|
1. イン・アメリカ 三つの小さな願いごと
《ネタバレ》 みなさんが言われるように子役はすばらしかったし、両親の役も友人のマテオ役もやっぱり彼らの演技、僕は良かったと思います。DVDで監督の解説を聞くに、かなり即興的に自由に役者に演技してもらったみたいですが、とても自然な雰囲気にできていたと思います。
「死んだ子どもに捕われてダメになっていく夫婦/でもそれを乗り越えていく夫婦」という話は他にもいくつも見た気がしますが、エピソードのからめかたは自然で、僕には説得力をもって感じられました。アメリカのニューヨークに移民としてやってきて、はじめて入る不気味なアパートの雰囲気はおどろおどろしくて、薬物中毒者みたいな人がいっぱい住んでいて、失業中のお父さんの貧しさとあいまって暗い怖い感じを作り出しているんだけれど、映画がはじまってすぐに感じられる「この映画はハッピーエンドのはず!」という確信をちょっとゆさぶりながら、うまく物語りを進めていっています。特にハロウィンに、こどもたちが(無謀にも!)階下の住人たちの部屋を訪問するエピソードは、そうした緊張を高めながらそれを昇華させる見事なシーンにできあがっていました。
全体的に、「子どもの死」「失業と貧困」「エイズ」「新しいこどもの誕生」などいかにもよくあるようなモチーフを組み合わせつつも、そこに新たな発見をさせてくれる映画だったと思います。下手すると「ありがち」でかつ「難解」になりそうなところを、新鮮でかつ幸せな物語を作りだした監督、スタッフ、俳優たちの力量のあらわれだと思います。
8点(2004-11-15 15:36:57)《改行有》
2. ヒア・マイ・ソング
《ネタバレ》 すべてを失って故郷に戻ってから、むかしからの親友と一緒に、伝説のミュージシャンを探すたびに出るんだけど、この二人のかもしだす空気が良かったですねぇ。こんな友達がいたらいいなあ、こんな関係を保てたらいいなあ、って心のそこから思わせてくれます。
他にも、主人公が一緒に仕事をしているおじいちゃん二人組みとか、伝説のミュージシャンの仲間たちのおじいちゃんたちとか、そういう「古い仲間」の描き方が最高ですね。
そしてこれまでの登場人物全員集合のラストが幸せいっぱいです。
音楽も、曇り空の風景にしっくりくるペンギン・カフェ・オーケストラとアイリッシュ・トラッドがいい感じでした。
9点(2004-11-12 16:25:12)(良:1票) 《改行有》
3. マグダレンの祈り
アイルランド旅行の後で、その余韻に浸ろうと思って借りてきたDVDでしたが、旅では見られなかった別の側面を見させられた思いです。ヨーロッパの辺境に位置するあの国は、一方ではイギリス・プロテスタントの圧制に苦しみつつ、おそらくその反動で、強烈な愛国心とカトリックの影響力のもとにあったんだなと感じさせられました。大好きなアイルランド音楽もこうした性の抑圧も、その副産物なのかなあと思うと複雑な気分です。
すっかり「テス」の世界が、20世紀にそのまま残っていたというのはかなりショックでした。
映画としては、ぎりぎりの世界の中に、微妙なユーモアと生きていく強さ、弱さを感じさせる、すばらしい演出と演技でした。バーナデッド役のノーラ=ジェーン・ヌーンが大変魅力的です。
9点(2004-10-30 02:00:44)《改行有》
|