|
1. 王の男
《ネタバレ》 「グエムル」に抜かれるまで韓国歴代興行成績の一位であり、また本作のような歴史物は結構好きなため、期待を込めて鑑賞したけど、悪くはないけど良くもないという印象。チャンセンとヨンサングン役の俳優の演技は結構良かったが、欠点としては脚本がだいぶ粗い感じがする。主要キャラクターの内面がほとんど読み取れない。行動に対する動機付けが描けていないから、なぜそのような行動を取るのかがよく分からない。そのために感情移入できないという悪循環に陥っている。それぞれの心理面を探るまでの材料すら与えられていない気がした。特に肝心要のコンギルの心理描写が弱すぎる。
<以下ネタバレ>王の寵愛を一身に受けていたノクスがコンギルを嵌めようとする行為は理解できる。芸人たちを宮廷に住まわせることによって、宮廷に巣食う重臣を追放し、母親を失った呪縛から開放させ、ヨンサングンを暴君ではなく、立派な王にさせたいと考えた重臣チョソンの行為も理解できる。
理解できないのがヨンサングンがコンギルに嵌まる点だ。美男子だからといって、自分の内面までもさらけ出す理由はない。彼の孤独の矛先がなぜコンギルに向かったのか、もう少し踏み込むべきだっただろう。
王の孤独や悲しみを知り、コンギルが王に同情する点は理解できる。しかし、芸人の相方という関係を超えた存在であるチャンセンの「宮廷を出よう」という言葉をないがしろにするほど、王に尽くす義理はないだろう。
チャンセンにとっても、何度も出ようといったにも関わらず、自分よりも王を取ったコンギルのために、重臣チョソンが救ってくれた自分の命を無駄にするほどの関係が描きこまれていない。
このストーリーを自分なりに解釈するしかないようだ。コンギルは王に対して同情というよりも、愛情を抱いてしまったと解釈すればよいのかもしれない。だから、コンギルは王の下から離れようとしなかったのかもしれない(王に「行かせてくれ」と頼んでいたが)。しかし、チャンセンが身を賭して、自分の命を救ってくれたことと自分のために戻ってきてくれたことによって、彼の本当の愛と相方として切っても切れない絆に気付かされたのかなとも考えられる。だから、チャンセンが死ぬのならば、自害しようとしたのではないか。王がコンギルの気持ちに気付いていないとしたら、チャンセンが最後の芸で「王が盲目だった」と皮肉ったようにも感じることができる。[映画館(字幕)] 5点(2006-12-19 00:07:54)《改行有》
2. オールド・ボーイ(2003)
《ネタバレ》 映画を見ている時って、たまに別のことがアタマによぎったり、別のことを考えたりすることってないでしょうか。
どんなに良い映画でもそんなことはたまにあります。
しかし、この映画を見ている時は完全に映像に引きずり込まれた自分がいました。
余計なことを考えたり、よぎったりすることはまずなく、チカラのある映像、矛盾や破綻のなく魅力のあるストーリーに引きこまれ、役者の演技に魅了される。
特にラスト付近のオ・デスの懇願には参った。ウジンでなくてもあれには誰でも参るだろう。
あそこで一つの復讐が終わり、そしてウジンが一言吐いた「何を生きがいにすればいいのか」にテーマは尽きる。
復讐って一体何なんだろうと感じさせたり、復讐への想いに対するパワーを感じさせる。
復讐のキッカケに少し違和感を覚える人もいるだろうが、あれはあれで良い。
キッカケの弱さと復讐の壮大さの違いが一つの面白さでもある。逆恨みとも言えるがそれほどまでも姉への愛や自分への怒りがあるという証拠だろう。
オ・デスが失った15年、ウジンが復讐にかけた15年以上の年月、ミドが家族を失い一人で生きた15年…映像にはされていないが、どの15年にも重い年月を感じずにはいられない。
ただ単に殺し合うだけでは終わらない復讐のカタチ。
愛し合うことさえも復讐なのか、ウジンが仕掛けた復讐に終わりはないだろう、愛が終わらない限り。8点(2004-11-06 23:42:47)《改行有》
|