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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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21.  アヒルと鴨のコインロッカー 《ネタバレ》 原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 前知識が何もなかったせいか、不思議な感覚にさせてもらえた。 感動というわけでもなく、友情に心を熱くさせるわけでもなく、不可思議なストーリーに驚かされるわけでもない(瑛太がドルジということくらい見ていけば分かるはず、自分はお弁当屋のお握りのシーンでだいたいの謎が解けた)。 しかし、ふわっとはしているが、心に何かを響かせるものを感じさせる作品だ。 切ないようでどこか暖かいような感覚。 がっちりとした絆ではないけど、人間と人間が深い部分で繋がりあったような感じだろうか。 このような独特な感覚を与えている点を評価したいところだ。 日本人同士ではなくて、国籍が違う二人という点もユニークなところ。 それをアヒルと鴨で表現している点もなかなかセンスが良い。 ただ、あえて触れないが、全てを完全にまとめきれていない部分もありそうなので、その辺りが減点材料となるだろうか。 また、河崎が神と崇めていたディランの曲を琴美が聴き、琴美が歌っていたディランの曲をドルジが聴き、椎名が歌っていたディランの曲をドルジが聴き、出会うはずのない椎名とドルジを音楽が引き合わせるという展開も面白い。 「フィッシュストーリー」等の伊坂作品にも表れるが、“音楽によって人を結び付ける”ということが、彼の作品らしいと感じさせるところ。 瑛太も濱田も松田も個人的に嫌いではないもののそれほど好きではない役者だったが、変な色を付けずにナチュラルに演じていたように思われる(濱田は色を付けていたかもしれないが)。 序盤、瑛太はなぜ変にはっきりとした喋り方をしているのかと思ったが、彼なりに役柄を検討した結果なのだろう。 ラストもややボカしている点も悪くはない。 犬を助けようとする男が轢かれるわけがないと思うのか、そうでないかは観客に委ねられている。 いずれの結果にせよ、あの二人は一歩成長して前に進めたということが伝わってくるラストとなっている。[DVD(邦画)] 7点(2010-02-01 23:03:14)《改行有》

22.  ゴールデンスランバー(2009) 《ネタバレ》 原作未読。原作は面白いと聞いており、ストーリーは面白いと言わざるを得ない。特徴のあるキャラクターが多数おり、それぞれが活きたキャラクターとなっている点も評価したい。しかし、本作中にあるような「たいへんよくできました」という評価はしにくく、「よくがんばりました」というところか。 冒頭の首相暗殺及び警官の突然発砲からグイグイストーリーに引き込まされるが、肝心の終盤に従い、だんだんと失速していったような気がする。いつ捕まってもおかしくない、いつ殺されてもおかしくないという緊張感や、這いつくばっても逃げてやるという気迫、真相はいったい何なんだというような不気味さが若干薄れており、少々ヌルい空気感も漂っていたところがマイナスというところか(監督のテイストなのでこの点を評価する者もいるとは思うが)。 やや現実離れした部分に関しては許容できるレベル。本作のリアリティと非リアリティのバランスはそれほど問題なく感じられるのではないか。訳の分からないキャラクターの登場や訳の分からない展開になっても、クエスチョンマークが付くようなことにはならず、あれはあれで比較的良い味付けになったと思われる。 ただ、本作にとって必要不可欠な“大学時代の回想シーン”だが、そのウエイトがやや重すぎたかもしれない。もちろん、青柳の一人のチカラで逃げ切れるわけではなくて、3人の助けや彼を“信頼”してくれた者たちのおかげである。“花火”“壊れかけのクルマ”“大外刈り”といった青春時代の思い出によって彼は救われる結果になり、それらを有効に描くためには“大学時代の回想シーン”をじっくり描き込む必要があるという流れは分かる。 時間を掛けて、“大学時代の回想シーン”を一生懸命に描いているが、結局のところ現代版に対する“伏線”に用いられているだけのような気がしてならない。 そのようなことをぐだぐだと描くよりも、4人が繋いで渡したビートルズの“ゴールデンスランバー”が入ったIpodというキーアイテムが彼の命を救ったということをもっと印象的に描いた方がよかったような気がする。 ビートルズの“ゴールデンスランバー”という曲が4人にとっての“絆”のような存在ならば、その“絆”が深く響くように端的な仕上がりにした方がよいか。 “友情”を描いておきながら、“友情”がガチッと描かれた仕上がりにできていないところがもったいない。[映画館(邦画)] 7点(2010-01-31 20:57:04)(良:2票) 《改行有》

23.  黒い画集 あるサラリーマンの証言 《ネタバレ》 他の松本清張作品にも「証言するしない」「他人を貶めたようなことが自分にも降り掛かる」といったことが描かれているが、ワンパターンにならずにそれぞれが独自の作品に仕上がっている。 言うも地獄、言わないのも地獄という不倫中年サラリーマンの苦しみがよく感じられる。 因果応報、負の連鎖は見ている者には面白く、かつ教訓を得られるようなところがある。 殺人事件には発展しないだろうが、保身のためにつまらない嘘を付くということは我々にも起き得るシチュエーションかもしれない。 愛人を作るなとは言わないが、状況に応じては正直にならなくてはいけないようだ。 本作を観ると、女性も意外と怖いなと感じられるところがある。 課長に正直に証言しろと迫るわけではなくて、逆にアリバイ作りには熱心となる。 脅されたとはいえ相手に体を許して、別の男性と簡単に結婚までもしてしまう。 男性のズルさというのももちろんあるが、女性の割り切り感も凄い。 その辺りをもうちょっとクローズアップしてもよかったかもしれない。 課長の煮え切らない小心者らしい態度と、OLの割り切り感のよくポジティブな態度が事態をより一層に泥沼化させていくという流れでもよい(実際の女性にはネガティブ思考も多いが)。 凡人ならば、釈放されずに刑に処せられるというオチに持っていくところだが、釈放されるところがある種のポイントかもしれない。 社会的な信用を失い、家族を失い、愛人も失ったであろう主人公には刑務所に入るよりも悲惨な人生が待ち受けている。 この辺りの落としどころは上手いと唸らざるを得ない。[DVD(邦画)] 7点(2009-12-21 23:26:15)《改行有》

