが、同様に社会派ドラマとしても見応えがあります。主人公は、兄の無実を示す証拠を早い段階で見つけ出すものの、司法機関にそれを認めさせる過程で大変な困難にぶち当たります。自分の在任中に問題を起こされたくない地方検事が可能な限りの時間稼ぎをしてくるのですが、同様のことは日本でもしばしば発生しています。DNA鑑定の誤りが遠の昔に判明していたにも関わらず、司法がこれを認めるまでに何年もの時間を費やした足利事件や東電OL殺人事件、もはや日本国内で有罪を信じている者は皆無という状況にありながら、40年以上に渡って無実の男性を収監し続けている袴田事件のような事例がそれです。一人の人間の人生を台無しにし、その家族や友人の社会的名声までを著しく傷つける冤罪という問題に対して、司法機関の無責任ぶりは目に余ります。[DVD(吹替)] 8点(2012-10-27 11:21:58)《改行有》

150.  ヤング≒アダルト 幸せになれない肉食女子を描いた痛いブラックコメディなのですが、『JUNO/ジュノ』でオスカーを受賞したディアブロ・コーディによる脚本が相変わらず素晴らしく、男女を問わず楽しめる作品に仕上がっています。あらすじはかなり現実離れしているのですが、過去の栄光を懐かしんだり、初めての恋人を特別視したりといった主人公の心理には一定の普遍性があり、この点が観客と映画との間の共感の接点となっています。また、主人公の職業を小説家とし、彼女の歪んだ性根を小説によって明快に表現するという映画的工夫も素晴らしいと感じました。単なるバカ女にしか見えなかった主人公が、実は苦しい過去を抱えていたことが判明する終盤の急展開にも驚きと意外性があり、隅から隅まで計算し尽くされた脚本だと思います。。。 ジェイソン・ライトマンによる演出も安定しています。皮肉家で嫌味な性格なんだけど、どこか愛嬌を感じさせるキャラクターを描かせると、毎度この人は素晴らしい仕事をします。主人公のやっていることは最低で、その言動には同情の余地ゼロなのですが、それでもこのキャラクターを好意的に見てしまうのです。ハッピーエンドでもバッドエンドでもないクライマックスはいかにもライトマンらしい終わり方で、観客に何も押しつけてこないラフな姿勢に好感が持てます。[DVD(吹替)] 8点(2012-10-13 02:47:36)(良:1票) 《改行有》

151.  ペイド・バック 《ネタバレ》  イスラエル映画のリメイクということなのですが、オリジナルはDVD化すらされておらず日本国内で鑑賞することはできないようです。モサドが民族の敵を抹殺に向かうという『ミュンヘン』と似たような話であり、硬派な雰囲気も『ミュンヘン』譲り。かつて、『恋におちたシェークスピア』でスピルバーグとオスカーを競ったジョン・マッデンが監督を担当しているのですが、本作ではオスカー監督らしい卓越した手腕を披露しています。また、『X-MEN/ファースト・ジェネレーション』でX-MENを007にしてみせたマシュー・ヴォーンが脚本に参加した成果か、スパイ映画としてのディティールも整っています。一方で、ユダヤ人の被害者ナショナリズムや、元ナチスは殺されて当然の人間のクズというステレオタイプな描写は相変わらずで、こちらにはやや辟易とさせられるのですが、それでも映画としては面白く作られていて、最後まで楽しむことができました。。。 本作の最大の見どころは、若年スパイチームと老練の元ナチスとの心理戦。スパイチームは序盤こそ首尾よく作戦を遂行し、ターゲットである元ナチスの拘束に成功するものの、あるトラブルがきっかけで準備されていたシナリオが破綻すると、経験不足ゆえの柔軟性のなさと若さゆえの弱さを一気に露呈します。そして、彼らに監禁された元ナチスは、この隙を突いてきます。スパイチームは20代の若者3人、対する元ナチスは初老の男性が1人で、しかも手足を縛られ目隠しをされているという圧倒的に不利な状態。しかし彼は悪魔のような冷静さと鋭い洞察力によってスパイチームを精神的に疲弊させ、優劣を逆転させてしまうのです。とにかくこのやりとりにスリルがあって、派手なアクションがなくともスパイ映画は成立するということを本作は見事に証明しています。。。 全米公開時には高く評価された本作も、その地味な作風が祟ってか日本ではDVDスルー。おまけにジャンルを勘違いさせるような邦題を付けられるという不遇な扱いを受けていますが、見逃すには惜しい良作です。[DVD(吹替)] 8点(2012-08-18 21:22:11)《改行有》

