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21.  JUNK HEAD 触るのも勇気がいるほど不気味なロケーションと生き物たちばかりなのに、なんでこんなに愛らしいの? 体に生えたキノコならぬクノコなんてもう、生理的にダメ、全身に鳥肌が立つほど気色悪いのに、ジャンク・ヘッドがだまし取られそうになったとき、何とか取り返せ!と心の中で叫んでいる自分に気が付いて、おいおい!ってなった。[インターネット(邦画)] 8点(2023-01-27 15:28:42)《改行有》

22.  ファーストラヴ(2021) 《ネタバレ》 『髪結いの亭主』に出てくる少年は、ふっくらと丸みを帯びたやわらかい胸の、なまめかしい年上の女性を見て陶酔するというのに、本作の少女(環菜)は、男性の裸体や視線に囲まれて性的虐待を受けてしまう。比較が少し過ぎるかもしれないけれど、少年が女性の肌に母性をイメージするのと、女の子が男性の裸体に未知の恐怖を感じるのとを合わせ考えれば、「性」の神秘さ、複雑さ、難しさを感じずにはいられない。 また、『スポットライト 世紀のスクープ』では、カトリック神父たちの信徒への性的虐待を扱った実話。こちらはもう被害が甚大で、少年であっても生涯消えないトラウマを抱えてしまったり、自殺者も多数出ているという。『ファーストラヴ』を見終わった後、性つながりでいろいろな作品を連想して、深く考え込んでしまった。 単なるサスペンス、謎解きのエンターテインメントと割り切って楽しむには、あまりにメッセージ力の高い作品だった。環菜の供述が二転三転するのも、事件が起こるずっと前から受けていた両親からの抑圧があってこそだったり、腕の傷も、世間にありがちな自傷理由に加えて、父からのある要望を受けずにすむ魔除けのようなものだった。いろいろな点で自然な整合性がとれていて、うならされた。実際に起こった事件を下敷きにしているのではと思うほど。 タイトルの「ファーストラヴ」というのは、異性との愛ではなく、生まれて初めて子供が受ける親の愛情を指すのではないかと思う。環菜や由紀、迦葉は、両親からのファーストラヴを過不足なく受けることができなかったため、自己肯定力が低く、常に誰かから傷つけられるのを恐れてしまう。3人とも、笑顔はどこか引きつっていてぎこちない。作家が同じような心の傷を持つ登場人物を意図的に寄せ集めたというよりは、たとえば朗らかな者は周囲に陽気な仲間が集うように、似た者同士が自然に引き寄せ合った結果のようにさえ見える。終盤では、彼らは前を向いて、それぞれの道を歩もうとしている姿が映し出されることが、何よりの救い。[インターネット(邦画)] 8点(2021-07-30 15:30:59)(良:1票) 《改行有》

23.  今度は愛妻家 《ネタバレ》 俊介とさくらが、『うる星やつら』のあたるとラムそっくりに見えた。ラムがそばにいるから安心して(?)浮気をするあたる。でも、ラムがいなくなると、身も心もぼろぼろに。俊介もあたるもほんとにどうしようもない浮気虫だなって思うけど、憎み切れない可愛げがあるから、そんな男に惚れた女は苦労するんだろうな。 後半は、ティッシュが手放せない状態になってしまった。現実に、先日から全国各地で自動車の死亡事故が報道される中、突然妻子の命を奪われた夫の会見を見たばかり。病死と違い、何の覚悟もなくいきなり家族を失うなんて、あまりに残酷すぎて想像するだけで胸が痛くなる。俊介は事故る直前のさくらの後ろ姿を、まさに虫の知らせか間一髪で撮っている。その後、彼が写真を撮れなくなるのは当たり前だ。どんな被写体も幻のさくらに見えたろうから。 本作は、オチを知る前、知った後の計2回は見るべき映画。脚本のマジックともいうべき二重のストーリーが味わえる。[インターネット(邦画)] 8点(2019-04-27 00:48:23)(良:1票) 《改行有》