24.  眼の壁 《ネタバレ》 ラストの幕引き以外はかなり面白いシナリオ。 事件の闇が深すぎて、事件の顛末がどうなるのか気になって引き込まされた。 刑事とは異なり、素人の会社員と新聞記者というコンビも面白い。 さすがは清張の原作作品だけのことはある。 余計なことをせずにストーリーの流れに沿っているので、原作の良さが活きているのではないか。 シンプルな作風には工夫の余地もあるが、こういうスタイルもそれほど悪いものでもない。 ストーリーとしては、素人の会社員が数ヶ月に亘って事件に関わるというのはおかしな話なので、もうちょっと男と女の関係を深めてもよかったかもしれない。 上司の仇討ちのような形で始まったことではあるが、自分が惚れた女がいったいどういう女なのかを知りたいという方向性にもっと進めていくと、より面白い作品に仕上がったのではないだろうか。 そうすると、会社員の男の心境や人間像も明らかになり、女性の方もただの「キレイなだけの人」ではなくなり、どちらにも深みのあるキャラクターに膨らむ。 知りたいのは事件というよりも、女という方向に進めると、相乗効果が期待できそうだ。 事件を追えば女の素性が分かり、女の素性が分かれば事件の闇も分かってくる。 そもそも最初の事件もうやむやになってしまっているので、人間に焦点を当てた方がいいだろう。[DVD(邦画)] 6点(2009-12-21 23:19:40)《改行有》

25.  霧の旗(1965) 《ネタバレ》 後味の悪さが後を引く作品。これは確信犯的なものだろう。人間の残酷さ、冷酷さ、恐ろしさ、理不尽さといったものを描き切っている。さすが松本清張・橋本忍・山田洋次という才能のある者が関わった作品だ。タイトルにあるように霧に包まれたようなボンヤリとした状態が続き、最後までその霧が晴れないという気持ち悪さを存分に味わえる。凡人ならば、大塚弁護士を悪徳弁護士の設定にして、もうちょっと彼に非があるようなものにしてしまうだろう。そのような設定にすると、印象もがらっと変わってしまう。「復讐が成功した」という晴れ晴れした気分となるが、単なる復讐劇でしかなくなり、すぐに忘れ去れてしまい、本作のような気持ち悪くなるインパクトが相当に薄れてしまうのである。 東京の高名で多忙な弁護士が九州の事件を断るというのは当然の流れである。弁護料と称して金だけぶんどって事件を解決しないという類ではない。事務員が断ってもいいものをあえて面談して比較的丁重な断りを入れている。その後も事件を独断で調査するというようなところをみせており、大塚弁護士自身は非常に仕事熱心であり、有能な人材ということがよく分かる。そのような彼が不当な扱いを受けなくてはいけないということが、人間や人生というものの奇妙さ・不可思議さ・理不尽さが垣間見られる作品へと昇華させる。 本作に描かれた2件の殺人事件は同じようなケースである。桐子の証言や物的証拠がなければ、有能な大塚弁護士でさえも無罪や釈放を勝ち取ることができないということは、裏を返せば九州の事件も大塚弁護士は解決できなかったといえるのかもしれない。 左利きの者が犯人ということが分かっても物的証拠がなければ、逆転無罪を勝ち取ることは困難だっただろう。桐子がいくら大塚弁護士に頼んでも、兄の事件の顛末は変わらなかったかもしれないということを桐子自身が分かっているということにもなる。 また、桐子の行動によって真犯人は野放しにされており、その真犯人はひょっとすると兄の事件の真犯人かもしれないということもいえる。桐子の行動は相当に自己矛盾をはらんでいる。人間の行き場を失った“恨み”というものはそういった矛盾や理性といったものすら凌駕するということを本作は伝えたいのかもしれない。 桐子の行動の不条理さが気持ち悪くて評価を低くしようとしたが、この映画はかなり深い(不快ではなくて)作品だ。[DVD(邦画)] 7点(2009-11-28 10:36:52)(良:1票) 《改行有》