152.  エドtv 前年公開の「トゥルーマン・ショー」の二番煎じとみなされて興業的にも批評的にも大失敗、ロン・ハワードの黒歴史と化している本作ですが、私は「トゥルーマン・ショー」よりも遥かに面白く鑑賞できました。本作では「トゥルーマン・ショー」に欠けていた点がほぼ完璧に補正されていて、メディア批判の映画としては超一級だと思います。。。 「トゥルーマン・ショー」の最大の欠点とは”「トゥルーマン・ショー」が面白い番組に見えない”という点でしたが、これに対し本作は①トゥルーマンを無理に拘束せずともテレビに出たがる人間はいくらでもいる、②視聴者が興味を持つのはハプニングとスキャンダル(清廉潔白なトゥルーマンのドラマなど面白くも何ともない)、この2点を徹底して深掘りすることで、「もしこんな番組をやっていれば、恐らく人気が出るだろう」という説得力を持たせることに成功しています。最初は「くだらない」と言っていた視聴者達が番組に対して徐々に関心を抱き始め、大人気番組へ成長していくという丁寧な描写はロン・ハワードならでは。次々と繰り出される"バラエティあるある"には笑わされるし、同時に考えさせられます。またエドが反撃に転じるクライマックスには適度なカタルシスがあり、脚本も演出も驚くほどしっかりしています。。。 三十路でフリーターのダメ人間だが、誰からも愛される可愛げを振りまくエド役にマシュー・マコノヒーは適任でしたが、このキャスティングも当時としてはかなりの意外性がありました。というのも、マコノヒーは弁護士(「評決のとき」「アミスタッド」)、神学者(「コンタクト」)等専らアカデミックな役柄を得意としており、ダメ人間を演じることは珍しかったからです。しかし本作は彼の個性を引き出すことに成功し、以後のマコノヒーは気の良いチャラ男を演じることが多くなりました。本作はキャスティング面でも成功を収めていたというわけです。[DVD(吹替)] 8点(2012-06-25 01:18:06)(良:1票) 《改行有》

153.  アメイジング・スパイダーマン 《ネタバレ》 IMAXシアターにて鑑賞しましたが、スパイディの背中をカメラが追う3D映像はかなりの迫力と面白さで、映画館で観てよかったなぁと思う作品でした。今回のピーター・パーカーは松潤似のルックスに天才科学者並みの頭脳、ハリー・ポッターばりにいわくつきの両親を持つ特別な人物となっていて、平凡な高校生がスーパーヒーローになるというサム・ライミ版とは大きく異なる物語ではあるのですが(ドラえもんの主人公がのび太から出木杉君に代わったくらいの大きな変更)、前シリーズを丁寧に研究して作られているおかげでこの方向転換に違和感は覚えませんでした。スパイダーマンは正義のあり方について常に思い悩むし、敵も絶対悪ではない。人情が複雑に絡み合う湿っぽい構図は健在なのです。スパイディが市井の人々に支えられているという描写もきちんとなされていて、NY市民が負傷したスパイディのために道を作る場面にはファイトシーン以上に興奮させられました。これぞスパイダーマンです。。。 旧キャストによる「スパイダーマン4」の製作がキャンセルされ、代わりに娯楽作の経験のないマーク・ウェブが新監督に抜擢された時には不安を覚えたのですが、完成した作品を見るにこの判断は正解だったようです。サム・ライミが不得意としていた恋愛パートの演出も彼にとってはお手の物だし、アクション演出は期待以上に的確です。CG全開のヒーローバトルはもちろんのこと、マスクをかぶる前のピーターが街のチンピラを倒して回るライブアクションも流れるように決まっています。粋なラストはこの監督ならではで、今後も彼が担当するのであれば、このシリーズはかなり期待できると思います(私が鑑賞した吹替版と字幕版とではグウェンの父親の最後の言葉の翻訳に違いがあるため、どちらを鑑賞したかでラストの評価は割れている様子ですが)。。。 なお、私の周囲ではウェブシューター(糸を発射する機械)の登場に戸惑いの声があがっているのですが、原作に忠実なのは本作の方。前シリーズでは「平凡な高校生が高度な機械を発明することは不自然」との理由で手首から糸を発射するという設定となっていましたが、ピーターを天才とした本作では原作通りの描写に戻されたようです。[映画館(吹替)] 8点(2012-06-24 16:30:38)(良:4票) 《改行有》

