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1. 別離(2011)
《ネタバレ》 冒頭ファーストシーンのタイトル入りまでのカットは、夫婦2人のカメラ目線によって観客には見えない“第三者”に向けられていますが、話が進むにつれてあのシーンが「観客に投げかけている」意思だったことに気付きます。その意図は、ラストカットのワンカット前とほぼ同じ状況、同じようなテーマで繰り返されます。それがつまるところ単純に、観客への「質問提起」と「答案回収」なのです。というのは観客に、「この夫婦のどっちなら信頼できますか?そしてできましたか?」という物語構造に捕えることができるのです。そして、それと表裏して社会への強烈なメッセージが込められた作品であることが如実にわかります。ラストカットのエンドロールの入る数秒前、夫婦の間を通るのは2人の娘です。「説明」はされていませんが、あの衣裳、あの背丈、あの仕草を見ればわかりますし、もしエキストラだとしても、誤った誤解を生むようなミスを監督がするとは到底思えません。そんな娘は終始、身勝手な両親に翻弄され、傷つけられても決して両親を思う事を止めませんでした。その健気さは、簡潔に言えば「世界中全ての子ども」の普遍的な親への願いであり、そうあることの“正しさ”を強く解いているように思いました。少女は節々で選択を求められ、その都度、答案を返し続けた末、両親はまた身勝手に離婚決めます。そんな両親に対して少女が決めたのは「どちらも選ばない」という「両親が元に戻る最終手段」だと思いました。巧みなミステリー構造の根底に流れる強いメッセージに、ぼくは心震えました。宗教的に嘘の許されないイラン社会で嘘をつく人間がいる現代イラン。離婚の許されなかった社会で法律が変わり、離婚が増加している現代イラン。イランに住んだこともなければ、イラン人に出会った事すらない。それなのに、イランで生きる人々の私生活とそこにある問題とそれに対する祈りを、まるでそれを知っているかのような感覚でそれについて真剣に考える事ができている。映画は人種や文明、時代を超えて全ての人間に届くものだということを強烈に考えさせてくれた。これだから映画は素晴らしい! 最後に、観客にさえ、あなたなら気付いてあげられたか、という嫌みな問いをも残した監督。凄過ぎる。[映画館(字幕)] 9点(2012-05-22 21:26:42)(良:3票)
2. 友だちのうちはどこ?
《ネタバレ》 ブラボー!演出がかなり淡白で、表情から台詞の言い回しまで極端な波はないのですが、それでも主人公の少年の焦りや不安、戸惑いや動揺がなんの隔たりもなくストレートに伝わってきます。この作品に描かれている親のウザさは万国共通、教師の理不尽さも万国共通、そして子どもの健気さも万国共通。全てが世界中の人々にわかるように描かれていました。全てにおいて単純だけど、丹念に練られた脚本と演出が少年の想いを100パーセント、1パーセントも汲み取り溢すことなく感じさせてくれました。なんといっても、あの鞄を開けてノートを取り出した時の少年の無表情が最高に良い。自分のせいで友だちが退学になってしまう…そんな迸る不安が彼の表情に落ちてきたかのような顔面蒼白ぶり。そして、あのラストカット!こんなに清々しい爽快感はそうそう味わえるものではありません。ブラボぉー![ビデオ(字幕)] 10点(2008-08-21 19:43:39)
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