24.  火の鳥2772 愛のコスモゾーン 《ネタバレ》 子供のころに最後まで見ず、大人になって初めて通して見た。石ノ森章太郎の009はピノキオが下敷きになっていると聞いていたけれど、この作品もやはり「ピノキオ」が出てくる。火の鳥の存在はまるで、無機質のものに命を与えるブルー・フェアリーだ。さらに、これに輪廻を絡ませているから、壮大な地球史を見せられているようなスケールさを感じる。 そもそも、なぜ今頃この作品を見たくなったかというと、『her/世界に一つの彼女』を見たから。プログラミングされただけの仮の命(サマンサ)に惹かれる男の物語で、いつかどこかで似たカップルを見たと視聴中ずっと考えていた。やっと、『火の鳥2772 愛のコスモゾーン』のゴトーとオルガだと思い出した。両作品の共通点は、絆は失ったときに初めてその価値に気づくというもの。たとえば、介護施設でパロちゃん(アザラシ型のセラピーロボット)に慣れ親しんだお年寄りが、突然そのアイドルを取り上げられたらどんなに寂しい気持ちになるか。愛車、人形、ペット、命があろうがなかろうが、愛する対象を失ったときの喪失感に、人はときおり打ちのめされる。その切なさに、深く共感せずにはいられない。[インターネット(邦画)] 8点(2018-12-21 01:21:16)《改行有》

25.  ペコロスの母に会いに行く 《ネタバレ》  のっけから衝撃だった。オレオレ詐欺の電話で笑いをとっているが、笑えるどころか愕然とした。認知症の人よりも、逆にもっとしっかりした人(通帳や印鑑など貴重品の扱いがスムーズにできる人)が被害に遭う確率が高いのか!と。これは盲点だった。  物語が進むにつれ、少しずつ痴呆が進んでいく母。初めは声をあげて笑っていたのに、目に宿る光が次第に弱くなっていき、ついには何も見ていない、焦点の定まらない穴のような目になってしまう。その推移が赤木さんの神がかった演技でとても生々しく表現されていて、鳥肌が立つような心細さ、老いの残酷さを痛感した。  私にも認知症の親がいるので、とても他人事とは思えない。若い人には、この作品は退屈、ありきたりと思えるかもしれないが、当事者にとっては、些細なことでもいちいち「ぐさっ!」と胸に突き刺さる。子供が親を施設に初めて置いて帰るとき、ことのなりゆきを理解できない親は、子供に捨てられた気分を味わうに違いない。その代償に、子供は親に忘れられる。認知症の悲劇は、双方の絆が1つずつ時間差をもって切れること。ペコロスの涙の切なさに、「自分はこんな涙とは無縁でありますように」と願わずにいられない。  それにしても、親が子供を忘れる話は、身の回りでもよく耳にする。現実に、私の亡き祖母は息子(父)を忘れたにも関わらず、嫁である母を最期までしっかり認識していた(恐るべし嫁姑関係)。しかし、こんなやりきれなく辛い話はない。映画の母もペコロスを忘れ、かわりに自身の幼いころや夫や親友の残像に囲まれて満たされる(はあー・・・なんとやりきれない)。それでも息子は、たとえ自分がそこに含まれていないとおぼろげに感じていても、微笑む老母を「よかったなあ」と祝福する。無償の愛の形を見た気がした。[インターネット(邦画)] 8点(2018-08-04 00:28:44)(良:2票) 《改行有》

