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1.   《ネタバレ》 戦前の東宝を代表する名匠・山本嘉次郎監督によるセミ・ドキュメンタリー・タッチの傑作。筋立て自体は東北地方の貧しい農家の少女いね(高峰秀子)が懸命に馬を育て上げ、遂に最後で軍馬に買い上げられる迄が淡々と綴られているだけの至ってシンプルなもの。が、山本監督による渾身のオリジナル脚本は愛弟子・黒澤明の協力を得て徹底的な調査の下に書かれただけあって、東北の四季を詩情豊かに掬い取って実に秀抜。これほど活き活きとした東北ズーズー弁が全編を貫く映画は恐らく本作が本邦初であろう。いかにもワザとらしいドラマティック的な展開が極力排除されているのも「綴方教室」を受け継ぐセミ・ドキュメンタリー・タッチの真骨頂。三村明を始めとする4人のカメラマンによる柔らかいロー・キィ・トーンのモノクロ撮影も美しく味わい深い。「かまくら」「なまはげ」「曲がり家」「かんじき」「雪降ろし」といった地方色溢れる要素が丹念に盛り込まれており、当時の平凡な日本人の暮らしぶりも窺い知ることができてとても興味深かった。場面的には何と言っても子馬出産を一家で見守るシーンが素晴らしい。実際の出産場面に出演者たちを立ち会わせただけに全員の表情が真に迫っている。汽車で旅立つ弟を見送るためにいねが裸馬の背に乗って追いかけ、窓越しに併走する場面のダイナミックさにも唸らされる。これだけの作品を(東宝のゴリ押しで)エノケン喜劇映画をも掛け持ちさせられながら完成させた山本嘉次郎のパワーに舌を巻きつつ文句ナシの10点を進呈! <追記>山本嘉次郎監督について補足。何より凄いのは商業作品では職人に徹することで娯楽作品を制作会社の注文通りにウェルメイドに仕立て上げる一方、芸術性に富む意欲作にも果敢に取り組むその姿勢。つまり、興行的にペイさせるだけの実績を挙げた上で、初めて自身の「撮りたい」モノへとチャレンジするというコト。愛弟子クロサワも1960年代までは確実に師匠のスタンスを踏襲していた。だから、私が個人的に高く評価する演出家は「娯楽性と芸術性を兼ね備えた」人物に偏る。そういうワケなので、悪いが私的にはゴダ●ルやタル○フスキーといった「おのれの撮りたい欲望に忠実」過ぎるゲージュツ派の監督はあまり高い評価は致しかねる。[CS・衛星(字幕)] 10点(2005-07-08 19:59:23)(良:2票)

2.  無法松の一生(1943) 《ネタバレ》 お二人のレビュー&コメントが実に素晴らしく、既に本作の魅力を語り尽くしている感もある。今更私如きの出る幕は無いのだが、どうしても書かずにはいられない映画史上の傑作だけに蛇足のコメントを加えること平にご容赦の程を。先ず語らねばならない点として岩下俊作の原作「富島松五郎傳」を見事なまでに簡潔にして明瞭なシナリオへ昇華させた伊丹万作の脚本がある。この映像化を念頭に置いた説明的描写を極端に省いたシナリオの存在なくして本作の傑出したクオリティは成り立たなかったと思わしめる出来だ。本来ならば自ら監督したかったであろう伊丹の無念を託されて演出した盟友・稲垣の力強い演出力にも触れなければなるまい。伊丹には生来の病弱を反映するかのように演出が繊細で今一つ迫力に欠けるきらいがあった。つまり本作に関しては稲垣の持ち味である骨太で力強い演出力が見事にそれを補完する形となった訳だ。しかし、伊丹らしさは車軸の回転をあしらった場面転換、据えっ放しのカメラで往来の時間軸だけをスライドさせる絶妙な処理、幼少の松五郎が森をさ迷うシーンの独表現主義を思わせるタッチ、人力車の客が往来に放置されて怒る場面のサイレント喜劇調などに散見される。各シーンに見せる宮川一夫の驚異的カメラワークについてはお二人の繰り返しになるので割愛させていただく。最後に阪妻について。当時の彼は時代劇の大スターとしての地位を既に確立しており、卑しい車夫の役をオファーされた時には大いに逡巡したという。結局引き受けるに当たり、彼は稲垣に「演るからには死ぬ気で演る。その代わりアンタも死んでくれ(その位の覚悟で演出してくれ)!」と迫った。この役者魂!この気概!!これぞ本物の役者というものだ!と胸打たれた。お二人が看破されている通り、阪妻の魅力とは豪放さと繊細さが同時に内在するアンビバレンツさにあると思う。こうした点を踏まえ改めて観るとクライマックスの小倉祇園太鼓シーンやラストの預金通帳が見つかる場面など毎度涙で目頭が熱くなる。悪いが三船版では感動はあっても、こうはならない。以上、例え二度の検閲カットがあろうと本作には満点しかありえない。私の脳内補完では検閲カットも何ら問題にならないからだ(笑)。10点(2004-02-01 12:21:44)(良:2票)

