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1. オーバー・ザ・レインボー
《ネタバレ》 交通事故から始まり、部分的だが記憶喪失ときて、あまりにも手垢のついたストーリー展開で、結末もばればれである。大学のサークルの描写などは『菊花の香り』を連想させるし(もっとも、こっちが先だが)、探していたものが実は、という落とし方は『×××・××××ト』と同じパターン。
見ていて、おいおいという感じだが、決してつまらない映画ではないし、とくに学生時代のチャン・ジニョンのさわやかさは印象的だ。イ・ジョンジェも、細やかな演技で存在感を感じさせる。いままで見たイ・ジョンジェの映画の中では、この役がいちばん好きかなぁ。キャラクター的には、いちばん特徴がなくて地味なんだが。
役者の演技もよかったのだが、サークルでの同期の親密感、バカ騒ぎをしてみたり、くっついたり離れたりの恋愛模様などの描かれ方が楽しかった。
しかし、コン・ヒョンジンの大学生はちょっと苦しかったかも。[DVD(字幕)] 7点(2007-07-24 17:10:02)《改行有》
2. オアシス
分析したりすると野暮になってしまう話。まるごと飲み込んで楽しむのが吉。そう、確かに苦い味はあるが、とても楽しい話なのである。
「グリーンフィッシュ」でも主人公の兄弟たちが生き生きと描かれているが、この小説でも兄弟の関わりが重要なポイントになっている。それにしても、ジョンイル、ジョンドゥ、ジョンセって、なんつーいいかげんなネーミングだ。(正一、正二、正三みたいな感じ。)[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2007-07-22 20:33:05)《改行有》
3. 王の男
《ネタバレ》 日本でのこの映画の売りは、イ・ジュンギの妖しい美貌、カム・ウソンとの同性愛的関係、で、そこにさらに王様がからむ、というところだろうか。「それより奥は、見てはならない」というコピーも、ほんとに映画見て作ったんか、と言いたくなるほど、的はずれ。売り方が悪いとしかいいようがない。
DVD(韓国版)で見たときは、確かにわたしもイ・ジュンギの魅力に目を奪われたし、劇場でも、ふっくらした唇を見て、本人の美しさだけではなく、メイク・照明・撮影などの技術も、こりゃたいしたもんだなぁ、と感心した。しかし、暗い劇場で画面とむきあって物語の中に入り込むと、一番印象に残ったのは、暴君として歴史に名を残す燕山君を、実に人間的に生き生きと演じた、チョン・ジニョンの様々な表情である。うまい役者なのはわかっていたが、この映画での彼の演技はほんとうにすばらしい。
ほかの3人も、それぞれ自分の仕事をきちんと果たした、ということだろう。とくにカム・ウソンは、いままでわりと都会的なイメージだったので、こういうマッチョな役は、ちょっと冒険だったんじゃないかな。体格もイ・ジュンギのほうが大きいようだし、筋肉質だし。でも、配役通りの剛と柔をきちんと印象づけたのは、彼らの演技力と監督の演出だろう。もともとの話は舞台劇なので、シナリオが破綻なくまとまっていた、ということも大きいと思う。
低予算で、セットや衣装もいまいち、という話なのだが、カン・ソンヨンの着る衣装のデザインはよかったなぁ。伝統的な韓服の枠の中で、国王の寵姫という権高さをよく見せていた。
字幕はおなじみ根本理恵なのだが、「広大 광대」という言葉が、すべて「芸人」と訳されているのは、ちょっとうーんという感じだった。これだと、ラストのセリフの感動が、字幕だけで理解している人に、伝わるんだろうか?
劇中で何度も「身分が低い」ということが出てくるので、まあそこで説明済み、ということなのかもしれないが、王や重臣たちに比べれば「身分が低い」というのは、当たり前っちゃあ当たり前で「賤民」であるということは、映画を見ただけでは、はっきりわからないような気がする。
かといって字数制限の中で、どう訳せば伝わるのかは、わたしもよくわからない。むずかしいものである。[映画館(字幕)] 8点(2007-07-22 17:42:16)《改行有》
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