26.  点と線 《ネタバレ》 原作未読。 テレビ版も見たことがなく、今回が完全な初見。 「つまらなくはないが、ただの功名なトリックの汚職絡みの殺人事件だな」と思って見ていたが、いつのまにか女性の嫉妬や愛憎がメインとなっているというカラクリは面白い。 省庁の役人は業者を利用していたつもりでも、逆に業者に利用されている。 省庁の役人を手玉に取るほどの夫は妻を利用していたつもりでも、逆に妻に利用されている。 一番の大物は役人でも業者でも刑事でもなくて、“女”ということか。 よくよく考えると、意外と“深い”作品といえるかもしれない。 ただのサスペンスに終わらない松本清張の上手さが垣間見られる作品だ。 男と女の心中(のような殺人事件)に始まり、男と女の心中(のような殺人と自殺)で終わるという構図も面白い。 前者の心中については警察が疑問に感じたが、(お手伝いさんなどが愛人の来訪の件などの余計な証言をしなければ、)後者の方の心中を警察は追いつめられたことを苦にした単なる心中と処理するかもしれない。 巧妙なトリック殺人事件の影や顛末に、男と女の愛憎が映し出されているという面白さは評価したいところ。 ただ、刑事モノやトリックサスペンスとしてはイマイチなところも感じられる。 上映時間の短さもあるが、ややあっさりとしすぎており(一人で突っ走っているところもあるが)、刑事の苦心や事件を追う情熱を深くは堪能できない。 また、『今の時代ならば「飛行機」を使うけれども、当時はそうではなかったんだろうな』としみじみと思っていたら、普通に「飛行機」を使ったり、功名にみえて簡単に崩される穴だらけのアリバイも拍子抜けするところはある。 青函連絡船など、現代ではあまり見られなくなったものも見られるので、そのような楽しみは感じることはできるが。[DVD(邦画)] 7点(2009-11-21 22:39:05)《改行有》

27.  天城越え(1983) 《ネタバレ》 分かるようでイマイチ分からないところもある映画。 本作の少年にそれほど感情移入できなかったので、個人的には高くは評価しにくい。 田中裕子に惹かれるかどうかでも感想が異なりそうだ。 少年(印刷会社社長)の犯行であることは一目瞭然なので、なぜ彼が人間を殺さざるを得なかったのかという犯行の動機がポイントなるが、それが明瞭になっても、それほど深くは感じ入れなかった。 犯行の動機は、“男”としての性や優劣競争のようなものだろうか。 「俺はこんな奴に負けたわけじゃない」「オマエのせいで俺の・・・」という思いや憤りが爆発したのだろうか。 自分の母親も叔父さんに取られたようなことになっており、“男”として敗北感や“子ども”という無力感が既に根付いていたのかもしれない。 少年も若いなりに“男”が爆発したが、本作の監督も“男”として爆発し、田中裕子をそういった視点から上手く撮っている。 それにきちんと応えている田中裕子を褒めるべきかもしれないが。 ただ、天城のシーンはよく撮れているが、現代のシーンは評価できるものでもない(最後の意味不明なところもあるカットも興ざめ)。 コントメイクの老刑事とのやり取りも何かを感じ取れるものはない。 結局、ハナも無罪となったものの、病気で死んだというのもやや引っ掛かるところだ。 ハナが無罪となっては、彼が犯した“罪”の重さも変わってくる。 時効によって罪は消えるかもしれないが、罪の意識は消えることはないはず、ましてや他人(好きな女性ならばなおさら)に罪を押し付けるということはどれだけ心に深く刻まれるかということをもうちょっとアピールして欲しいところ。 そのためにも、無罪や病死というのはいかがなものか。 そもそも彼女が無罪となったら、少年にも嫌疑が掛かるものではないか。 彼女が罪を被れば、少年が罰せられなかった理由は分かる。 しかし、彼女の言動に何か引っ掛かるところがあり、引退した刑事が最後に犯人と向き合うという形にした方がよいかもしれない。 刑事自身も自分が犯した“罪”と向き合ってもよい。 彼も“男”として初めて向き合った殺人事件を解決したい、“男”として“女”になめられたくないという思いがあったのかもしれない。[DVD(邦画)] 6点(2009-11-21 22:34:05)《改行有》

28.  張込み(1958) 《ネタバレ》 50年代という自分が知らない日本が描かれているので、それだけでも映像に惹き付けられたが、それだけではない不思議な魅力をもった作品。 大して動きもそれほどない日常や、刑事が汗を拭うシーンが描かれているだけにも関わらず、なぜこれほど惹き付けられるだろうか。 清張の原作、野村の演出、橋本の脚本の見事な融合によって傑作に仕上がっている。 本作を観ると、“人間”というものが上手く描かれていると感じられる。 まず、『人間というものはよく分からない』ということが分かる。 7日間の張込みで人間の本質を理解できないのは当然のことではあるが、一緒に暮らしている夫の銀行員は何年一緒に暮らしても、さだ子を理解できないだろう。 ひょっとするとさだ子自身も自分のことを理解していなかったかもしれない。 自分の奥底に潜むパッションが爆発するということを彼女自身が分かっていたとは思えない。 何年も変わらぬ日常を経験したさだ子だからこそ、3年前のさだ子とは異なる決断ができたのだと思う。 ただし、“時間”というものがその決断を許さなかったようだ。 また、『人間というものは楽観的に解釈する』ということも本作の特徴かもしれない。 人間は、今この時に動かなくても、将来はきっと明るい未来が開けていると都合よく解釈してしまうものだ。 しかし、現実はそれほど甘くはないようだ。 将来を楽観視するのではなくて、行動するのは“今”なのかもしれない。 行動して失敗することもあるだろうが、行動しなくて後悔するよりも行動して後悔する方がマシだ。 急いで電報を打った柚木からそのように感じられた。 たとえ失敗したとしても、またやり直せばよい。[DVD(邦画)] 8点(2009-11-21 22:25:46)《改行有》