3.  稲妻(1952) 個人的には成瀬のベストワークに推したい。登場人物に極端な悪人も善人もいない実に平凡極まる点が如何にも彼の好む題材だ。原作:林芙美子との相性も抜群なのは当然であろう。黒澤や溝口の力感溢れるドラマや小津の上品さとも一線を画す、えも云われぬ”抑揚の無さ”こそ成瀬の真骨頂である!と信じて疑わない私としては本作で見せる浦辺粂子のダメダメな母親っぷりに陶然とさせられた。「ビギナー」なら優等生の”デコ”や初々しい香川京子に感情移入するも良し、「通」なら浦辺や村田知栄子、三浦光子の埒も無い愚痴に惚れ惚れするも良し。間口というか作品の懐は相当に深いし、幅がある。尤もコレは本作に限らず、当時の邦画の送り手と受け手の幸福な(しかもハイレベルの)関係を象徴する要素ではあるが。兎に角ストーリーを追うような映画ではないので、台詞に頼ることなく往年の名優たちの演技力そのものを徹底的に引き出して勝負する天才・成瀬巳喜男の職人技を存分にご堪能あれ。もちろん文句ナシの10点でおます。10点(2003-12-29 15:40:25)(良:3票)

4.  赤西蠣太 伊丹万作は伊丹十三の父にして「無法松の一生」等の名脚本家として、つとに知られている。が、彼の秀抜な映画センスを真に実感したければ監督としての彼を知らねばなるまい。本作は現在でも鑑賞可能な数少ない一作である。まずもってチャンバラ時代劇全盛期の昭和11年という時点で”パロディ”という概念を導入した斬新な発想が凄い!しかも講談・浪曲で手垢にまみれた「伊達騒動」を巧みに換骨奪胎して”コメディ”に仕立て上げた手腕には思わず舌を巻いた。間違いなく「天才」の成せる業である。開巻の雨傘が踊る俯瞰撮影の妙、BGMにショパンやメンデルスゾーンをあしらう大胆で小粋な処理、「ミスター時代劇」千恵蔵にコントラストも鮮やかな二役を演じ分けさせるブッ飛んだエスプリ、それでいて実に快調なテンポ、どれを取ってもズバ抜けた映画センスとしか言いようが無い。惜しむらくは生来の病弱な体質が彼に作品の量産を許さなかったことだろう。太平洋戦争へと突入した時点で日本の敗戦を鋭く予見した理性の持ち主であったが故に病床の身で書き上げた脚本を盟友・稲垣浩に託した彼の無念な心情は「無法松の一生」にも滲み出ている。生きていれば間違いなく小津や溝口にも匹敵する天才監督と謳われたであろう。残念ながら息子にはその才能の一部しか受け継がれなかったようだ。僅か46歳の若さで夭逝した孤高の天才に敬意を込めて10点。 10点(2003-12-13 00:23:58)(良:2票) 《改行有》

