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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. ノルウェイの森 直子役に菊地凛子が決まった時点で原作と異にする作品なのだろうと思った。そして実際、映画の直子は原作の直子のように静かに狂ってゆかず、ひたすら生々しく、そう、まさに生きている人間の悲しみと苛立ちに満ちた狂い方を見せてゆく。トラン・アン・ユンが与えた息吹は原作から解き放たれた独自の世界を作ろうとする。しかし、、しかしだ。他方、松山ケンイチと水原希子はあの魅力的な村上春樹の世界を再現してしまっているではないか(言いすぎか?)。匂わない汗。香らない食事。どんなに激しいセックス描写があってもそれは文章でしかないという無機質な感覚。映画には向かなそうな、文章でしかない世界。それが村上春樹の世界なのだと私は思う。それを非現実的な響きを持つ、まるで読むように響く二人の声によって実に見事に春樹ワールドを作り上げている。監督もやられたクチなのだろう。この世界観に。だから独自を貫けずに二つの世界を中途半端に発生させてしまった。現実の世界と非現実の世界を右往左往する主人公というのはそれはそれで面白いのだが、現実の直子と非現実の緑というあべこべの構図にちぐはぐさを感じる。[映画館(字幕)] 6点(2011-04-19 15:32:03)(良:1票) 2. 紀子の食卓 すごく面白かった。園子温バンザイ。『自殺サークル』の自殺が自殺をする役を演じたに過ぎないという驚愕の事実となぜそうするのかという哲学に圧倒されたのだが、この作品の面白さはその哲学にはなく、その哲学を謳う者と信仰する者、あるいはそのまわりの者の人生を事細かに見せてゆき、尚且つその莫大な量の物語を退屈させずに見せるところにある。紀子の物語に属する妹、妹の物語に属する紀子、クミコの物語に属する姉妹、、、と、とめどない物語が2時間半に凝縮される。ナレーションが実に効果的に物語を進行させると共に絶妙な効果音ともなっている。とくに妹=吉高由里子の声がいい。さらにその「心の声」と行動のギャップが、現実世界とネットの世界、あるいは家族とレンタル家族、はたまた写真に映る不満顔と母の絵に改変される笑顔という作品内に存在する二対という構図との相乗効果で重要度を上げている。この二つの世界の戦いともいえる本物と偽物がごちゃまぜの家族の団欒が壮絶!!結末も素晴らしいと思った。登場人物のそれぞれのドラマの展開のさせ方やナレーションの挿入は以後、園子温の印となる。いや、ナレーションは初期作品でもあったが。これって元が詩人ゆえの大胆さだろうか。映画にとってナレーション多用はけして褒められるものじゃないだろうに園子温映画の場合はなくてはならないアイテムとなっている。[DVD(字幕)] 7点(2009-06-16 14:07:01) 3. のんきな姉さん 現在と過去、さらには虚実が入り乱れてゆく構成が面白い。不思議とややこしいとは思わなかった。過去である墓参りの回想シーンから現在のはずの姉のいる会社と携帯電話で繋がる弟のいる雪原シーンに戻ると、現在のシーン全てが虚構にまみれて見えてくる。もしかして現在は精神世界、あるいは死後の世界だったりするのかもとか思った。現実味を帯びているのは過去の場面ばかりだ。過去の窓から射しこむ眩しいくらいの光に対して現在の二つの場所には光が無い。一見オフィスでのやり取りは現実的に見えるようだが、三浦友和のすっとぼけたキャラは別の意味で現実離れしている。何もかも、本当に何もかもお見通しの課長なんているはずないのだ。なかなか味わい深いこの映画の中で唯一にして決定的にダメだと思ったのがヒロイン。色気ない。顔がキャラと合ってない。演技がぎこちない。そしてなにより美しくない(美人じゃないってことじゃなく)。ハダカがないことからも全て意図的なのだろうけど。[DVD(邦画)] 6点(2009-02-25 17:03:39) 4. 野菊の墓(1981) もっぱら評判の高いこの作品。いや、だまされんぞ。アイドル映画なのにちゃんと撮っているってぐらいじゃ。と、変な気合を入れて観たのだが、まず夕暮れ時の薄暗い空をバックにほのかな逆光で映される二人の描写という美しい画が飛び込んでくる。まあ、こうゆう画が一つや二つ無いとお話にならんでしょ、とか思っていたのだが、一つや二つじゃない。引いた位置から捉えた画が何度も挿入され、それらはことごとく美しく、もちろん単に情景が美しいだけではなく、ちゃんとそこに二人がいて、その二人は必ずといっていいほどに背景にあった逆光を浴びている。松田聖子は木下版のヒロイン以上にヘタクソなのだが、木下版もそうだったが、そのヘタクソさの中に純朴さがにじみ出てるような錯覚を覚える。アイドル映画とは思えないあの“おでこ”もこの純朴さに一役買っている。白を効果的に使っているという↓レビューに大いに納得しながらも、私はりんどうの紫がその色の鮮やかさとともに鮮烈に刻み込まれました。カラーであることがなんの優位性も見出せない映画が多々あるなかで、見事にカラーの優位性を見せ付けている。[DVD(邦画)] 7点(2007-10-05 11:05:40)(良:3票) 5. 野菊の如き君なりき(1955) 日本のある一時期を切り取った映画。物語の持つ、封建的な社会の犠牲となる若い男女の顚末にある時代性もさることながら、映画は人物よりも風景をメインに撮ることでその時代の素朴さとか愛しさというものまで映しているかのような錯覚をおぼえる。回想形式で見せる物語は日本独自の情緒が常に画面を被い、素人俳優の主演二人の棒読み演技も実に純朴な男女を表現しており、この情緒感を盛り上げている。いかにもセリフですという感じの有名な「民さんは野菊のようだ云々」が実に自然に発せられた言葉としてモノクロの野山の風景とともに脳裏に焼きつく。[映画館(邦画)] 7点(2006-08-11 13:38:48)
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