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1. 親切なクムジャさん
《ネタバレ》 「復讐者に憐れみを」「オールドボーイ」両作ともに凄まじいパワーを感じ、この監督はかなりの切れモノだと思っていた。したがって、復讐モノ三部作の完結になると言われている本作にも期待せずにはいられなかった。
しかし、深く考える人の中には入りこめる人もいるだろうが、個人的には、全く入りこめない、全く面白くないの二言に尽きる。
イヨンエという女優は全く知らないのだが、役柄上からだろうか、あまり内面の苦しみや怒りなどが伝わらず、彼女の感情を上手く把握できなかった。復讐という血なまぐさいテーマにはあまりあっていない女優のようにも感じる。
ストーリーについては、大して深く描かれていない人脈を武器にさくさくと復讐に向けた動きが進むだけで、ほとんど捻りがなく、復讐に向けた抵抗勢力が二人組の男くらいだけで山が極めて少なく低いのが問題。
また、復讐をするか否かという葛藤もなさそうなので同情や共感もしずらい。子どもがいるのに「復讐=人生を再度棒に振る=子どもとはもう会えない」という発想がないのもちょっとおかしい。クムジャの頭の中には「復讐>娘」という関係があるように思われるので共感しにくい(復讐が終わってようやく娘と向き合えるというのも分かるが)。老いた警官も葛藤を与える役柄にしても良かっただろうに。
女性復讐者であることの最大限の利得である母性もこれまた上手く感じることができなかったのが残念だ。韓国語が分からない女の子という設定が、「通訳」を効果的に演出できるというメリットはあるものの、コミュニケーションが上手く取れないという欠点にも繋がったように感じる。なぜか彼女の「I’m sorry」や白いケーキが胸に響かなかった。
そもそも、子どもを殺された家族の苦しみと(子どもとともに過ごす)時間を失ったに過ぎないクムジャを同列に描くことはちょっと違うのではないか。犯人は子どもを嫌いと言いながらクムジャの娘を解放しているのにもやや矛盾を感じる。どうせならクムジャの娘は双子という設定にして片方が誘拐され殺されたとしたならばまだ分かるのだが。[映画館(字幕)] 3点(2005-11-13 23:08:36)(良:1票) 《改行有》
2. JSA
大の大人たちが子供のようにはしゃぎながら遊ぶ姿に深い意義がある、見る人によってはあの場面に複雑な想いを感じるのではないか。
そんな些細なことすら出来ない越えられない一線が二国にはあるのだろう。
日本に暮らしている我々には少し理解できないモノがあるが、南北分断のことを考える手助けになる本作はなかなか意義深い作品である。
人間として育むことが出来る彼らの友情も、南北分断という歴史に翻弄され一瞬のうちに敵となってしまう悲劇がある。
双方が銃を容易に降ろすことが出来ないのも、二国の関係をそのまま表している気がする。
ソンガンホのように冷静に中に割って銃を降ろすように仲裁してくれる国があれば良いのだが。
そして4人のうち3人が死んでしまう結果が心に痛い、現場で死んでしまった絵が好きな彼はやむを得なかったとしても、親友を死なせてしまった他の二人は離れていてもそれぞれが幸せに暮らすことはできなかったものかと感じる。
訳の分からないうちに親友を撃ち殺してしまった結果だけは過程がどうであれ変えられない現実として自分に残る、その後悔のなかで生き続けることは出来なかったのだろう。
あの緊迫した場面の中で一人だけ冷静に行動できたソンガンホは一人、孤独の中で何を想うだろうか。
事実が公にならないよう皆が揃った部屋で暴れた彼の行動が優しい。8点(2004-11-03 23:56:43)《改行有》
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