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1. オアシス
《ネタバレ》 ジョンドゥは、軽度の知的障害を持つ社会不適応者。車でひき逃げ死亡事故を起こして、2年6ヶ月の刑期を終え、出所してきたばかり。他に暴行と強姦未遂の前科がある。実はひき逃げしたのはジョンドゥの兄だが、兄がいなくなると家計が困るので、ジョンドゥが身代わり出頭したのだった。家族の犠牲となったのに家族は冷淡で、彼の出所の出迎もしないし、引越した事も教えない。つまり、面会にも行っていないのだ。それは彼が数々の問題をひき起こし、家族から愛想尽かしされていることを物語る。コンジュは、ジョンドゥの兄の起こした交通事故で死亡した被害者の娘で、脳性まひ由来の全身痙攣がある重度身体障害者だ。兄夫婦と暮らしていが、兄夫婦は環境のよい障害者住宅に引っ越してしまい、行政の調査があるときだけ彼女を呼び寄せる。彼女の世話は謝礼をもらって隣夫婦がしているが、セックスを見せつけるなど、とても親身とはいえない。ジョンドゥの不幸は自業自得の面があるが、コンジュの不幸は底なし沼のように深い。動き回る自由はなく、絶対孤独の中に棲む。コンジュにとってジョンドゥは親の仇で、とても憎いだろう。その上、押しかけてきて、強姦されかけて失神する。普通なら憎悪と嫌悪の対象でしかない。しかし、強い見捨てられ感のあるコンジュにとって、相手が誰であれ、気にかけてくれることが生き甲斐となる程嬉しいのだ。いつしか交流が始まり、逢瀬を重ね、二人は恋仲となる。はた目には美しくなく、食堂でも拒否されてしまうが、二人はさほど気にしない。もう慣れっこだ。そんな時最悪の事件が出来する。二人が初めて結ばれている最中に発見され、強姦事件にされてしまう。二人が事実を話せば済むのだが、何故か話さない、話せない。悲劇を盛り上げるための映画的方便だ。逮捕の瞬間は劇的である。コンジェはかねて壁のオアシスを描いたタペストリーに木の影が映るのが怖いと訴えていた。ジュンドゥは警察署を脱走し、影を作っている木に登り枝を切り落とす。声の出せないコンジュはラジオの音量を高くしてこれに応える。なんと切ない愛情表現だろうか。だが冷静に考えて、カーテンをすれば影は消えると思うが。愚か者の恋、恐るべしである。結局ジョンドゥの無実は証明されず、収監の憂き目に。二人は文通するが、将来は暗い。ジョンドゥは出所しても無反省で、きっと何か不始末をしでかすであろうから。[DVD(字幕)] 5点(2013-09-13 04:34:25)
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