29.  わるいやつら 《ネタバレ》 原作未読、ドラマ未見。 さすがに松本清張原作作品だけのことはあり、見応えが十分だった。 終盤の豪華出演陣も驚かされるばかりだ。 当時としては最先端なのかもしれないが、今観るとかなり違和感のある映像も逆に新鮮でなかなか面白いと感じた。 また、主演の院長が軽薄でどうしようもなく雑魚っぽいところも個人的にはツボ。 現在の映画においては、こういうキャラが主演になることは少ないだろう。 男と女の様々な欲望が絡み合っているが、あまり計算しているように思えず、本能のおもむくままという状態もどこか生々しいところがある。 それぞれがスマートな知能の持ち主ではなく、間の抜けたところがあるため、より人間らしくみえる。 そして、男と女の“性格”が要所要所で上手く描かれているように思われる。 特に、個人的には“殺し方”に特徴が現れていたと感じられる。 男は首絞めやナイフといった暴力的かつ直接的な手段を選ぶものの、女は薬といった間接的ともいえる手段を選んでいる。 男は感情で行動し、女は冷めた目で行動するということだろうか。 現代の男女の在り方を考えると、逆のようにも感じるが、当時としてはそういうものだったのかもしれない。 いずれにせよ、男性よりも女性の方が、肝が据わっているのは事実だろう。 徹底的に利用する女と、徹底的に利用される男という構図も面白い。 もし、院長が婦長を女性のように徹底的に利用することができれば、恐らく身の破滅を防ぐことができただろう。 それができないのが男の性というものか。 院長もわるいやつだが、院長や下見沢を手玉に取る槙村の“わる”が映像上見えてこない点が面白いところでもあり、物足りないところでもある。 完全な“わる”を見せることもないが、もうちょっと彼女なりの“恐ろしさ”を醸し出してもよかったか。 自分の“弱さ”を見せたり、簡単には落ちないような“強さ”を見せたりと、様々な顔は見せているものの、“恐ろしさ”はストレートには感じられない。 刺殺されるという結果を踏まえると、彼女の“恐ろしさ”は相当なものなのだろうが。[DVD(邦画)] 6点(2009-11-21 22:17:39)《改行有》

30.  ゼロの焦点(2009) 《ネタバレ》 原作やオリジナルを知らずに、本作を単独で評価すれば、5点か6点かという評価になるだろうか。松本清張原作作品なので、ストーリー自体の面白さは保証されている。 しかし、オリジナルを見てしまうと、本作は“酷い”としか形容のしようがない。途中退席をしようかと考えるほど、“憤り”を覚えたので、正確にジャッジできているとは思えないが、カラクリを全て知ってみると、ネタの出し方、編集や構成、脚色全てにおいてバランスが悪く、ことごとく裏目に出ていると感じられる。観客に“驚き”を与える気持ちが感じられず、ストーリーを単に流しているだけ。自分の頭に血がのぼっていたので、女優陣のせっかくの熱演も『茶番だ』としか感じられなかった。 現代において、当時の北陸を再現することは難しいが、冬の北陸を上手く表現して活かしているとも思えない。 こういうことになるのは分かっていたので、オリジナルを見るのは本作鑑賞後にする予定だったが、偶然オリジナルを見る機会が先に来てしまったのが問題だった。 松本清張の原作を読んでいないので、自分の批判が適切なものかは分からない。 ひょっとするとオリジナルが原作とかけ離れており、本作が原作に沿っているのかもしれないが、オリジナルの良さをことごとく消し去ってくれている。 オリジナルはただの殺人事件を描いたわけではないのに対して、本作はただの殺人事件を描いたに過ぎない。 オリジナルは“時代”や“過去”に翻弄された同情すべき悲しい事件なのに対して、本作は同情の余地が一切ない、自分勝手な人たちが巻き起こした事件となっている。 監督・脚本を兼ねている犬童監督はオリジナル作品をきちんと見たのだろうか。 もしオリジナルを見ているとすれば、彼の才能を高くは評価できない。 しかし、逆に穴が空くほどにオリジナルを見たのかもしれないとも感じられた。 オリジナルとは180度と言っていいほど、完全に真逆の作品に仕上がっているからだ。 単にコピーして劣化版を作成するのではなくて、自分の“オリジナル”作品を仕上げるという壮大な狙いを込めたのだろうか。その壮大な狙いが失敗しただけなのかもしれない。リメイク自体は否定するつもりはなく、自分としては歓迎をしているが、比べられる対象があるだけに、製作するサイドとしても、鑑賞するサイドとしてもリメイクというものは本当に難しいものだと感じさせた。[映画館(邦画)] 2点(2009-11-16 23:05:00)《改行有》