5.  天国と地獄 《ネタバレ》  「87分署」モノで有名なエド・マクベインの原作「キングの身代金」を大胆に脚色したのが第一の勝因。原作では複数犯だったが、本作では若き山崎努演じるインテリ青年・竹内の(実質的)単独犯行にしたことで、衝撃のラストシーンがより活きてくる結果となった。何より疾走する特急「こだま」を利用した身代金受け渡しの尋常ならざるサスペンスは原作には無かった(ま、当然だが)。黒澤のダイナミックな演出は或る意味で「七人の侍」をも超えていると言えよう。原作のキャレラに当たる刑事も、仲代達矢扮する戸倉の方が遙かに凄味がある。三船演ずる権藤も原作のキング氏なんかより余程人間味があり、好感が持てるし。但し、原作がミステリの傑作たる所以はトリックやサスペンスよりも、むしろ誘拐された少年と犯人の一人との切なく淡い交流にあるので、本作とは別物だと切り離して読むべき。 10点(2003-01-02 05:31:27)(良:1票)

6.  ゴジラ(1954)  ハッキリ言って現在のCG等最新SFXをいくら駆使しようと絶対にコレを越えるのは無理だ。何故か?無から有へと文字通り創造(クリエイト)するための「センス・オブ・ワンダー」を持つ人材が今の特撮界には絶望的に存在しないからだ。どいつもこいつも本作品以降を幼少時に観て育った「おたく」ばかりだし。自分も含め、所謂マニア(おたく)では「第二の円谷英二」には到底なりえない。既存のモノを云々することからしか語れないのだから、至極当然ではあるのだが。偉大なる円谷英二特技監督に敬意の限りを込め…当然の如く10点満点を進呈!10点(2002-12-27 11:39:05)(良:1票)

7.  七人の侍 《ネタバレ》  野武士の人間描写などに浮気をせず、完全なENEMYと割り切ってひたすらその数を減らす戦略に徹したのが勝因の一つ。個人的には宮口精二演じる「久蔵」にシビレた。本来は文学座の名脇役、この時点では時代劇や立ち回り等はズブの素人だったにも関わらず、アノ渋過ぎる名演。彼ほどの剣の達人でも種子島の前には敢え無く散る、その皮肉さ。しかし、あの激しい雨中では(例え屋内から狙撃したとしても)火縄が湿って撃てなかったと思うんだが…?10点(2002-12-20 00:58:55)(良:1票)

8.  妖刀物語 花の吉原百人斬り 《ネタバレ》 原作は河竹新七の歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」。廓を舞台にしたデスペレートな悲劇を内田吐夢が格調高く色彩鮮やかに描ききった傑作時代劇。次郎左衛門が花魁の八ツ橋に心底惚れ抜くキッカケが単に肉欲に溺れるのではなく、ほんの気まぐれから発した何気ない彼女の台詞「心の中にまで痣が~」だった、という依田義賢の脚本アレンジが何とも素晴らしい。ラストの村正を振るっての大立ち回りは千恵蔵の他を圧する風格あればこその名場面。時代劇の所作を重厚に演じきれる本物の役者が絶滅した今、その存在感は一層光芒を放つように思えてならない。昭和は遠くなりにけり、か…。[CS・衛星(字幕)] 9点(2005-10-29 03:28:53)