154.  クローバーフィールド/HAKAISHA JJエイブラムスはコラージュの天才。本作では悪名高きエメリッヒゴジラを作り直しているのですが、そこにスピルバーグの演出手法を採り入れ、テレビドラマでやっていそうな青春ドラマをトッピング。自由の女神の生首が転がるビジュアルは「ニューヨーク1997」からの拝借なのですが、抜群のシチュエーションでこれを投入することで本作を象徴する場面へと昇華させています。。。 脚本は隙がないほどに作りこまれています。軍人さんの忠告を無視して火事場に入る迷惑男の物語なのですが(現実の被災地では一番厄介なタイプ)、主人公の心理的背景を簡潔ながらもしっかりと伝えているおかげで、身勝手な主人公への嫌悪感を覚えることはありません。カメラマン役については”空気を読めないバカ男”というキャラ設定がなされており、友人が目の前で兄弟を失おうが、さっきまで行動を共にしていた女性が血を吐いて死のうがカメラを回し続ける彼の不可解な行動についても一定のフォローがなされています。事態に対処する軍隊の行動は現実的であり、”NYが怪獣に蹂躙されたら?”という設定が論理的に煮詰められていると思います。ここまでやってくれれば文句なしです。。。 本作の問題点といえば、とにかく画面で酔うということ。私は手持ちカメラの映像に慣れているつもりなのですが、それでも凝視するのが苦しい場面がいくつかありました。人によっては鑑賞不可能に近い状態となっており、もし続編を作るのであれば、この点は改善すべきだと思います。 [映画館(字幕)] 8点(2012-06-20 01:14:51)《改行有》

155.  ワイルド・スピード/MEGA MAX “1””2”は各々劇場公開時に鑑賞したものの、あまり面白く感じなかったためどちらも一度しか観ていません。”3””4”に至っては未見であり、シリーズの予習は不十分な状態でこの”5”に臨んだのですが、ありがたいことに予備知識がなくても楽しめる仕上がりとなっています。主要キャラにまつわる過去のいきさつをセリフでそれとなく説明してくれるのですが、こうした細かな配慮には好感を持ちました。。。 映画は序盤からハイテンション。「どう考えても死んでるだろ」というシチュエーションでも決して死なない主人公、一発殴ると簡単に倒れてくれるその他大勢の敵というご都合主義の塊のようなアクションが洪水のように垂れ流されるのですが、天井知らずのやりすぎ感が滅法楽しく、まったく不快に感じませんでした。一方で、ブラザー達による「オーシャンズ11」がはじまる中盤は中弛みしまくりなのですが、ここで一息ついたことで映画全体の呼吸はうまく整えられています。この中弛みのおかげで、クライマックスのしつこいカーアクションが立ちまくっているのです。このカーアクションがとにかく凄いの一言で、マイケル・ベイが泣いて悔しがるほどの面白さ。歴史に残るアクションだと思います。。。 カーアクション以外で注目すべきは、ドウェイン・ジョンソン演じるルーク・ホブス捜査官でしょう。完全武装の部下を従え、メガフォースを思わせる特殊車両でブラジル出張という登場場面ですでにバカ。設定上は敏腕捜査官のはずなのに、どうやっても軍隊の特殊部隊にしか見えないルックスには目が釘付けなのでした。捜査らしい捜査はせず、腕力で強引に突き進むのみ。部下を殺されて怒り狂えばブラジルの警察署までを襲撃し、敵の親玉は無抵抗であっても容赦なく射殺という狂犬ぶりも最高で、「コマンドー」のジョン・マトリックス大佐に匹敵する逸材だと思いました。本作のラストを見るに”6”以降でも主要キャラとして登場し続ける様子ですが、引き続きネジの飛んだ大活躍を披露して欲しいものです。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2012-06-18 11:42:17)(笑:2票) 《改行有》

156.  ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー 《ネタバレ》 日本国内での鑑賞が長らく困難な状況にあった本作がいよいよDVD化ということで早速飛びついてみたのですが、”伝説の作品”と呼ばれるだけの映画だと思いました。鑑賞前には「マイケル・マンの名声とともに評価が独り歩きした映画なのでは?」という不安もあったのですが、その不安を軽く吹き飛ばすクライムアクションの傑作でした。。。 本作は、マイケル・マンがその後30年の監督人生で扱うすべての作品のプロトタイプとでも言うべき仕上がりとなっており、マイケル・マンのすべてが詰まっています。ディティールに対する異常なまでのこだわり、音楽と映像面での独特の美学、職人気質の男たち、一匹狼ではなくチームで行動する犯罪者集団、プライベートを捨てて対決に臨むクライマックス、これらすべてが本作で出揃っているのです。特に「ヒート」との類似は顕著なのですが、かっこつけまくりだったデ・ニーロに対して本作のジェームズ・カーンはその思いをはっきりと喋ってくれるので、物語の理解については本作の方が容易ではないかと思います。カタギの幸せに憧れながらも、ヤクザ者の自分にとってそれは幻であることを悟ったカーンが、ヤクザとしての落とし前をつけに行くラストには「ヒート」を上回る興奮がありました。。。 なお、本作については”コンバットシューティングを採り入れた初の映画”という触れ込みがありますが、銃撃戦はクライマックスにチョロっと出てくる程度なので、その線ではあまり期待されないように。[DVD(字幕)] 8点(2012-06-11 01:39:12)《改行有》