31.  ゼロの焦点(1961) 《ネタバレ》 “北陸”という場所が非常にマッチした映画に仕上がっている。 冬の北陸へは数度しか行った事はないので、個人イメージというところもあるが、鉛色の空が似合うちょっと寂しい感じの街だった気がする。 本作において、新婚旅行のときだろうか電車に乗っている際に、金沢への憧れを表す妻と金沢に対する嫌気を表す夫のやり取りが印象的に残っている。 夫にとっては、金沢という場所は想像以上に孤独で寂しい場所だったのではないか(鵜原だけではなくて、社長夫人や久子も含めて)。 ハイヒールを履いて雪の上を歩く妻の姿を見れば、その憧れは単なる憧れであり、現実が分かっていなかったこともよく分かる。 そのため、“北陸”という過酷な地において、それほど好きではない久子とその孤独のスキマを埋めざるを得なかったのかなと感じられた。 それがこの“悲劇”の始まりだろうか。 本社復帰を何度か断ったというセリフはあったが、いったん泥沼にはまると抜け出したくてもなかなか抜け出せないというのはよくあることだ。 パンパンという言葉を初めて聞いたが、当時としては相当な差別対象だったと想像される。 どんなに偽っても、どんなに誤魔化してもそういった“過去”というものは消えず、“過去”は付きまとい、“過去”という亡霊に怯え続けるざるを得ないのだと思い知らされる。 また、人を愛するということは、その人の全てを知りたいと願うことなのかもしれない。 妻はたった7日間の結婚生活だったけれども夫を愛していた。 社長は妻のことを愛していた。 人から愛される度に“過去”というものが浮かび上がってきてしまうもののようだ。 人を愛さなければ、人から愛されなければ“過去”というものは問題ならないのかもしれない。 “過去”というものが非常に厄介なものだということも思い知らされる。 “謎”自体はそれほど複雑で面白みのあるものではないが、それがまた何かを感じさせるものとなっている。 一瞬の感情や偶然によって、事件が複雑に絡まってしまっているだけであり、真実はそれほどドロドロしいものでもなければ、計画的な残酷性があるわけではない。 それが悲しみを引き立てる効果となっていると感じられた。[DVD(邦画)] 8点(2009-11-16 23:02:57)《改行有》

32.  沈まぬ太陽 《ネタバレ》 202分という上映時間の割には、長さを感じさせない映画に仕上がっており、この点に関しては大いに評価したいところだ。 原作は読んだことがないが、その膨大な原作を練りに練りこんで脚本化して、一人の男の半生を興味深く描き込むには相当な労力を要したことだろう。 飽きるということは全くなく、むしろもっともっと色々なことを深く描いて欲しかったというところが正直な感想。 ただ、つまらないという印象は全くないが、男の人生・生き様に関して、深く感銘を受けるというものもなかった。 実際の事故や人物をベースに描いているので、深くえぐり取ることができずに、ぼやかさざるを得なかったのかもしれないが、ストーリーを流すことを主眼に置きすぎて、ポイントが少々ズレてしまったところがある。 企業も政治も何もかも「どろどろ」としているが、その「どろどろ」が上手く活きていないような気もする。 上映時間だけは長いが、長ければそれだけ深く描けるということはないようだ。 観客に訴えたいポイントを“核”にしなければいけないが、その“核”が少々見えてこない。 『苦しみの果て、悲しみの果てのアフリカの地で恩地が何を見て、何を感じたのか』が自分には深いところが分からなかった。 恩地とココロを通わして、何か同じことを感じ取ったり、考えることができなかったのは自分が幼すぎるからだろうか。 「逃げずに立ち向かい戦い続けた男」「波から落ちないように戦い続けた男」「戦うことから逃げてしまった男」など、様々な男の生き様と、その男を支え続けた女の姿が描かれている。 自分自身の性格が「逃げずに戦う男」ではなくて、「戦うことから逃げてしまう男」なので、本作の“核”が感じ取れないのかもしれない。 兄が妹に対して、「生きている時代が違うから分からない」というセリフがあったと記憶しているが、まさにそういう感想だ。 ただ、人類が生まれた地であるアフリカという場所に立って、再び生れかわれる、再びスタートできるというような気持ちがあったのかもしれないというようなことは感じられた。 自分自身との苦しい戦い、悲しみの果てにも人間はやり直せるというようなメッセージをもっと本作から深く感じ取りたかったところだ。[映画館(邦画)] 6点(2009-11-02 00:30:44)《改行有》

33.  ぼんち 《ネタバレ》 個性のある俳優・女優陣の競演がみられ、面白いとは思うが、少々すっきりとしないところもある映画。 『冒頭のうだつの上がらなそうなオヤジがどのように転落していったのか』ということに注目していったら、どことなく中途半端に幕を閉じたという印象。 “女の怖さ”のようなものも強くは感じられず(風呂で戯れる女たちに怖さを感じられないところは自分の甘さか)、結局、何が言いたかったのだろうかという想いは残ったが、あまりそういうことを考えない方がよい映画なのかもしれない。 本作にテーマやオチのようなものを求めるのは、野暮で無粋というものか。 こういうチカラを抜いた作品が作れるということが本当の才能といえるかもしれない。 現代では考えられないような“しきたり”や“因習”や、様々な“女”たちや“時代”に翻弄された一人の若旦那の半生を興味深く堪能すればよい。 若旦那が破滅をすることもなく、また商売始めるんだとラストで語るようなところをみると、女はもちろんしたたかだが、男も意外と負けていないようなしたたかさや、しぶとさがあるのかもしれない。 金はほとんどなさそうだが、噺家のような人にご祝儀をあげている辺りが腐っても“ぼん”なのだと感じさせる。 過去にあまり見なかったタイプの映画だったので、新鮮な気持ちで見ることはできる。 何を喋っているのか分からないところも多くあったが、基本的にはほとんどがニュアンスで感じ取ることはできるというのも面白い。[DVD(邦画)] 7点(2009-11-02 00:29:59)《改行有》