26.  探偵物語(1983) 《ネタバレ》  若いころにこの映画を見ていたら、多分「角川のアイドル映画だからこんなものかな」と軽く受け止めて、後に何も残らなかったと思う。久々に昭和の邦画もいいかなと思い視聴したところ、かなり新鮮で意外だった。  通常は器用者と不器用者のコンビで、互いに足らないものを補い合って調子を整えるのだろうが、あいにく直美と探偵は不器用者同士。2人ともぎくしゃくして始終波長が合わない。マル被である直美に尾けられたまま元嫁を訪ねる探偵の不恰好さも、見知らぬ男と一緒にホテルへ入る直美の破天荒ぶりも、双方ともに目を覆わんばかりの不器用ぶり。また、二股も辞さない女好きの大学生や、殺人の疑いをかけられた哀れなやくざなど、とにかくこの作品に登場するあらゆる人物が、ひとクセもふたクセもある愚かでややこしい者ばかり。  なのに視聴後には、ほろ苦く、じんわりと胸に温かいものが残る。赤川次郎作品は学生のころ2冊ほど読んだが、そのときは、「軽い大人のおとぎ話」としか思わなかった。今回鑑賞した彼の世界には、市井の人々を見守る原作者の温かい気持ちが、底辺にしっかり流れている。少なくとも、面白ければ何でもいいという無責任な作りには見えなかった。愚かで哀れだけれど、決して書き割りの脇役としてではなく、世間にはこういう類の人々がいるとすんなり納得できるほど、血の通う人物として1人1人がちゃんと演出されている。そういう意味では、メインキャラたちが住む環境は、ドラマ『探偵物語』のbad cityとそれほど違わないのではと思った。  この作品では、カメラワークが面白いなあ!とうなるシーンがたくさんあってここに書ききれないが、中でも直美が最後に探偵の部屋を訪れた場面。双方の凝り固まった気のぶつかり合いがすごい迫力で、まるで喧嘩を売った売られた感が否めない。これが愛の告白シーンとは。八つ当たりのように「寂しかった!」と言い捨てる彼女もすごいが、好きと言われて甘えるなと返す探偵も容赦ない。甘いムードが一切ない、ナイフで突いたら血がにじむような空間。探偵の目はテーブルの下でスカートを揉みしだく直美の拳を見ていないけれど、視聴者にはばっちり見える演出も心憎い。また直美は、浮気が原因で妻に子供をおろされたという探偵の「大人の事情」を知らないが、視聴者だけが内情を知ったままで話が進むと、無口な探偵の人柄がかえって深みを帯びてくる。何とも印象深いシーンだった。  それにしても直美の変人ぶり(ペンダント選択の時点で変人キャラ決定)や、メンタルの強さには舌をまく。当たってくだけろの精神がハンパなく、その結果どんなに傷ついても、そばに誰かがいようがいまいが涙ひとつ見せない。探偵の方は、道義的には命懸けで元妻を助けるほどの行動力はあるが、年の離れた女子大生の愛を受け止めるほどの勇気がない。その2人のラストのキス。台詞が一切ないまま別れるのに、驚くほど不自然さがない。それは、2人のこうした性格が見ている側に十分伝わっているからだと思う。もしどちらか、または双方が何か言えば、どんな台詞も野暮になった。映画の和洋を問わず、大風呂敷を広げた末に強引にまとめるなど乱暴なラストの作品が多い中、これほど粋にまとめた邦画を見たのは、久しぶりだと思う。[インターネット(邦画)] 8点(2017-06-16 13:53:16)《改行有》

27.  レッドタートル ある島の物語 《ネタバレ》 裏返った亀の腹が、ばりっと割れた瞬間・・・・・・ 静まり返った映画館の中だというのに思わず、「勘弁してよ!」とつぶやいてしまった。 まさか、大好きなマイケル作品でこんなシーンに出くわすとは夢にも思わず(涙)。 でも、次の瞬間、大きな安堵のため息・・・・・・ 全編を見終わったあと、涙でしばし立ち上がれなかった。 『岸辺のふたり』以来、彼のカラーの長編が見られるというので、ずっと楽しみにしていた。 二次元でありながら、目の錯覚かと思えるほど水の中、自然光にあふれる大気、ありとあらゆる空間が、重力に縛られず変幻自在に表現されていた。 水に浮かんだ男の、海底で揺れる淡い影、女が翡翠の海に浮かべた巨大な甲羅、2頭のカメと並走して鳥のように泳ぐ息子、 これほど目にここちよい浮力を味わえるアニメは、そうはないと思う。 ああ・・・・・・やっと、自分の頭の中に念願の作品が収まった、という思いでいっぱいだった。 ただ、 宮崎氏だったら、「もののけ姫」のシシ神のように、カメを何かの象徴のように扱った気がする。 人間に恋をしたカメとなると、大自然の象徴が個人の人間に合わせてレベルを落とさなければならないので、どうしてもスケールが小さくなってしまう。 また、 いつ「紅の亀」が男を見初めたかがわからない。 人間界を暗示するボトルで巣立ってゆく息子の行く先は、カメとしての大海なのか、人間としての街なのかがわからない。 男と成長した息子があまりにもよく似ていて、まぎらわしい。 地震もなしに、いきなり大津波がやってきたことも引っかかる。 無理して言葉を飲み込んでいるような3人が、逆に不自然。 ・・・・・・と、つっこみたいところは多々あって、どうしても秀作『岸辺のふたり』と比べてしまう。 無理に長編にしたことで、マイケル作品の歯切れ良さが間延びされ、大味になった気がする。それが残念。 それでも、もう一度見直しても、多分、涙でぼろぼろになる予感・・・・・・[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-09-28 20:45:39)《改行有》

