|
プロフィール |
コメント数 |
1286 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。 【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。 【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。 5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。 また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。 |
|
1. 本当の目的
《ネタバレ》 製作国は今でいう北マケドニアとコソボである。撮影は全てマケドニアだったそうだが、言語はマケドニア語のほかアルバニア語(コソボの主要言語)が使われているとのことで、終盤の男連中(コソボの役者)が話していたのがアルバニア語だったのかも知れない。なお景観が印象的な湖はマケドニア・アルバニア・ギリシャの国境にあるプレスパ湖だったらしい。
内容的にはミステリー調の物語で、最初は見ず知らずだった女性2人が、原題の「9月の3日間」を通じて互いに理解し共感し合い、最後に何事かをなす展開になる。初めのうちは人物像もわからず突き放した気分で見ていたが、その後次第に愛着もわいて来て、最後はそれぞれ納得のいくよう決着してもらいたいと願いながら見ていた。
ちなみにヘイトと言われるかも知れないが、個人的には普段から白人女性の外見をあまり魅力的に感じないことが多いので、この映画でも主要人物2人とも可愛くないのが出て来たなと思っていた。しかし後になるとそれぞれ外見的にも人物的にも格段に魅力が増し、特に「売春婦」と言われた人物が終盤いきなり清楚系に化けたのは意外だった。
ほか社会的なテーマに関して、まず元大臣が建設したホテルの件は、地元貢献なのか汚職による蓄財か、あるいは単に現地の歴史的習慣なのかも知れないがよくわからない。また女性への性的虐待に関する問題意識が根底にあったようで、主要人物の境遇もそうだが、特に引っかかったのが「この国自体が売春宿みたいなもの」という発言だった。
劇中では、警察官が反社会的勢力と結託して「売春宿」を作ろうとし、これを「質のいいやつ」にするために、「放浪してる女」ではなくロシア人を使うつもりだと言っていた。ここでロシア人が上物扱いというのもどうかと思ったが、下に見られた「放浪してる女」という字幕のところで、原語の台詞ではЦиганки(ロマまたはアッシュカリー?の女性)とかМолдавки(近年ヨーロッパで最貧国扱いされているモルドバ共和国の女性)と具体的に特定していたらしいのはかなり侮辱的に聞こえた。これが現地の実態なのだとすれば結構厳しい告発になっている。
ちなみにネット上にあったモルドバ人女性の人身売買の記事(マケドニア語、2004.10.17)によれば、売られる先は主にロシア・トルコ・バルカン半島だそうで、マケドニアでも警察官が仲介した事例があったとされていた。この映画も適当な作り話ではなかったらしい。[インターネット(字幕)] 7点(2020-08-29 08:25:06)《改行有》
2. ビフォア・ザ・レイン
《ネタバレ》 今でいう北マケドニア共和国の映画である。見えていた湖がオフリド湖とすればアルバニア国境に近い場所ということになる。
劇中で「500年の恨みを晴らす時だ」という台詞があったが、15世紀末に何があったのか部外者にはよくわからない。この辺はかつてイリュリア人(アルバニア人の祖先?)などが住んでいたところ、6~7世紀に北からスラブ人が押し寄せて、さらに東からブルガール人が攻めて来てブルガリアの一部になり、その後14世紀のうちにオスマン帝国に征服されてから19世紀まで大きな動きはなかった感じではないかと思うが(そんな簡単ではない?)、この地方で見れば何か500年前に大事件でもあったものか。
20世紀末に関していえば、マケドニアでは1991年のユーゴスラビアからの離脱はわりと平穏に行われたが、人口の約1/4を占めるアルバニア人の処遇には苦慮したらしい。映画の撮影は1993年とのことで、映像で見えた国連部隊が1992年12月から派遣されていた国連保護軍だとすると、当時の現地情勢と同時進行の映画だったことになる。実際はこの時期にマケドニアで大規模な騒乱はなかったようだが、その後は90年代末のコソボ紛争の影響もあって、2001年にはマケドニアでも紛争が起きたとのことで、現在ではマケドニア人とアルバニア人の連立政権という形で各民族に配慮した国家運営がなされているとのことである。
ところで劇中で印象的だったのは現地の村で、銃器や小物以外に近代を思わせるものがほとんど見えない。村中が知り合い、親戚だらけなのは非常に息苦しく、またカメの火刑とかネコへの執拗な銃撃を見ると、言っては悪いが地域社会の文明度が疑われる。いきなり復讐団ができたのは、紛争のせいというよりこの周辺(どちらかというとアルバニア側?)にあったという“血讐”の風習のせいではないのか。カメラマンの男がロンドンにいると野蛮人のようだが、地元ではジェントルに見えたというのも意図した対比と思われる。
物語としては循環構造だそうで、パート単位で並び順をずらしてあるほか、明らかな矛盾が生じている箇所がある。面倒くさいので厳密に考える気にはならないが、とりあえず人も社会も永遠に同じことを繰り返すのではなく、少しずついい方に向かうものだと一応期待したい。
ちなみにレストランで騒いだ男は、アイルランド人でないとすれば何人だったのか。どうも何かと不快な場面の多い映画だった。[DVD(字幕)] 5点(2020-08-29 08:25:04)《改行有》
|