9.  河内山宗俊 《ネタバレ》 タイトルと人物設定だけ拝借して、まるっきり別の軽妙極まる人情時代劇に昇華させた山中貞雄の高い力量には全くもって敬服するしかない。二十代でこんなハイレベルの演出力を発揮できるとは…(絶句)!!的確な省略法で観る者の想像力をいちいち刺激してくる場面場面のウマさときたら、もうヴェテラン・巨匠の域に入っているかのようだ。俳優アンサンブルも見事。河原崎長十郎扮する主人公・河内山宗俊が最初に登場する大道将棋シーン、大仰な見得を切るでもなく静かな凄みを漂わせ実にさりげない。中村翫右衛門演じるやくざの用心棒・金子市之丞の飄々とした掴み所の無さもユーモラスで絶品。「爪楊枝」という取るに足りない小道具でもセンス次第でキャラクター描写に大きな役割を果たせることがよく分かる。静と動の映画的リズム転換の上手さも群を抜いて素晴らしい。殊に若き原節子(お浪)がバカな弟のために身売りを決意する悲愴な場面での静かなタメ、一転して狭い路地裏を逃げながらバカ弟を庇いつつ死んでゆく宗俊と市之丞の壮絶な立ち回りの躍動感!緩急の付け方の絶妙さ・対比法の多用など唸らされる。コレで本人にとっては別に会心作でも何でもないのなら、山中貞雄の”真の傑作”レベルは一体どれほどだったのか??現存するのは僅かに三作、しかも時代劇のみときては彼の真価は永遠に誰にも判ることはあるまい。音声の悪さで1点マイナス。9点(2005-01-24 16:52:20)(良:4票)

10.  サンダカン八番娼館 望郷 《ネタバレ》 とにかく晩年の北川サキを演じる田中絹代が圧巻の名演技!若き日のサキに扮した高橋洋子もまぁ熱演してはいるが、ハッキリ言って全く勝負になっていない。ボルネオでの回想場面と熊本は天草での現在とが対比される形で物語は進むが、天草編が圧倒的にインパクト大なので皮肉な事にバランス崩壊しているかのような印象を受けた。確かに彼女ら”からゆきさん”が遠く異郷の地で身を鬻ぐに至る運命も悲惨ではある。が、何より酷いのはそこまで身を落としても全く報われることなく、人の住む処とは到底思えぬようなあばら家で孤独な老後を送らざるをえないコトではなかろうか。それでいて彼女は笑みを絶やそうとせず、自暴自棄に陥ることもなく気丈に生きている。この余りに悲しくも気高い老女を田中絹代が演じたればこそ、本作はかくも堂々たる佳作の風格を備えることができたと言えよう。老醜を晒すことなく美しい面影を残して銀幕から引退したガルボや原節子のような潔い生き様も決して否定はしない。が、矢張り私は老いてなお演技に情熱を傾けた田中絹代の生き様の方にこそ深く感動を覚える。9点(2004-12-31 23:39:47)(良:1票)

11.  小早川家の秋 小津作品は(当然だが)若い頃はあんまり好きじゃなかった。淡々としてうねるようなドラマティックな展開もカタルシスも皆無。コレで一体何を楽しめと?てな感じw。中年になって改めて観ると実に味わい深い逸品であることに気付かされる。本作の場合、松竹蒲田の撮影所を出て珍しく東宝で製作されたことで数ある小津作品の中でも極めて特異な位置を占める。特に森繁がイイ。50~60年代の彼は全くもって上手過ぎる。特に加東大介との飲み屋での遣り取りはケッサク!あ、鴈治郎(二代目)の上手さは勿論云うまでも無いけどね。浪花千栄子の愛人も杉村春子の娘も各々溜め息が出る上手さ。こんな名脇役にも二度と出会えまい。ところで本作を通して小津が描きたかったモノ、実のところは彼のみぞ知る…なんだろうけど、個人的には戦後米軍占領下で根こそぎ否定された戦前の家父長(戸主)制へのオマージュではないかと思う。戦後民主主義によって次々と失われつつある戦前の日本の風習、コレを完全に消滅する前にフィルムに込めて残したい。そういう屈折したエコロジカルな視点が散見される。その意味で小津は(右翼などとは違った)真性の保守派であると言えよう。※因みに本作の読みは「こはやがわけのあき」であって「こばやかわ」ではないので、お間違えなきように…。9点(2004-01-07 14:42:08)(良:2票)