28.  エリア88 映画館で見た学生当時、目に見えない神崎に向けてシンが「なぜだーっ!」と叫ぶシーンで、彼のこの押し殺した怒りの感覚、どこかで見たことがあるとずっと引っかかっていたけど、ようやく○ン十年ぶりに解決。 「ベン・ハー」のユダだった! ところが、いったんそう感じてしまうと、最終までシンがユダ、神崎がメッサラーにしか見えなくなってしまい・・・・・・(汗)。 それはともかく、昔見た映画は、後年できるだけ見直すに限る。[DVD(邦画)] 8点(2016-09-06 16:23:02)《改行有》

29.  舟を編む 《ネタバレ》 タイトルの「ふね」は「船」ではなく正しく「舟」だ。軽くてもろく、孤独な舟で言葉の海を渡るのだから、本来なら「舟で編む」が正しいのでは?と思うところだが、「に」を「を」にするだけで、単なる説明ではなく詩的な深みが出るのだから、言葉というものはつくづく油断がならないと思う。馬締君や西岡君の成長ぶりを見ていると、辞書とともに編集者たちも年月とともに練られている。だから、辞書作りの現場や空気感、人間関係、作業の成果などひっくるめて、「舟を」になるのかなと思う。ただ、時の流れを表すのに、キャラたちの髪型だけでは辛い。もっと明確に、10数年たったという背景映像が欲しかった。 それと、バーガーショップでのシーンではたと気がついた(このシーン、かなり好き)。ラーメンや税金、スーパーなど1つのテーマをとことん追究して面白い作品を撮った伊丹監督なら、「辞書の男」とでも名づけたんじゃないかと。彼の作品だったら、煙草の煙が充満した編集室になり、かぐやさんはくわえ煙草のミニスカートで登場したかも。伊丹バージョンの「舟を編む」 できることなら見てみたかった。この映画は個人的にはすごく好きだが、ユーモアが中途半端だった。原作は笑いどころがいっぱいあるのに、それだけが残念。[DVD(邦画)] 8点(2014-02-13 13:55:13)《改行有》

30.  駅 STATION 《ネタバレ》 「矛盾してるけど、男と女ですからね」 というシーンがいい。この映画は、矛盾に苦しむ人々のドラマだ。だから皆、理解に苦しむ行動をとっている。北の国で生きていくには厳しい自然にさらされ続け、身も心も冷えるので、愛であろうがなかろうが絶えずぬくもりが欲しいのだろう。倉本氏の脚本は、阿久氏の世界観と驚くほど相性がいい。[DVD(邦画)] 8点(2012-10-28 01:26:52)