157.  チャーリー・ウィルソンズ・ウォー 《ネタバレ》 国論が右か左かで固定され、その方向性に反する事柄についてはタブーを作って議論すらしない日本とは根本的に違う風土がアメリカにはあります。保守とリベラルが同時に存在し、相互に牽制しあいながら国を動かしていく。もしもその過程や結果に過ちがあれば、それを冷静に振り返ってきちんと反省をする。これはアメリカ国民の誇るべき一面であるし、映画というメディアがその役割を担い、一定の娯楽性を保ちながら鋭い考察を加えるという文化は、世界的にも類を見ません。そういった点において、本作はまさにアメリカ的な映画、アメリカ人でなければ作ることができなかった映画であると言えます。。。 ほとんど名前を知られていない下院議員が世界を飛んで話をつけて回り、大物議員を手玉にとって予算を確保する前半には、サクセスストーリーとしての面白さがありました。話のまとめ方もうまく、ややこしい国際情勢は池上彰よりもわかりやすく説明されています。”現地事情に精通した変人集団CIA=ガスト”、”金も政治力もあるが本質的には単細胞なキリスト教原理主義者=ジョアン”といった具合に、本件を取り巻く様々な集団を一人のキャラクターに収斂させたことで、登場人物の数をうまく減らしたのが勝因でしょう。笑いと毒のバランスも絶妙であり、監督のマイク・ニコルズは76歳とは思えないほど若々しい手腕を披露しています。。。 シリアスモードに突入する後半も、やはりバランスの取り方は見事なものでした。観客に問題提起をするものの、情緒的にくどくどと問いかけるようなことはしない点には大変好感を持てました。シリアスな問題を扱いながらも終始冷静さを保ち続けたことが、本作の最大の勝因であったと思います。 [DVD(吹替)] 8点(2012-06-02 01:46:24)《改行有》

158.  アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン 《ネタバレ》 TSUTAYAで何気なく手に取ったのですが、これが滅法面白くて驚きました。傑作の類ではありませんが、映画に通常要求される水準は軽く超えています。。。 不良同士の些細なトラブルがいくつかの偶然や勘違い、無知ゆえの思い込みによって凄惨な殺人事件へと発展していくという物語なのですが、ニック・カサヴェテスによる脚色が抜群に優れています。通常であれば殺人に手を染めた青年に的を絞るべき題材にあって、この人物をあえて本筋から外しているのです。ほのぼのとした友情物語に上映時間の大半を費やしておいて、ラストになって突如、殺気だった殺人者を送り込んでくる。このコントラストの付け方は非常に効果的でした。同時に、殺人者となる青年が殺人を犯すに至った心理的背景も手短ながらきっちりと描かれていて、相当に計算された脚本だと思います。。。 俳優の使い方もうまくて、ジェスティン・ティンバーレイク、エミール・ハーシュ、アントン・イェルチン、ベン・フォスター、オリヴィア・ワイルドら伸び盛りの若手を大挙して出演させ、その脇をブルース・ウィリスとシャロン・ストーンで固めるという抜かりのない布陣となっています。ティンバーレイクの気の良い不良ぶりは完璧なキャスティングだったし、神経質な母親を演じたシャロン・ストーンには「この人、こんなに演技力あったの?」と驚かされました。「フェイス/オフ」以来10年ぶりに見たドミニク・スウェインは相変わらず美人で、オスカー・ワイルドはおっぱいを出しています。まさに充実の映画ではありませんか。。。 問題に感じたのはこの映画の売られ方で、「実話を描いた衝撃のクライムサスペンス!」「史上最年少のFBI最重要指名手配犯!」という宣伝文句は作品の本質をまるで表していないどころか、観る者にあらぬ期待を抱かせて鑑賞後の満足度を引き下げる結果にもつながっています。良い映画なのだから、もう少し丁寧に扱ってほしいものです。[DVD(吹替)] 8点(2012-05-13 18:16:13)《改行有》

