|
1. 瞳の奥の秘密
《ネタバレ》 アカデミー賞外国語賞を受賞している世界的に評価されている作品。
一切飽きることはなく、興味深くストーリーを追うこともできる。
時代背景が必要なところもあるが、さほど難解さもなく、ストーリーは大体理解できたと思う。
しかし、受け手側である自分の人生経験不足ということもあり、個人的には世間的に絶賛されているほどハマることはできなかった。
自分は、まだまだ過去や思い出に生きるほどの熟した年齢ではないということか。
劇中においては、瞳の奥に刻まれた過去や思い出に囚われて生きる男の悲哀や空虚さのようなものが感じられる。
妻を殺された男性、その事件(もちろん事件だけではない)を忘れられない男性という二人の男性が印象的に描かれている。
彼らは“a”が打てないタイプライターのようなものかもしれない。
重要な部分のどこかが壊れている。
過去から一歩抜け出せれば、『怖い』→『愛している』のように何かが劇的に変われるのだろうか。
しかし、過去をどんなに忘れたくても、過去からどんなに抜け出したくても、簡単に抜け出せるほど、単純ではないということもしっかりと描かれているような気がした。
妻を殺された男性の場合には、『愛している』→『怖い』へと変わってしまったのだろう。
この事件によって、彼は“a”を打てなくなってしまったようだ。
冒頭の駅における別れのようなシーンが観客の瞳にも刻まれていくような仕掛けも見事である。
この印象的に描かれたシーンがどのように結び付いていくのかと、観客は考えざるを得ないだろう。
それぞれのキャラクターの瞳の輝きや微妙な表情など、セリフで描かれていない部分なども多く、それらも評価されたのだろう。
また、サッカー競技場における撮影方法についても見所があった。
上空のヘリコプターから撮影しているのだろうと単純に思っていたら、徐々にズームしていき、いつのまにか雑踏の中に視点が移っている。
「今のどうやって撮影したのだろう。どこかで切り替えたとは思うが、初見では分からないな」などと撮影技術などについても感心させられる。[映画館(字幕)] 7点(2010-10-12 21:34:12)(良:2票) 《改行有》
2. モーターサイクル・ダイアリーズ
旅をするために旅に出発した二人、詳細なプランは特別にはない、目的地はハンセン病施設。
そんなあてどもない旅を通して、ゲバラが何を見つけ、何を学んだのかという視点が上手く描かれていた。
学んだものは、ぶつける事が出来ないどうしようもない怒り、やりきれない想い、人々の貧しさと、人のために役に立ちたいという漠然とした気持ちが強い想いに変わったこと。
旅を通して自分が何をなすべきかを探し得たのではないだろうか。
嘘をつくことが出来ない、わけ隔てなく人に対して向き合い、人に対しての愚直なまでの率直さが、ガエルガルシアの真っ直ぐな眼差しとあいまって、人々を惹きつける魅力となっている。
旅をしているうちに様々な人々と触れ合い、大きく変わっていく自分。
そしてもう戻ることが出来ない自分もいた。
旅もそうであろうが、自分に対しても郷愁と興奮があるように感じる。
もう戻ることが出来ないなつかしい思いのする自分と、どういう人生を歩んでいくか興奮を感じさせる自分。
そのような目的を見つけ、皆にスピーチするゲバラを見つめるアルベルトはどことなく羨ましそうだった。7点(2004-11-20 22:40:12)《改行有》
3. ジェリー
特にストーリーもなく、二人の男が荒野をさまよう映画。
監督の意図がなんにせよ、観客が自由にこの映画を解釈してもいいだろう。
自分は勝手ながら、この映画を「人生」に置き換えてみた。
人生もいわば目的地も何も分からずに、解決する術も持たずにただひたすらさまよう、どこに辿りつくかも分からずに。
人生という荒野をさまようためにはパートナーが必要だろう、だから男と女二人で歩き始める。
実話のベースであり、サントがあれなんで二人の男という設定だが、これが男と女だったらもっと面白いだろうな感じる。
あるシーンでは、一人は降りれない岩に勢いで登り、オマエのせいでこうなったと叫ぶ。
もう一人も助けるフリはするが、どうにも助けようにも助ける気にはなれない。
やむなく一人は自分の力で解決するというシーンがある。
人生もこのようなものではないかという気がする。
勢いで物事を推し進め、どうしようもない困難にぶちあたったら、とりあえず人のせいにしてみる。
他人も助けてくれそうにみえて、実際には親身には助けてはくれない、やはり自力で解決するしかない。
これが現実の夫婦のような二人なら、そのような二人に入ったささいな亀裂は徐々に大きくなる。
そして会話もなくなる二人。
もっとも映画のような状況なら、どんなセリフが適切か考えてみたがやはり無言しかないだろうな。
一番好きなシーンが夜の暗闇をひたすら明かりもなしに歩くシーン。
自分が今どこにいるのか、どこに向かっているのかも考えずにひたすらがむしゃらに前に進むことしか考えられない状況に陥る。
そして散々さまよったあげくにどんな風に歩いてきたかを話し合う二人…だがもう物事が解決できる状況にはない。
そしてラスト。
冷静になれば問題を解決できたであろう二人が取った行動。
人生にもこのような状況があるはず、しっかりと周りを見れば解決できたはずなのに周りが見れなくなっているから解決手段が分からずに何の解決にならない解決方法を取るしかなくなっている。
この映画に点数をつけるのは難しいが、色々と人生のことを考えることが出来たのが収穫だった。
8点(2004-10-03 00:23:46)《改行有》
|