31.  この子の七つのお祝いに 《ネタバレ》 ただのスプラッタものではなく、飛び散る鮮血にはちゃんと意味があるということをひしひしと感じた。戦争が日本人に残した痛み、子供や夫、母などの肉親を失う痛み。それらは、凶器で突かれて肉体が現実に感じる痛みと呼応して、より深い狂気の色に染まって見える。 また、月のものが来るたび母に洗脳されるおぞましさや、自分の正体を知った上で殺される男の愛など、なかなか深いものがあった。もし男が業病にかかっていなくてもマヤは母の声に従って彼を殺しただろうが、激しい濡れ場シーンもなく静かにその手首を切る演出は、マヤの未成熟で不器用な性を強調していて、いっそう哀れを呼ぶ。 視聴が進むうち、画面に現れる赤い色は、すべて女の子宮から流れる血のように思えてきた。流血ざたも、人形の赤い着物も、小さなマヤの晴れ着も、何もかもが狂気のように赤い。ラストのマヤの動きは、飾られた人形のようにぎこちない。まるで壊れた操り人形のように、かくかくと、行きつ戻りつしてそのうち畳に伏せて動かなくなってしまう。私には岩下さんの演技がオーバーアクションには見えない。彼女はまさに人形になりきっていたからだ。命令を仕込まれた「仕掛け人形」だったのだから、指令を失った人形は迷走して力尽きるのは当然だ。成熟した一人の女性として描かれたマヤであったなら、あの不自然な動きはいかにも大げさにすぎるが、あの演技があるからこそ、この作品のラストは、厄介な情念が絡まりあった重たい人形浄瑠璃の幕が、やっと下りたような安堵をもたらすのだと思う。[DVD(邦画)] 8点(2012-04-29 01:18:45)(良:1票) 《改行有》

32.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 「大変な受賞歴のある作品」という先入観で視聴してしまったが、間延びしたシーンが多く、また女が泣きむせぶシーンが何回も繰り返されて、さすがに途中から(これはちょっとおかしいかも?)と身を引いてしまった。ラストは芥川龍之介の原作どおり辛口で締めるべきだったし、客観的な事実をつけたしていたのにはびっくりした。事実がわからないからこそ、視聴者(読者)の想像の領域が無限に広がるのに。個人的には羅生門にいた3人は好きではない。むしろいない方がいい。夫婦が曳いていた馬が空馬となって羅生門にぽつんと現れる、というラストの方がよかった。 しかし、登場人物たちの存在感の大きさには驚かされる。全員の表情がエゴでぎらぎらとたぎっているところへ、木漏れ日の白い光が降り注ぎ、力強い生のエネルギーが卍どもえににうずまいている。また、ラストの羅生門の演出が印象的だった。半分は無残に崩落しているが、残り半分は堅固なままだ。人間の悪と善、業の深さと誠を象徴しているように思う。[DVD(邦画)] 8点(2012-04-07 00:56:38)《改行有》

33.  阿弥陀堂だより 《ネタバレ》 癌の痛みからどうしても伏していられず、それでも座して騒がず、妻に死期を悟った挨拶をする。幸田の潔い姿に、さすがに刀を所持していただけの侍魂を持っていると感動した。一瞬泣きくずれそうになった妻は、夫の死の覚悟を乱さぬよう必死で耐えて、やがて座りなおすのだが、その一過程がたとえようもなく美しい夫婦愛に見えて、侍とその妻の美学を感じた。外国人は刀やちゃんばらに熱くなるけれども、侍のスピリッツがあって初めて美学に通じるものだとは、なかなか分かってもらえないだろう。強ければいい、かっこよければ全てよしだから、例えば、淋しいけれどもモンゴルの人たちは朝青龍引退の件に対して反日感情を募らせるのだし、彼らがこのシーンを見ても、どうして妻が泣き崩れないのか理解できないだろうと思う。また、人の顔をアップにして必要以上に喜怒哀楽を強調せず、かなりカメラを引いて遠巻きから人々を映している。その姿勢には、監督の誠実さを感じずにはいられない。[DVD(邦画)] 8点(2010-03-14 14:58:35)(良:1票)

34.  学校Ⅲ 試練を負いながらも前を向こうとする人々は、たとえ埃と油で汚れた作業服を着ていても、美しい・・・・・・[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-12-19 15:51:59)

35.  22年目の告白 -私が殺人犯です- 《ネタバレ》 『相棒』だったら、恨みから殺人を犯そうとしている人を止めるために「殺人犯と同じ罪を犯して被害者がうかばれますか!」と右京が絶叫しながら説教するところだけど、この作品では、自分の行為の醜さに自然に気づいて、おのずと仇の体から手を放す。ナレーションも、誰のセリフも入らず、それらしきBGMも使わない。映画ならではの演出と俳優の好演で、観る者にそれと悟らせる。文章だけの小説ではこうはいかない。このシーン一つだけとっても、本作を観てよかったと思う。[インターネット(邦画)] 7点(2021-03-20 16:23:10)