159.  4デイズ 《ネタバレ》 ポール・ハギスの「スリー・デイズ」にレニー・ハーリンの「5デイズ」と紛らわしくて仕方がない”デイズもの”の一本ですが、これがなかなかよくできています。ワンシチュエーションもののサスペンスとしては年に一本出会えるかどうかというレベル。設定に無理はあれど90分ならば勢いで乗り切れる。これは思わぬ拾いものでした。 【注意!ここから壮絶にネタバレします】 とにかく凄いのが脚本で、観客の先読みを巧みに利用する形で物語をぐいぐいと進めていきます。「実は核爆弾などなかったことがラストで明かされ、拷問の無意味さを説いて映画は終わる」、私はこんな結末を予想しながら観ていました。私以外の多くの観客も同じようなことを考えたのではないでしょうか。しかしそんな浅はかな先読みなど脚本家は百も承知であり、この”狂言説”はまんまと中盤のトリックに利用されます。「どうせ”狂言でした”がオチだろう」と思っている観客の目の前で53人の市民を爆殺してみせ、この犯人はホンモノであることを強く印象付けるのです。こうして予想を裏切られた観客はその後の展開がまったく見えなくなるのですが、観客が真っ白になったところで「ここからが本番だ」とばかりに二転三転の怒涛の展開を叩き込んでくる周到さには舌を巻きました。。。 この結末が読めない物語の中では、観客は己の倫理観をも問われることとなります。容疑者を痛めつけることは悪いことだということは明らかです。一方で、本気で人を殺そうとしている犯人を相手にした時には、綺麗ごとだけでは解決しないこともまた事実。では、どこまでの強硬手段ならば許されるのか?現実の戦いを知っているサミュエルは徹底的にやろうとしますが、トリニティらオーディエンス達はいつまで経っても腹を決められません。ショッピングモールを爆破された直後には殺意を持って犯人に襲いかかるものの、怒りが喉元を過ぎると再び生温いヒューマニズムが頭をもたげる。最終的には、米国人の良識によって核爆発が引き起こされるという皮肉な結末を迎えます。エグイ拷問をやっているサミュエルと犯人は、実は冷静な計算の中で動いており、良識派ぶってその拷問を眺めているオーディエンスの方が感情に流されているという構図こそが本作のミソ。「世論は本当に戦いを理解しているのか?」ということを鋭く問いかけてきます。[DVD(吹替)] 8点(2012-05-04 02:03:16)(良:1票) 《改行有》

160.  スカーフェイス 「名作に泥を塗る下品極まりないリメイク」これが公開直後の本作の評価でした。では、このリメイクは失敗だったのか?遡ると「暗黒街の顔役(「アビエーター」でおなじみハワード・ヒューズによる製作)」も公開当時には低俗だ、下品だと大いに罵られていたわけで、お上品な方々を激怒させるほどの過激さという点において、本作はオリジナルの精神を正しく受け継いでいます。主人公の設定をイタリアンマフィアからキューバ人ギャングに変更した点も単なる思いつきの改変ではなく、「新参者の移民がアメリカの裏社会でのし上がる」という物語の骨子を30年代から80年代に置き換えた時、アメリカ社会で独自の立ち位置を確保したイタリア系ではもはや主人公になりえないという背景があったわけで、これは必然的な変更であったと言えます。表面をなぞるだけの空虚なリメイクではなく、オリジナルの骨子を正確に理解した上で、表面を必要な形に加工していく。これは理想的なリメイクのあり方だと思います。3時間という上映時間(なんとオリジナルの倍)にも、良い意味での長さが感じられました。とにかく密度が濃く、パンパンに膨れ上がった映画を観たという満足感が味わえるのです。長くはあるが無駄は一切なく、最後までまったくダレない。脂が乗り切っていた当時のオリバー・ストーンのパワーは尋常ではありません。 そして、この脚本を引き受けたブライアン・デ・パルマの演出にも目を見張ります。この映画、クレジットを見なければ監督がデ・パルマであることに気付く人はいないでしょう。普段はテクニックを重視し、機械的な印象を与えるデ・パルマが、若きオリバー・ストーンによる脚本のテンションに合わせて非常に感情的な演出をしているのです。デ・パルマといえば似たようなサスペンスばかり撮ってる人というイメージでしたが、案外、演出の引き出しは多いようです。それでいて、電ノコシーンでは壁をすり抜けるカメラなどおなじみのテクニックをさりげなく入れてきているわけで、どこで自己主張すべきか、主張を抑えるべきかという客観的な判断力を持った優秀な監督であると言えます。と思ったら、ラジー賞監督賞ノミネート?本作の価値を見抜けなかった当時の人々は末代まで恥じてください。[DVD(吹替)] 8点(2012-05-01 01:16:23)《改行有》

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