12.  血槍富士 内田吐夢の戦後復帰第1作。何ともペーソス溢れる道中モノだが、ロケーションが抜群の効果を上げ、東海道界隈の日本的な美しさを余す所無く映像に収めて実に見事!加東大介扮する供の源太がトボけてイイ味を出している。月形龍之介扮する藤三郎のエピソードもやるせなくてイイ。しかし、何と言ってもクライマックスでの千恵蔵扮する槍持ちの権八が見せる槍をメインにしたド迫力の殺陣!に尽きるだろう。酒樽を実に上手く活かして屈指の名場面となっている。流石は内田吐夢、満映以来のブランクをものともしない天晴れな再起。ただ、些か重苦しいので個人的に1点マイナス。9点(2003-12-30 05:16:39)(良:1票)

13.  モスラ(1961) イヤ全くファンタジーの具現化とはこういうものだ~!という好例として永遠に記憶されるべき傑作ですね。「卵→幼虫→繭→成虫」の4大変態をビジュアルで納得させる力強さは、平成リメイク版も遠く及びません。特に東京タワーに繭を作り、羽化するシーンは絶品かつ圧巻!モスラの羽化を助長することになるロリシカの原子熱線砲のデザインが又素晴らしい。ザ・ピーナッツ扮する小美人が歌う「モスラの歌」も実に見事!容姿よりも歌唱力で勝負していた当時の歌手らの中でもズバ抜けて上手かったピーナッツ姉妹をこの役に抜擢した製作側の慧眼には恐れ入るばかりです。加えてカラーであることが当たり前の現代では到底考え及ばぬ色彩への拘り。先述の羽化シーンの息を呑む美しさも、この拘りが有ればこそだと思います。キャストも上原謙・フランキー堺・志村喬・香川京子ら一流を揃え、抜かりナシ。とどめにインファント島住民を嬉々として演じた東宝大部屋俳優たちの群舞!に圧倒されつつ…9点進呈。福永武彦先生が本作にどれほど貢献したのか甚だ疑問なのでマイナス1点。円谷英二特技監督ごめんなさい…。 9点(2003-12-29 18:16:05)(良:2票) 《改行有》

14.  銀嶺の果て 《ネタバレ》 ギラつく野性のオーラを全身から発散させる若き三船敏郎の記念すべきデビュー作であり、監督谷口千吉にとっても処女作となった山岳サスペンス・アクションの決定版!!黒澤が(谷口と共同で)僅か20日で書き上げたというシナリオが何と言っても第1の勝因。キビキビと過不足なく誠に理想的な脚本だ。谷口の初陣を飾るに最高の贈り物だったと言えよう。第2の勝因は勿論、凄まじく極悪な強盗犯・江島役の三船に尽きる。ほとぼりを冷ますべく投宿した山小屋で主人や娘の温かい歓待を受けながら一切改悛の情など見せぬ鬼畜外道ぶりを見せつけ正に圧巻!第3の勝因は冬の北アルプスにロケーションを敢行したことによる圧倒的な舞台効果。殊に犯人の1人が発砲した弾みで起こる雪崩のド迫力、三船が自滅するクライマックスの息詰まるサスペンスはロケーションをフルに活かしきった賜物であろう。谷口は結局コレを超える傑作を二度と作れなかったが、三船は黒澤との出逢いにより一層の高みへと飛翔する契機となる。デビューした二人の皮肉なまでのコントラストが際立つ本作に…9点。登山未経験にもかかわらず志村喬が山男・河野秋武を救うラストでややリアリズムに欠け腰砕けなのでマイナス1点。9点(2003-11-04 00:40:11)(良:2票)