36.  天使のたまご(1985) 《ネタバレ》 これは、賛否というより好悪が分かれる作品だと思った。作品のタイトルからして謎。少女が抱えるたまごが「天使のたまご」なのか、少女=天使で、天使が抱えたたまごなのか、いまだにどちらか判別できない。さらに、青年が少女を絶望させたかったのか、たまごに害を加えたかったのかの判別も、最初は理解できなかった。2人が互いに「誰」と問い合うシーンが多いのも暗示的で、特定されたキャラではないことが作品に底の知れない不気味な深さを与えている気がする。とにかくわからないことだらけ。 ただ、少女が卵の中で命が育っていると信じているのは、最初から何となく違う予感がしていた。卵は死んだ雛が入っているか、中身が消えうせた浅利のように、空っぽなのではないかという気がしていた。彼女が大事に大事に抱えていた卵を、青年は無残に剣(?)で突いてしまった。もしかしたら、いつまでも孵(かえ)ることのない卵であることを彼は知っていたのではないか。卵の中には、自ら殻を割って表に出てくる温かい命などない。彼は独善的に、こんな卵を少女に持たせ続ける方が残酷だと考えたのかもしれない。 散乱した卵の殻を見て、少女は悲鳴をあげる。しかしなぜか、その悲鳴が響き渡って初めて何かが再生する予感が生まれたような気がした。彼女は力強い腹式呼吸で泣きわめいた。暗澹たる空気を切り裂く人間の声が、映画の鑑賞中初めて血の通った生々しい音声として耳に突き刺さったからだ。ウィキの監督による解説を読み、なるほどやはりそういうことかと合点がいった。 例えば、1人息子が行方不明になった母親を想像してみる。息子は、もしかしたらどこかに生きているかもしれない。少女が「お願い、たまごを傷つけないで」と青年に言ったのは、そうした母親の一縷の望みのようなものかもしれない。しかし、息子は何年も何年も帰ってこない。そこへ、唐突に彼の遺体が見つかったとする。母親は絶叫して号泣する。しかし、やがて息子の死を受け入れ、自らの人生を歩むためにやがて前を向き始める。 ・・・・・・そうしたことの寓話として作られた話ではないか、という気がする。少女の悲鳴が、私にとって最も大きなヒントになった。 それにしても、大きな魚影が街中に現れたときはびっくりした。1985年の映画なのに、早々にプロジェクト・マッピングを予言している!? 始祖鳥を思わせる巨大な化石、あるいはレリーフ(?)にも驚いた。ノアの箱舟といい、根元的な生物の再生の物語として描かれていたのかもしれない。[インターネット(邦画)] 7点(2019-09-14 00:19:07)《改行有》