34.  手紙(2006) 《ネタバレ》 原作未読。邦画も捨てたものではないと感じさせる傑作。映画を見て、ほとんど泣くことのない自分でも泣けた。特に減点すべきところもないので、10点満点と評価してもよい作品だ。ただ泣けるだけではなくて、『犯罪者の弟としての苦痛・苦悩』、『手紙のもつチカラ』がきちんと描かれている点を評価したい。作り物とは思えないほど、心に響いてくる作品だ。 “答え”のない難題にチャレンジしておきながら、一定の“答え”を出しているという非常に“深み”のある映画に仕上がっている。 「犯罪」というものは誰もが本能的に忌み嫌うものであり、「犯罪者」「犯罪者の家族」というレッテルを剥がすことは決してできないだろう。 我々としても、「犯罪者」に対して“差別”をするという意識がなくても、無意識的な“差別”なしに対応することはできないのではないかと思う。 ただ、本作を鑑賞することによって、そのような“差別”に対して、何かを感じ取ることや何かを考えることはできるという思いを強くすることができる。 結婚して子どもができたところで『これでエンドかな』と一瞬でも思ったことが、愚かともいえるほどの展開が待ち受けていたことが驚きだった。 本当のストーリーがここから始まるといっても過言ではない。 手紙を書くことで事件から逃げていた加害者、手紙を代筆させることで事件から逃げていた加害者の弟、手紙を無視(返事を書かない)することで事件から逃げていた被害者の息子、この事件はそれぞれの中では決して終わることはなかった。 自分の手による本音の手紙を書くことで事件に向き合う加害者の弟、手紙を書かないことで事件に向き合う加害者、たとえ読んでいたとしても半ば無視していたであろう手紙と本当に向き合った被害者の息子、事件から逃げずにそれぞれがきちんと事件に向き合うことによって、事件はようやく決着するのかもしれない。 『逃げちゃダメだ』という言葉は簡単に言えるかもしれないが、本当に逃げずに向き合うことはこれほど過酷なものとは思わなかったと感じさせるだけのパワーがあるラストだった。 事件は誰の心からも消えることはないのかもしれないが、繋がりを再認識して支え合うことによって乗り越えることはできるのかもしれない。 血縁者だからこそ苦しみも受けるが、血縁者だからこそ出来ることもある。[DVD(邦画)] 9点(2009-10-24 22:17:19)(良:3票) 《改行有》

35.  さまよう刃(2009) 《ネタバレ》 原作未読。よく出来た映画であり、何かを考えさせられる映画でもある。ただ、“深い”部分まで描かれているかといえば、そういう作品でもない。表面的な部分をすくった程度であり、ココロに深く何かを刻まれたという想いはない。“傑作”というジャッジをするには至らず、“良作”というところではないか。 しかし、寺尾聰さんの演技は評価に値する。演技の上手さや下手さの判断がそれほどよく分からないが、寺尾聰さんの演技はリアルであり、ナチュラルである。実際に娘を殺されて、未来を奪われた人間としか映らなかった。そこには“答え”が分からずに、呆然として、さまようしか術がない男しかいなかった。 “復讐”ということは“答え”ではないかもしれない。しかし、被害者の遺族の感情とすれば、何らかの“答え”は必要なのだろう。“復讐”以外に答えを求めるとすれば、「立法」と「矯正行政」の範疇となる。せっかく裁判員制度も導入されたのであるから、もう少し刑罰の幅を広げてもいいかもしれない。複数名を殺害しないと死刑にならないというのはおかしな裁判判例であるし、殺害の意思がなければ殺人罪にも問えないこともある。過去の判例と照らし合わせて判決を下すのではなくて、裁判員制度ではもっと様々な事情を鑑みて判決を下されるべきではないか。「1人でも殺せば死刑になることがある」という判決を重ねないと、犯罪の抑止力が損なわれる恐れがある。 日本には「死刑」「無期懲役」という刑罰はあるが、「無期懲役」には仮釈放というおなしな制度もある。この際、「終身刑」という新たな刑罰を創設し、被害者遺族の感情に応える立法も必要な時期に来ているのかもしれない。また、刑務所にいったん入っても再犯するような事態を極力避けるような矯正行政の在り方や社会の仕組みも問われるべきだろう。罪を犯した者が刑務所に入ることによって、誰しもが納得できるようなシステムを構築することが、被害者の家族の感情の軽減や犯罪の抑止力といった効果が期待できる。 なかなか簡単には社会は変わらず、変えることもできないが、よりよい方向に変える社会作りに我々は貢献したいものだ。 現在の動きは、逆に「死刑制度」をなくそうという動きすらある。 被害者の想い、加害者の事情、人を裁くことはそれほど簡単なことではないが、犯した罪に応じて厳罰を処するということはあってしかるべきであろう。[映画館(邦画)] 6点(2009-10-19 21:20:50)《改行有》