15.  眠狂四郎 無頼剣 柴田錬三郎の原作「眠狂四郎無頼控」を大映が市川雷蔵の主演で映画化し、好評の為シリーズ化された中での第8作が本作。何故8作目を?それはシリーズ全12作中でも屈指の面白さと完成度だから。MVPは何と言っても、簡潔にして明瞭なシナリオを提供した名匠・伊藤大輔。流石に時代劇に必要な娯楽的要素を知り尽くした彼ならではの名脚本だ。それが三隅研次のタイトでスタイリッシュな演出と絡み、僅か79分という一切贅肉を削ぎ落としたかのようなコンパクトかつシンプルな逸品に仕上がっている。最大の見所は天知茂扮する浪人・愛染と狂四郎が江戸の大火をバックに屋根の上で互いに繰り出す”W(ダブル)円月殺法”だろう。矢張り敵が手強いと弥が上にも盛り上がるというモノだ。第7作から担当し始めた伊福部昭の音楽も(「大魔神」ほどではないが)良し。どうせまだ誰もコメントしてないし、恐らく今後もコメントする方は(殆ど)いらっしゃらないだろうから今の内に高得点にしちゃおうw。よって9点進呈~♪ ↑あ、黒猫クロマティさん有り難う御座いますぅ~!! 9点(2003-10-16 00:23:30)(良:1票)

16.  羅生門(1950)  ↓で仰っている通り、確かに芥川の原作「藪の中」はアンブローズ・ビアスの「月あかりの道(原題:The Moonlight Road)」を範に取った…ってか、ぶっちゃけパクリです。が、黒澤自身と橋本忍によるシナリオは「藪の中」のお膳立てのみ拝借して独自の映画に昇華しております。原作に無い木こりを4人目の証人に立てるという大胆なアレンジ、(松山崇による)見事な迄に拘った平安の時代考証、(天才カメラマン・宮川一夫による)山中の暗さと木漏れ日のギラつく光との鮮やかなコントラスト、何よりも溌剌とした役者達(個人的には森雅之がベストかと…)の演技!!原作の提示した「真実は”藪の中”、誰にも分かりはしない…」というシニカルな哲学的テーマよりも、アグレッシブな人間の生命力、飽くなき執念を前面に打ち出しており、ベネチア映画祭金獅子賞に輝いたのは(「地獄門」のカンヌ・グランプリの如き)オリエンタル趣味だけではないコトが実によく理解できます。”世界のクロサワ”の名を一躍世界に轟かせた記念すべき1作として9点~!やや観る人を選ぶみたいなので個人的に1点マイナスw。9点(2003-07-20 08:16:14)(良:1票)

17.  野菊の如き君なりき(1955)  原作は御存知、伊藤左千夫の「野菊の墓」であるが、木下恵介監督による映画化は当時には未だ健在だった信州の美しい自然を見事なまでに映像としてフィルムに定着させている。楠田浩之のカメラワークは本作でも鮮やかの一語。今日の邦画界には当時の天衣無縫な木下監督の如きセンスが無いのは勿論だが、この美しい風景が開発により、ほぼ失われている点でもリメイクは絶望的かと思われる。政夫と民子を演じた田中晋二と有田紀子はハッキリ言って大根なんだが、これが巧まざる上手さへと転化してプラトニックな初々しさを横溢させて見事!原作の持ち味を損なうことなく微妙な恋愛感情を表現していると感心させられた。「政夫さんは竜胆(りんどう)の様な人だ」「民さんは野菊の様だ」こんな素朴な遣り取りでも原作発表当時の日本では大胆に映ったのである。茶髪・金髪に染め鼻ピアスだのコギャルだのと昨今のTVに露出される現代の無軌道な若造と正に好対照!!あと、脇を固める杉村春子や浦辺粂子がマタ実に上手い!!つくづく現在の邦画界に不足しているのは渋いバイプレーヤーであるコトを痛感してしまう。ただ、回想シーンに楕円形の縁取りをあしらった木下監督の技巧が純情素朴な本作とミスマッチに感じて仕方ないので…個人的に1点マイナス。映画&原作共々是非一見&一読をオススメ!9点(2003-04-19 01:08:11)(良:1票)