37.  容疑者Xの献身 《ネタバレ》 石神の人となりが最もよく表れていたのは、湯川から託された問題を解くシーン。背中を丸めて一点に集中する姿は、逆に他のことは目に入らない、つまり極端に視野が狭いことを暗示しているよう。それでも旧友の寝姿にはちゃんと気づき、風邪をひかないか心配する優しさもある。不遇の親のため夢を諦めて仕事に就く孝行心もある。石神は、自分に少しでも関心を持ってくれる人間に対しては危害を加えることはできないが、自分に無関係な人間、例えば、数学に関心がない生徒たちやホームレスには、彼ら自身に五感があることすら忘れているようだ。このシーンには、ヒントになるメッセージがたくさん込められている。 花岡母子のために、明確な殺意をもって石神は湯川を冬山に誘った、にもかかわらず、旧友をどうしても殺せなかった。冬山のシーンはそう解釈したい。ホームレスの男性には容赦なく石で顔をつぶせたことの対比となって、石神の屈折した複雑な人間性が垣間見える。 もし、石神に柔軟なコミュニケーション能力があり、社会的に広い視野が効き、自分に自信のある人間だったら、隣室で乱闘の気配を察した時点で警察を呼ぶか、部屋へ飛び込み、被害者の蘇生をして救急車を呼び、母子を殺人者にしない配慮をしたはず。 それが最も正しく彼女たちを救う手段だ。なのに、数学には解答へのいくつもの道があると言いながら、事件に関して彼は選択肢を1つしか持たなかった。 なぜなら、彼女たちの悲劇のヒーローになりたかったから。 彼の犯行は、見た目には母子への捨て身の献身だが、私にはやはり相当歪んだエゴに見える。 自分の得意分野で、好きな女のヒーローになりたいというエゴがあるからこそ、彼女たちの正当防衛を証言する気はさらさらなく、目的のために無関係な人間も殺害できた。 ただ、巧妙にアリバイを作ることはできても、靖子が自分に無関係な死者を出されたことを知ればどんな気持ちになり、どういう行動に出るかという、いわゆる「人の心」が読めなかった。ひとえに、視野が狭かった。 また、自殺を厭わぬ者と、娘を守って生きねばならない者という、両者の生の執着の差も、齟齬の出た原因の一つだろう。 ラストで石神が号泣したのは、靖子が自分を救うために名乗り出てくれたことよりも、自分のひそかな誇りが台無しになってしまったからだ。 他者への優しさとそれ以上に自己犠牲の陶酔が混在した、そんな石神の涙と、石神を理解できないにもかかわらずむせび泣きながら謝罪する靖子の涙は、全く質が違う。 小説・映画は道徳的である必要はないと私も思う。石神のように、良かれと思ってしたことがただの偽善にすぎず、不条理な結果を生む事例は、現実にいくらでも転がっているし、悪人だけで成り立つ魅力的なドラマもたくさんある。 問題は、湯川が登場しているにもかかわらず、その不条理(特にホームレスの殺害)に充分な光が当てられていないこと。 湯川が石神を哀れむだけで激しい怒りを感じなければ、彼の正義など、何ほどのこともない(『相棒』右京のキャラクターと比較すれば一目瞭然)。 話は面白くて深いのに、小説も映画も、この辺がとても弱い。そのため、石神や母子の登場するシーンは強く惹きつけられたが、湯川や内海は、物語の進行を促す程度のキャラクターにしか見えなかった。[インターネット(邦画)] 7点(2018-05-13 22:26:09)(良:5票) 《改行有》

38.  GODZILLA ゴジラ(2014) いろいろひっかかったり、首をひねりたくなるシーンもあったけれど、観終わった感想はただただ、「アメリカの皆さん、日本のキャラクターをここまで愛してくれてありがとう」 という一言のみ。日米にとっては腫れ物に触るような核やら放射能やらのイメージを、平気でしょって歩くゴジラが、なぜこれほどまでに世界で受け入れられるのだろう?[地上波(吹替)] 7点(2016-07-30 00:54:50)

39.  重力ピエロ 《ネタバレ》 重力をときはなち、一家の幸せを願う母、弟を守りたい長男、兄に気づいてもらいたい次男、息子たちを見抜いている父。皆さんのおっしゃるように突っ込みどころ満載だったが、この深い家族愛が貫かれている以上、何もいうまい。 レイプされて生まれた子供たちは、世界中に星の数ほどいる。彼らが人に愛され、愛することができる人間に、どうか成長してほしい。そう願わずにいられなかった作品。[インターネット(字幕)] 7点(2016-02-28 00:46:27)《改行有》

40.  のんちゃんのり弁 《ネタバレ》 昭和が色濃く残った、人情あふれる下町の新米バツイチ奮闘記。深刻になりすぎず、くだけすぎず、ちょっぴり辛めだけど暖かくて、全体的にバランスの取れた佳作。あの殴り合いのシーンを見て、あれ、この夫婦ひょっとしたら、お互いちょっと意識を変えたら案外まだ続くんじゃないかなと思った。のんちゃんのためにも小巻と元ダメ亭主とは完全に切れないでいて欲しいと思う。小巻の奮闘ぶりにこちらも元気をもらったが、この作品を見終わった後、離婚後もいい関係を続けている中年男女のハートウォーミングな映画を見てみたくなった。[DVD(邦画)] 7点(2014-03-03 12:55:13)

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