36.  g@me.(2003) 《ネタバレ》 原作未読。よくよく考えればおかしなところも出てきそうだが、良質なサスペンスに仕上がっている。裏があるのは誰でも分かることだが、先が読みにくく、基本的には飽きずに楽しめた。 ストーリーの面白さだけではなくて、ほとんど“男の妄想”のような甘さのあるロマンティシズムで満たされているのも好意的に感じられた。 『女には騙されても、女を騙すことはできない』『愛を利用されることはあっても、愛を利用することはできない』というようなこともよく出来ている。 男性が観れば、少々共感できるところもある作品に仕上がっているのではないか。お互いの気持ちが通じ合っても、最後にウマくいかないところも悪くはない落としどころだ。 難点をいえば、「誘拐に対する決意」「二人の恋愛関係の発展」の描写が甘いようなところか。 「誘拐に対する決意」に関しては、プロジェクトリーダーから外されたからというような気がしたが、誘拐の決意の前に副社長と直接的なやり取りがあってもよかったと思う。意味は完全に理解できなかったが、「仮面のやり取り」を誘拐の決意の前に持ってくると、多少は「ゲームをプレイしたくなる動機」のようなものが強化できるような気がする。ビジネスというゲームにおいては負けたかもしれないが、何らかの方法で副社長を負かしたいという想いをもうちょっと感じさせて欲しいところ。 「二人の恋愛関係の発展」に関しては、崖のようなところで佐久間の家庭状況を聞いて、なんとなく父親に似ている、自分にも似ていると感じたから、動いたように感じられる。多少の理由が付加されているものの、唐突という印象も否めない。 原作はよく分からないが、“モロ”というよりも発展するのかしないのか“微妙”な感じで進めてもよかったかもしれない。“モロ”にラブシーンなどを描くと「一緒に逃げない?」「シドニー行きの切符を用意した」といった本音とも嘘とも分からないセリフも深みが増さないところがある。これらのセリフの受け止め方も、ある意味で男と女のGAMEに発展させるためには“微妙”な演出が求められるところだ。 女の嘘が分からない男、男の本音に気付かない女といったようなところまで描いてもよかったかもしれない。男を信じられずに、シドニー行きが自分をハメるようなフェイクだと思ったものの、実は本当だったというオチにすると、ラストの別れにも納得できるのではないか。[DVD(邦画)] 7点(2009-10-19 21:15:41)《改行有》

37.  カイジ 人生逆転ゲーム 《ネタバレ》 原作はかつて“沼”辺りまで見ていたような思い出がある。本作に描かれているゲームはかなり簡略化されているだけではなくて、ポイントが少々ズレているので、それぞれのゲームの面白みは薄れている。カラクリを知っているためか、それとも演出がマズいためなのか、ゲームに息を呑むような緊迫感があるわけではないので、評価を下げたいところだが、本作のメッセージがそれほど悪くはなかったので少々評価を上げたい。 脚本家の大森美香は、金を持っているから「勝ち組」とか、金を持っていないから「負け組」といったことで“人”を判断してよいのかということをメッセージとして伝えようとしていたのではないかと感じた。“金のため”に平気で仲間や他人を裏切って、それによって「勝ち組」ということになるのならば、「勝ち組」になんてならなくてよい。カイジが船井や利根川に勝てたのはイカサマというよりも、相手のイカサマや能力を逆用しただけだ。 カイジは友達の連帯保証人になっただけにも関わらず、限定ジャンケンの負けを被り(一人で十分なのに一緒に落ちるというのはいかがなものか。おっさんの負けを被ったあとにおっさんも地下に落ちてきたという流れの方がよい)、勝利した金を遠藤にかすめ取られ、それでもなお、おっさんと交わした“約束”を守ろうとしている。 カイジは誰も裏切ることはせずに、佐原や石田のおっさん、そして遠藤までをも最後まで信頼しているのである。現代にはあまり存在しないバカ正直なオトコだが、カイジは「勝ち組」でも「負け組」でもない何か新しい“階層”にいるような気がした。 一寸先は闇である不況時代においては、そういう人間こそ、真の「勝ち組」といえるのではないかというメッセージを受け取った。1年前は金を死ぬほどもっていても、1年後には破産するような時代である。「勝ち」でも「負け」でもない、人間としての当然の在り方を求められる時代ではないか。 あのシチュエーションで、遠藤が組織に歯向かってでも5千万円をカイジに貸すということは、原作的にはあり得ない流れだが、そういうカイジのバカ正直さ(自分のことを最後まで良い人と言う)、他人に対する信頼を、彼女なりに信じてみたくなったのではないか。 彼女もいわゆる「勝ち組」から脱して、違う“階層”に進みたかったのかもしれない。 最後は騙し討ちをしているが、“金利”という名目なので仕方はないだろう。[映画館(邦画)] 6点(2009-10-19 00:06:08)《改行有》

38.  ワイルド・スピード/MAX 《ネタバレ》 クルマには全く興味がなくても楽しめる作品に仕上がっている。 ココロに何かが残るということはないが、2時間近い時間は飽きることなく、たっぷりと堪能できるのではないか。 スムーズさは多少欠くところはあるが、手の込んだ脚本となっている。 麻薬捜査と恋人に対する復讐をミックスして、ストーリーがやや複雑化することによって豊かになり、恋人を殺した奴はいったい誰か、黒幕はいったい誰かという手法でさらに盛り上げている。 驚くようなどんでん返しやオチもないが、カーアクションがメインの作品としては悪くはない脚本だ。 肝心のカーアクションも見所満載である。 Ⅰではお馴染みとなっている手の込んだトラック強盗を冒頭から描いており、本シリーズを好む者を喜ばせている。 成功率の低そうなやり方だが、普通に銃を使って奪う犯罪ではなくて、彼らにとってはゲームのようなものなのだろう。 難解であればあるほど、燃えるのかもしれない。 Ⅲに登場するハンとドミニクの関係も明らかになり、本シリーズと関係ないと思われたⅢとブリッジさせることができている。 最後のトンネルシーンは単なるカーアクションを超えたようなデキとなっており、クルマがまるで生きているような仕上がりとなっている。 欲を言えば、もうちょっとドミニクとブライアンの関係を掘り下げてくれると面白い作品になったと思う。 彼らはお互いを助け合うというような単なる相棒ではない。 助ける義理もなければ、助けられる義理もない。 この二人は似たもの同士でありながら、水と油ともいえる面白い関係である。 信念をリスペクトしたり、妹の恋人だとお互いに認め合いながらも、こいつにだけは絶対負けられないという想いもあるはず。 ラスト間際のドミニクとブライアンの会話にもそういう気持ちが表れている。 そういう微妙な関係をもっと上手く演出して欲しいところ。 それぞれの表面的な目標は、恋人に対する復讐及び麻薬組織撲滅かもしれない。 それぞれの目的のためにコンビを組みながらも、お互いのライバル心をもっとメインに持ってきてもよかった。 単なる犯罪組織を壊滅させるアクション映画は世間に溢れているのであるから、それらのような作品とは異なる要素を付加していくことによって、本シリーズの必要性が増していくのではないか。[映画館(字幕)] 7点(2009-10-11 00:52:46)(良:1票) 《改行有》