18.  空の大怪獣ラドン  おお…この名作に未だどなたもコメントされていないとは…。個人的に九州出身なもんで、作り込まれた福岡の街や西海橋を蹂躙するラドンの勇姿は特に印象深い。前半はメガヌロンという比較的小さな怪物が巻き起こす恐怖が丹念に描かれ、肝心のラドンはなかなか登場しない。が、佐原健二扮する主人公が小鳥の卵が孵化するのを目の当たりにしてラドンの孵化を目撃した記憶が甦るシーンは実に上手い。前半であれだけ恐怖の象徴だったメガヌロンさえもラドンの餌に過ぎなかったという皮肉なプロットの転換の素晴らしさ!!空を飛ぶだけで大被害をもたらすということで、自衛隊の地味な攻撃に意外に呆気なく死んでゆくのも「ゴジラ」の無敵さと対照的。特に阿蘇の火口に徐々に落下するラストは悲壮感を漂わせ絶品。こと生物感だけで言えばゴジラ以上とも言える。後にゴジラの味方となってキングギドラと戦うラドンしか知らないような方には是非オススメの逸品である。古いがショボくはない!!と個人的に断言して9点。「ゴジラ」のような反核の警鐘といったテーマ性が全く無い分、子供向けにシフトする契機となった気が若干するので…1点マイナス。円谷英二特技監督御免なさい…。9点(2003-02-26 05:14:51)(良:2票)

19.  飢餓海峡 《ネタバレ》  実際に起こった青函連絡船「洞爺丸」転覆事故をモチーフにして描かれた水上勉の原作を戦前からの巨匠・内田吐夢が映画化した問題作。犯人・犬飼多吉役の三國連太郎も、弓坂刑事役の伴淳三郎も、娼婦役の左幸子も各々絶品の演技。特にわざわざ御礼を言いに行って殺される羽目になる、左幸子扮する杉戸八重の哀れさには胸が詰まる。最後に連絡船から津軽海峡へ身を投げる樽見こと犬飼とバックに流れる(冨田勲作曲の)荘厳な地蔵和讃が、戦後の重く哀しい現実を慰撫するかの如く響いて深く心に残る。高倉健も出てるが殆ど意味ナシ。 9点(2003-01-29 06:11:58)

20.  赤ひげ  黒澤明が国内で撮った作品としては最後の輝きとなった印象深い傑作時代劇。山本周五郎の原作「赤ひげ診療譚」も氏の庶民への優しい眼差しに満ちた傑作だったが、映画化された本作も優るとも劣らぬ優れた出来栄え。特に座敷牢に閉じ込められた香川京子演じる狂女への診断を巡るエピソードは深く印象に残る。長崎仕込みの阿蘭陀医学をハナにかける青二才、保本登(加山雄三)は町医者風情の”赤ひげ”こと新出去定(三船敏郎)の見立てを胡散臭く思い、安っぽい同情心と赤ひげへの当てつけから無断で狂女を診察して危うく生命を落としかける。可憐な乙女から豹変する香川京子の鬼気迫る演技は下手なホラー映画も真っ青のコワさ!机上の学問だけでは見通せぬモノを直感的に見抜いていた赤ひげの診断の的確さを保本に悟らせるこのシーンは実に上手い。あと、善良な車大工、佐八(山崎努)の余りに哀しいエピソードも安直な「泣かせまっせ」映画と違い、ジーンと胸を打つ。天才子役・二木てるみ演ずるおとよもイイ。185分を全く長尺に感じさせない黒澤の手腕は矢張り凄いとしか言い様が無い。ただ、完璧に拘り過ぎて製作スケジュールの遅れが響いたため、円谷英二氏や本多猪四郎氏に皺寄せが来て「三大怪獣 地球最大の決戦」を超短期間で製作させられたウラミは決して許されないので、キッチリ減点させて貰いましょう。よって9点。9点(2003-01-29 05:05:41)

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