39.  ワイルド・スピードX3/TOKYO DRIFT 《ネタバレ》 最新作が公開される関係で、期待値ゼロでやむを得ず鑑賞。 どんなに酷い作品が待っているのかと思ったら、意外と普通に見られるレベルといえるかもしれない(もっとも高い評価はできないが)。 クルマについては詳しくないので、アクションの凄さのレベルがよく分からないが、ボケッと眺めていればそれなりに飽きずに楽しむことができた。 ラストのレースも意外ときちんと仕上がっているのではないか。 ヘンテコな日本・東京が描かれるのは、突っ込む方が野暮といえるかもしれない。 カーアクション作品や犯罪モノなので、必ずしもリアルな東京を描かれる必要はない。 むしろ、「ウワバキ」などの謎のやり取りや「学ラン姿のアメリカ人」を楽しむことができるので、ヘンテコさが一つの売りともいえるのではないか。 リアルで精緻な東京が描かれたら、それはそれで面白みが減ると思われる。 ストーリーは「トップガン」や「ベストキッド」の流れを汲むような“基本”に忠実となっている。 『友情や恋愛を絡ませながら、友人の死や挫折を経験して、それを乗り越えてライバルを倒す』という王道路線が描かれている。 しかし、友情、恋愛、挫折の乗り越え方もいずれも中途半端という印象。 メインがカーアクションとはいえ、もうちょっと工夫しないと良作にはなりようもない。 “GAIJIN”も有名なので単語だけ使ってみましたというレベル。 あまりこれに関わりすぎると、メインが疎(おろそ)かになるので、バランスが難しいが、やはり何か物足りない仕上りだ。 外人としての孤独や疎外感を描きながら、“クルマ”を通しての外人と日本人との交流・融合といった視点を付加してみると、もっと評価できる作品に仕上がったように思われる。 これでは、あえて東京を舞台にする必要があったのかいうほどのレベルだ。 鑑賞前は北川景子がそれなりに重い役柄を演じているとずっと思っていたが、まさかここまで空気だったとは思わなかった。 これも収穫といえば収穫だろうか。[DVD(字幕)] 5点(2009-10-11 00:48:45)(良:2票) 《改行有》

40.  カムイ外伝 《ネタバレ》 原作未読。一度も見たことがない。 邦画作品らしく、マイルドな作品に仕上がっており、極端につまらない作品ではない。 CG丸出しの作品ではあるが、細部には多少こだわっているようにも思われた。 しかし、毒にも薬にもならない普通のアクション作品でしかなかった。 何を描きたかったのか、“本質的”な部分が見えてこない。本作の冒頭及びラストに明確なテーマが示されていたはずだ。確か「抜け忍であるカムイの夢」や「猜疑心・己との戦い」といったことが語られていたと思う。しかし、本作をいくら見ても、これらのことが上手く描かれているとは思えない。 原作を見たことがないので分からないが、カムイの夢とは追われることがなく、争いのない世界で幸せな家庭を築くことではないだろうか。本作の流れを踏まえると、猟師となることもできたはずであり、自分を好いてくれる娘と家庭を築くこともできたはずだ。そういったカムイの夢や希望のようなものが見えてこない。ノドから手を出るほど欲していた夢が目の前にあるのに、カムイからは苦悩や葛藤も何も伝わってこない。 そういったものを欲しないのならば、いったい何のために抜け忍になったのかが分からない。 そして、最も大事なことは「猜疑心・己との戦い」ではないか。サヤカが見た恐ろしい夢のようなものは、本来ならばカムイが見るべきではないだろうか。忍者に追われるということだけではなくて、半兵衛を売った男のように、いつ村人に囲まれてもおかしくないという“恐れ”のようなものが常に付きまとっているはずではないか。そういった“恐れ”や、自分が売られるというような“猜疑心”のようなものをフドウに利用されて、村人全員をカムイが殺してしまうというような展開になってもよかったと思う。 愛した女でさえ、猜疑心ゆえに殺してしまう。どんなに強い者でも、自分にはなかなか勝つことはできないということをクドカン辺りならば、描くことはできたのではないか。 そして最後には、誤りを犯して傷ついても、苦しんでも、どんなことがあっても、人は何かを求めて彷徨い、生き続けなくてはいけないということを描いて欲しかったところだ。“忍者モノ”という現代とは何ら関係のない作品でも、現代に通じるようなものを描いてこそ、優れた作品といえるだろう。[映画館(邦画)] 5点(2009-09-20 23:57:57)(良:1票) 《改行有》

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